JP2581335B2 - 磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板 - Google Patents
磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板Info
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- JP2581335B2 JP2581335B2 JP3084691A JP8469191A JP2581335B2 JP 2581335 B2 JP2581335 B2 JP 2581335B2 JP 3084691 A JP3084691 A JP 3084691A JP 8469191 A JP8469191 A JP 8469191A JP 2581335 B2 JP2581335 B2 JP 2581335B2
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄損が低く且つ磁束密
度の高い無方向性電磁鋼板に関するものである。
度の高い無方向性電磁鋼板に関するものである。
【0002】
【従来技術】モーター、変圧器等の鉄芯材料として使用
される無方向性磁気鋼板は、これら電気機器の省エネル
ギー化を図るため、鉄損が低く磁束密度が高いことが要
求される。特に近年では、機器の小型・高効率化を達成
するために、鉄損を低く保ちつつ従来にも増して高い磁
束密度を有する材料の開発、要請が益々強まってきてい
る。ところで、無方向性電磁鋼板は周知のように鉄損と
磁束密度の値により各グレードに分けられている。一般
には、高グレード材はSi含有量を高め鉄損の低下を図
っているが、Si含有量の増加に伴い磁束密度も低下し
てしまう。これに対して、低グレ−ド材ではSi含有量
を低くしているため飽和磁束密度の低下が抑えられ、比
較的高い磁束密度が得られるものの、鉄損が高いという
問題があり、単にSi量を変えるだけでは低鉄損−高磁
束密度化は図れず、応分の工夫が必要となる。
される無方向性磁気鋼板は、これら電気機器の省エネル
ギー化を図るため、鉄損が低く磁束密度が高いことが要
求される。特に近年では、機器の小型・高効率化を達成
するために、鉄損を低く保ちつつ従来にも増して高い磁
束密度を有する材料の開発、要請が益々強まってきてい
る。ところで、無方向性電磁鋼板は周知のように鉄損と
磁束密度の値により各グレードに分けられている。一般
には、高グレード材はSi含有量を高め鉄損の低下を図
っているが、Si含有量の増加に伴い磁束密度も低下し
てしまう。これに対して、低グレ−ド材ではSi含有量
を低くしているため飽和磁束密度の低下が抑えられ、比
較的高い磁束密度が得られるものの、鉄損が高いという
問題があり、単にSi量を変えるだけでは低鉄損−高磁
束密度化は図れず、応分の工夫が必要となる。
【0003】そこで、これまでにも無方向性電磁鋼板の
鉄損低下、磁束密度向上を目的に、種々の提案がなされ
ており、特に化学成分に関するものとして、以下に示す
ような特殊元素を添加することを内容とする提案がいく
つかなされている。 Sbを添加して集合組織を改善し、主として磁束密度
を向上させようとする技術(特開昭54−68717
号、特開昭58−147563号、特開昭61−441
24号等) Snを添加し、主として鉄損の低下を図る技術(特開
昭55−158252号、特開昭56−98420号、
特開昭56−102520号等) Sn+Cu(特開昭62−180014号、特開昭6
4−39348号、特開平2−263952号等)、S
n+Mn(特開昭59−157259号、特開昭63−
33518号等)、Ni+Mn(特開昭63−3176
27号等)のように、異なる種類の元素の複合添加によ
り、鉄損、磁束密度の両者を改善しようとする技術
鉄損低下、磁束密度向上を目的に、種々の提案がなされ
ており、特に化学成分に関するものとして、以下に示す
ような特殊元素を添加することを内容とする提案がいく
つかなされている。 Sbを添加して集合組織を改善し、主として磁束密度
を向上させようとする技術(特開昭54−68717
号、特開昭58−147563号、特開昭61−441
24号等) Snを添加し、主として鉄損の低下を図る技術(特開
昭55−158252号、特開昭56−98420号、
特開昭56−102520号等) Sn+Cu(特開昭62−180014号、特開昭6
4−39348号、特開平2−263952号等)、S
n+Mn(特開昭59−157259号、特開昭63−
33518号等)、Ni+Mn(特開昭63−3176
27号等)のように、異なる種類の元素の複合添加によ
り、鉄損、磁束密度の両者を改善しようとする技術
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これら提案は
いずれも以下のような問題を有しており、上述した低鉄
損−高磁束密度材という要求を必ずしも十分に満足させ
るものではない。すなわち、Sbを単独添加した鋼板は
磁束密度の向上を主眼としているため、鉄損の低下が不
十分であり、一方、Sn単独添加の鋼板は、鉄損の低下
を主眼としているため、磁束密度の向上(特に高磁場
域)が不十分である。さらに、これらの鋼板は集合組織
の改善をSbあるいはSnの粒界偏析に負っているた
め、SbあるいはSn添加効果を十分に発揮させようと
すると、これらの元素を偏析させるために、長時間の熱
延板焼鈍あるいはそれに替わる2回冷圧における中間焼
鈍が必要となり、工程の複雑化とそれによる生産性の低
下が避けられない。また一部の提案では、Sb、Snを
偏析させるため、徐加熱−長時間焼鈍−徐冷というユー
ザー側での歪取焼鈍を前提とした、いわゆるセミプロセ
ス材にその適用を限定したものさえある。
いずれも以下のような問題を有しており、上述した低鉄
損−高磁束密度材という要求を必ずしも十分に満足させ
るものではない。すなわち、Sbを単独添加した鋼板は
磁束密度の向上を主眼としているため、鉄損の低下が不
十分であり、一方、Sn単独添加の鋼板は、鉄損の低下
を主眼としているため、磁束密度の向上(特に高磁場
域)が不十分である。さらに、これらの鋼板は集合組織
の改善をSbあるいはSnの粒界偏析に負っているた
め、SbあるいはSn添加効果を十分に発揮させようと
すると、これらの元素を偏析させるために、長時間の熱
延板焼鈍あるいはそれに替わる2回冷圧における中間焼
鈍が必要となり、工程の複雑化とそれによる生産性の低
下が避けられない。また一部の提案では、Sb、Snを
偏析させるため、徐加熱−長時間焼鈍−徐冷というユー
ザー側での歪取焼鈍を前提とした、いわゆるセミプロセ
ス材にその適用を限定したものさえある。
【0005】また、Sn+Cu、Sn+Mn、Mn+N
i等の複合添加を行なう技術は、一部のものを除いて
は、長時間の熱延板焼鈍が不要であるという点、あるい
は鉄損、磁束密度ともある程度改善されるという点につ
いては評価できるものの、そのためにはこれら元素の複
合添加量を1.0〜1.5wt%以上にする必要があ
り、この結果必然的に飽和磁束密度が低下し、磁束密度
自体の向上はそれ程期待できない。
i等の複合添加を行なう技術は、一部のものを除いて
は、長時間の熱延板焼鈍が不要であるという点、あるい
は鉄損、磁束密度ともある程度改善されるという点につ
いては評価できるものの、そのためにはこれら元素の複
合添加量を1.0〜1.5wt%以上にする必要があ
り、この結果必然的に飽和磁束密度が低下し、磁束密度
自体の向上はそれ程期待できない。
【0006】このように、従来の提案では、 鉄損、磁束密度の両者を同時に十分に改善することが
できない。 長時間の熱延板焼鈍や2回冷圧法が必要となり、工程
の複雑化や生産性の低下を招く。 その適用がセミプロセス材に限定される。 等の問題点がある。
できない。 長時間の熱延板焼鈍や2回冷圧法が必要となり、工程
の複雑化や生産性の低下を招く。 その適用がセミプロセス材に限定される。 等の問題点がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような問題
に鑑みなされたもので、従来全く知られていなかったG
eの磁気特性改善効果を新たに知見し、かかる知見に基
づきなされたものである。すなわち、本発明者らはGe
を適量添加することにより、長時間の熱延板焼鈍や2回
冷圧等、複雑且つ生産性低下を招くような工程を採るこ
となく、通常の製造方法により、鉄損、磁束密度ともに
十分に改善されたフルプロセス或いはセミプロセス無方
向性電磁鋼板を得ることができることを見い出し、本発
明を完成させたものである。
に鑑みなされたもので、従来全く知られていなかったG
eの磁気特性改善効果を新たに知見し、かかる知見に基
づきなされたものである。すなわち、本発明者らはGe
を適量添加することにより、長時間の熱延板焼鈍や2回
冷圧等、複雑且つ生産性低下を招くような工程を採るこ
となく、通常の製造方法により、鉄損、磁束密度ともに
十分に改善されたフルプロセス或いはセミプロセス無方
向性電磁鋼板を得ることができることを見い出し、本発
明を完成させたものである。
【0008】このような本発明の電磁鋼板は、C:0.
0050wt%以下、Si:0.1〜3.5wt%、M
n:0.1〜0.9wt%、P:0.2wt%以下、
S:0.015wt%以下、Al:1.5wt%以下、
N:0.0050wt%以下、Ge:0.010〜0.
100wt%を含み、残部Feおよび不可避的不純物か
らなることをその特徴とする。
0050wt%以下、Si:0.1〜3.5wt%、M
n:0.1〜0.9wt%、P:0.2wt%以下、
S:0.015wt%以下、Al:1.5wt%以下、
N:0.0050wt%以下、Ge:0.010〜0.
100wt%を含み、残部Feおよび不可避的不純物か
らなることをその特徴とする。
【0009】
【作用】以下、本発明の詳細と限定理由を説明する。 (1)Ge量 表1記載の鋼A群〜D群を溶製し、スラブとした。ここ
で、鋼A群はSi:略0.15wt%、Al:tr.、
Si+Al:略0.15wt%鋼において、Ge量をt
r.(無添加)から0.120wt%まで種々変化させ
たもの、鋼B群はSi:略1.45wt%、Al:略
0.10wt%、Si+Al:略1.55wt%鋼にお
いて、Ge量をtr.(無添加)から0.120wt%
まで種々変化させたもの、鋼C群はSi:略1.61w
t%、Al:略0.30wt%、Si+Al:略1.9
0wt%鋼においてGe量をtr.(無添加)から0.
120wt%まで種々変化させたもの、鋼D群はSi:
略3.02wt%、Al:略0.51wt%、Si+A
l:略3.53wt%鋼において、Ge量をtr.(無
添加)から0.120wt%まで種々変化させたもので
ある。
で、鋼A群はSi:略0.15wt%、Al:tr.、
Si+Al:略0.15wt%鋼において、Ge量をt
r.(無添加)から0.120wt%まで種々変化させ
たもの、鋼B群はSi:略1.45wt%、Al:略
0.10wt%、Si+Al:略1.55wt%鋼にお
いて、Ge量をtr.(無添加)から0.120wt%
まで種々変化させたもの、鋼C群はSi:略1.61w
t%、Al:略0.30wt%、Si+Al:略1.9
0wt%鋼においてGe量をtr.(無添加)から0.
120wt%まで種々変化させたもの、鋼D群はSi:
略3.02wt%、Al:略0.51wt%、Si+A
l:略3.53wt%鋼において、Ge量をtr.(無
添加)から0.120wt%まで種々変化させたもので
ある。
【0010】これらスラブを表2に記載の条件で熱間圧
延−冷間圧延−仕上焼鈍、または熱間圧延−熱延板焼鈍
−冷間圧延−仕上焼鈍に供し、板厚0.5mmの鋼板を
得た。しかる後、これらの鋼板からリング状試験片を打
ち抜き、これらの磁気特性を測定することで、鋼板の全
方向平均値としての磁気特性を評価した。図1〜図4は
この結果を、鋼A群〜D群の各々についてGe量で整理
したものである。これらの図から、Si、Al量及び他
の元素量も異なる鋼A群〜D群のいずれにおいても、す
なわち成分系に拘りなく、さらには熱延板焼鈍の有無、
熱延板焼鈍を付加する場合にはその長短、或いは仕上焼
鈍温度等のプロセス条件に拘りなく、Geを0.010
wt%以上添加することで、磁束密度(B50)が著しく
向上し、鉄損(W15/50)が飛躍的に低下することが判
る。
延−冷間圧延−仕上焼鈍、または熱間圧延−熱延板焼鈍
−冷間圧延−仕上焼鈍に供し、板厚0.5mmの鋼板を
得た。しかる後、これらの鋼板からリング状試験片を打
ち抜き、これらの磁気特性を測定することで、鋼板の全
方向平均値としての磁気特性を評価した。図1〜図4は
この結果を、鋼A群〜D群の各々についてGe量で整理
したものである。これらの図から、Si、Al量及び他
の元素量も異なる鋼A群〜D群のいずれにおいても、す
なわち成分系に拘りなく、さらには熱延板焼鈍の有無、
熱延板焼鈍を付加する場合にはその長短、或いは仕上焼
鈍温度等のプロセス条件に拘りなく、Geを0.010
wt%以上添加することで、磁束密度(B50)が著しく
向上し、鉄損(W15/50)が飛躍的に低下することが判
る。
【0011】ところで、磁気特性を改善する有力な手段
の一つとして熱延板焼鈍があるが、Ge無添加鋼とG
e:0.010wt%以上添加鋼の磁気特性の差は、G
e無添加鋼における熱延板焼鈍付加による磁気特性の改
善代と同等かそれ以上であり、これより、Ge添加によ
る磁気特性向上効果がいかに多大であるかが定量的にも
把握できる。磁束密度に関しては、Ge:0.010w
t%以上の領域では、そのGe量依存性は比較的小さ
く、0.040〜0.060wt%の範囲を超えると漸
減する程度である。一方、鉄損に関しては、0.010
〜0.100wt%の範囲ではGe量にほとんど依存せ
ず極めて低い値をとるが、Ge量が0.100wt%を
超えると著しく上昇する傾向にある。したがって、Ge
添加により磁気特性の向上を図るためには、磁束密度、
鉄損に関する上記考察を踏まえ、特に鉄損の上昇を考慮
して、その添加量を0.010wt%以上、0.100
wt%以下とする必要があり、本発明ではこの範囲をG
e量として規定した。
の一つとして熱延板焼鈍があるが、Ge無添加鋼とG
e:0.010wt%以上添加鋼の磁気特性の差は、G
e無添加鋼における熱延板焼鈍付加による磁気特性の改
善代と同等かそれ以上であり、これより、Ge添加によ
る磁気特性向上効果がいかに多大であるかが定量的にも
把握できる。磁束密度に関しては、Ge:0.010w
t%以上の領域では、そのGe量依存性は比較的小さ
く、0.040〜0.060wt%の範囲を超えると漸
減する程度である。一方、鉄損に関しては、0.010
〜0.100wt%の範囲ではGe量にほとんど依存せ
ず極めて低い値をとるが、Ge量が0.100wt%を
超えると著しく上昇する傾向にある。したがって、Ge
添加により磁気特性の向上を図るためには、磁束密度、
鉄損に関する上記考察を踏まえ、特に鉄損の上昇を考慮
して、その添加量を0.010wt%以上、0.100
wt%以下とする必要があり、本発明ではこの範囲をG
e量として規定した。
【0012】さらに、磁気特性に対するGe添加の効果
として、Si+Al<1.7wt%の成分系において
は、熱延板焼鈍が省略可能であるということも判る。一
般的に知られているように磁気特性に関してはγ/α変
態の有無が一つの分岐点となるが、Ge添加鋼の場合も
γ/α変態の有無でその効果が分かれ、γ/α変態の無
い成分系の場合、即ちSi+Al量が1.7wt%未満
の鋼A群(Si+Al:略0.15wt%)、鋼B群
(Si+Al:略1.55wt%)の場合は、Ge量が
本発明範囲にあれば、熱延板焼鈍を付加せず巻取ままで
あっても、熱延板焼鈍を付加した場合とほぼ同等の磁束
密度、鉄損が得られることが判る。これに対し、γ/α
変態のある成分系の場合、即ちSi+Al量が1.7w
t%以上の鋼C群(Si+Al:略1.90wt%)、
鋼D群(Si+Al:略3.53wt%)においては、
Geを適量添加したものでも熱延板焼鈍の効果は認めら
れ、熱延板焼鈍付加材の方が巻取ままの熱延板焼鈍省略
材に比べ、磁束密度は高く、鉄損は低い。
として、Si+Al<1.7wt%の成分系において
は、熱延板焼鈍が省略可能であるということも判る。一
般的に知られているように磁気特性に関してはγ/α変
態の有無が一つの分岐点となるが、Ge添加鋼の場合も
γ/α変態の有無でその効果が分かれ、γ/α変態の無
い成分系の場合、即ちSi+Al量が1.7wt%未満
の鋼A群(Si+Al:略0.15wt%)、鋼B群
(Si+Al:略1.55wt%)の場合は、Ge量が
本発明範囲にあれば、熱延板焼鈍を付加せず巻取ままで
あっても、熱延板焼鈍を付加した場合とほぼ同等の磁束
密度、鉄損が得られることが判る。これに対し、γ/α
変態のある成分系の場合、即ちSi+Al量が1.7w
t%以上の鋼C群(Si+Al:略1.90wt%)、
鋼D群(Si+Al:略3.53wt%)においては、
Geを適量添加したものでも熱延板焼鈍の効果は認めら
れ、熱延板焼鈍付加材の方が巻取ままの熱延板焼鈍省略
材に比べ、磁束密度は高く、鉄損は低い。
【0013】以上のように、Geを適量添加することで
磁気特性が大きく向上するのは、Geが結晶粒界に偏析
し、磁気特性上好ましくない{111}集合組織の発達
を抑えるためであると考えられる。もちろん、同様の効
果は既知の添加元素であるSb、Sn等にも認められる
が、これらに比べてGeの方が原子半径が小さく拡散し
やすいものと考えられ、その結果、粒界に拡散し偏析す
る程度はGeの方が大きく、より顕著に{111}集合
組織の発達を抑制するものと推定される。さらに、S
b、Sn等の単独添加では、これらの元素を偏析させる
ため、長時間の熱延板焼鈍や2回冷圧における中間焼鈍
が不可欠のものとなるが、Geの場合は拡散速度が速い
ため、特段の偏析処理を必要とせず、長時間の熱延板焼
鈍を付加した場合はもちろんのこと、短時間の熱延板焼
鈍を付加した場合でも、あるいは熱延板焼鈍を行わず巻
取ままにおいても、十分な磁気特性改善効果が得られる
ことになる。
磁気特性が大きく向上するのは、Geが結晶粒界に偏析
し、磁気特性上好ましくない{111}集合組織の発達
を抑えるためであると考えられる。もちろん、同様の効
果は既知の添加元素であるSb、Sn等にも認められる
が、これらに比べてGeの方が原子半径が小さく拡散し
やすいものと考えられ、その結果、粒界に拡散し偏析す
る程度はGeの方が大きく、より顕著に{111}集合
組織の発達を抑制するものと推定される。さらに、S
b、Sn等の単独添加では、これらの元素を偏析させる
ため、長時間の熱延板焼鈍や2回冷圧における中間焼鈍
が不可欠のものとなるが、Geの場合は拡散速度が速い
ため、特段の偏析処理を必要とせず、長時間の熱延板焼
鈍を付加した場合はもちろんのこと、短時間の熱延板焼
鈍を付加した場合でも、あるいは熱延板焼鈍を行わず巻
取ままにおいても、十分な磁気特性改善効果が得られる
ことになる。
【0014】また、上述したようにSi+Al<1.7
wt%の場合には、熱延板焼鈍を付加しなくても巻取ま
まで、熱延板焼鈍付加の場合とほぼ同等の磁気特性が得
られる。この理由は必ずしも明らかではないが、熱延板
焼鈍付加に比べて巻取ままの方が結晶粒径が小さく、
{111}集合組織の発生サイトである粒界が多いた
め、Geの粒界偏析による{111}集合組織抑制効果
がより大きく発揮され、磁気特性の改善代が相対的に大
きくなり、結果的に巻取ままでも熱延板焼鈍付加の場合
とほぼ同程度の磁気特性が得られることによるものと考
えられる。なお、Ge:0.100wt%超で鉄損が急
激に上昇するのは、Geの粒界偏析が過多となり、粒成
長性を阻害するまでになるためと考えられる。
wt%の場合には、熱延板焼鈍を付加しなくても巻取ま
まで、熱延板焼鈍付加の場合とほぼ同等の磁気特性が得
られる。この理由は必ずしも明らかではないが、熱延板
焼鈍付加に比べて巻取ままの方が結晶粒径が小さく、
{111}集合組織の発生サイトである粒界が多いた
め、Geの粒界偏析による{111}集合組織抑制効果
がより大きく発揮され、磁気特性の改善代が相対的に大
きくなり、結果的に巻取ままでも熱延板焼鈍付加の場合
とほぼ同程度の磁気特性が得られることによるものと考
えられる。なお、Ge:0.100wt%超で鉄損が急
激に上昇するのは、Geの粒界偏析が過多となり、粒成
長性を阻害するまでになるためと考えられる。
【0015】(2)その他の成分 C:磁気特性を劣化させる元素であり、また磁気時効上
も有害であるため、C≦0.0050wt%の極低C化
が必須となる。 Si:固有抵抗を増し、鉄損を低下させる元素である
が、この効果を得るためには0.1wt%以上の添加が
必要である。一方、3.5wt%超では鋼が著しく脆化
し、冷間圧延時に割れが発生するため、上限は3.5%
とする。 Mn:熱間脆性の観点から0.1wt%以上の添加が必
要である。一方、0.9wt%を超えると磁束密度の劣
化が著しいため、その上限は0.9%とする。
も有害であるため、C≦0.0050wt%の極低C化
が必須となる。 Si:固有抵抗を増し、鉄損を低下させる元素である
が、この効果を得るためには0.1wt%以上の添加が
必要である。一方、3.5wt%超では鋼が著しく脆化
し、冷間圧延時に割れが発生するため、上限は3.5%
とする。 Mn:熱間脆性の観点から0.1wt%以上の添加が必
要である。一方、0.9wt%を超えると磁束密度の劣
化が著しいため、その上限は0.9%とする。
【0016】P:硬度上昇並びに打ち抜き性の向上をも
たらす元素であるため、0.2wt%までの添加は許容
できる。但し、0.2wt%を超えるとこれらの効果が
飽和するのみならず、磁気特性の急激な劣化を招くた
め、0.2wt%を上限とする必要がある。 S:0.015wt%超では粒成長性が劣化し、鉄損が
上昇するため、0.015wt%以下とする。 Al:Siと同様に固有抵抗を増し、鉄損を低下させる
元素であるため、1.5wt%までは必要に応じて添加
できるが、これを超えると著しく脆化し、冷間圧延性を
損なうので上限を1.5%とする。 N:磁気特性を劣化させる元素であり、これを避けるた
めには、0.0050wt%以下とする必要がある。
たらす元素であるため、0.2wt%までの添加は許容
できる。但し、0.2wt%を超えるとこれらの効果が
飽和するのみならず、磁気特性の急激な劣化を招くた
め、0.2wt%を上限とする必要がある。 S:0.015wt%超では粒成長性が劣化し、鉄損が
上昇するため、0.015wt%以下とする。 Al:Siと同様に固有抵抗を増し、鉄損を低下させる
元素であるため、1.5wt%までは必要に応じて添加
できるが、これを超えると著しく脆化し、冷間圧延性を
損なうので上限を1.5%とする。 N:磁気特性を劣化させる元素であり、これを避けるた
めには、0.0050wt%以下とする必要がある。
【0017】(3)プロセス条件 本発明では、上述のような成分、特にGe量を適正化す
ることにより、プロセス条件に拘らず優れた磁気特性が
得られるため、プロセス条件は特に限定しない。即ち、
プロセス条件については特段配慮する必要はなく、公知
の条件でよい。但し、鋼板のSi、Al量等を勘案する
ことなく、公知の条件を無作為に適用した場合には、例
えば十分に粒成長せず鉄損が劣化する等の問題が生じる
ため、プロセス条件にも自ずと望ましい範囲が存在する
ことになる。以下、これについて説明する。
ることにより、プロセス条件に拘らず優れた磁気特性が
得られるため、プロセス条件は特に限定しない。即ち、
プロセス条件については特段配慮する必要はなく、公知
の条件でよい。但し、鋼板のSi、Al量等を勘案する
ことなく、公知の条件を無作為に適用した場合には、例
えば十分に粒成長せず鉄損が劣化する等の問題が生じる
ため、プロセス条件にも自ずと望ましい範囲が存在する
ことになる。以下、これについて説明する。
【0018】(a)熱間圧延条件 加熱温度が徒に高いとスケール発生による表面性状の劣
化や歩留の低下をきすため、その上限は1250℃程度
とするのが望ましい。下限については、加熱温度が極端
に低いと必然的に圧延時の圧延温度が低くなり、圧延負
荷の増大を招くため、1050℃程度を下限とすること
が望ましい。仕上温度については、加熱温度と仕上に至
るまでの降温代並びに圧延負荷を考慮すると、900〜
700℃が望ましい範囲となる。巻取温度については、
次工程として熱延板焼鈍を付加しない場合は、磁気特性
上、この段階で熱延板の再結晶の進展若しくは結晶粒の
粗大化を図る必要があり、そのためには、巻取温度をS
i+Al量に応じて次のような範囲とすることが望まし
い。 0.1wt%≦Si+Al<1.0wt% ……630℃以上 1.0wt%≦Si+Al<1.7wt% ……670℃以上 1.7wt%≦Si+Al<3.0wt% ……700℃以上 3.0wt%≦Si+Al ……720℃以上 一方、熱延板焼鈍を付加する場合は、熱延板焼鈍時に再
結晶の進展、結晶粒粗大化が起ればよく、したがって、
熱延板の再結晶の進展や結晶粒の粗大化を図るという観
点から巻取温度を配慮する必要はない。但し、スケール
の増加や表面性状の劣化を防ぐという観点から、巻取温
度は550℃以下の低温とすることが望ましい。
化や歩留の低下をきすため、その上限は1250℃程度
とするのが望ましい。下限については、加熱温度が極端
に低いと必然的に圧延時の圧延温度が低くなり、圧延負
荷の増大を招くため、1050℃程度を下限とすること
が望ましい。仕上温度については、加熱温度と仕上に至
るまでの降温代並びに圧延負荷を考慮すると、900〜
700℃が望ましい範囲となる。巻取温度については、
次工程として熱延板焼鈍を付加しない場合は、磁気特性
上、この段階で熱延板の再結晶の進展若しくは結晶粒の
粗大化を図る必要があり、そのためには、巻取温度をS
i+Al量に応じて次のような範囲とすることが望まし
い。 0.1wt%≦Si+Al<1.0wt% ……630℃以上 1.0wt%≦Si+Al<1.7wt% ……670℃以上 1.7wt%≦Si+Al<3.0wt% ……700℃以上 3.0wt%≦Si+Al ……720℃以上 一方、熱延板焼鈍を付加する場合は、熱延板焼鈍時に再
結晶の進展、結晶粒粗大化が起ればよく、したがって、
熱延板の再結晶の進展や結晶粒の粗大化を図るという観
点から巻取温度を配慮する必要はない。但し、スケール
の増加や表面性状の劣化を防ぐという観点から、巻取温
度は550℃以下の低温とすることが望ましい。
【0019】(b)熱延板焼鈍条件 Si+Al<1.7%の場合は、熱延板焼鈍を付加しな
くても巻取ままで熱延板焼鈍付加とほぼ同等の磁気特性
が得られるため、特に熱延板焼鈍の必要はない。但し、
この場合でも、巻取ままでのコイルエンド性を改善する
ため、あるいは多少なりとも磁気特性を向上させるため
に、熱延板焼鈍を施すことは何ら問題はない。一方、S
i+Al≧1.7%の場合は、熱延板焼鈍付加により磁
気特性が向上するため、必要に応じて熱延板焼鈍を行な
うことが望ましい。熱延板焼鈍を行なう場合、その焼鈍
温度には熱延板の再結晶を進展させ或いは結晶粒の粗大
化を図ることにより所要の磁気特性を得るために、下限
として望ましい温度があり、また、結晶粒が粗大化し過
ぎ、表面性状の劣化を招かないために上限として望まし
い温度がある。すなわち、Si+Al量に応じて次のよ
うな焼鈍温度とすることが望ましい。 0.1wt%≦Si+Al<1.0wt% ……700〜950℃ 1.0wt%≦Si+Al<1.7wt% ……725〜1000℃ 1.7wt%≦Si+Al<3.0wt% ……750〜1050℃ 3.0wt%≦Si+Al ……800〜1100℃ 焼鈍時間については、焼鈍効果を十分得るために30秒
以上とすることが望ましい。
くても巻取ままで熱延板焼鈍付加とほぼ同等の磁気特性
が得られるため、特に熱延板焼鈍の必要はない。但し、
この場合でも、巻取ままでのコイルエンド性を改善する
ため、あるいは多少なりとも磁気特性を向上させるため
に、熱延板焼鈍を施すことは何ら問題はない。一方、S
i+Al≧1.7%の場合は、熱延板焼鈍付加により磁
気特性が向上するため、必要に応じて熱延板焼鈍を行な
うことが望ましい。熱延板焼鈍を行なう場合、その焼鈍
温度には熱延板の再結晶を進展させ或いは結晶粒の粗大
化を図ることにより所要の磁気特性を得るために、下限
として望ましい温度があり、また、結晶粒が粗大化し過
ぎ、表面性状の劣化を招かないために上限として望まし
い温度がある。すなわち、Si+Al量に応じて次のよ
うな焼鈍温度とすることが望ましい。 0.1wt%≦Si+Al<1.0wt% ……700〜950℃ 1.0wt%≦Si+Al<1.7wt% ……725〜1000℃ 1.7wt%≦Si+Al<3.0wt% ……750〜1050℃ 3.0wt%≦Si+Al ……800〜1100℃ 焼鈍時間については、焼鈍効果を十分得るために30秒
以上とすることが望ましい。
【0020】(c)冷間圧延条件 特に限定の必要はなく、通常の1回若しくは中間焼鈍を
はさむ2回の冷間圧延を行なうことができる。
はさむ2回の冷間圧延を行なうことができる。
【0021】(d)仕上焼鈍条件 仕上焼鈍温度には、結晶粒を十分に成長させ所要の磁気
特性を得るために下限として望ましい温度があり、一
方、結晶粒が粗大化し過ぎ、また酸化によって表面性状
が劣化するのを防ぐために上限として望ましい温度があ
る。すなわち、Si+Al量に応じて次のような焼鈍温
度とすることが望ましい。 0.1wt%≦Si+Al<1.0wt% ……650〜900℃ 1.0wt%≦Si+Al<1.7wt% ……700〜950℃ 1.7wt%≦Si+Al<3.0wt% ……750〜1000℃ 3.0wt%≦Si+Al ……850〜1050℃ 焼鈍時間については、焼鈍効果を十分得るために30秒
以上とすることが望ましい。
特性を得るために下限として望ましい温度があり、一
方、結晶粒が粗大化し過ぎ、また酸化によって表面性状
が劣化するのを防ぐために上限として望ましい温度があ
る。すなわち、Si+Al量に応じて次のような焼鈍温
度とすることが望ましい。 0.1wt%≦Si+Al<1.0wt% ……650〜900℃ 1.0wt%≦Si+Al<1.7wt% ……700〜950℃ 1.7wt%≦Si+Al<3.0wt% ……750〜1000℃ 3.0wt%≦Si+Al ……850〜1050℃ 焼鈍時間については、焼鈍効果を十分得るために30秒
以上とすることが望ましい。
【0022】(e)スキンパス圧延条件 本発明鋼板は、仕上焼鈍後スキンパス圧延を行ない、所
定形状に打ち抜き後歪取焼鈍に供されるセミプロセス材
としてもよい。その場合、歪取焼鈍時に十分な粒成長を
生じさせるためには、スキンパス圧下率を2%以上とす
ることが望ましい。また、スキンパス圧下率が大き過ぎ
ると却って結晶粒が細粒化し、磁気特性が劣化するた
め、上限は12%程度とすることが望ましい。なお、ス
キンパス圧延を行なうと結晶粒が粗大化し、鉄損の低下
は図れるが、同時に磁束密度も低下するという問題があ
る。このため近年では仕上焼鈍後にスキンパス圧延を行
なわず、これをそのまま打ち抜いて歪取焼鈍に供するこ
とで、磁束密度をあまり低下させずに鉄損をある程度低
下させるタイプのセミプロセス材も多く使われている。
この点、本発明では仕上焼鈍の段階で高い磁束密度と低
い鉄損を兼ね備えた鋼板を得ることができるため、これ
をそのまま打ち抜き後歪取焼鈍に供し、上記タイプのセ
ミプロセス材とした場合には、磁束密度は高位のまま鉄
損をより低下できることになり、従来にも増して優れた
磁気特性を有するセミプロセス材の提供が可能となる。
定形状に打ち抜き後歪取焼鈍に供されるセミプロセス材
としてもよい。その場合、歪取焼鈍時に十分な粒成長を
生じさせるためには、スキンパス圧下率を2%以上とす
ることが望ましい。また、スキンパス圧下率が大き過ぎ
ると却って結晶粒が細粒化し、磁気特性が劣化するた
め、上限は12%程度とすることが望ましい。なお、ス
キンパス圧延を行なうと結晶粒が粗大化し、鉄損の低下
は図れるが、同時に磁束密度も低下するという問題があ
る。このため近年では仕上焼鈍後にスキンパス圧延を行
なわず、これをそのまま打ち抜いて歪取焼鈍に供するこ
とで、磁束密度をあまり低下させずに鉄損をある程度低
下させるタイプのセミプロセス材も多く使われている。
この点、本発明では仕上焼鈍の段階で高い磁束密度と低
い鉄損を兼ね備えた鋼板を得ることができるため、これ
をそのまま打ち抜き後歪取焼鈍に供し、上記タイプのセ
ミプロセス材とした場合には、磁束密度は高位のまま鉄
損をより低下できることになり、従来にも増して優れた
磁気特性を有するセミプロセス材の提供が可能となる。
【0023】
【実施例】〔実施例1〕表3及び表4記載の鋼E群〜J
群を溶製してスラブとした後、表5及び表6記載の条件
で熱間圧延、冷間圧延、仕上焼鈍に供し、板厚0.5m
mの鋼板を得た(熱延板焼鈍は無し)。これらの鋼板の
磁気特性をリング状試験片にて測定した結果を、表5及
び表6に併せて示す。同表から明らかなように、Si、
Al等の成分の異なる鋼E〜J群のいずれにおいても、
また、熱延条件や仕上焼鈍条件等のプロセス条件の違い
に拘りなく、Ge量が本発明範囲にある本発明鋼はGe
無添加のBase鋼に比べて著しく高磁束密度−低鉄損
化していることが判る。一方、Ge量が本発明範囲を下
回る比較鋼の磁気特性はBase鋼のそれとあまり差が
なく、磁束密度、鉄損とも、本発明鋼のそれと比べて大
きく劣っている。また、Ge量が本発明範囲を超える比
較鋼の場合は、磁束密度は改善されてはいるものの、鉄
損はBase鋼とほとんど同じかむしろ増加しており、
優れた磁気特性は達成されていない。
群を溶製してスラブとした後、表5及び表6記載の条件
で熱間圧延、冷間圧延、仕上焼鈍に供し、板厚0.5m
mの鋼板を得た(熱延板焼鈍は無し)。これらの鋼板の
磁気特性をリング状試験片にて測定した結果を、表5及
び表6に併せて示す。同表から明らかなように、Si、
Al等の成分の異なる鋼E〜J群のいずれにおいても、
また、熱延条件や仕上焼鈍条件等のプロセス条件の違い
に拘りなく、Ge量が本発明範囲にある本発明鋼はGe
無添加のBase鋼に比べて著しく高磁束密度−低鉄損
化していることが判る。一方、Ge量が本発明範囲を下
回る比較鋼の磁気特性はBase鋼のそれとあまり差が
なく、磁束密度、鉄損とも、本発明鋼のそれと比べて大
きく劣っている。また、Ge量が本発明範囲を超える比
較鋼の場合は、磁束密度は改善されてはいるものの、鉄
損はBase鋼とほとんど同じかむしろ増加しており、
優れた磁気特性は達成されていない。
【0024】〔実施例2〕表3及び表4記載の鋼E群〜
J群を表7及び表8記載の条件で熱間圧延、短時間熱延
板焼鈍、冷間圧延、仕上焼鈍に供し、板厚0.5mmの
鋼板を得た。これら鋼板からリング状試験片を打ち抜
き、磁気特性を測定した結果を表7〜表8に併せて示
す。同表によれば、巻取のままの〔実施例1〕と同様
に、短時間の熱延板焼鈍を付加した場合でも、本発明鋼
は成分、プロセス条件に拘りなくGe無添加のBase
鋼に比べて著しく高磁束密度−低鉄損化すること、一
方、比較鋼の磁気特性はあまり改善されず、本発明鋼の
それと比べて著しく劣ることが判る。
J群を表7及び表8記載の条件で熱間圧延、短時間熱延
板焼鈍、冷間圧延、仕上焼鈍に供し、板厚0.5mmの
鋼板を得た。これら鋼板からリング状試験片を打ち抜
き、磁気特性を測定した結果を表7〜表8に併せて示
す。同表によれば、巻取のままの〔実施例1〕と同様
に、短時間の熱延板焼鈍を付加した場合でも、本発明鋼
は成分、プロセス条件に拘りなくGe無添加のBase
鋼に比べて著しく高磁束密度−低鉄損化すること、一
方、比較鋼の磁気特性はあまり改善されず、本発明鋼の
それと比べて著しく劣ることが判る。
【0025】〔実施例3〕表3及び表4記載の鋼H群〜
J群を表9に記載の条件で熱間圧延、長時間熱延板焼
鈍、冷間圧延、仕上焼鈍に供し、板厚0.5mmの鋼板
を得た。これら鋼板からリング状試験片を打ち抜き、磁
気特性を測定した結果を表9に併せて示す。同表より、
長時間の熱延板焼鈍を付加した場合にも、成分、プロセ
ス条件に拘りなく、本発明鋼はGe無添加のBase鋼
に比べて著しく高磁束密度−低鉄損化すること、また、
比較鋼の磁気特性は本発明鋼のそれと比べて著しく劣る
ことが判る。
J群を表9に記載の条件で熱間圧延、長時間熱延板焼
鈍、冷間圧延、仕上焼鈍に供し、板厚0.5mmの鋼板
を得た。これら鋼板からリング状試験片を打ち抜き、磁
気特性を測定した結果を表9に併せて示す。同表より、
長時間の熱延板焼鈍を付加した場合にも、成分、プロセ
ス条件に拘りなく、本発明鋼はGe無添加のBase鋼
に比べて著しく高磁束密度−低鉄損化すること、また、
比較鋼の磁気特性は本発明鋼のそれと比べて著しく劣る
ことが判る。
【0026】〔実施例4〕表3に記載の鋼E群、F群を
表10及び表11に記載の条件で熱間圧延−冷間圧延−
仕上焼鈍(熱延板焼鈍は無し)、あるいは熱間圧延−短
時間熱延板焼鈍−冷間圧延−仕上焼鈍に供した後、一部
はスキンパス圧延を施し、また他の一部はスキンパス圧
延を行なわず、板厚0.5mmの鋼板とした。これらの
鋼板からリング状試験片を打ち抜き、これを750℃×
2hの歪取焼鈍に供した後の磁気特性を測定することで
セミプロセス材としての特性を評価した。その結果を表
10及び表11に併せて示す。同表から明らかなよう
に、鋼E群、F群とも、すなわち成分系に拘りなく、ま
た熱延板焼鈍の有無やスキンパス圧延の有無、あるいは
その他のプロセス条件に拘りなく、本発明鋼はGe無添
加のBase鋼や比較鋼に比べて著しく高磁束密度−低
鉄損化していることが判る。すなわち、本発明鋼による
磁気特性の改善は、スキンパス圧延を施す従来のセミプ
ロセス材にも、あるいはスキンパス圧延を行なわないタ
イプのセミプロセス材にも適用可能であることが判る。
表10及び表11に記載の条件で熱間圧延−冷間圧延−
仕上焼鈍(熱延板焼鈍は無し)、あるいは熱間圧延−短
時間熱延板焼鈍−冷間圧延−仕上焼鈍に供した後、一部
はスキンパス圧延を施し、また他の一部はスキンパス圧
延を行なわず、板厚0.5mmの鋼板とした。これらの
鋼板からリング状試験片を打ち抜き、これを750℃×
2hの歪取焼鈍に供した後の磁気特性を測定することで
セミプロセス材としての特性を評価した。その結果を表
10及び表11に併せて示す。同表から明らかなよう
に、鋼E群、F群とも、すなわち成分系に拘りなく、ま
た熱延板焼鈍の有無やスキンパス圧延の有無、あるいは
その他のプロセス条件に拘りなく、本発明鋼はGe無添
加のBase鋼や比較鋼に比べて著しく高磁束密度−低
鉄損化していることが判る。すなわち、本発明鋼による
磁気特性の改善は、スキンパス圧延を施す従来のセミプ
ロセス材にも、あるいはスキンパス圧延を行なわないタ
イプのセミプロセス材にも適用可能であることが判る。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】
【表6】
【0033】
【表7】
【0034】
【表8】
【0035】
【表9】
【0036】
【表10】
【0037】
【表11】
【0038】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、成
分、特にGe量を適量添加するだけで、長時間の熱延板
焼鈍や2回冷圧による中間焼鈍を実施する等、複雑且つ
生産性を低下させるような工程を採ることなく、磁束密
度が高く、鉄損の低い磁気特性に優れた無方向性電磁鋼
板を提供することができる。また、本発明鋼板は特別な
製造プロセスによることなく、通常の製造プロセスによ
り容易に製造でき、また、フルプロセス材のみならず、
セミプロセス材にも適用可能であり、その適用範囲が広
いという利点がある。
分、特にGe量を適量添加するだけで、長時間の熱延板
焼鈍や2回冷圧による中間焼鈍を実施する等、複雑且つ
生産性を低下させるような工程を採ることなく、磁束密
度が高く、鉄損の低い磁気特性に優れた無方向性電磁鋼
板を提供することができる。また、本発明鋼板は特別な
製造プロセスによることなく、通常の製造プロセスによ
り容易に製造でき、また、フルプロセス材のみならず、
セミプロセス材にも適用可能であり、その適用範囲が広
いという利点がある。
【図1】Si+Al:略0.15wt%材において、G
e量が磁束密度および鉄損に及ぼす影響を示してる。
e量が磁束密度および鉄損に及ぼす影響を示してる。
【図2】Si+Al:略1.55wt%材において、G
e量が磁束密度および鉄損に及ぼす影響を示してる。
e量が磁束密度および鉄損に及ぼす影響を示してる。
【図3】Si+Al:略1.90wt%材において、G
e量が磁束密度および鉄損に及ぼす影響を示してる。
e量が磁束密度および鉄損に及ぼす影響を示してる。
【図4】Si+Al:略3.53wt%材において、G
e量が磁束密度および鉄損に及ぼす影響を示してる。
e量が磁束密度および鉄損に及ぼす影響を示してる。
Claims (1)
- 【請求項1】 C:0.0050wt%以下、Si:
0.1〜3.5wt%、Mn:0.1〜0.9wt%、
P:0.2wt%以下、S:0.015wt%以下、A
l:1.5wt%以下、N:0.0050wt%以下、
Ge:0.010〜0.100wt%を含み、残部Fe
および不可避的不純物からなる磁気特性に優れた無方向
性電磁鋼板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3084691A JP2581335B2 (ja) | 1991-03-25 | 1991-03-25 | 磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3084691A JP2581335B2 (ja) | 1991-03-25 | 1991-03-25 | 磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH04297557A JPH04297557A (ja) | 1992-10-21 |
JP2581335B2 true JP2581335B2 (ja) | 1997-02-12 |
Family
ID=13837693
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3084691A Expired - Fee Related JP2581335B2 (ja) | 1991-03-25 | 1991-03-25 | 磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2581335B2 (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018117598A1 (ko) * | 2016-12-19 | 2018-06-28 | 주식회사 포스코 | 무방향성 전기강판 및 그 제조방법 |
KR20190078251A (ko) * | 2017-12-26 | 2019-07-04 | 주식회사 포스코 | 무방향성 전기강판 및 그 제조방법 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2746631B2 (ja) * | 1989-01-25 | 1998-05-06 | 川崎製鉄株式会社 | 鉄損特性の優れた高磁束密度方向性けい素鋼板およびその製造方法 |
-
1991
- 1991-03-25 JP JP3084691A patent/JP2581335B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018117598A1 (ko) * | 2016-12-19 | 2018-06-28 | 주식회사 포스코 | 무방향성 전기강판 및 그 제조방법 |
KR101902438B1 (ko) | 2016-12-19 | 2018-09-28 | 주식회사 포스코 | 무방향성 전기강판 및 그 제조방법 |
US11060170B2 (en) | 2016-12-19 | 2021-07-13 | Posco | Non-oriented electrical steel sheet and manufacturing method therefor |
KR20190078251A (ko) * | 2017-12-26 | 2019-07-04 | 주식회사 포스코 | 무방향성 전기강판 및 그 제조방법 |
WO2019132172A1 (ko) * | 2017-12-26 | 2019-07-04 | 주식회사 포스코 | 무방향성 전기강판 및 그 제조방법 |
KR102018181B1 (ko) * | 2017-12-26 | 2019-09-04 | 주식회사 포스코 | 무방향성 전기강판 및 그 제조방법 |
JP2021509447A (ja) * | 2017-12-26 | 2021-03-25 | ポスコPosco | 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
JP7142095B2 (ja) | 2017-12-26 | 2022-09-26 | ポスコ | 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
US11634786B2 (en) | 2017-12-26 | 2023-04-25 | Posco Co., Ltd | Non-oriented electrical steel sheet and method for preparing same |
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH04297557A (ja) | 1992-10-21 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |