JP2593284B2 - トンネルの覆工構造とその築造方法 - Google Patents

トンネルの覆工構造とその築造方法

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JP2593284B2
JP2593284B2 JP5351317A JP35131793A JP2593284B2 JP 2593284 B2 JP2593284 B2 JP 2593284B2 JP 5351317 A JP5351317 A JP 5351317A JP 35131793 A JP35131793 A JP 35131793A JP 2593284 B2 JP2593284 B2 JP 2593284B2
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敏 夫 林
山 忠 小
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシールド工法やTBM工
法を合理化し、工期の短縮化と工費の低減を図れるよう
にしたトンネルの覆工構造とその築造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えばシールド工法によってトン
ネルを築造する場合、一般にいわゆるセグメント工法か
直打ちライニング工法の何れかが採用される。このう
ち、セグメント工法は、例えば特開平3ー132600
号公報のように、掘進機で掘削した掘削穴に円管状のシ
ールドを付設し、該シールドのテール部に継手金物とボ
ルトナットとを用いて、複数のセグメントピースを筒状
のセグメントに組み立て、該セグメントをトンネルの覆
工体として構築するとともに、掘進に応じてシールドを
前進させ、セグメントを延設するようにしている。
【0003】また、直打ちライニング工法は、掘進機で
掘削した掘削穴に円管状のシールドを付設し、該シール
ドのテール部に型枠を組み立て、該枠と地山との間にコ
ンクリートを加圧して直打ちし、該コンクリートが所定
強度に達したところで、型枠を解体し、上記コンクリー
トをトンネルの覆工体として構築するとともに、掘進に
応じてシールドを前進させ、型枠を組み立ててコンクリ
ートを打設するようにしている。
【0004】この場合、セグメント工法によるトンネル
は、構造上、土圧や水圧等の外力によってセグメント本
体や継手部に曲げモーメントや軸圧縮力が生じ、この曲
げモーメントを継手金物間を連結するボルトに分担させ
ている。したがって、ボルトの連結部周辺に高い剛性と
強度を要求されるため、継手金物の強度強化やセグメン
トピースに多量の鉄筋を埋設する等して、セグメント覆
工体が非常に高価になるという問題があった。
【0005】また、ボルトナットによる連結作業を従来
より人手で行なっているが、その場合には多大の労力と
時間を要し、しかも締め付け力が不均一になったり緩み
が生じたりする問題もある。なお、最近ではセグメント
を組み立てるロボットが開発されているが、位置合わせ
やボルトの締結が非常に複雑で大規模になり、組み立て
スピードにも問題があって実用に供し難い。
【0006】しかも、セグメント工法は、その構造上、
シールドテール部とセグメントとの間のテールボイドと
称する空間の発生を避けられず、当該空間を填充し覆工
強度を強化するための裏込め注入が不可欠になって、工
期の長期化と工費増を助長する一方、上記注入を完全に
充填することは困難であった。
【0007】一方、前記直打ちライニング工法は、施工
条件によっては覆工体に曲げモーメントが発生するた
め、コンクリートを鉄筋で補強する必要があり、その場
合には施工環境が複雑で施工スピードが遅くなり、工期
の長期化を助長する。また、無筋構造体ではトンネルの
用途によって、ヒビ割れの問題から二次覆工を要するこ
とがあり、その場合には覆工構造としては高品質となる
が、二次覆工は一次覆工が完了してから施工するので、
その分工期が長くなる等の問題がある
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問
題を解決し、型枠と地山との間に所定圧の覆工材を打設
し、それらの間に覆工材を高密度に充填するとともに、
覆工材の打設圧により型枠に軸圧縮力を形成し、該型枠
と覆工材とで内外二重のトンネル覆工体を構成すること
で、型枠の軽量化と強度および剛性の低減を図り、該型
枠のコスト低減とその組み付けの容易化を実現して、工
期の短縮化と工費の低減を図り、シールド工法あるいは
TBM工法の合理化を促すようにした、トンネルの覆工
構造とその築造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】このため、本発明のトン
ネルの覆工構造は、掘削穴の内側に筒状またはアーチ状
の型枠を配置し、この掘削穴の内壁と型枠との間に覆工
材を所定圧で直打ちして、掘削穴と型枠との間に覆工体
を形成したトンネルの覆工構造において、覆工材の加圧
下で円周方向に作用する軸圧縮力を前記型枠内部に形成
し、該型枠の外周面全面を前記覆工体に密着固定し、型
枠に対し外力による曲げモーメントや曲げ応力を低減
し、型枠の強度と剛性の低減を図って、形枠の小形軽量
化とその製造コストの低減、および工費の低減を可能に
したことを特徴にしている。また、本発明のトンネルの
覆工構造は、掘削穴の内側に複数の型枠ピースを筒状ま
たはアーチ状に組み付けた型枠を軸方向に配置し、該型
枠と掘削穴との間に所定圧の覆工材を填充して、従来の
セグメント工法における裏込め注入を排し、この種工法
の合理化を図るようにしたことを特徴にしている。本発
明のトンネルの覆工構造は、型枠の強度と剛性を、該型
枠の運搬と組み立てに耐えられる程度にして、型枠のコ
スト低減を図るようにしたことを特徴にしている。本発
明のトンネルの覆工構造は、円周方向に配置した型枠ピ
ースの平坦な端面同士を突き合わせて組み付け、このた
めの継手金物とその煩雑な連結作業を不要にし、型枠の
コスト低減と作業の合理化並びに工期の短縮を図るよう
にしたことを特徴にしている。本発明のトンネルの覆工
構造は、覆工材の厚さと型枠の厚さとの相加厚を、直打
ちライニング工法における覆工厚と略同厚にし、それら
個々の厚さの薄厚化と小形軽量化を図るようにしたこと
を特徴にしている。本発明のトンネルの築造方法は、掘
削穴の内側に型枠を配置し、この掘削穴の内壁と型枠と
の間に覆工材を所定圧で直打ちして、掘削穴と型枠との
間に覆工体を形成するトンネルの築造方法において、前
記覆工材に硬化時まで所定の圧力を加えることによっ
て、前記型枠の内部に円周方向に作用する軸圧縮力が内
部に形成され、該型枠にプレストレスを与えることで、
外力による曲げモーメントや曲げ応力を低減し、その強
度と剛性の緩和を図るとともに、型枠のコスト低減を図
るようにしている。 また、覆工材に硬化時まで所定の圧
力を加えることによって、型枠の外周面全面前記覆工
体に密着固定され、前記型枠と覆工体とで内外二重の覆
工体を形成して、トンネル強度を増強するとともに、従
来の直打ちライニング工法のように覆工材の硬化後、型
枠を解体する手間をなくし、その分工費の低減と工期の
短縮化を図るようにしたことを特徴にしている。本発明
のトンネルの築造方法は、掘削穴の内側に複数の型枠ピ
ースを筒状またはアーチ状に組み付けた型枠を軸方向に
配置し、該型枠と掘削穴との間に所定圧の覆工材を填充
し、従来のセグメント工法における裏込め注入を排し、
この種工法の合理化を図るようにしたことを特徴にして
いる。本発明のトンネルの築造方法は、円周方向に配置
する型枠ピースの端面同士を突き合わせて接合し、この
ための継手金物とその煩雑な連結作業を不要にし、型枠
のコスト低減と作業の合理化並びに工期の短縮を図るよ
うにしたことを特徴にしている。本発明のトンネルの築
造方法は、覆工材の厚さと型枠の厚さとの相加厚を、直
打ちライニング工法における覆工厚と略同厚にし、覆工
材の厚さを薄厚にして、その打設量と打設時間を低減
し、工費と工期の短縮を図れるようにしたことを特徴に
している。本発明のトンネルの築造方法は、シールドテ
ール部の円周方向の複数位置から、掘削穴と型枠との間
に向けて所定圧の覆工材を打設して、覆工材を均一かつ
高密度に充填し、良質な覆工体を形成するようにしたこ
とを特徴にしている。
【0010】
【作用】覆工材の加圧下で円周方向に作用する軸圧縮力
内部に形成した型枠によって土圧や水圧等の外力によ
る曲げモーメントや曲げ応力に対抗し、それらを低減す
ることで、型枠に要求される強度と剛性とを軽減し、型
枠の小形軽量化とコスト低減を可能にする。型枠の外周
面全面を前記覆工体に密着固定し、型枠と覆工体とで内
外二重の覆工体を形成して、外力による型枠と覆工体と
の間における歪の発生を防止し、型枠に対する曲げモー
メントや曲げ応力の発生を阻止して、トンネル強度を増
強する。掘削穴の内側に複数の型枠ピースを筒状または
アーチ状に組み付けた型枠を軸方向に配置し、該型枠と
掘削穴との間に所定圧の覆工材を填充して、従来のセグ
メント工法における裏込め注入を排し、また注入不全に
よる強度低下や地山の沈下を阻止し、この種工法の合理
化と工期の短縮化を図るとともに、トンネル強度を増強
する。型枠の強度と剛性を、該型枠の運搬と組み立てに
耐えられる程度にして、補強用の鉄筋量を節減するとと
もに、継手金物の強度の低減を図り、型枠のコスト低減
を図る。円周方向に配置した型枠ピースの平坦な端面
士を突き合わせて組付け、このための継手金物とその煩
雑な連結作業を不要にし、型枠のコスト低減と作業の合
理化並びに工期の短縮を図る。覆工材の厚さと型枠の厚
さとの相加厚を、直打ちライニング工法における覆工厚
と略同厚にし、それら個々の厚さの薄厚化とそれらの小
形軽量化を図る。覆工材に硬化時まで所定の圧力を加え
るとともに、その間前記圧力を前記型枠周面に加えて、
該型枠の内部に円周方向に作用する軸圧縮力を十分かつ
均一に形成する。すなわち、型枠にプレストレスを与え
ることで、外力による曲げモーメントや曲げ応力を低減
し、その強度と剛性の緩和を図る。型枠の外周面全面
前記覆工体に密着固定し、前記型枠と覆工体とで内外二
重の覆工体を形成し、トンネル強度を増強する。した
がって、従来の直打ちライニング工法のように覆工材の
硬化後、型枠を解体する手間をなくし、その分工費の低
減と工期の短縮化を図る。掘削穴の内側に複数の型枠ピ
ースを筒状またはアーチ状に組み付けた型枠を軸方向に
配置し、該型枠と掘削穴との間に所定圧の覆工材を填充
し、従来のセグメント工法における裏込め注入を排し、
この種工法の合理化を図る円周方向に配置する型枠ピ
ースの端面同士を突き合わせて組付け、このための継手
金物とその煩雑な連結作業を不要にし、型枠のコスト低
減と作業の合理化並びに工期の短縮を図る覆工材の厚
さと型枠の厚さとの相加厚を、直打ちライニング工法に
おける覆工厚と略同厚にし、覆工材の厚さを薄厚にし
て、その小形軽量化を図るとともに、打設量と打設時間
を低減し、工費と工期の短縮を図る。シールドテール部
の円周方向の複数位置から、掘削穴と型枠との間に向け
て所定圧の覆工材を打設して、覆工材を均一かつ高密度
に充填し、良質な覆工体を形成する。
【0011】
【実施例】以下、本発明をシールド工法に適用した図示
実施例について説明すると、図1乃至図3において1は
地山2の内部を掘進機(図示略)で掘削した掘削穴で、
該穴2の内側に円管状のシールド3が設置され、その周
壁を構成する鋼板製のスキンプレート3aがシールド3
の内外を区画している。
【0012】前記掘削穴1の内側には、型枠である複数
の筒状の存置型枠4が掘削穴1と同軸方向に隣接して配
置され、それらの前端部がシールド3の後端部、つまり
掘進機と反対側端部のシールドテール部5に位置してい
る。
【0013】存置型枠4は複数の存置型枠ピース6で構
成され、これらは例えばコンクリート系材料により成形
されていて、その内部に所定量の鉄筋を埋設して強度を
強化している。この場合の鉄筋の量は、該型枠4ないし
型枠ピース6の運搬時や組み立て時にヒビ割れが生じな
い程度の強度を維持し得る相当量で足り、従来のセグメ
ントピースのような多量の鉄筋を要しない。
【0014】存置型枠4の内径Dはトンネルの内径と同
径に形成され、またその分割数は、トンネルの径によっ
て異なるが、運搬や組み立ての施性を考慮して、5〜
10程度に分割されている。したがって、存置型枠ピー
ス6の断面形状もトンネルの径によって異なり、これら
は実施例の場合、同形の地紙形状に形成され、かつ軸方
向長さを同長に形成されている。
【0015】存置型枠ピース6の厚さt1 は、後述のよ
うに存置型枠4に対し曲げモーメントや曲げ応力が低減
する分、強度や剛性を低減されて薄厚に形成され、実施
例では従来の同形状のセグメントピースの厚さの略2/
3に形成されている。
【0016】存置型枠ピース6は、その前後端面を隣接
する存置型枠ピース6の端面に接合し、これらを図3の
ような簡易連結手段で連結している。このうち、図3
(a)は相対する存置型枠ピース6の前後端部にピン孔
7,8を斜状に形成し、これらにピン9を上方から抜き
差し可能に設けたピン継手を示し、同図(b)は相対す
る存置型枠ピース6の前後端面に、互いに係合可能な凹
凸部10,11を設けたホゾ継手を示し、同図(c)は
相対する存置型枠ピース6の前後端面に、互いに係合可
能な凹凸状の湾曲面12,13を設けたナックル継手を
示している。上記ナックル継手の場合、必要に応じて図
3(a)のようにピン孔を設け、これにピン14を差し
込んでもよい。
【0017】なお、連結力を強化する場合は、同図
(d)のように相対する存置型枠ピース6の前後端部
に、L字形金具15,16を互いに背中合わせにしてボ
ルト締めし、それらの接合部をボルトナット17で連結
してもよい。この場合でも、存置型枠4は後述のように
曲げモーメントや曲げ応力が低減しているから、それら
の連結箇所は従来よりも少なくて足りる。
【0018】また、存置型枠ピース6は、存置型枠4に
対し曲げモーメントや曲げ応力が低減するため、図2の
ように円周方向の両端面を、隣接する存置型枠ピース6
の端面に単に接合して筒状に組み付けられ、従来のよう
に各ピース6,6同士を円周方向に連結したり、このた
めの継手を特に要しない。この場合、例えば存置型枠4
の組み立て時の安全を図るため、置型枠ピース6相互を
仮止めするときは、各ピース6または適宜ピース6の円
周方向の両端部に、前記図3(a)〜(d)で示す適当
な継手手段を採用することで対応できる。
【0019】シールドテール部5に臨む存置型枠4の外
周面と、スキンプレート3aとの間には、前記掘進機の
軸方向への移動と同動可能な複数の打設管18が存置型
枠4の円周方向に配置され、その打設口18aを後方に
向けて、覆工材19を所定圧で吹き出し可能にしてい
る。実施例では覆工材19として、流動性に富み、かつ
材料分離抵抗性を有するコンクリート系のものを使用し
ており、また上記コンクリート圧は、シールドテール部
5における土圧と水圧との相加圧以上に設定され、かつ
当該圧を覆工材19が硬化するまで保持可能にしてい
る。
【0020】上記打設管18は、例えばローターバルブ
等の分配弁(図示略)に接続され、該分配弁はコンクリ
ートポンプ等の圧送ポンプ(図示略)に連通していて、
前記覆工材19を順次打設管18に圧送可能にしてお
り、これら打設管18と圧送ポンプと分配弁等は、覆工
装置の覆工材打設手段を構成している。
【0021】覆工材19の覆工厚t2 、つまり地山2と
存置型枠4との間隔は、従来の直打ちライニング工法に
おけるコンクリート厚よりも存置型枠4の介在分、薄厚
に設定され、該覆工材19の覆工厚t2 と存置型枠4の
厚さt1 との相加厚を、従来の直打ちライニング工法に
おけるコンクリート厚と同厚に設定している。
【0022】なお、上述の実施例では本発明をシールド
工法に適用しているが、これに限らず山岳トンネルの築
造に採用されるTBM工法(トンネルボーリングマシン
を使用する工法)に適用することも可能である。また、
存置型枠4を円筒状に構成しているが、これに限らず断
面形状が楕円または矩形若しくは異形断面等の中空筒
状、或いはアーチ状およびルーフ状に構成してもよい。
【0023】このような方法によってトンネルを築造す
る場合、地山2の内部を掘進機(図示略)によって掘削
し、この掘削穴1内にシールド3を設置し、そのシール
テール部5に所定量の存置型枠ピース6を搬入して、存
置型枠4を組み立てる。
【0024】この組み立てに際しては、所定数の存置型
枠ピース6を使用し、該ピース6の円周方向の両端面
に、隣接する存置型枠ピース6の円周方向の端面を接合
して、順次筒状に組み立てる。この場合、隣接する存置
型枠ピース6は端面同士を接合するだけで、この連結を
特に要しないから、従来のようなこのための高価な継手
金物や、その連結作業が不要になり、その分従来のセグ
メント工法に比べて、型枠のコスト低減と工期の短縮化
を図れる。また、仮に存置型枠ピース6の端面同士を仮
止めする場合でも、後述のような継手手段を採用するこ
とで、それらの連結作業を簡易かつ迅速に行なえる。
【0025】しかも、存置型枠4は覆工体として使用
後、後述のように曲げモーメントや曲げ応力が作用せ
ず、または低減するから、その分型枠4ないし型枠ピー
ス6の強度と剛性が緩和され、継手部の強度を低減する
とともに補強用の鉄筋量の節減して、型枠4の厚さt1
を従来のセグメントの厚さの略2/3に形成し得、その
軽量化とコスト低減を図れる。
【0026】こうして組み立てた複数の存置型枠4を、
適宜な移動手段を介してシールドテール部5または掘削
穴1の所定位置に移動し、その前後方向に配置する存置
型枠4の相対する端面を突き合わせ、これらをピン継手
またはホゾ継手、ナックル継手等を介して連結する。こ
れらの連結は、ピン孔7,8にピン9を差し込み、また
は相対する端面を係合させるだけでの簡単な作業であ
り、また図3(d)のようなボルト締めを行うにして
も、その連結箇所は従来よりも非常に少なくてよいか
ら、従来のセグメント工法のように、多数の継手金具を
いちいちボルト締めする面倒がない。
【0027】そして、上記移動した複数の存置型枠4
を、適宜な支持手段を介して掘削穴1と同心位置に配置
し、またシールドテール部5に設置した存置型枠4と、
スキンプレート3aとの間に、複数の打設管18を存置
型枠4の円周方向に沿って所定間隔に位置付ける。
【0028】前記打設管18は分配弁(図示略)を介し
て、コンクリートポンプ等の圧送ポンプ(図示略)に連
通しており、該ポンプを駆動して覆工材19を各打設管
18に順次圧送する。この場合の打設圧は、シールドテ
ール部5における土圧に水圧を相加した圧力以上に設定
されている。
【0029】こうして覆工材19が各打設管18に圧送
され、これが打設口18aから噴出して、掘削穴1の内
壁と存置型枠4の外周との間を充填していく。したがっ
て、存置型枠4は上記覆工材19を打ち込むための型枠
の役割を果たす。この場合、打設管18は掘進機の掘削
に伴なう軸方向移動に同動して図1上左方へ移動し、か
つ打設口18aを事前に打設した硬化途中の覆工材19
に没入させて覆工材19を打設する。
【0030】覆工材19は、その打設圧力によって地山
2の内壁と存置型枠4の外周に高密度に密着かつ充填
し、これが硬化するまで前記圧力下に置かれる。この場
合、覆工材19への打設圧力は種々の方向に作用し、そ
の一部は図2の矢視のように存置型枠4に作用して、該
型枠4にその円周方向に作用する軸圧縮力を生成させ
る。
【0031】そして、覆工材19が硬化すると前記加圧
状態が停止され、覆工材19が前記圧力下から解放され
る一方、存置型枠4は覆工材19が硬化するまでの間
に、前記軸圧縮力を十分かつ一様に形成され、硬化後に
おいても当該状態を維持して、一種のプレストレスを形
成し後述のように外力に対抗する。
【0032】しかも、覆工材19が存置型枠4の外周に
高密度に密着して、それらの間における歪みの発生の余
地をなくし、または抑止するから、存置型枠4やそれら
の連結部分に曲げモーメントや、それに伴う曲げ応力の
発生を阻止する。それゆえに、存置型枠4の強度と剛性
を低減でき、前述のように存置型枠4の薄厚化と補強用
の鉄筋量の節減、および継手強度の低減とその簡易な連
結法が可能になり、存置型枠4ないし存置型枠ピース6
には、その運搬や組み立てに要する程度の強度と剛性が
あれば足りる。
【0033】これに対し、従来のセグメント工法では、
テールボイドの裏込め注入を要するうえに、該注入を完
全に行うことは技術的に不可能で、当該部の空隙の発生
を避けられず、この空隙に土圧や水圧等の外力が作用し
て歪みが発生し、セグメントに曲げモーメントや曲げ応
力が作用するため、これらに対抗し得る強度と剛性をセ
グメントに要する結果、多量の補強用の鉄筋と強固な継
手金物を要していたのであって、本発明はこの不合理を
解決したものである。
【0034】また、従来の直打ちライニング工法では、
施工条件によって覆工体に曲げモーメントが発生するた
め、鉄筋の補強を要する場合があるが、本発明は覆工材
19の固化後の覆工体を存置型枠4で支持し補強してい
るから、覆工材19を鉄筋で補強する必要がなく、この
鉄筋の補強による施工スピードの遅延を免れる。
【0035】こうして、覆工材19が固化すると、これ
が存置型枠4と一体になって、該枠4とともに内外二重
の覆工体を形成し、トンネルを支持する。すなわち、存
置型枠4は覆工材19の打設用型枠として機能後、その
まま覆工体の一部として用いているから、従来の直打ち
ライニング工法のように、これを解体し移動する面倒が
なく、この種の工事を合理的に行える。
【0036】このようにして築造したトンネルは、覆工
材19固化後の覆工体と、存置型枠4とが内外二重の覆
工体を形成し、このうち覆工材19による覆工体が地山
2と存置型枠4との間に高密度に密着して地山2を支持
し、土圧や水圧による沈下を防止するとともに、該覆工
体を存置型枠4が支持し補強する。また存置型枠4は、
その円周方向に作用する軸圧縮力を保有していて、これ
が土圧や水圧等の外力による曲げモーメントや曲げ応力
に対抗するから、それらが低減しトンネル強度が増強す
る。
【0037】
【発明の効果】本発明のトンネルの覆工構造は以上のよ
うに、覆工材の加圧下で円周方向に作用する軸圧縮力を
内部に形成した型枠を備えたから、該枠が土圧や水圧等
の外力による曲げモーメントや曲げ応力に対抗して、そ
れらを低減し、型枠に要求される強度と剛性とを緩和す
ることができる。したがって、例えば型枠補強用の鉄筋
量を節減し、また高価な継手金物の使用を排する等し
て、型枠の小形軽量化とコスト低減を図ることができ
る。しかも、型枠の外周面全面を前記覆工体に密着固定
し、型枠と覆工体とで内外二重の覆工体を形成して、外
力による型枠と覆工体との間における歪の発生を防止
し、型枠に対する曲げモーメントや曲げ応力の発生を阻
止して、トンネル強度を増強することができる。また、
本発明のトンネルの覆工構造は、掘削穴の内側に複数の
型枠ピースを筒状またはアーチ状に組み付けた型枠を軸
方向に配置し、該型枠と掘削穴との間に所定圧の覆工材
を填充したから、従来のセグメント工法における裏込め
注入を排し、また注入不全による強度低下や地山の沈下
を阻止し、この種工法の合理化と工期の短縮化を図れる
とともに、トンネル強度を増強することができる。更
に、本発明のトンネルの覆工構造は、型枠の強度と剛性
を、該型枠の運搬と組み立てに耐えられる程度にしたか
ら、例えば補強用の鉄筋量の節減と、高価な継手金物の
使用廃止を促して、型枠のコスト低減と小形軽量化を図
ることができる。本発明のトンネルの覆工構造は、円周
方向に配置した型枠ピースの平坦な端面同士を突き合わ
せて組付けたから、このための継手金物とその煩雑な連
結作業を不要にし、型枠のコスト低減と作業の合理化並
びに工期の短縮化を図ることができる。本発明のトンネ
ルの覆工構造は、覆工材の厚さと型枠の厚さとの相加厚
を、直打ちライニング工法における覆工厚と略同厚にし
たから、それら個々の厚さの薄厚化とそれらの小形軽量
化を図ることができる。本発明のトンネルの築造方法は
以上のように、覆工材に硬化時まで所定の圧力を加える
とともに、その間前記圧力を前記型枠周面に加えたか
ら、該型枠の内部に円周方向に作用する軸圧縮力を十分
かつ均一に形成することができる。したがって、型枠に
プレストレスが付与され、これが外力による曲げモーメ
ントや曲げ応力に対抗して、それらを低減し、型枠の強
度と剛性の緩和を図れるとともに、型枠のコスト低減を
図ることができる。しかも、型枠の外周面全面を前記覆
工体に密着固定し、前記型枠と覆工体とで内外二重の覆
工体を形成したから、トンネル強度を増強できるととも
に、従来の直打ちライニング工法のように覆工材の硬化
後、型枠を解体する手間をなくし、その分工費の低減と
工期の短縮化を図ることができる効果がある。また、本
発明のトンネルの築造方法は、掘削穴の内側に複数の型
枠ピースを筒状またはアーチ状に組み付けた型枠を軸方
向に配置し、該型枠と掘削穴との間に所定圧の覆工材を
填充し、従来のセグメント工法における裏込め注入を排
し、この種工法の合理化を図ることができる。更に、本
発明のトンネルの築造方法は、円周方向に配置する型枠
ピースの端面同士を突き合わせて接合したから、このた
めの継手金物とその煩雑な連結作業を不要にし、型枠の
コスト低減と作業の合理化並びに工期の短縮を図ること
ができる。本発明のトンネルの築造方法は、覆工材の厚
さと型枠の厚さとの相加厚を、直打ちライニング工法に
おける覆工厚と略同厚にしたから、覆工材の厚さを薄厚
にして、その打設量と打設時間を低減し、その分工費と
工期の短縮を図ることができる。本発明のトンネルの築
造方法は、シールドテール部の円周方向の複数位置か
ら、掘削穴と型枠との間に向けて所定圧の覆工材を打設
したから、覆工材を均一かつ高密度に充填し、良質な覆
工体を形成することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図で、覆工材の打
設後の状況を示している。
【図2】図1のAーA線に沿う断面である。
【図3】本発明に適用した型枠の連結手段を示す断面図
で、同図(a)はピン継手を示し、同図(b)はホゾ継
手を示し、同図(c)はナックル継手を示し、同図
(d)はボルトナットによる連結状況を示している。
【符号の説明】
1 掘削穴 4 型枠(存置型枠) 5 シールテール部 6 型枠ピース(存置型枠ピース) 7,8 ピン孔 9,14 ピン 10 凹部 11 凸部 12 凹状湾曲面 13 凸状湾曲面 18 打設手段(打設管) 19 覆工材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−20658(JP,A) 特開 昭59−173497(JP,A) 特開 昭50−14128(JP,A) 実開 平2−89097(JP,U)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 掘削穴の内側に筒状またはアーチ状の
    枠を配置し、この掘削穴の内壁と型枠との間に覆工材を
    所定圧で直打ちして、掘削穴と型枠との間に覆工体を形
    成したトンネルの覆工構造において、覆工材の加圧下で
    円周方向に作用する軸圧縮力を前記型枠内部に形成し、
    該型枠の外周面全面を前記覆工体に密着固定したトンネ
    ルの覆工構造。
  2. 【請求項2】 掘削穴の内側に複数の型枠ピースを筒状
    またはアーチ状に組み付けた型枠を軸方向に配置し、
    型枠と掘削穴との間に所定圧の覆工材を填充した請求項
    1記載のトンネルの覆工構造。
  3. 【請求項3】 型枠の強度と剛性を、該型枠の運搬と組
    み立てに耐えられる程度にした請求項1または請求項2
    記載のトンネルの覆工構造。
  4. 【請求項4】 円周方向に配置した型枠ピースの平坦な
    端面同士を突き合わせて組付けた請求項2記載のトンネ
    ルの覆工構造。
  5. 【請求項5】 覆工材の厚さと型枠の厚さとの相加厚
    を、直打ちライニング工法における覆工厚と略同厚にし
    請求項1記載のトンネルの覆工構造。
  6. 【請求項6】 掘削穴の内側に型枠を配置し、この掘削
    穴の内壁と型枠との間に覆工材を所定圧で直打ちして、
    掘削穴と型枠との間に覆工体を形成するトンネルの築造
    方法において、前記覆工材に硬化時まで所定の圧力を加
    えることによって、前記型枠の内部に円周方向に作用す
    る軸圧縮力内部に形成され、かつ前記型枠の外周面全
    前記覆工体に密着固定され、前記型枠と覆工体とで
    内外二重の覆工体を形成するトンネルの築造方法。
  7. 【請求項7】 掘削穴の内側に複数の型枠ピースを筒状
    またはアーチ状に組み付けた型枠を軸方向に配置し、該
    型枠と掘削穴との間に所定圧の覆工材を填充する請求項
    6記載のトンネルの築造方法。
  8. 【請求項8】 円周方向に配置する型枠ピースの端面同
    士を突き合わせて組付けた請求項7記載のトンネルの築
    造方法。
  9. 【請求項9】 覆工材の厚さと型枠の厚さとの相加厚
    を、直打ちランイング工法における覆工厚と略同厚にし
    請求項6記載のトンネルの築造方法。
  10. 【請求項10】 シールドテール部の円周方向の複数位
    置から、掘削穴と型枠との間に向けて所定圧の覆工材を
    打設する請求項6または請求項7記載のトンネルの築造
    方法。
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