JP2594221B2 - 建物躯体の張壁 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、建物躯体の外壁面に所
要の空間部を設けて展張される張壁の構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】上記の張壁は、新設建物の例えばコンク
リート打ち放しの躯体外壁面を覆い飾る新装用や、既設
建物の陳腐化したり傷んだりした躯体外壁面を覆い飾る
改装用として広く利用されており、例えば既設建物の外
壁面に対する改装用を対象とした張壁構造が特公平４−
４２５１３号公報によって提案されている。

【０００３】この公報に記載の技術によれば、例えば外
装タイルや化粧モルタルなどを剥がし取って新外壁材を
施工する改装などに比べて、粉塵の発生などの不都合を
伴わせないで短期間で既設建物の改装が成される。この
技術を利用して、新設建物の例えばコンクリート打ち放
しの躯体外壁面を張壁によって覆い飾ることも容易に達
成される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、既設建物を
対象にして張壁が施工されるのは、その既設の建物が老
朽化したからであって、当然に備付けの動力設備や情報
通信設備、その他空調や給排水の設備なども機能的に古
いものとなっており、而して、張壁による既設建物の外
壁面の改修に際して、それらの設備の機能をアップさせ
て、既設建物を所謂インテリジェントビル化させたい要
望がある。

【０００５】しかし、上記のインテリジェント化に要す
る機能実現化のための設備を増設することは、それらに
対する動力ケーブルや光ファイバー、その他設備配管な
どの設備部材の増設も必要であって、この内の水平方向
の設備部材の増設については天井裏を利用することで可
能であるが、上下方向の設備部材の増設を既設のダクト
スペースだけに頼るにはスペース的に無理がある。

【０００６】或いは、この設備部材の増設に代えて、こ
れらを全て交換することも考えられるのであるが、躯体
に打ち込まれている給排水管やケーブルなどの交換は不
可能であり、また、交換可能なものであっても、例えば
給電や給排水などの長期的な中断を余儀なくされること
から、交換の手段をとることは非現実的であると言って
も過言ではない。

【０００７】而して、スペース確保のためには、例えば
ダクトスペースを広くするような建物自体の大幅な改造
を必要とするが、これには膨大な費用がかゝることか
ら、一般には外壁面の改修だけで、既設建物のインテリ
ジェントビル化を断念しているのが現状である。

【０００８】一方、将来のインテリジェントビル化を考
慮して、建物を新設する際にダクトスペースを大きく設
計しておくことも効果的であるが、これでは建物設計の
自由度が狭められる上に、フロア面積が犠牲になる点で
問題がある。もっとも、将来的なインテリジェントビル
化を考慮しない場合であっても、必要最小限のダクトス
ペースを設けることは必須の条件であるが、このダクト
スぺースを設計すること自体が、フロアの間仕切り関係
からして非常に厄介なものとなっている。

【０００９】かゝる実情に鑑みて本発明は、既設建物を
対象にしたインテリジェントビル化の達成が容易に可能
であり、或いは新設建物を対象にした場合は、必要最小
限のダクトスペースを装備させるにしても、または当初
から建物をインテリジェントビルと成す上であっても、
更には、将来的なインテリジェントビル化に備えるにし
ても、新設建物そのものに対するダクトスペースの設置
を不要あるいは極小と成す設計を可能とした張壁を提供
することを目的としている。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するに
至った本発明による建物躯体の張壁は、建物躯体の外壁
面との間に所要の展張空間部を設けて前記外壁面に対向
するよう展張される張壁であって、インテリジェントビ
ル化に要する機能実現化のための設備配管などの設備部
材の内、前記展張空間部の上下方向に設置可能な設備部
材を開口部を介して収納するための収納部を構成する凹
部を前記展張空間部とは隔絶させた状態で前記上下方向
に備え、かつ、この凹部の前記開口部を、少なくとも一
部を開閉自在と成した覆材で覆って成る点に特徴があ
る。

【００１１】

【作用】上記の特徴構成によれば、例えば既設建物の外
壁面の改修に際して、既設建物の機能をアップさせるた
めの設備、即ち動力設備や情報通信設備、その他空調設
備や給排水設備を増設し、かつ、それらの設備に対する
動力ケーブルや光ファイバー、その他設備配管などの設
備部材を、その内の水平方向の設備部材については天井
裏を利用して増設し、増設のネックとなる上下方向の設
備部材については、これらを張壁に備えさせた凹部に収
納をさせることで、例えばダクトスペースを広くするよ
うな既設建物の改造を伴わせないで、外壁面の改装と同
時に既設建物のインテリジェントビル化が達成される。

【００１２】或いは、張壁を装備させる建物の新築に際
しては、その建物をインテリジェントビルと成すか否か
を問わず、または将来的なインテリジェントビル化に備
えるにしても、本来は建物に備えさせるべきダクトスペ
ースを、少なくともそれの一部を上記の凹部によって代
用することができる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１は出入口のシャッター１を除く例えば既設建
物の躯体外壁面Ｓに展張された張壁２を示し、中央側二
列の窓３群と左右一列の窓３群との間に、設備配管など
の収納部４を上下方向に備えている。

【００１４】具体的には、図２に示すように、上下方向
ならびに左右方向に所定の間隔を隔てて支持骨５を設け
ると共に、この支持骨５に上下方向の方立６を取り付
け、かつ、前記収納部４を除く部位において、左右方向
で隣り合う方立６にわたって無目７を設けると共に、こ
れら方立６と無目７とによる格子状の空間を埋めるよう
に、図１に示すように、前記窓３に対応させて窓パネル
８ａを且つそれ以外の部位には壁パネル８ｂを配置し、
前記収納部４には、一部を工事用ならびに保守・点検用
などの開閉扉９に構成した覆材１０を備えさせている。

【００１５】上記の支持骨５は、図２に示すように、既
設建物の外壁部に埋め込まれるボルト１１とナット１２
とを介して、上下に位置調節可能にＬ字状の第１ファス
ナ１３を設けると共に、この第１ファスナ１３に対して
外壁面Ｓに直交する方向に位置調節可能に第２ファスナ
１４を設け、かつ、この第２ファスナ１４に方立取付け
用のブラケット１５を固着して成るもので、上記の張壁
２は、この支持骨５の寸法分の空間部Ｐを隔てて建物躯
体の外壁面Ｓに展張されるのである。

【００１６】一方、前記壁パネル８ｂは、図２にその一
部を示すように、方形の薄板状金属板１６の周部を金属
製の補強枠１７で囲って成り、図１に戻って、前記窓パ
ネル８ａは、枠体に光透過性の例えば合成樹脂製の薄板
を嵌め込んだスライド窓１８の二枚を窓枠１９に設けて
成る。

【００１７】この内の収納部４の左右両側に配置される
壁パネル８ｂについては、図２に示すように、それの補
強枠１７に、収納部４両側の方立６近傍で躯体の外壁面
Ｓ側に折れ曲がる第１板部２０ａと、これとは逆方向に
折れ曲がって躯体の外壁面Ｓに沿う第２板部２０ｂとが
連設されていて、当該パネル８ｂ，８ｂの展張下におい
て前記第２板部２０ｂどうしを重なり合わせることで、
張壁２の展張空間部Ｐに入り込んだ上下方向の凹部Ａを
形成している。

【００１８】この凹部Ａは、後述する設備配管などの設
備部材２１を収納するためのものであって、その設備部
材２１の取り付けブラケット２２を第２板部２０ｂに設
けている。そして、凹部Ａの開口部を覆材１０で覆うと
共に、この覆材１０に所定の間隔を隔てて操作開口を形
成し、かつ、この開口に、ヒンジ２３を介して工事用な
らびに保守・点検用の開閉扉９を設けると共に、各開閉
扉９にそれぞれ錠前２４を設けて、張壁２の展張空間部
Ｐとは隔絶させた状態で設備部材２１…を収納するため
の収納部４を構成しているのである。

【００１９】尚、前記収納部４の左右一方のパネル８ｂ
については、左右他方のパネル８ｂの第１板部２０ａに
重なり合う第３板部２０ｃが折曲連設されていて、前記
収納凹部Ａの剛性を高めるように考慮されている。

【００２０】上記構成の張壁２によれば、既設建物の外
壁面Ｓの改修に際して、その外壁面Ｓの改装と同時に既
設建物のインテリジェントビル化が簡易に且つ費用面で
も安価に達成される。

【００２１】即ち、図３に示すように、既設建物の屋上
Ｒにキュービクル２５を設置する一方、室内側には、壁
掛け型や床据え置き型のクーラーや空調エアの吹き出し
器具などに代表される空調装置２６や、その他図示しな
いが情報通信装置や給排水装置を増設し、これらに対す
る空調用ダクトや動力ケーブル、その他通信用の電線や
光ケーブル、給排水管など、インテリジェントビル化に
要する機能実現化のための設備部材２１を、その内の水
平方向の設備部材２１ａについては窓下の腰壁を貫通さ
せたり天井裏を利用したりして増設し、上下方向の設備
部材２１については、これらを張壁２に備えさせた凹部
Ａに収納することで、例えば既設建物のダクトスペース
を広くするような既設建物の改造を伴わせないで、外壁
面Ｓの改装と同時に既設建物のインテリジェントビル化
が達成されるのである。

【００２２】そしてこの際、設備配管などの設備部材２
１を収納させる凹部Ａを、張壁２の展張空間部Ｐとは隔
絶させているので、例えば躯体外壁面Ｓの外装タイルや
化粧モルタルが不測にも剥がれ落ちたとしても、そのタ
イルやモルタルの塊によって設備部材２１がダメージを
受けることを避けることができ、更に、前記凹部Ａの開
口部を覆材１０で覆っているので、水気を嫌う電気関係
などの設備部材２１の収納にとって好適である。

【００２３】特に、ダクトに断熱材を巻き付けて布製の
テープで保護する形態の冷暖房用の設備部材２１を収納
対象とした場合は、例えば剥がれ落ちたタイルなどによ
って保護テープがダメージを受けて内部の断熱材に水分
が浸透すると、浸透水が冬季に凍結したり冷暖房効率の
極端な低下を来したりするが、その設備部材２１が覆材
１０付きの凹部Ａに納められていることから、かゝる事
態の発生が確実に回避される利点がある。

【００２４】尚、上記の実施例では、張壁２の展張対象
を既設建物としているが、新設の建物を展張対象にして
も好適に実施可能であり、この場合、新築の建物をイン
テリジェントビルと成すか否かを問わず、または将来的
なインテリジェントビル化に備えるにしても、凹部Ａの
設備収納規模によっては、本来は建物に備えさせるべき
ダクトスペースを設けないで済ませたり、若しくは極端
に小規模のもので済ませたりすることができ、延ては建
物設計の自由度を大幅に向上させることができる利点が
ある。

【００２５】図４は形態を異ならせた別実施例の収納部
４の構造を示している。この収納部４は、例えば薄板を
素材にして、これを平面視でコの字状に折り曲げて上下
方向の凹部Ａを備えたダクト状部材２７を成形し、この
ダクト状部材２７を、壁パネル８ｂ，８ｂ間に位置させ
るようにして、アングル部材２８を介して躯体の外壁面
Ｓと無目７とに取り付け、かつ、それの凹部Ａにブラケ
ット２２を介して設備部材２１を設けると共に、前記凹
部Ａの開口部を、上下の所定箇所に開閉扉９を備えた覆
材１０で覆って成る。

【００２６】かゝる構成によれば、ダクト状部材２７の
外面をパネル外面から突出させているので、デザイン性
の面で好適である上に、上記した実施例の構成では、上
下の壁パネル８ｂ，８ｂの継ぎ目において、僅かではあ
るが空間部Ｐに通じる隙間が凹部Ａに形成されるのに対
して、かゝる構成の収納部４によれば、凹部Ａと覆材１
０とによってほゞ密閉状の空間が形成される点に特徴が
ある。

【００２７】更なる別実施例の収納部４を図５に示す。
この収納部４の特徴は、薄板を折り曲げてダクト状部材
２７を形成し、このダクト状部材２７を支持骨５に連設
の方立６に取り付ける点では、上記した別実施例のもの
と構成に変わりはないのであるが、このダクト状部材２
７の凹部Ａの開口部を壁パネル８ｂで覆うようにし、か
つ、その内の一部の壁パネル８ｂを、ヒンジ２３を介し
て方立６に取り付けた点に特徴がある。

【００２８】即ち、壁パネル８ｂを覆材１０として使用
し、その一部を開閉可能に構成しているもので、この壁
パネル８ｂの全てを開閉可能に構成するもよく、また、
上記した実施例の構造ならびに第１別実施例の構造にお
いても、覆材１０の全てを開閉可能に構成する形態をと
るもよい。

【００２９】

【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、建
物躯体の外壁面との間に所要の展張空間部を設けて展張
される張壁に前記展張空間部の上下方向の凹部を備えさ
せたことで、例えば既設建物の改装に際して、その凹部
にインテリジェントビル化に要する機能実現化のための
設備部材を前記上下方向に配置する形態をとることで、
例えば既設建物のダクトスペースを広くするような既設
建物の改造を伴わせないで、建物躯体の外壁面の改装と
同時に既設建物のインテリジェントビル化が安価に達成
される。

【００３０】要するに、本願発明は、建物躯体の外壁面
に対向するよう張壁を設けたときに発生する張壁内方の
展張空間部を利用して上下方向に設置可能な設備部材を
収納するための収納部を構成するため、例えば既設建物
側の有効利用面積（空間）を減少させるような事態は起
こらない。つまり、本願発明は、展張空間部の内、上下
方向の設備部材を通す部分を特定し、かつ凹部内への前
記上下方向の設備部材の収納や、保守をし易くしたもの
であって、既設建物側にスペース的にも何等の影響を与
えることなく現存スペースを減少させることなく維持し
た状態で建物躯体の外壁面との間に所要の展張空間部を
設けている点に特徴がある。

【００３１】更に、その凹部は、張壁の展張空間部とは
隔絶させた状態で設備部材を前記上下方向に収納するた
めの収納部を構成しているので、例えば建物躯体の外壁
面の外装タイルや化粧モルタルが不測にも剥がれ落ちた
としても、そのタイルやモルタルの塊によって前記上下
方向の設備部材がダメージを受けることがなく、また、
その凹部の開口部を覆材で覆っているので、水気を嫌う
電気関係などの設備部材の収納にとって好適であり、特
に冷暖房用の設備部材を収納対象とした場合は、その設
備部材がダメージを受けないことに加えて遮水が達成さ
れることから、断熱材の凍結や冷暖房効率の極端な低下
と言った事態が確実に回避される利点がある。

【００３２】しかも、上記の覆材の少なくとも一部を開
閉自在と成しているので、上述したように、凹部内への
前記上下方向の設備部材の収納や、その設置後の設備部
材の保守・点検等を作業性の良い状態で効率的に行うこ
とができる。

【００３３】そして、本発明による建物躯体の張壁は、
新設の建物を展張対象にしても好適に実施可能であり、
この場合、新築の建物をインテリジェントビルと成すか
否かを問わず、または将来的なインテリジェントビル化
に備えるにしても、凹部の設備収納規模によっては、本
来は建物に備えさせるべきダクトスペースを設けないで
済ませたり、若しくは極端に小規模のもので済ませたり
することができ、延ては建物設計の自由度を大幅に向上
させることができる利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】一部に既設建物を示した張壁の正面図である。

【図２】図１におけるＸ−Ｘ線の断面図である。

【図３】インテリジェントビル化で必要な設備部材の配
置説明図である。

【図４】別実施例の収納部を示す断面図である。

【図５】更なる別実施例の収納部を示す断面図である。

【符号の説明】

１０…覆材、２１…設備部材、Ａ…凹部、Ｐ…展張空間
部、Ｓ…外壁面。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 建物躯体の外壁面との間に所要の展張空
   間部を設けて前記外壁面に対向するよう展張される張壁
   であって、インテリジェントビル化に要する機能実現化
   のための設備配管などの設備部材の内、前記展張空間部
   の上下方向に設置可能な設備部材を開口部を介して収納
   するための収納部を構成する凹部を前記展張空間部とは
   隔絶させた状態で前記上下方向に備え、かつ、この凹部
   の前記開口部を、少なくとも一部を開閉自在と成した覆
   材で覆って成ることを特徴とする建物躯体の張壁。