JP2590483B2 - 共重合ポリエステル - Google Patents

共重合ポリエステル

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、300℃以下の温度で溶融成形可能であり、
優れた耐熱性、耐加水分解性を有する成形品を与えるこ
とのできる新規な共重合ポリステルに関するものであ
る。
〔従来の技術〕
従来、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテ
レフタレートのごとき芳香族ポリエステルに高結晶性、
高軟化点を有し、機械的強度などの点で優れているため
繊維、フィルム、その他の成形物に広く使用されている
が、耐熱性の点では必ずしも十分とは言えない。
近年、技術の高度化に伴ない素材の高性能化への要求
が高まってきており、種々の新規性能を有するポリエス
テルが数多く開発され、市場に供されている。
なかでも溶融状態で光学的異方性を有するサーモトロ
ピック液晶ポリエステルが優れた性質を有する点で注目
されている。
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタ
レートなど工業的に広く使用されている従来のポリエス
テルとは大きく異なり、サーモトロピック液晶ポリエス
テルは、溶融状態でも分子鎖は折れ曲がりにくく棒状を
保っており、溶融時に分子のからみ合いが少なく、わず
かな剪断料力を受けるだけで一方向に配向すると言う特
異な流動挙動を示し、これをそのまま冷却しても分子が
配向したまま固化するので、優れた溶融成形性、機械的
性質および耐熱性を有している。
このサーモトロピック液晶ポリエステルとしては、US
P4,161,470に見られるようにp−ヒドロキシ安息香酸と
6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸とを基本構成成分とす
る全芳香族ポリエステルが知られている。この全芳香族
ポリエステルは優れた機械的性質、耐熱性を有している
が、原料の6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が高価でポ
リマーも高価であるため需要の拡大が妨げられている。
一方、USP3,778,410に見られるように、ポリエチレン
テレフタレートをp−アセトキシ安息香酸でアシドリシ
スしつつ重縮合させて得た共重合ポリエステルは、溶融
加工温度が約240〜260℃と低いので、ポリエチレンテレ
フタレートやポリブチレンテレフタレートなどの成形に
使用されている通常の射出成形機で成形が可能であり、
かつ比較的安価なサーモトロピック液晶ポリエステルと
して知られているが、熱変形温度が約65〜70℃であり、
耐熱性の点で満足出来るものではなく、また全芳香族ポ
リエステルに比べて耐加水分解性に劣るという欠点があ
る。
〔発明が解決しようとする問題点〕
本発明者らは、これらの問題を解決し溶融成形性、機
械的性質、耐熱性、耐加水分解性に優れ、且つ経済性に
すぐれたサーモトロピック液晶ポリエステルを得るべく
鋭意検討した結果、本発明に到達した。
(問題点を解決するための手段) すなわち本発明は、 下記構造単位(I)(II)及び(III)からなり、単
位(III)が単位[(I)+(II)+(III)]の5〜80
モル%であって、単位(I)が単位(II)と実質的に等
モルであって、p−クロルフェノール中0.5g/dlで45℃
で測定した対数粘度(1nηreL)/Cが0.3dl/g以上である
ことを特徴とする溶融成形可能な共重合ポリエステル。
(ただし、式中のnは1〜6の整数から選ばれた一種以
上である)。
である。
本発明の共重合ポリエステルにおいて上記構造単位
(I)は、例えば1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,
4′−ジカルボン酸、1,3−ビス(フェノキシ)プロパン
−4,4′−ジカルボン酸、1,4−ビス(フェノキシ)ブタ
ン−4,4′−ジカルボン酸、1,5−ビス(フェノキシ)ペ
ンタン−4,4′−ジカルボン酸、1,6−ビス(フェノキ
シ)ヘキサン−4,4′−ジカルボン酸などの構造単位を
意味する。
1,6−ビス(フェノキシ)ヘキサン−4,4′−ジカルボ
ン酸の製法についてはとくに制限はないが、例えば次の
ような方法で製造することが出来る。
p−ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp−ヒドロキ
シ安息香酸エチルと1,6−ヘキサンジクロライドもしく
は1,6−ヘキサンジブロマイドとを、ジメチルホルムア
ミドのごとき非プロトン性極性溶媒中で炭酸ソーダなど
のアルカリ存在下に反応させ、1,6−ビス(フェノキ
シ)ヘキサン−4,4′−ジカルボン酸メチルもしくは1,6
−ビス(フェノキシ)ヘキサン−4,4′−ジカルボン酸
エチルを生成した後、水酸化カリウムなどのアルカリで
加水分解し、さらに塩酸などで酸析して1,6−ビス(フ
ェノキシ)ヘキサン−4,4′−ジカルボン酸を製造す
る。
1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン
酸、1,3−ビス(フェノキシ)プロパン−4,4′−ジカル
ボン酸、1,4−ビス(フェノキシ)ブタン−4,4′−ジカ
ルボン酸、1,5−ビス(フェノキシ)ペンタン−4,4′−
ジカルボン酸についても1,6−ビス(フェノキシ)ヘキ
サン−4,4′−ジカルボン酸とほぼ同様の方法で製造す
ることが出来る。
本発明において、前記単位(I)は単一成分でもよい
が、n=2とn=6の2種からなりn=6の単位が5〜
95モル%であるもの、n=2とn=4の2種からなりn
=4の単位が5〜95モル%であるもの、n=4とn=6
の2種からなりn=4の単位が5〜95モル%であるも
の、が好ましい。
前記構造単位(II)はハイドロキノン単位を意味し、
構造単位(III)はp−ヒドロキシ安息香酸単位を意味
する。
本発明の共重合ポリエステルは300℃以下で溶融成形
可能であり、通常のエンジニアリングプラスチックの成
形に使用する射出成形機で優れた機械的性質、耐熱性、
耐加水分解性を有する成形品を容易に得ることが出来
る。
ここで例えば構造単位(III)が単位[(I)+(I
I)+(III)]に対して5モル%以下もしくは80モル%
以上の場合には、溶融成形性が悪く本発明の目的を達成
することが出来ない。
本発明の共重合ポリエステルの対数粘度(1nηreL)/
Cはp−クロルフェノール、ペンタフルオロフェノール
などを溶媒にして測定可能であり、0.3以上、好ましく
は0.5〜10.0である。対数粘度が0.5未満では得られた成
形品の強度が低く10.0よりも大きいと溶融成形が困難と
なる。
本発明における共重合ポリエステルは、ポリエチレン
テレフタレートのごとき通常の芳香族ポリエステルに比
べ耐熱性、耐加水分解性に優れているのみならず、USP
3,778,410に記載されるポリエチレンテレフタレートと
p−アセトキシ安息香酸とから生成される液晶性ポリエ
ステルに比べても耐熱性、耐加水分解性に優れており、
USP4,161,470に記載されるp−ヒドロキシ安息香酸と6
−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸とから生成される液晶性
全芳香族ポリエステルに比べ安価であり、かつ溶融成形
性に優れている。
本発明の共重合ポリエステルは、従来のポリエステル
の重縮合法に準じて製造でき、製法についてはとくに制
限がないが、代表的な製法としては例えば次の(イ)〜
(ロ)が挙げられる。
(イ)1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカル
ボン酸、1,6−ビス(フェノキシ)ヘキサン−4,4′−ジ
カルボン酸とp−アセトキシ安息香酸、ハイドロキノン
ジアセテートとから脱酢酸重縮合反応により製造する方
法。
(ロ)1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカル
ボン酸のジフェニルエステル化合物、1,4−ビス(フェ
ノキシ)ブタン−4,4′−ジカルボン酸のジフェニルエ
ステル化合物とp−ヒドロキシ安息香酸、ハイドロキノ
ンとから脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
とりわけ(イ)法が無触媒で重縮合反応が進行する点
で望ましい。しかし(ロ)法においては重縮合反応触媒
として酢酸第1スズ、テトラブチルチタネートなどの金
属化合物を使用することができる。
〔効果〕
本発明によって得られる共重合ポリエステルは優れた
機械的性質、耐熱性を有し、溶融成形性に優れ、かつ安
価に製造でき、従来のサーモトロピック液晶ポリエステ
ル、例えばUSP4,161,470やUSP3,778,410に比べて工業的
にすぐれている。
本発明の共重合ポリエステルは充填材、安定剤、ガラ
ス繊維、難燃剤および他の添加剤も含有できる。
〔実施例等〕
以下、実施例等によって本発明を具体的に説明する
が、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
各例における共重合ポリエステルの対数粘度(1nη
reL)/Cは以下の方法により求めた。
試料溶液:濃度0.5g/dlのp−クロルフェノール溶液 粘度計:p−クロルフェノールのみのフロータイム149秒
の(毛細管式改良ウベロード型)粘度計 測定温度:45℃±0.01℃ この測定により、試料溶液のフロータイムを測定し、
ηreLを求め、対数粘度〔1nηreL)/Cを算出した。
また、極限粘度は以下の方法により求めた。
試料溶液:濃度0.5g/dlのフェノール/テトラクロロエ
タン=60/40(重量比) 粘度計:フェノール/テトラクロロエタン=60/40(重
量比)のみのフロータイム40秒の(毛細管式改良ウベロ
ード型)粘度計 測定温度:25℃±0.01℃ この測定により、試料溶液のフロータイムを測定し、
ηsp/Cを求め、濃度ゼロに外挿し、極限粘度〔η〕を求
めた。
また、熱分析についてはセイコー電子製TG/DTA200を
使用し、試料2〜20mgを乾燥空気300ml/min中、10℃/mi
nの昇温速度で測定したものである。Td(℃)は試料の
熱分解開始温度を表わす。
ポリマーの溶融による吸熱を示す温度(Tm)はセイコ
ー電子製の示差走査熱量計(DSC)SSC/560S型を使用
し、試料10mgをアルミニュウム製非密封容器に入れ、窒
素ガス(30ml/min)気流中昇温速度20℃/minで測定した
ものである。
見掛けの溶融粘度は島津製作所製フローテスターCFT
−500を使用して測定した。ただし、ダイ1mmφ×2mm、
荷重100Kgである。
各例における共重合ポリエステルの製造において使用
した1,6−ビス(フェノキシ)ヘキサン−4,4′−ジカル
ボン酸および1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−
ジカルボン酸は、次の方法で合成した。
1,6−ビス(フェノキシ)ヘキサン−4,4′−ジカルボン
酸(「BHB−1」)合成(I) 攪拌機、温度計、圧力計および窒素ガス導入管を付し
た1オートクレーブに、p−ヒドロキシ安息香酸メチ
ル91.2g、1,6−ヘキサンジクロライド46.6g、ジメチル
ホルムアミド600mlおよび炭酸ナトリウム34.9gを仕込
み、オートクレーブを密閉したのち攪拌および昇温を開
始した。
120℃で7時間反応をおこなったのち130℃に昇温して
7時間反応を続けた。この間オートクレーブの内圧は5K
g/cm2であった。反応液を冷却した後、析出物を濾別
し、濾別された粗1,6−ビス(フェノキシ)ヘキサン−
4,4′−ジカルボン酸メチルを水洗し、ついでメタノー
ル洗浄し85.6gの白色板状結晶を得た。この白色板状結
晶50gを、攪拌機、温度計、窒素ガス導入管を付したガ
ラス製セパラブルフラスコに仕込み、エチルアルコール
900mlおよび水酸化ナトリウム52gを加えて80℃で4時間
加熱処理し1,6−ビス(フェノキシ)ヘキサン−4,4′−
ジカルボン酸メチルを加水分解した。
この処理液に2000mlの水および35%塩酸100mlを加え
て酸析し、粗1,6−ビス(フェノキシ)ヘキサン−4,4′
−ジカルボン酸を得た。水洗、濾過を繰り返し高純度の
1,6−ビス(フェノキシ)ヘキサン−4,4′−ジカルボン
酸(以下、「BHB−1」と称する)37gを得た。
1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸
(「BEB−1」)の合成(II) 攪拌機、温度計、圧力計、窒素ガス導入管および滴下
ロートを付した1オートクレーブにp−ヒドロキシ安
息香酸110.5g、水酸化ナトリウム66.0g、水700mlを仕込
み、攪拌をおこないつつ昇温し、混合溶液の温度が70℃
に達したら加熱を止め、この温度を保持しつつ滴下ロー
トから1,2−エチレンジクロライド39.6gを1時間かけて
滴下した。滴下終了後オートクレーブを密閉し120℃昇
温して6時間反応を続けた。この間オートクレープの内
圧は3.7〜5.4Kg/cm2であった。反応液を冷却した後、析
出物を濾別し、濾別された粗1,2−ビス(フェノキシ)
エタン−4,4′−ジカルボン酸のアルカリ塩を水洗し、
ついでメタノール洗浄し、60.5gの1,2−ビス(フェノキ
シ)エタン−4,4′−ジカルボン酸(以下、「BEB−1」
と称する)を得た。
実施例1 攪拌機、温度計、圧力計、窒素ガス導入管、凝縮器に
連結した蒸留ヘッドなどを装着した300ml反応缶に、p
−アセトキシ安息香酸108g(0.6mol)、ハイドロキノン
ジアセテート38.8g(0.2mol)、前記「BHB−1」53.8g
(0.15mol)、前記「BEB−1」15.1g(0.05mol)を仕込
み、窒素で3回パージした後、ゆるやかに攪拌しながら
反応缶内に少量の窒素を流しつつ昇温した。この混合物
を段階的に昇温し240℃で1.9時間、250℃で0.2時間反応
をおこない、攪拌速度を上げさらに270℃で2.0時間反応
をおこなった。この時点で55gの酢酸を留出させた。次
いで反応缶内を徐々に減圧し0.5Torrの真空に保ちつつ3
00℃で1.9時間、320℃で20分間、350℃で20分間攪拌し
重合を完了させた。
このポリマー(「A−1」)の対数粘度は1.81であっ
た。このポリマーを示差走査熱量計(CSC)にかけると
約277℃でシャープな溶融吸熱を示し、再溶融走査で約2
75℃で反復された。このポリマーは、溶融状態で光学的
異方性を示した。光学的異方性はメトラー社のホットス
テージを装着したニコン偏光顕微鏡Optiphoto−POLを用
いて観察した。
実施例2〜5 p−アセトキシ安息香酸、ハイドロキノンジアセテー
ト、「BHB−1」および「BEB−1」の組成を変えて実施
例1と同様にしてポリマー「A−2」〜「A−5」を合
成した。得られたポリマーの対数粘度、DSCによる溶融
吸熱を示す温度(Tm)および熱分解開始温度(Td)を併
せて第1表に示した。これらのポリマーはいずれも溶融
状態で光学的異方性を示した。
比較例1 攪拌機、温度計、圧力計、窒素ガス導入管、凝縮器に
連結した蒸留ヘッドなどを装着した5加圧反応缶に、
テレフタル酸1495g(9.0mol)、エチレングリコール838
g(13.5mol)の順に仕込み、低速攪拌を開始した。窒素
で3回パージした後、窒素で内圧2Kg/cm2にし、200rpm
で攪拌しつつ昇温を開始した。
内圧2.5Kg/cm2を越えないように注意しつつ215〜240
℃で脱水縮合反応をおこなう初期縮合物を得た。初期縮
合物にトリフェニルホスファイト1.3g、二酸化ゲルマニ
ウム0.4gを添加して約5分間攪拌したのち、5重縮合
缶へ移す。攪拌しつつ昇温し280℃に達したら徐々に減
圧をおこない約30分で0.5Torrにした。0.5Torr以下の真
空度を保ちつつ重縮合反応をおこない所定のトルクに達
した時点で反応を終了し、ポリエチレンテレフタレート
「B−1」を得た。「B−1」は極限粘度0.62であり、
末端カルボキシル基濃度18.7eq/106gであった。
「B−1」のTdおよびDSCにより溶融吸熱を示す温度
(Tm)を併せて第1表に示した。
比較例2 攪拌機、温度計、圧力計、窒素ガス導入管、凝縮器に
連結した蒸留ヘッドなどを装着した300ml反応缶に、
「B−1」76.8g、p−アセトキシ安息香酸108gを仕込
み、窒素で3回パージした。この混合物を窒素雰囲気下
275℃で攪拌し約1時間脱酢酸反応をおこなった後、0.5
Torr以下の真空下で4時間重縮合をおこない、極限粘度
0.59、末端カルボキシル基濃度149eq/106gを有するポリ
エステル「B−2」を得た。このポリマーは、溶融状態
で光学的異方性を示した。光学的異方性はメトラー社の
ホットステージを装着したニコン偏光顕微鏡Optiphoto
−POLを用いて観察した。
ポリマー「B−2」のTdおよびDSCにより溶融吸熱を
示す温度(Tm)を併せて第1表に示した。
実施例6 実施例1で得た共重合ポリエステル「A−1」、比較
例1で得たポリエチレンテレフタレート「B−1」およ
び比較例2で得た共重合ポリエステル「B−2」につい
て、島津製作所製フローテスターCFT−500を使用し、ダ
イ内に所定時間試料を保持した後の見掛けの溶融粘度を
測定することによって、各試料の熱安定性を比較した。
結果を第2表に示したが、「A−1」は熱安定性に優れ
ていることが明らかである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記構造単位(I)、(II)、及び(II
    I)からなり、単位(III)が単位〔(I)+(II)+
    (III)〕の5〜80モル%であって、単位(I)が単位
    (II)と実質的に等モルであって、P−クロロフェノー
    ル中0.5g/dlで45℃で測定した対数粘度(1nηrel)/cが
    0.3〜10.0dl/gであることを特徴とする溶融成形可能な
    共重合ポリエステル。 (ただし、式中のnは1〜6の整数から選ばれた一種以
    上である。)
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