JP2582289B2 - 光学活性を有する2―フルオロ―1―アルカノール類の製造方法 - Google Patents

光学活性を有する2―フルオロ―1―アルカノール類の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は医薬、農薬もしくは強誘電性液晶を製造する
ための中間対として利用される光学活性な2−フルオロ
−1−アルカノール類の製造方法に関する。
[従来技術] 2−フルオロ−1−アルカノールの合成方法として、
光学活性な1,2−エポキシアルカンにフッ化水素−ピリ
ジン錯体を作用させる方法が提案されている(特開昭62
−93248)。
しかし、この方法では、高価なフッ化水素−ピリジン
錯体を用いなければならず、また目的化合物以外の副生
物が多種生成し、目的化合物の2−フルオロ−1−アル
カノールを、高純度で、単離することが極めて難しいと
いう問題があった。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、上記問題を解決したもので、高純度の光学
活性を有する2−フルオロ−1−アルカノール類を、安
価に、収率良く合成し得る方法を提供することを課題と
する。
[課題を解決するための手段] 本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を
進めた結果、光学活性な1,2−エポキシアルカン類のフ
ッ化水素の付加反応において、脂肪族アミン−フッ化水
素錯体を用いると、驚くべきことに、目的生成物以外の
副生物の種類が極めて少なく、極めて容易に高純度の2
−フルオロ−1−アルカノール類をが得られることを見
い出した。
本発明は、かかる知見に基づきなされたもので、下記
一般式(II) (式中、Rは炭素数1乃至20のアルキル基、Cは光学
活性が誘起された炭素原子を表わす)で示される光学活
性を有する1,2−エポキシアルカン類を、脂肪族アミン
−フッ化水素錯体と反応させることからなるものであ
り、特には、脂肪族アミ−フッ化水素錯体が、脂肪族ア
ミン1モルに対してフッ化水素3モル以上の組成からな
るものを用いるものである。
本発明において出発物質として用いる光学活性な1,2
−エポキシアルカン類としては、(+)−1,2−エポキ
シヘキサン、(+)−1,2−エポキシヘプタン、(+)
−1,2−エポキシオクタン、(+)−1,2−エポキシノナ
ン、(+)−1,2−エポキシデカン、(+)−1,2−エポ
キシウンデカン、(+)−1,2−エポキシドデカン、
(+)−1,2−エポキシトリデカン、(+)−1,2−エポ
キシテトラデカン、(+)−1,2−エポキシペンタデカ
ン、(+)−1,2−エポキシヘキサデカン、(+)−1,2
−エポキシヘプタデカン及び(+)−1,2−エポキシオ
クタデカン等、並びに(−)の上記エポキシド類を例示
しうる。
これらのエポキシド類は、微生物を利用してα−オレ
フィンを酸化することにより調製できる(特公昭56−40
号参照)。
また、本発明に用いる脂肪族アミン−フッ化水素錯体
の脂肪族アミンは、プロピルアミン、イソプロピルアミ
ン、ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルア
ミン、tert−ブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピ
ルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ
−sec−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピ
ルアミン、トリブチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキ
シルアミン、トリヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オ
クチルアミン、tert−オクチルアミン、ジオクチルアミ
ン、デシルアミン、オクタデシルアミン等を例示し得
る。脂肪族アミン−フッ化水素錯体は、上記の脂肪族ア
ミンとフッ化水素酸を所定のモル比で混合し、減圧下で
水を留去する方法により調製できる。例えば、ジイソプ
ロピルアミン−トリフッ化水素錯体(i−Pr)2NH・3FH
は、ジイソプロピルアミン1モルとフッ化水素酸3モル
の割合で混合し、減圧下に水を留去することから得られ
る。また、この錯体は、脂肪族アミン中に無水フッ化水
素を所定量吹き込むことによっても調製することができ
る。
本発明では、上記に示す1,2−エポキシアルカン類と
脂肪族アミン−フッ化水素錯体とを作用させることによ
り、相当する2−フルオロ−1−アルカノール類が得ら
れる。この反応は、そのまま、すなわち無溶媒で行って
も良いし、また、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化
炭素、エーテル、酢酸エチル、アセトン、ヘキサン、ベ
ンゼン、アセトニトリルなどの有機溶媒中で行っても良
い。有機溶媒は1種であっても、また2種以上混合して
用いても良い。特には、クロロホルム、塩化メチレンを
用いることが好ましい。
反応温度は、−20〜130℃の広範囲が用いられるが、2
5〜120℃の範囲の温度が好ましく、使用する溶媒の種類
に応じて決めるとよい。
また、反応時間は、反応温度に応じて1〜20時間の範
囲で適宜決められる。
1,2−エポキシアルカンに対する脂肪族アミン−フッ
化水素錯体の使用量は、フッ化水素で1〜10当量が適当
であり、特には、下の実施例に示すとおり、脂肪族アミ
ン−フッ化水素錯体に、脂肪族アミン1モルに対してフ
ッ化水素3モル以上の組成からなるものを用いると好ま
しい結果が得られる。
上記により反応を行った後、反応生成物について相分
離、抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の手法を
用いることにより、光学活性な2−フルオロ−1−アル
カノールを分離して精製する。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。
[実施例] 実施例1 ポリエチレン製容器にジイソプロピルアミン2.27g(2
2.5mmol)を入れ、ドライアイス−メタノール浴上で、4
6%フッ化水素酸3.91g(90mmol)をゆっくり滴下した。
1時間攪拌した後、徐々に室温にもどし、その後、減圧
下に水を除去し、(i−Pr)2NH・4FHを調製した。
テフロン製容器に、上記の(i−Pr)2NH・4FH4.07g
と(+)−1,2−エポキシオクタン1.92g(15mmol)を入
れ、容器内を窒素で置換した後、110℃で5時間攪拌し
た。放冷後、エーテル30ml及び水30mlを加え、抽出し
た。水層は、さらにエーテルで抽出し、エーテル層はす
べて合わせた。これを炭酸ナトリウム水溶液及び水で洗
浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた抽
出物をガスクロマトグラフィーで分析し、この結果を第
1図に示した。尚、この図において、保持時間が5.472
分のピークが2−フルオロ−1−オクタノールである。
この結果から明らかなように、副生物の種類が非常に少
ないことが分かる。
次いで、エーテルを留去し、残渣1.78gを得た。これ
をベンゼンを溶媒としてシリカゲルカラムクロマトグラ
フィーに付した後、蒸留精製した。この結果、純度99%
の2−フルオロ−1−オクタノール0.42g〔旋光度:▲
[α]25 ▼−14゜(c=0.2Et2O)〕を得た。
実施例2 ポリエチレン製容器にジイソプロピルアミン3.03g(3
0mmol)を入れ、ドライアイス−メタノール浴上で46%
フッ化水素酸3.91g(90mmol)をゆっくり滴下した。1
時間撹拌した後、徐々に室温にもどし、その後、減圧下
で水を除去し、(i−Pr)2NH・3FHを調製した。
テフロン製容器に上記の(i−Pr)2NH・3FH4.83gと
(+)−1,2−エポキシオクタン1.92g(15mmol)を入
れ、容器内を窒素で置換した後、110℃で5時間撹拌し
た。実施例1と同様の方法で抽出処理をし、反応生成物
1.97gを得た。これを実施例1と同様の方法で精製し、
純度99%の2−フルオロ−1−オクタノール0.18g〔旋
光度:▲[α]25 ▼−14゜(c=0.2Et2O)〕を得
た。
実施例3 実施例2と同様にして調製した(i−Pr)2NH・3FH3.
22g(20mmol)と(+)−1,2−エポキシオクタン1.28g
(10mmol)及びクロロホルム20mlを混合し、容器内を窒
素で置換した後、7時間還流した。放冷後に、水50mlと
エーテル50mlとを加え、抽出した。水層をさらにエーテ
ルで抽出した後、有機層を合わせ、炭酸ナトリウム水溶
液及び水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し
た。溶媒を留去し、反応生成物1.25gが得られた。これ
を実施例1と同様の方法で精製し、純度99%の2−フル
オロ−1−オクタノール0.21g〔旋光度:▲[α]25
▼−14゜(c=0.2Et2O)〕を得た。
実施例4 テフロン製容器にジイソプロピルアミン1.5g(15mmo
l)を入れ、ドライアイス−メタノール浴中で、無水フ
ッ化水素1.2g(60mmol)を吹き込み、(i−Pr)2NH・4
FHを調製した。氷浴中で、上記(i−Pr)2NH・4FH2.7g
に(+)−1,2−エポキシオクタン1.28g(10mmol)を入
れ、容器内を窒素で置換した後、110℃で2時間、撹拌
反応させた。これを、実施例1と同様の方法で抽出処理
して、反応生成物1.33gを得、実施例1と同様の方法で
精製し、純度98%の2−フルオロ−1−オクタノール0.
30g〔旋光度:▲[α]25 ▼−14゜(c=0.2Et2O)〕
を得た。
実施例5 テフロン製容器にトリ−n−ブチルアミン1.9g(10mm
ol)を入れ、ドライアイス−メタノール浴中で、無水フ
ッ化水素1.2g(60mmol)を吹き込み、(n−Bu)3N・6F
Hを調製した。氷浴中で、上記(n−Bu)3N・6FH3.1gに
(+)−1,2−エポキシオクタン1.28g(10mmol)を入
れ、容器内を窒素で置換した後、0℃で30分間、撹拌反
応させた。これを実施例1と同様の方法で抽出処理し、
エーテルを留去した後、減圧蒸留し、純度82%の粗2−
フルオロ−1−オクタノール0.59gを得た。
比較例1 テフロン製容器に窒素気流下に、フッ化水素−ピリジ
ン錯体(フッ化水素、約70%w/w、Aldrich社製50g(1.7
5mol)を入れ、0℃に冷却した。(+)−1,2−エポキ
シオクタン22.4g(0.175mol)のエーテル溶液90mlを5
時間かけて滴下し、その後1.5時間撹拌した。反応溶液
を水中に注ぎ、エーテルで抽出した。エーテル抽出液を
炭酸ナトリウム水溶液及び水で洗浄し、無水硫酸ナトリ
ウムで乾燥した。得られた抽出物をガスクロマトグラフ
ィーで分析し、この結果を第2図に示した。尚、この図
において、保持時間が5.338分のピークが2−フルオロ
−1−オクタノールである。この結果から明らかなよう
に、副生物の種類が非常に多いことが分かる。
次に、上記抽出物からエーテルを留去して、残渣22.1
2gを得た。これを実施例1と同様の方法により精製した
結果、純度91%の2−フルオロ−1−オクタノール3.01
g〔旋光度:▲[α]25 ▼−14゜(c=1.9Et2O)〕を
得た。
比較例2 テフロン製容器に、メラミン1.9g(15mmol)を入れ、
ドライアイス−メタノール浴中で、無水フッ化水素1.2g
(60mmol)を吹き込み、メラミン・4FHを調製した。氷
浴中で、上記メラミン・4HF3.1gと(+)−1,2−エポキ
シオクタン1.28g(10mmol)及びジエチルエーテル2mlを
混合し、室温で1時間、撹拌反応させた。得られた反応
液を水中に注ぎ、白色固体を別後、エーテルで抽出し
た。エーテル抽出液を炭酸ナトリウム水溶液及び水で洗
浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。これからエーテ
ルを留去した後、減圧蒸留し、純度70%の粗2−フルオ
ロ−1−オクタノール0.20gを得た。
[発明の効果] 以上のとおり、本発明によると光学活性な1,2−エポ
キシアルカンを出発物質として用い、安価に、高純度の
光学活性を有する2−フルオロ−1−アルカノール類を
製造することができるという格別の効果を奏する。従っ
て、本発明は前述したような種々の有用物質の中間体と
しての重要な光学活性な2−フルオロ−1−アルカノー
ル類の製造上有益なものである。
【図面の簡単な説明】 第1図は、本発明の実施例1で得られた反応生成物のガ
スクロマトグラフであり、第2図は、比較例1の生成物
のガスクロマトグラフである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記一般式(II) (式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、Cは光学活
    性が誘起された炭素原子を表わす)で示される光学活性
    を有する1,2−エポキシアルカン類を脂肪族アミン−フ
    ッ化水素錯体と反応させ、下記一般式(I) (式中、Rは前記の一般式(II)と同じアルキル基、C
    は光学活性が誘起された炭素原子を表わす)で示され
    る光学活性を有する2−フルオロ−1−アルカノール類
    を分離回収することを特徴とする光学活性を有する2−
    フルオロ−1−アルカノール類の製造方法。
  2. 【請求項2】脂肪族アミン−フッ化水素錯体が、脂肪族
    アミン1モルに対してフッ化水素3モル以上の組成から
    なるものであることを特徴とする前記請求項1に記載の
    光学活性を有する2−フルオロ−1−アルカノール類の
    製造方法。
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