JP2592491B2 - トルクセンサ用被測定軸の熱処理方法 - Google Patents
トルクセンサ用被測定軸の熱処理方法Info
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Description
(産業上の利用分野) 本発明は、被測定軸に加えられるトルクを検出するの
に利用される磁歪方式のトルクセンサに関し、さらに詳
しくはトルクセンサによってトルクが測定される被測定
軸に適した熱処理を施すことによって、当該トルクセン
サの感度を高めかつまたヒステリシスを小さなものにす
るのに利用されるトルクセンサ用被測定軸の熱処理方法
に関するものである。 (従来の技術) 従来より、この種の磁歪方式のトルクセンサとして
は、例えば、第5図に示す構造のものがある。 第5図に示す磁歪方式のトルクセンサ21は、磁気ひず
み効果を持つ磁性体からなる被測定軸22の外周部に、当
該被測定軸22との間に間隙23をおいて、例えば、パーマ
ロイ等の高透磁率材料より形成されたヨーク24を配設
し、このヨーク24には、前記被測定軸22を磁路の一部と
する磁気回路を形成する励磁手段としての励磁コイル25
と、前記被測定軸22を通る磁歪成分を検出する検出手段
としての検出コイル26とを設けた構造をなすものであ
る。 このような構造を持つ磁歪方式のトルクセンサ21は、
励磁コイル25に通電することにより、当該励磁コイル25
から発せられた磁束が、被測定軸22→間隙23→ヨーク24
→間隙23→被測定軸22を通ることによって、磁気回路が
形成され、このとき、検出コイル26には、誘導起電力が
生じる。 前記誘導起電力が生じる状態において、被測定軸22に
ねじりトルクが加わると、この被測定軸22の磁気ひずみ
効果によって、当該被測定軸22自体の透磁率が変化する
ため、前記磁気回路を通る磁束密度に変化が生じ、自己
誘導により検出コイル26に発生する誘導起電力が変化し
て、この誘導起電力の変化を検出することによって、例
えば第6図に示すようなトルク−出力特性が得られ、前
記被測定軸22に加えられたねじりトルクを検出すること
ができる。 (発明が解決しようとする課題) しかしながら、第5図に示すような構造の磁歪方式の
トルクセンサ21において、被測定軸22として通常の機械
構造用鋼(JIS SC,SCr,SCM,SNCMなど)から製作されて
いるものを用いた場合には、磁気ひずみ効果の検出量が
小さく、第6図に示す出力特性図において感度を示す角
度θが小さいことから、十分な検出感度を得ることがで
きないとともに、同じく第6図に示す出力特性図におい
てヒステリシスを示す幅hが大きくなり、正確なトルク
の検出が行い難いという課題を有していた。 (発明の目的) 本発明は、上述した従来の課題に着目してなされたも
ので、十分な検出感度を得ることができるとともに、ヒ
ステリシスが小さく、静止軸や回転軸などの被測定軸に
加えられているトルクの検出を正確に行うことができる
トルクセンサを提供すべく前記被測定軸に対して好適な
熱処理方法を提供することを目的としている。
に利用される磁歪方式のトルクセンサに関し、さらに詳
しくはトルクセンサによってトルクが測定される被測定
軸に適した熱処理を施すことによって、当該トルクセン
サの感度を高めかつまたヒステリシスを小さなものにす
るのに利用されるトルクセンサ用被測定軸の熱処理方法
に関するものである。 (従来の技術) 従来より、この種の磁歪方式のトルクセンサとして
は、例えば、第5図に示す構造のものがある。 第5図に示す磁歪方式のトルクセンサ21は、磁気ひず
み効果を持つ磁性体からなる被測定軸22の外周部に、当
該被測定軸22との間に間隙23をおいて、例えば、パーマ
ロイ等の高透磁率材料より形成されたヨーク24を配設
し、このヨーク24には、前記被測定軸22を磁路の一部と
する磁気回路を形成する励磁手段としての励磁コイル25
と、前記被測定軸22を通る磁歪成分を検出する検出手段
としての検出コイル26とを設けた構造をなすものであ
る。 このような構造を持つ磁歪方式のトルクセンサ21は、
励磁コイル25に通電することにより、当該励磁コイル25
から発せられた磁束が、被測定軸22→間隙23→ヨーク24
→間隙23→被測定軸22を通ることによって、磁気回路が
形成され、このとき、検出コイル26には、誘導起電力が
生じる。 前記誘導起電力が生じる状態において、被測定軸22に
ねじりトルクが加わると、この被測定軸22の磁気ひずみ
効果によって、当該被測定軸22自体の透磁率が変化する
ため、前記磁気回路を通る磁束密度に変化が生じ、自己
誘導により検出コイル26に発生する誘導起電力が変化し
て、この誘導起電力の変化を検出することによって、例
えば第6図に示すようなトルク−出力特性が得られ、前
記被測定軸22に加えられたねじりトルクを検出すること
ができる。 (発明が解決しようとする課題) しかしながら、第5図に示すような構造の磁歪方式の
トルクセンサ21において、被測定軸22として通常の機械
構造用鋼(JIS SC,SCr,SCM,SNCMなど)から製作されて
いるものを用いた場合には、磁気ひずみ効果の検出量が
小さく、第6図に示す出力特性図において感度を示す角
度θが小さいことから、十分な検出感度を得ることがで
きないとともに、同じく第6図に示す出力特性図におい
てヒステリシスを示す幅hが大きくなり、正確なトルク
の検出が行い難いという課題を有していた。 (発明の目的) 本発明は、上述した従来の課題に着目してなされたも
ので、十分な検出感度を得ることができるとともに、ヒ
ステリシスが小さく、静止軸や回転軸などの被測定軸に
加えられているトルクの検出を正確に行うことができる
トルクセンサを提供すべく前記被測定軸に対して好適な
熱処理方法を提供することを目的としている。
(課題を解決するための手段) 本発明は、被測定軸と、前記被測定軸を磁路の一部と
する磁気回路を形成する励磁手段と、前記被測定軸を通
る磁歪成分を検出する検出手段を備えたトルクセンサに
おいて、前記被測定軸の少なくとも一部、とくに前記磁
路を形成する部分、もしくは全体が、重量%で、Alを1
1.0〜15.0%含み、必要に応じて、B,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,
Cu,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hf,Be,Sc,Y,希土
類元素のうちから選ばれる1種または2種以上の元素を
合計で0.01〜5.0%含み、同じく必要に応じて、Cを0.0
1〜0.50%と、Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hfのうちから選
ばれる1種または2種以上の元素を合計で0.01〜5.0%
とを含み(ただし、前記B〜希土類元素と前記Cr〜Hfと
の合計が5.0%以下であることが望ましい。)、残部が
実質的にFeからなるFe−Al系合金を素材としており、前
記被測定軸に対して、500℃以上の温度から500℃/hr以
上の冷却速度で冷却する熱処理を施すようにしたことを
上述した従来の課題を解決するための手段としたことを
特徴としている。 本発明が適用されるトルクセンサは、上記のように、
被測定軸と、前記被測定軸を磁路の一部とする磁気回路
を構成する励磁手段と、前記被測定軸に発生する磁歪成
分を検出する検出手段を備えた構造をなすものとするこ
とができ、この場合、例えば、前記励磁手段と検出手段
は、それぞれ別個のコイルすなわち励磁コイルと検出コ
イルとから構成させたものとすることができ、あるいは
共通のコイルから形成して当該コイルの透磁率変化によ
るインダクタンス変化を検出するようにした構成のもの
にも適用することができる。さらに、被測定軸には、そ
の軸心方向に対して所定の角度をなす凹凸状部を形成し
て、形状的な磁気異方性を付与するようにしたものとす
ることもできるが、このような構造のものに限定される
ことなくその他種々の構造のものにも適用することが可
能である。 本発明が適用される磁歪方式のトルクセンサでは、被
測定軸として、少なくともその一部、とくに磁路を形成
する部分、もしくは被測定軸の全体が、上述した特定成
分を有するFe−Al系合金を素材としたものを用いてお
り、以下にその成分組成(重量%)ならびに熱処理条件
の限定理由について説明する。 Al:11.0〜15.0% Alは、被測定軸の磁歪効果を高めて、磁歪成分の検出
感度を高める作用をするとともに、ヒステリシスを小さ
くする作用を有している特徴をもつものである。 ところが、Al量が多すぎると、靭性が低下し、動力伝
達軸それ自体を被測定軸として用いる場合には強度的な
不安があり、また鍛造や切削などの加工が困難となるな
どの問題点が生じ、さらに磁歪成分の検出感度が低くな
り、ヒステリシスも大きくなる。また逆にAl量が少なす
ぎる場合にも、磁歪成分の検出感度が低くなり、さらに
ヒステリシスが大きくなる問題点を生ずるので、11.0〜
15.0%の範囲とした。 B,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,Cu,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,
Zr,Hf,Be,Sc,Y,希土類元素のうちから選ばれる1種また
は2種以上の元素の合計:0.01〜5.0% これらの元素は溶製時の脱酸,脱硫剤として作用した
り、またFe−Al系合金に固溶して強度を高めたり、析出
硬化により強度を向上させたり、結晶粒の微細化を促進
させたり、靭性を向上させたり、CやWやCrなどの拡散
移動を抑制させたり、可鍛性能を向上させたり、するな
どに有効な元素であるが、多すぎると加工性を低下させ
たり、靭性を低下させたり、磁歪成分の検出感度が低く
なりヒステリシスを増加させたり、するなどの問題点を
有しているので、これらの1種または2種以上の元素を
合計で0.01〜5.0%以下とした。 C:0.01〜0.50%と、Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hfのうちか
ら選ばれる1種または2種以上の元素の合計:0.01〜5.0
% CおよびCr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hfは炭化物を形成し
て基地中に分散することにより、被測定軸、例えばドラ
イブシャフトやコラムシャフトなどの動力伝達系その他
の軸構造体として要求される強度を確保するために有効
な元素であり、必要に応じてFe−Al系合金中に含有させ
ることが望ましい。しかし、多すぎると加工性に悪影響
を及ぼしたりするので、Cは0.01〜0.50%、Cr,Mo,W,V,
Nb,Ta,Ti,Zr,Hfのうちから選ばれる1種または2種以上
の合計は0.01〜5.0%の範囲とするのがよい。 本発明が適用されるトルクセンサに用いる被測定軸
は、少なくともその一部分、とくに磁路を形成する部
分、もしくは体が上記の組成を有するFe−Al系合金を素
材としているものであるが、出力感度を向上させたり、
ヒステリシスをさらに小さくしたり、さらには個々の被
測定軸ごとの出力感度やヒステリシスのばらつきを少な
くしたりするために、500℃以上の温度から500℃/hr以
上の冷却速度で冷却する熱処理を施しておく必要があ
る。そして、冷却速度が十分にコントロールできない場
合には、一度油冷等の急冷処理を施した後に、さらに適
当な温度に再加熱して、特性のばらつきを少なくするこ
とも可能である。 (実施例) 第1図は本発明の実施例に用いたトルクセンサを示し
ている。 図に示すトルクセンサ1は、その全体が後出の第1表
に示す組成のFe−Al系合金からなる被測定軸2を用いて
おり、この被測定軸2の表面には、当該被測定軸2の軸
心方向に対し所定の角度をなす凹状部3a,3bと凸状部4a,
4bとが適宜なる間隔をもって当該被測定軸2と一体に形
成してあり、これら凹状部3a,3bおよび凸状部4a,4bによ
って形状磁気異方性を持つようにしてある。 この場合、前記一方の凹状部3aおよび凸状部4aと、他
方の凹状部3bおよび凸状部4bとは、軸心方向に対し同じ
傾斜角度(例えば、この実施例では45゜)でかつ互いに
反対方向に傾斜した状態で一対をなすものとして設けて
ある。 また、このトルクセンサ1は、前記被測定軸2のほか
に、当該被測定軸2に形成した一方の凹状部3aおよび凸
状部4aと、他方の凹状部3bおよび凸状部4bに対向して配
置させた一対のコイル5a,5bを有しており、前記コイル5
a,5bの外側に、かつ被測定軸2との間で間隙6をおい
て、高透磁率材料よりなる円筒状のヨーク7を設けた構
造をなすものである。この場合、コイル5a,5bは、被測
定軸2を磁路の一部とする磁気回路を形成する励磁手段
と、前記被測定軸2を通る磁歪成分を検出する検出手段
とに共通して使用されるものとなっている。 このような構造のトルクセンサ1において、コイル5
a,5bは、第2図に例示するように、抵抗器11,12と組合
わされてブリッジ回路を構成し、このブリッジ回路にバ
ランス用の可変抵抗器13を設けると共に、ブリッジ回路
の接続点A,C間には励磁用発振器14を接続して励磁方向
を同一方向に合わせ、接続点B,B′間には差動増幅器15
を接続して、出力端子16,17より検出出力を取り出すこ
とができるようにしてある。 次に、前記第1図に示したトルクセンサ1を第2図に
示した電気回路に接続した場合の動作について説明す
る。 まず、作動に際しては、励磁用発振器14より、コイル
5a,5bに一定振幅(V)および周波数(f)の交流を通
電する。この通電によって、被測定軸2→間隙6→ヨー
ク7→間隙6→被測定軸2を磁路とする磁力線が、コイ
ル5a,5bを取り囲むように発生する。 ところで、通電する交流の周波数(f)を高くする
と、被測定軸2にはうず電流が増加する。そして、うず
電流の分布は被測定軸2の中心に近いほど強く、表面で
は零となる。そのため、表面での磁化は外部磁場の変化
に追従できても、内側になると磁化の変化は妨げられる
ようになる。 したがって、前記の磁力線は被測定軸2の表面部分を
流れ、被測定軸2には凹状部3a,3bが、当該被測定軸2
の軸心方向と所定の角度をなすように形成してあるた
め、これが磁気抵抗となり、凸状部4a,4bを主体に流れ
ることになる。それゆえ、前記凹状部3a,3bおよび凸状
部4a,4bによる形状磁気異方性の効果が現われる。 上記凹状部3a,3bおよび凸状部4a,4bの軸心方向に対す
る角度は、一方の凹状部3aおよび凸状部4aと他方の凹状
部3bおよび凸状部4bとが互いに逆方向でかつ等しい角度
を有するものとしているが、前記角度が最も望ましいの
は、被測定軸2にトルクが印加された場合の主応力方
向、すなわち、右45゜方向および左45゜方向をなすよう
にすることである。この理由は、前記磁力線は主応力方
向を主体に流れ、かつ凸状部4a,4bは被測定軸2の最表
面部であるから最もひずみが大きいところであり、この
ひずみによる磁性体の透磁率変化を最も効果的にひき出
すことができるためである。 そして、被測定軸2に対して第1図に示すT方向にト
ルクが印加されると、一方の凸状部4aは右45゜方向に形
成されているため、最大引張応力+σが作用し、反対
に、他方の凸状部4bは左45゜方向に形成されているた
め、最大圧縮応力−σが作用する。 ここで、被測定軸2正の磁気ひずみ効果を有していれ
ば、一方の凸状部4aの透磁率はトルク零のときに比べて
増大し、逆に、他方の凸状部4bの透磁率はトルク零のと
きに比べて減少する。 したがって、一方のコイル5aのインダクタンスは増大
し、他方のコイル5bのインダクタンスは減少するので、
第2図に示したブリッジ回路のバランスがくずれ、出力
端子16,17間にトルクに対応した出力が生じる。 また、トルクが逆方向に印加された場合には、前述し
たのと逆の作用により、一方のコイル5aのインダクタン
スは減少し、他方のコイル5bのインダクタンスは増大す
るので、第2図に示したブリッジ回路のバランスがくず
れ、出力端子16,17間にトルクに対応した出力が生じ
る。 これをさらに具体的に説明すれば、コイル5a,5bのイ
ンダクタンスをそれぞれL1,L2とし、抵抗11,12の抵抗値
をRとし、励磁用発振器14の電圧をV,周波数をfとした
ときに、ブリッジ回路A−B−Cを流れる電流をi1、回
路A−B′−Cを流れる電流をi2とすると、 となり、 B点の電位V1は、V1=i1・R B′点の電位V2は、V2=i2・R となる。 そこで、B−B′の電位差は|V1−V2|すなわち、 で表わされ、これを差動増幅器15で求めることによりト
ルクの検出を行う。 この実施例におけるトルクセンサ1では、凹状部3a,3
bおよび凸状部4a,4bをその傾きが反対である一対のもの
とし、それぞれにコイル5a,5bを対向させて、前記凹状
部3a,3bおよび凸状部4a,4bにおける磁性変化の差をブリ
ッジ回路により検出するようにしているので、被測定軸
2の透磁率が温度によって変化したとしても、出力の零
点は動かないものとすることができ、トルクの検出精度
の高いものとすることが可能である。 この実施例において、被測定軸2は第1表に示す化学
成分を有するFe−Al系合金を素材としている。そして、
50KgのFe−Al系合金をそれぞれ真空誘導炉中で溶製した
のち、鍛造し、被測定軸2となる形状に機械加工を施し
たあと、同じく第1表に示す条件で熱処理を施して被測
定軸2を作製した。 上記被測定軸2は、直径が20mmの軸の表面部分に、軸
心方向に対し所定の角度(この実施例では45゜)を有す
る幅2mm,段差1mmの凹状部3a,3bおよび凸状部4a,4bが一
体に形成してある構造をなすものである。 次に、上記被測定軸2を用いたトルクセンサ1におい
て、第2図に示す電気回路図の励磁発振器14より、コイ
ル5a,5bに対して周波数30KHz、電流30mAの交流を供給す
ることによって被測定軸2→間隙6→ヨーク7→間隙6
→被測定軸2を磁路とする磁気回路を形成させておき、
この状態で左右回転方向にそれぞれ1kgf・mのトルクを
印加した際の前記被測定軸2の透囲率変化をコイル5a,5
bにおいてインダクタンス変化として第2図に示した交
流ブリッジにより検出すると、このときの各トルクセン
サ1の出力は第3図のようになり、このときの出力感度
(第3図の角度θ)およびヒステリシス(第3図の幅
h)を調べた。これらの結果を同じく第1表に示す。ま
た、機械的特性として同じ材質、熱処理を施した材料に
おいて引張試験を行った際の引張強さの結果をあわせて
第1表に示す。 第1表に示す結果より明らかなように、Al量が11.0〜
15.0%の範囲にあり、実質的にFeとAlのみからなるFe−
Al系合金から構成された被測定軸2に対して500℃以上
の温度から500℃/hr以上の冷却速度で冷却した本発明例
No.1〜4の場合には、感度が1.5〜3.2V/Kgf・m,ヒステ
リシスが0〜7%となっていて、感度は良好であり、ヒ
ステリシスはややばらつきがあるものの比較的良好な値
となっている。 これに対し、Al量が11.0〜15.0%の範囲にあるもの
の、熱処理時の冷却速度が小さき比較例No.12の場合に
は、ヒステリシスが大きな値となっている。 一方、Al量が11.0%より少ない9.5%のAl量を含み、
実質的にFeとAlのみからなるFe−Al系合金から構成され
た被測定軸を用いた比較例No.14場合には、本発明の条
件を満足する熱処理を施しても、感度が1.0V/Kgf・mと
低く、ヒステリシスが14%と大きくなっている。 また、Al量が15.0%を超える16.5%のAl量を含む比較
例No.15の場合にも、本発明の条件を満足する熱処理を
施しても、感度が0.9V/Kgf・mと低く、ヒステリシスが
7%とやや高めになっている。 他方、B,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,Cu,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,N
b,Ta,Ti,Zr,Hf,Be,Sc,Yおよび希土類元素のうちから選
ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜5.0%含む被
測定軸2に対して500℃以上の温度から500℃/hr以上の
冷却速度で冷却した本発明例No.5,6,7、およびCを0.01
〜0.50%と、Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hfのうちから選ば
れる1種または2種以上を合計で0.01〜5.0%とを含む
被測定軸2に対して500℃以上の温度から500℃/hr以上
の冷却速度で冷却した本発明例No.8,9、さらには上記B
〜希土類元素の1種以上とCとを含む被測定軸2に対し
て500℃以上の温度から500℃/hr以上の冷却速度で冷却
した本発明No.10,11の場合には、感度が1.3〜2.7V/Kgf
・mと高く、ヒステリシスが2〜6%と比較的良好な値
となっている。 そして、上記B〜希土類元素の1種以上および/また
はCとCr〜Hfの1種以上とを適量添加したFe−Al系合金
を素材とする被測定軸2を用いた場合と、実質的にAlと
FeのみからなるFe−Al系合金を素材とする被測定軸2を
用いた場合とを比較すると、感度やヒステリシスに代表
される特性にさほど大きな差はなく、Fe−Al系合金に上
記元素を添加することによって、第1表に示すように強
度を高めうることが確かめられ、さらには靭性,加工性
等を向上させうることが確められた。 しかし、上記元素の添加量が適量を超える場合、例え
ば比較例No.16のように6.8%を含んでいる場合には、感
度が0.7V/Kgf・mと低く、ヒステリシスが18%とかなり
大きいものとなっていた。 さらに、熱処理温度が500℃よりも低い例えば比較例N
o.17のように400℃である場合には、感度が0.8V/Kgf・
mと低く、ヒステリシスはかなり大きいものとなってい
る。 次に、先の実施例の本発明例No.2,No.10の成分をもつ
被測定軸2を用いて、熱処理後の冷却速度を変化させて
トルクセンサの出力特性を調べた。これらのうち、実施
例No.2の場合には、1100℃×3時間加熱後700℃まで徐
冷し、700℃から種々の冷却速度で冷却した。また、実
施例No.10の場合には、1100℃×3時間加熱後、種々の
冷却速度で冷却した。そして、トルクセンサの出力特性
は、先の実施例と全く同様の条件で調査した。その結果
を第4図に示す。 第4図に示すように、H2中または真空中で100℃/hr,3
00℃/hrで冷却した場合には、いずれもヒステリシスが1
0%以上と大きくなっている。しかし、H2中または真空
中で500℃/hrで冷却した場合、H2中またはN2中で1000℃
/hr,5000℃/hrで急冷した場合、さらに真空中で油冷
(約100℃/sec=約3.6×105℃/hr)した場合には、ヒス
テリシスは10%以下と小さくなっている。そして、一般
には、トルクセンサのトルク検出精度としてはヒステリ
シスが10%以下であることが必要とされるので、本発明
におけるFe−Al系合金を用いた被測定軸2に対する熱処
理方法としては、500℃以上の温度から500℃/hr以上の
冷却速度で冷却することが必要であることが確かめられ
た。 なお、上記実施例では、コイル5a,5bが励磁手段用の
コイルと検出手段用のコイルとに共通使用されているト
ルクセンサ1を例にとって説明したが、そのほか、第5
図に例示したトルクセンサ21のように、被測定軸22の外
周部に、当該被測定軸22との間に間隙23をおいて、高透
磁率材料からなるヨーク24を配設し、このヨーク24に
は、励磁手段としての励磁コイル25と検出手段としての
検出コイル26とを設けた構造をなすものとすることもで
き、特に限定されない。
する磁気回路を形成する励磁手段と、前記被測定軸を通
る磁歪成分を検出する検出手段を備えたトルクセンサに
おいて、前記被測定軸の少なくとも一部、とくに前記磁
路を形成する部分、もしくは全体が、重量%で、Alを1
1.0〜15.0%含み、必要に応じて、B,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,
Cu,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hf,Be,Sc,Y,希土
類元素のうちから選ばれる1種または2種以上の元素を
合計で0.01〜5.0%含み、同じく必要に応じて、Cを0.0
1〜0.50%と、Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hfのうちから選
ばれる1種または2種以上の元素を合計で0.01〜5.0%
とを含み(ただし、前記B〜希土類元素と前記Cr〜Hfと
の合計が5.0%以下であることが望ましい。)、残部が
実質的にFeからなるFe−Al系合金を素材としており、前
記被測定軸に対して、500℃以上の温度から500℃/hr以
上の冷却速度で冷却する熱処理を施すようにしたことを
上述した従来の課題を解決するための手段としたことを
特徴としている。 本発明が適用されるトルクセンサは、上記のように、
被測定軸と、前記被測定軸を磁路の一部とする磁気回路
を構成する励磁手段と、前記被測定軸に発生する磁歪成
分を検出する検出手段を備えた構造をなすものとするこ
とができ、この場合、例えば、前記励磁手段と検出手段
は、それぞれ別個のコイルすなわち励磁コイルと検出コ
イルとから構成させたものとすることができ、あるいは
共通のコイルから形成して当該コイルの透磁率変化によ
るインダクタンス変化を検出するようにした構成のもの
にも適用することができる。さらに、被測定軸には、そ
の軸心方向に対して所定の角度をなす凹凸状部を形成し
て、形状的な磁気異方性を付与するようにしたものとす
ることもできるが、このような構造のものに限定される
ことなくその他種々の構造のものにも適用することが可
能である。 本発明が適用される磁歪方式のトルクセンサでは、被
測定軸として、少なくともその一部、とくに磁路を形成
する部分、もしくは被測定軸の全体が、上述した特定成
分を有するFe−Al系合金を素材としたものを用いてお
り、以下にその成分組成(重量%)ならびに熱処理条件
の限定理由について説明する。 Al:11.0〜15.0% Alは、被測定軸の磁歪効果を高めて、磁歪成分の検出
感度を高める作用をするとともに、ヒステリシスを小さ
くする作用を有している特徴をもつものである。 ところが、Al量が多すぎると、靭性が低下し、動力伝
達軸それ自体を被測定軸として用いる場合には強度的な
不安があり、また鍛造や切削などの加工が困難となるな
どの問題点が生じ、さらに磁歪成分の検出感度が低くな
り、ヒステリシスも大きくなる。また逆にAl量が少なす
ぎる場合にも、磁歪成分の検出感度が低くなり、さらに
ヒステリシスが大きくなる問題点を生ずるので、11.0〜
15.0%の範囲とした。 B,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,Cu,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,
Zr,Hf,Be,Sc,Y,希土類元素のうちから選ばれる1種また
は2種以上の元素の合計:0.01〜5.0% これらの元素は溶製時の脱酸,脱硫剤として作用した
り、またFe−Al系合金に固溶して強度を高めたり、析出
硬化により強度を向上させたり、結晶粒の微細化を促進
させたり、靭性を向上させたり、CやWやCrなどの拡散
移動を抑制させたり、可鍛性能を向上させたり、するな
どに有効な元素であるが、多すぎると加工性を低下させ
たり、靭性を低下させたり、磁歪成分の検出感度が低く
なりヒステリシスを増加させたり、するなどの問題点を
有しているので、これらの1種または2種以上の元素を
合計で0.01〜5.0%以下とした。 C:0.01〜0.50%と、Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hfのうちか
ら選ばれる1種または2種以上の元素の合計:0.01〜5.0
% CおよびCr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hfは炭化物を形成し
て基地中に分散することにより、被測定軸、例えばドラ
イブシャフトやコラムシャフトなどの動力伝達系その他
の軸構造体として要求される強度を確保するために有効
な元素であり、必要に応じてFe−Al系合金中に含有させ
ることが望ましい。しかし、多すぎると加工性に悪影響
を及ぼしたりするので、Cは0.01〜0.50%、Cr,Mo,W,V,
Nb,Ta,Ti,Zr,Hfのうちから選ばれる1種または2種以上
の合計は0.01〜5.0%の範囲とするのがよい。 本発明が適用されるトルクセンサに用いる被測定軸
は、少なくともその一部分、とくに磁路を形成する部
分、もしくは体が上記の組成を有するFe−Al系合金を素
材としているものであるが、出力感度を向上させたり、
ヒステリシスをさらに小さくしたり、さらには個々の被
測定軸ごとの出力感度やヒステリシスのばらつきを少な
くしたりするために、500℃以上の温度から500℃/hr以
上の冷却速度で冷却する熱処理を施しておく必要があ
る。そして、冷却速度が十分にコントロールできない場
合には、一度油冷等の急冷処理を施した後に、さらに適
当な温度に再加熱して、特性のばらつきを少なくするこ
とも可能である。 (実施例) 第1図は本発明の実施例に用いたトルクセンサを示し
ている。 図に示すトルクセンサ1は、その全体が後出の第1表
に示す組成のFe−Al系合金からなる被測定軸2を用いて
おり、この被測定軸2の表面には、当該被測定軸2の軸
心方向に対し所定の角度をなす凹状部3a,3bと凸状部4a,
4bとが適宜なる間隔をもって当該被測定軸2と一体に形
成してあり、これら凹状部3a,3bおよび凸状部4a,4bによ
って形状磁気異方性を持つようにしてある。 この場合、前記一方の凹状部3aおよび凸状部4aと、他
方の凹状部3bおよび凸状部4bとは、軸心方向に対し同じ
傾斜角度(例えば、この実施例では45゜)でかつ互いに
反対方向に傾斜した状態で一対をなすものとして設けて
ある。 また、このトルクセンサ1は、前記被測定軸2のほか
に、当該被測定軸2に形成した一方の凹状部3aおよび凸
状部4aと、他方の凹状部3bおよび凸状部4bに対向して配
置させた一対のコイル5a,5bを有しており、前記コイル5
a,5bの外側に、かつ被測定軸2との間で間隙6をおい
て、高透磁率材料よりなる円筒状のヨーク7を設けた構
造をなすものである。この場合、コイル5a,5bは、被測
定軸2を磁路の一部とする磁気回路を形成する励磁手段
と、前記被測定軸2を通る磁歪成分を検出する検出手段
とに共通して使用されるものとなっている。 このような構造のトルクセンサ1において、コイル5
a,5bは、第2図に例示するように、抵抗器11,12と組合
わされてブリッジ回路を構成し、このブリッジ回路にバ
ランス用の可変抵抗器13を設けると共に、ブリッジ回路
の接続点A,C間には励磁用発振器14を接続して励磁方向
を同一方向に合わせ、接続点B,B′間には差動増幅器15
を接続して、出力端子16,17より検出出力を取り出すこ
とができるようにしてある。 次に、前記第1図に示したトルクセンサ1を第2図に
示した電気回路に接続した場合の動作について説明す
る。 まず、作動に際しては、励磁用発振器14より、コイル
5a,5bに一定振幅(V)および周波数(f)の交流を通
電する。この通電によって、被測定軸2→間隙6→ヨー
ク7→間隙6→被測定軸2を磁路とする磁力線が、コイ
ル5a,5bを取り囲むように発生する。 ところで、通電する交流の周波数(f)を高くする
と、被測定軸2にはうず電流が増加する。そして、うず
電流の分布は被測定軸2の中心に近いほど強く、表面で
は零となる。そのため、表面での磁化は外部磁場の変化
に追従できても、内側になると磁化の変化は妨げられる
ようになる。 したがって、前記の磁力線は被測定軸2の表面部分を
流れ、被測定軸2には凹状部3a,3bが、当該被測定軸2
の軸心方向と所定の角度をなすように形成してあるた
め、これが磁気抵抗となり、凸状部4a,4bを主体に流れ
ることになる。それゆえ、前記凹状部3a,3bおよび凸状
部4a,4bによる形状磁気異方性の効果が現われる。 上記凹状部3a,3bおよび凸状部4a,4bの軸心方向に対す
る角度は、一方の凹状部3aおよび凸状部4aと他方の凹状
部3bおよび凸状部4bとが互いに逆方向でかつ等しい角度
を有するものとしているが、前記角度が最も望ましいの
は、被測定軸2にトルクが印加された場合の主応力方
向、すなわち、右45゜方向および左45゜方向をなすよう
にすることである。この理由は、前記磁力線は主応力方
向を主体に流れ、かつ凸状部4a,4bは被測定軸2の最表
面部であるから最もひずみが大きいところであり、この
ひずみによる磁性体の透磁率変化を最も効果的にひき出
すことができるためである。 そして、被測定軸2に対して第1図に示すT方向にト
ルクが印加されると、一方の凸状部4aは右45゜方向に形
成されているため、最大引張応力+σが作用し、反対
に、他方の凸状部4bは左45゜方向に形成されているた
め、最大圧縮応力−σが作用する。 ここで、被測定軸2正の磁気ひずみ効果を有していれ
ば、一方の凸状部4aの透磁率はトルク零のときに比べて
増大し、逆に、他方の凸状部4bの透磁率はトルク零のと
きに比べて減少する。 したがって、一方のコイル5aのインダクタンスは増大
し、他方のコイル5bのインダクタンスは減少するので、
第2図に示したブリッジ回路のバランスがくずれ、出力
端子16,17間にトルクに対応した出力が生じる。 また、トルクが逆方向に印加された場合には、前述し
たのと逆の作用により、一方のコイル5aのインダクタン
スは減少し、他方のコイル5bのインダクタンスは増大す
るので、第2図に示したブリッジ回路のバランスがくず
れ、出力端子16,17間にトルクに対応した出力が生じ
る。 これをさらに具体的に説明すれば、コイル5a,5bのイ
ンダクタンスをそれぞれL1,L2とし、抵抗11,12の抵抗値
をRとし、励磁用発振器14の電圧をV,周波数をfとした
ときに、ブリッジ回路A−B−Cを流れる電流をi1、回
路A−B′−Cを流れる電流をi2とすると、 となり、 B点の電位V1は、V1=i1・R B′点の電位V2は、V2=i2・R となる。 そこで、B−B′の電位差は|V1−V2|すなわち、 で表わされ、これを差動増幅器15で求めることによりト
ルクの検出を行う。 この実施例におけるトルクセンサ1では、凹状部3a,3
bおよび凸状部4a,4bをその傾きが反対である一対のもの
とし、それぞれにコイル5a,5bを対向させて、前記凹状
部3a,3bおよび凸状部4a,4bにおける磁性変化の差をブリ
ッジ回路により検出するようにしているので、被測定軸
2の透磁率が温度によって変化したとしても、出力の零
点は動かないものとすることができ、トルクの検出精度
の高いものとすることが可能である。 この実施例において、被測定軸2は第1表に示す化学
成分を有するFe−Al系合金を素材としている。そして、
50KgのFe−Al系合金をそれぞれ真空誘導炉中で溶製した
のち、鍛造し、被測定軸2となる形状に機械加工を施し
たあと、同じく第1表に示す条件で熱処理を施して被測
定軸2を作製した。 上記被測定軸2は、直径が20mmの軸の表面部分に、軸
心方向に対し所定の角度(この実施例では45゜)を有す
る幅2mm,段差1mmの凹状部3a,3bおよび凸状部4a,4bが一
体に形成してある構造をなすものである。 次に、上記被測定軸2を用いたトルクセンサ1におい
て、第2図に示す電気回路図の励磁発振器14より、コイ
ル5a,5bに対して周波数30KHz、電流30mAの交流を供給す
ることによって被測定軸2→間隙6→ヨーク7→間隙6
→被測定軸2を磁路とする磁気回路を形成させておき、
この状態で左右回転方向にそれぞれ1kgf・mのトルクを
印加した際の前記被測定軸2の透囲率変化をコイル5a,5
bにおいてインダクタンス変化として第2図に示した交
流ブリッジにより検出すると、このときの各トルクセン
サ1の出力は第3図のようになり、このときの出力感度
(第3図の角度θ)およびヒステリシス(第3図の幅
h)を調べた。これらの結果を同じく第1表に示す。ま
た、機械的特性として同じ材質、熱処理を施した材料に
おいて引張試験を行った際の引張強さの結果をあわせて
第1表に示す。 第1表に示す結果より明らかなように、Al量が11.0〜
15.0%の範囲にあり、実質的にFeとAlのみからなるFe−
Al系合金から構成された被測定軸2に対して500℃以上
の温度から500℃/hr以上の冷却速度で冷却した本発明例
No.1〜4の場合には、感度が1.5〜3.2V/Kgf・m,ヒステ
リシスが0〜7%となっていて、感度は良好であり、ヒ
ステリシスはややばらつきがあるものの比較的良好な値
となっている。 これに対し、Al量が11.0〜15.0%の範囲にあるもの
の、熱処理時の冷却速度が小さき比較例No.12の場合に
は、ヒステリシスが大きな値となっている。 一方、Al量が11.0%より少ない9.5%のAl量を含み、
実質的にFeとAlのみからなるFe−Al系合金から構成され
た被測定軸を用いた比較例No.14場合には、本発明の条
件を満足する熱処理を施しても、感度が1.0V/Kgf・mと
低く、ヒステリシスが14%と大きくなっている。 また、Al量が15.0%を超える16.5%のAl量を含む比較
例No.15の場合にも、本発明の条件を満足する熱処理を
施しても、感度が0.9V/Kgf・mと低く、ヒステリシスが
7%とやや高めになっている。 他方、B,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,Cu,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,N
b,Ta,Ti,Zr,Hf,Be,Sc,Yおよび希土類元素のうちから選
ばれる1種または2種以上を合計で0.01〜5.0%含む被
測定軸2に対して500℃以上の温度から500℃/hr以上の
冷却速度で冷却した本発明例No.5,6,7、およびCを0.01
〜0.50%と、Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hfのうちから選ば
れる1種または2種以上を合計で0.01〜5.0%とを含む
被測定軸2に対して500℃以上の温度から500℃/hr以上
の冷却速度で冷却した本発明例No.8,9、さらには上記B
〜希土類元素の1種以上とCとを含む被測定軸2に対し
て500℃以上の温度から500℃/hr以上の冷却速度で冷却
した本発明No.10,11の場合には、感度が1.3〜2.7V/Kgf
・mと高く、ヒステリシスが2〜6%と比較的良好な値
となっている。 そして、上記B〜希土類元素の1種以上および/また
はCとCr〜Hfの1種以上とを適量添加したFe−Al系合金
を素材とする被測定軸2を用いた場合と、実質的にAlと
FeのみからなるFe−Al系合金を素材とする被測定軸2を
用いた場合とを比較すると、感度やヒステリシスに代表
される特性にさほど大きな差はなく、Fe−Al系合金に上
記元素を添加することによって、第1表に示すように強
度を高めうることが確かめられ、さらには靭性,加工性
等を向上させうることが確められた。 しかし、上記元素の添加量が適量を超える場合、例え
ば比較例No.16のように6.8%を含んでいる場合には、感
度が0.7V/Kgf・mと低く、ヒステリシスが18%とかなり
大きいものとなっていた。 さらに、熱処理温度が500℃よりも低い例えば比較例N
o.17のように400℃である場合には、感度が0.8V/Kgf・
mと低く、ヒステリシスはかなり大きいものとなってい
る。 次に、先の実施例の本発明例No.2,No.10の成分をもつ
被測定軸2を用いて、熱処理後の冷却速度を変化させて
トルクセンサの出力特性を調べた。これらのうち、実施
例No.2の場合には、1100℃×3時間加熱後700℃まで徐
冷し、700℃から種々の冷却速度で冷却した。また、実
施例No.10の場合には、1100℃×3時間加熱後、種々の
冷却速度で冷却した。そして、トルクセンサの出力特性
は、先の実施例と全く同様の条件で調査した。その結果
を第4図に示す。 第4図に示すように、H2中または真空中で100℃/hr,3
00℃/hrで冷却した場合には、いずれもヒステリシスが1
0%以上と大きくなっている。しかし、H2中または真空
中で500℃/hrで冷却した場合、H2中またはN2中で1000℃
/hr,5000℃/hrで急冷した場合、さらに真空中で油冷
(約100℃/sec=約3.6×105℃/hr)した場合には、ヒス
テリシスは10%以下と小さくなっている。そして、一般
には、トルクセンサのトルク検出精度としてはヒステリ
シスが10%以下であることが必要とされるので、本発明
におけるFe−Al系合金を用いた被測定軸2に対する熱処
理方法としては、500℃以上の温度から500℃/hr以上の
冷却速度で冷却することが必要であることが確かめられ
た。 なお、上記実施例では、コイル5a,5bが励磁手段用の
コイルと検出手段用のコイルとに共通使用されているト
ルクセンサ1を例にとって説明したが、そのほか、第5
図に例示したトルクセンサ21のように、被測定軸22の外
周部に、当該被測定軸22との間に間隙23をおいて、高透
磁率材料からなるヨーク24を配設し、このヨーク24に
は、励磁手段としての励磁コイル25と検出手段としての
検出コイル26とを設けた構造をなすものとすることもで
き、特に限定されない。
以上説明してきたように、本発明は、被測定軸と、前
記被測定軸を磁路の一部とする磁気回路を形成する励磁
手段と、前記被測定軸を通る磁歪成分を検出する検出手
段を備えたトルクセンサにおいて、前記被測定軸の少な
くとも一部が、重量%で、Alを11.0〜15.0%含み、必要
に応じてB,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,Cu,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,N
b,Ta,Ti,Zr,Hf,Be,Sc,Y,希土類元素のうちから選ばれる
1種または2種以上の元素を合計で0.01〜5.0%含み、
同じく必要に応じて、Cを0.01〜0.50%と、Cr,Mo,W,V,
Nb,Ta,Ti,Zh,Hのうちから選ばれる1種または2種以上
の元素を合計で0.01〜5.0%とを含み、残部が実質的にF
eからなるFe−Al系合金を素材としており、前記被測定
軸に対して、500℃以上の温度から500℃/hr以上の冷却
速度で冷却する熱処理を施すようにしているので、被測
定軸の強度を十分に確保したうえ、当該トルクセンサの
出力感度を十分良好なものにすることが可能であるとと
もに、ヒステリシスを小さなものにすることが可能であ
り、トルクの検出を正確に実施することができるように
なる。 そして、特に動力伝達軸のような負荷の大きい回転軸
それ自体を被測定軸として使用し、当該回転軸に加えら
れるトルクを検出する場合において、回転軸の強度を十
分に確保したうえで、トルクセンサの検出感度を大きな
ものにすることができると同時に、ヒステリシスを小さ
なものにすることができ、トルクの検出をきわめて簡便
な構成にしてしかも正確に行うことができるという非常
に優れた効果がもたらされる。
記被測定軸を磁路の一部とする磁気回路を形成する励磁
手段と、前記被測定軸を通る磁歪成分を検出する検出手
段を備えたトルクセンサにおいて、前記被測定軸の少な
くとも一部が、重量%で、Alを11.0〜15.0%含み、必要
に応じてB,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,Cu,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,N
b,Ta,Ti,Zr,Hf,Be,Sc,Y,希土類元素のうちから選ばれる
1種または2種以上の元素を合計で0.01〜5.0%含み、
同じく必要に応じて、Cを0.01〜0.50%と、Cr,Mo,W,V,
Nb,Ta,Ti,Zh,Hのうちから選ばれる1種または2種以上
の元素を合計で0.01〜5.0%とを含み、残部が実質的にF
eからなるFe−Al系合金を素材としており、前記被測定
軸に対して、500℃以上の温度から500℃/hr以上の冷却
速度で冷却する熱処理を施すようにしているので、被測
定軸の強度を十分に確保したうえ、当該トルクセンサの
出力感度を十分良好なものにすることが可能であるとと
もに、ヒステリシスを小さなものにすることが可能であ
り、トルクの検出を正確に実施することができるように
なる。 そして、特に動力伝達軸のような負荷の大きい回転軸
それ自体を被測定軸として使用し、当該回転軸に加えら
れるトルクを検出する場合において、回転軸の強度を十
分に確保したうえで、トルクセンサの検出感度を大きな
ものにすることができると同時に、ヒステリシスを小さ
なものにすることができ、トルクの検出をきわめて簡便
な構成にしてしかも正確に行うことができるという非常
に優れた効果がもたらされる。
第1図は本発明が適用されるトルクセンサの構造例を示
す軸方向断面説明図、第2図は第1図のトルクセンサに
接続する電気回路の構成を例示する説明図、第3図は第
1図のトルクセンサの出力特性を示すグラフ、第4図は
1100℃×3時間加熱後に種々の冷却速度で冷却した場合
のヒステリシスへの影響を調査した結果を示すグラフ、
第5図(a)(b)はトルクセンサの他の構造例を示す
各々軸方向説明図および軸直角方向説明図、第6図は第
5図のトルクセンサの出力特性を示すグラフである。 1,21……トルクセンサ、2,22……被測定軸、5a,5b……
コイル(励磁手段および検出手段)、25……励磁コイル
(励磁手段)、26……検出コイル(検出手段)。
す軸方向断面説明図、第2図は第1図のトルクセンサに
接続する電気回路の構成を例示する説明図、第3図は第
1図のトルクセンサの出力特性を示すグラフ、第4図は
1100℃×3時間加熱後に種々の冷却速度で冷却した場合
のヒステリシスへの影響を調査した結果を示すグラフ、
第5図(a)(b)はトルクセンサの他の構造例を示す
各々軸方向説明図および軸直角方向説明図、第6図は第
5図のトルクセンサの出力特性を示すグラフである。 1,21……トルクセンサ、2,22……被測定軸、5a,5b……
コイル(励磁手段および検出手段)、25……励磁コイル
(励磁手段)、26……検出コイル(検出手段)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−167232(JP,A) 特開 昭63−81993(JP,A)
Claims (3)
- 【請求項1】被測定軸と、前記被測定軸を磁路の一部と
する磁気回路を形成する励磁手段と、前記被測定軸を通
る磁歪成分を検出する検出手段を備えたトルクセンサに
おいて、前記被測定軸の少なくとも一部が、重量%で、
Alを11.0〜15.0%含み、残部が実質的にFeからなるFe−
Al系合金を素材としており、前記被測定軸に対して、50
0℃以上の温度から500℃/hr以上の冷却速度で冷却する
熱処理を施すことを特徴とするトルクセンサ用被測定軸
の熱処理方法。 - 【請求項2】被測定軸と、前記被測定軸を磁路の一部と
する磁気回路を形成する励磁手段と、前記被測定軸を通
る磁歪成分を検出する検出手段を備えたトルクセンサに
おいて、前記被測定軸の少なくとも一部が、重量%で、
Alを11.0〜15.0%含み、さらに、B,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,C
u,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hf,Be,Sc,Y,希土類
元素のうちから選ばれる1種または2種以上の元素を合
計で0.01〜5.0%含み、残部が実質的にFeからなるFe−A
l系合金を素材としており、前記被測定軸に対して、500
℃以上の温度から500℃/hr以上の冷却速度で冷却する熱
処理を施すことを特徴とするトルクセンサ用被測定軸の
熱処理方法。 - 【請求項3】被測定軸と、前記被測定軸を磁路の一部と
する磁気回路を形成する励磁手段と、前記被測定軸を通
る磁歪成分を検出する検出手段を備えたトルクセンサに
おいて、前記被測定軸の少なくとも一部が、重量%で、
Alを11.0〜15.0%含み、さらに、Cを0.01〜0.50%と、
B,Si,Ge,Sn,Pb,P,Sb,Cu,Ni,Co,Mn,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,
Zr,Hf,Be,Sc,Y,希土類元素のうちから選ばれる1種また
は2種以上の元素を合計で0.01〜5.0%含み、残部が実
質的にFeからなるFe−Al系合金を素材としており、前記
被測定軸に対して、500℃以上の温度から500℃/hr以上
の冷却速度で冷却する熱処理を施すことを特徴とするト
ルクセンサ用被測定軸の熱処理方法。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP63074822A JP2592491B2 (ja) | 1988-03-30 | 1988-03-30 | トルクセンサ用被測定軸の熱処理方法 |
US07/319,351 US5107711A (en) | 1988-03-04 | 1989-03-06 | Torque sensor |
EP89103924A EP0338227B1 (en) | 1988-03-04 | 1989-03-06 | Magnetostrictive torque sensor |
DE68918978T DE68918978T2 (de) | 1988-03-04 | 1989-03-06 | Magnetostriktiver Drehmomentwandler. |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP63074822A JP2592491B2 (ja) | 1988-03-30 | 1988-03-30 | トルクセンサ用被測定軸の熱処理方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH01247530A JPH01247530A (ja) | 1989-10-03 |
JP2592491B2 true JP2592491B2 (ja) | 1997-03-19 |
Family
ID=13558390
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP63074822A Expired - Fee Related JP2592491B2 (ja) | 1988-03-04 | 1988-03-30 | トルクセンサ用被測定軸の熱処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2592491B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7263904B2 (en) | 2003-05-16 | 2007-09-04 | Ntn Corporation | Torque-detecting device |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2974553B2 (ja) * | 1993-08-23 | 1999-11-10 | 日産自動車株式会社 | 磁歪測定軸 |
JPH07316658A (ja) * | 1994-05-30 | 1995-12-05 | Unisia Jecs Corp | 磁歪シャフトの製造方法 |
CN108839751B (zh) * | 2018-05-23 | 2024-03-22 | 铂金橙智能科技(太仓)有限公司 | 同轴中置驱动电机系统及助力车 |
-
1988
- 1988-03-30 JP JP63074822A patent/JP2592491B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7263904B2 (en) | 2003-05-16 | 2007-09-04 | Ntn Corporation | Torque-detecting device |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH01247530A (ja) | 1989-10-03 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |