JP2578588B2 - 体外循環治療用吸着カラムの保存安定性を改良する方法 - Google Patents

体外循環治療用吸着カラムの保存安定性を改良する方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は体外循環治療用吸着カラ
ムの保存安定性を改良する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、硫酸化多糖類を水不溶性担体
に固定した吸着体を、水を内容液としてカラムに充填し
て体外循環治療用吸着カラムが製造され、使用されてい
る。 【0003】水を内容液として使用するのは、安全性の
理由から、製造された吸着体が通常蒸気滅菌されるた
め、ぬれた状態で吸着体がえられ、水を内容液として用
いると乾燥させたりする必要がないこと、および体外循
環治療用吸着カラムに用いるばあいには、必ず一旦水を
内容液としたのち使用されることなどの理由による。 【0004】製造された体外循環治療用吸着カラムは、
長いばあいには約1年程度保存したのち使用されること
もあるので、少なくとも1年程度性能を保持することが
必要である。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】硫酸化多糖類、とくに
ヘパリン以外の硫酸化多糖類を水不溶性担体に固定し、
水を内容液としてカラムに充填して製造した体外循環治
療用吸着カラムを長期間保存すると、固定された硫酸化
多糖類が加水分解されたりして脱離したりする。加水分
解が進行すると硫酸系化合物が生成するため、さらに加
水分解が加速される。その結果、固定された硫酸化多糖
類の量が減少し、体外循環治療用吸着カラムの性能が低
下する。 【0006】本発明は前記のごとき問題を解決するため
になされたものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は緩衝作用を有す
る化合物を 0.001〜10%(重量%、以下同様)含有する
pH5〜 8.5の液を、カラムに充填した硫酸化多糖類(た
だし、ヘパリンを除く)硬質ゲルである水不溶性担体
に固定した吸着体の内容液として用いることを特徴とす
る体外循環治療用吸着カラムの保存安定性を改良する方
法に関する。 【0008】 【実施例】本発明に用いる硫酸化多糖類(ただし、ヘパ
リンを除く)としては、たとえばデキストラン硫酸、コ
ンドロイチン硫酸、コンドロイチンポリ硫酸、ヘパラン
酸、ケラタン硫酸、ヘパリチン硫酸、キシラン硫酸、カ
ロニン硫酸、セルロース硫酸、キチン硫酸、キトサン硫
酸、ペクチン硫酸、イヌリン硫酸、アルギン酸硫酸、グ
リコーゲン硫酸、ポリラクトース硫酸、カラゲニン硫
酸、デンプン硫酸、ポリグルコース硫酸、ラミナリン硫
酸、ガラクタン硫酸、レバン硫酸、メベサルフェートな
どがあげられるが、これらに限定されるものではなく、
一般に体外循環治療用吸着体の製造に用いられるヘパリ
ン以外の硫酸化多糖類であれば使用しうる。前記硫酸化
多糖類の具体例のうちでは、デキストラン硫酸、コンド
ロイチンポリ硫酸が好ましい。 【0009】本発明に用いる硬質ゲルである水不溶性担
体としては、たとえば通常アフィニティークロマトグラ
フィーに用いられる担体である多孔質ガラス、多孔質シ
リカなどの無機多孔体、合成高分子からなるポリマーゲ
ル、多孔質セルロースゲルなどがあげられるが、これら
に限定されるものではない。これらの硬質ゲルを担体と
して用いるばあい、充分な体液流量がえられる、詰まり
を生じにくいなどの理由から好ましく、とりわけ多孔質
セルロースゲルが、 (1)機械的強度が比較的高く、強靭であるため撹拌な
どの操作により破壊されたり微粉を生じたりすることが
少なく、カラムに充填したばあいに体液を高流速で流し
ても圧密化したり、目詰まりしたりしないので高流速で
流すことが可能となり、また細孔構造が高圧蒸気滅菌な
どによって変化を受けにくい、 (2)ゲルがセルロースで構成されているため親水性で
あり、硫酸化多糖類の結合に利用しうる水酸基が多数存
在し、非特異吸着も少ない、 (3)空孔容積を大きくしても比較的強度が高いため、
軟質ゲルに劣らない吸着容量がえられる、 (4)安全性が合成高分子ゲルなどに比べて高いなどの
優れた点を有しており、該多孔質セルロースゲルに硫酸
化多糖類を保持させることによって、高流速で選択的に
有害成分を吸着除去しうる吸着体がえられる。なお多孔
質セルロースゲルを用いた吸着体については特開昭59
−193135号公報に詳細に記載されている。 【0010】本発明においては硫酸化多糖類(ただし、
ヘパリンを除く)硬質ゲルである水不溶性担体に固定
して体外循環治療用吸着体が製造される。 【0011】水不溶性担体に硫酸化多糖類を固定させる
方法には公知の種々の方法を用いることができる。すな
わち、物理的方法、イオン結合法、共有結合法などがあ
げられる。固定化された硫酸化多糖類は脱離しにくいこ
とが重要であるため、結合の強固な共有結合法が好まし
く、その他の方法を用いるにしても脱離を防ぐようにす
ることが好ましい。また必要に応じてスペーサーを水不
溶性担体と硫酸化多糖類との間に導入してもよい。 【0012】本発明においてはこのようにして製造され
た体外循環治療用吸着体が、通常 121℃で20分間程度の
条件で、水性溶媒中で蒸気滅菌法により滅菌され、緩衝
作用を有する化合物を 0.001〜10%、好ましくは 0.01
〜2%含有するpH5〜 8.5の内容液とともに所定のカラ
ムに充填して、本発明の効果を奏する体外循環治療用カ
ラムが製造される。 【0013】蒸気滅菌する際の水性溶媒は通常は水であ
るが、本発明に用いる緩衝作用を有する化合物を 0.001
〜10%程度、好ましくは 0.01 〜2%程度含有するpH5
〜 8.5の内容液として用いうる液を水性溶媒として用い
てもよい。前記内容液として用いうる液を蒸気滅菌する
際の水性溶媒として用いると、蒸気滅菌時に生ずるpH変
化にもとづく性能低下が少なくなり好ましい。また水性
溶媒が内容液としてそのまま使用しうる。 【0014】前記緩衝作用を有する化合物としては、た
とえばクエン酸、リン酸、酢酸、ホウ酸、酒石酸、炭
酸、マレイン酸、グリシンなど、あるいはこれらのナト
リウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などのように人体
に安全なものが好ましく、これらは単独で用いてもよ
く、2種以上混合して用いてもよい。 【0015】前記内容液中にしめる緩衝作用を有する化
合物の量が 0.001%未満になると、内容液のpHを長期間
にわたって5〜 8.5の範囲に維持することができなくな
り、また10%をこえると、体外循環治療用吸着カラムを
使用するために行なう洗浄に時間がかかったり、保存中
に緩衝作用を有する化合物が析出したりする。 【0016】前記内容液のpHが5未満になると、長期間
保存したばあいに吸着体の吸着活性の低下が著しくなっ
たり、固定された硫酸化多糖類の加水分解による脱離が
著しくなったりする。またpHが 8.5をこえてもpH5未満
と同様の現象が生じる。なおpH5未満のばあいには吸着
体の吸着活性の低下が主としておこり、pH9をこえるば
あいには硫酸化多糖類の加水分解による脱離が主として
おこり、いずれも吸着体性能が低下する。 【0017】このようにして製造された滅菌された体外
循環治療用吸着カラムは、通常の体外循環治療用吸着カ
ラムが用いられる、たとえば血液、血漿などを吸着カラ
ムに通して行なう体外循環治療などの用途に限定なく使
用しうる。 【0018】つぎに本発明の方法を実施例にもとづき説
明する。 【0019】製造例1 架橋ポリアクリレートゲル(全多孔性のハードゲル)で
あるトヨパールHW75(蛋白質の排除限界50,000,000、粒
径50〜 100μm、東洋曹達(株)製)10mlに飽和NaOH
水溶液6mlおよびエピクロルヒドリン15mlを加えて
撹拌しながら、50℃で2時間反応させ、エポキシ化ゲル
をえた。えられたゲルに濃アンモニア水20mlを加えて
50℃で2時間撹拌し、アミノ基を導入した。 【0020】一方、ヘパリン 200mgを10mlの水に溶
解してpH4.5 に調整したのち、上記アミノ基を導入した
ゲル3mlを加えた。そののち1−エチル−3−(ジメ
チルアミノプロピル)−カルボジイミド 200mgをpHを
4.5に保ちながら添加し、4℃で24時間振盪した。反応
終了後、2M食塩水溶液、 0.5M 食塩水溶液、水を用いて
この順に洗浄し、ヘパリン固定化ゲル(以下、A-1 とい
う)をえた。 【0021】製造例2 架橋ポリアクリレートゲルであるトヨパールHW75 10 m
lに、飽和NaOH水溶液6mlおよびエピクロルヒドリン
15mlを加えて撹拌しながら、50℃で2時間反応させた
のち、ゲルをアルコールおよび水を用いてこの順に洗浄
してエポキシ化されたゲルをえた。 【0022】えられたゲル2mlに極限粘度数 0.055dl
/g、平均重合度40、硫黄含量19%のデキストラン硫酸ナ
トリウム 0.5gおよび水2mlを加えた(デキストラン
硫酸ナトリウムの濃度は約13%)。ついでpH12に調整し
て40℃で16時間振盪し、ゲルを濾別し、2M食塩水溶液、
0.5M 食塩水溶液、水を用いてこの順に洗浄して、デキ
ストラン硫酸ナトリウムが固定されたゲル(以下、A-2
という)をえた。 【0023】製造例3 デキストラン硫酸をヘパリンにかえたほかは製造例2と
同様にしてヘパリンが固定されたトヨパールHW75(以
下、A-3 という)をえた。 【0024】製造例4 多孔質ガラスFPG2000 (平均粒径1950Å、比表面積13m
2 /g、粒径80〜 120メッシュ、和光純薬(株)製)を
希硝酸中で3時間加熱し、水洗乾燥後 500℃で3時間加
熱したのち、γ−アミノプロピルトリエトキシシランの
10%トルエン溶液中に入れ、3時間還流し、メタノール
で洗浄して、γ−アミノプロピル処理ガラスをえた。 【0025】一方、ヘパリン 200mgを10mlの水に溶
解し、pH4.5 に調整した。これに2gのγ−アミノプロ
ピル処理ガラスを加えたのち、1−エチル−3−(ジメ
チルアミノプロピル)カルボジイミド 200mgをpH4.5
に保ちながら添加し、4℃で24時間振盪した。反応終了
後、2M食塩水溶液、 0.5M 食塩水溶液、水を用いてこの
順に洗浄し、ヘパリンが固定された多孔質ガラス(以
下、B-1 という)をえた。 【0026】製造例5 ヘパリンをコンドロイチンポリ硫酸にかえたほかは製造
例4と同様にしてコンドロイチンポリ硫酸を固定したFP
G2000 (以下、B-2 という)をえた。 【0027】製造例6 デキストラン硫酸 800mgを0.25M NaIO4 溶液10mlに
溶解し、室温で4時間撹拌後、エチレングリコール 200
mgを加えて1時間撹拌した。この溶液をpH8に調整し
たのち、製造例4と同様にしてえられたγ−アミノプロ
ピル処理FPG2000 4mlを加え、24時間振盪した。反応
終了後、ゲルを濾別、水洗し、これを1%NaBH4 水溶液
10mlに懸濁して15分間還元し、濾過、水洗してデキス
トラン硫酸を固定したFPG2000 (以下、B-3 という)を
えた。 【0028】製造例7 多孔質ガラスFPG2000 を希硝酸中で3時間加熱し、水洗
後 500℃で3時間加熱した。これをγ−グリシドキシプ
ロピルトリメトキシシランの10%トルエン溶液中に入
れ、3時間還流し、メタノールで洗浄してγ−グリシド
キシプロピル処理ガラスをえた。 【0029】一方、デキストラン硫酸2gを10mlの水
に溶解し、pH9.2 に調整したのち、これに2gの上記γ
−グリシドキシプロピル処理ガラスを加えて45℃で16時
間反応させた。反応終了後2M食塩水溶液、 0.5M 食塩水
溶液、水を用いてこの順に洗浄し、デキストラン硫酸を
固定したFPG 2000(以下、B-4 という)をえた。 【0030】製造例8 多孔質セルロースゲルとしてCKゲルA-3 (排除限界分子
量50,000,000、粒径45〜 105μm、チッソ(株)製)10
mlに20%NaOH4g、ヘプタン12gおよびノニオン系界
面活性剤TWEEN20 を1滴加えた。40℃で2時間撹拌後、
エピクロルヒドリン5gを加えて2時間撹拌し、ゲルを
水洗濾過してエポキシ化セルロースゲルをえた。導入さ
れたエポキシ基の量はカラム体積1mlあたり30μMで
あった。 【0031】えられたゲル2mlに極限粘度数 0.027dl
/g、硫黄含量17.7%のデキストラン硫酸ナトウム0.12g
および水2mlを加え(デキストラン硫酸ナトリウムの
濃度は約 2.5%)、pH11に調整して45℃で16時間振盪し
た。そののちゲルを濾別して、2M食塩水溶液、 0.5M 食
塩水溶液および水を用いてこの順に洗浄し、デキストラ
ン硫酸ナトウムが固定されたセルロースゲル(以下、C-
1 という)をえた。 【0032】製造例9 CKゲルA-3 を吸引濾過して10gとり、これに20%NaOH 4
gおよびヘプタン12gを加え、さらにノニオン系界面活
性剤TWEEN20 を1滴加えて撹拌し、ゲルを分散させた。
40℃で2時間撹拌後、これにエピクロルヒドリン5gを
加えて40℃で2時間撹拌した。静置後上澄液をすて、ゲ
ルを水洗濾過してエポキシ化ゲルをえた。これに15ml
の濃アンモニア水を加えて40℃で 1.5時間撹拌し、内容
物を吸引濾過、水洗してアミノ基の導入されたセルロー
スゲルをえた。 【0033】一方、ヘパリン 200mgを10mlの水に溶
解し、これに上記アミノ基導入セルロースゲルを加えて
pH4.5 に調整した。そののち1−エチル−3−(ジメチ
ルアミノプロピル)−カルボジイミド 200mgをpH4.5
に保ちながら添加し、4℃で24時間振盪した。反応終了
後、2M食塩水溶液、 0.5M 食塩水溶液、水を用いてこの
順に洗浄し、ヘパリン固定化ゲル(以下、C-2 という)
をえた。 【0034】製造例10 デキストラン硫酸をコンドロイチンポリ硫酸にかえたほ
かは製造例8と同様にしてコンドロイチンポリ硫酸が固
定されたCKゲルA-3 (以下、C-3 という)をえた。 【0035】製造例11 デキストラン硫酸をヘパリンにかえたほかは製造例8と
同様にしてヘパリンの固定されたCKゲルA-3 (以下、C-
4 という)をえた。 【0036】実施例1〜11および比較例1−1〜7−2 製造例1〜11でえられた第1表に示すゲル(吸着体)10
g(湿重量)を硬質ガラス製フラスコにとり、第1表に
示す内容液10mlを加え、密栓して40℃の恒温器中に2
カ月間おいた。 【0037】各吸着体につき放置前、放置後の内容液の
pH、放置後の内容液への溶出物量および放置前、放置後
の担体に固定されているリガンド量を測定した。結果を
表1に示す。 【0038】 【表1】【0039】 【発明の効果】本発明の方法によると、体外循環治療用
吸着カラムは通常の保存条件よりもきびしい40℃という
条件で2カ月間保存しても、リガンドの脱離および溶出
物量などが少なく、体外循環治療用吸着カラムとして良
好な品質を保持している。
フロントページの続き (56)参考文献 HEPARIN−SEPHAROSE CL−6B FOR AFFINIT Y CHROMATOGRAPHY、フ ァルマシア・ジャパン株式会社、1983年 PROC.NATL.ACAD.SC I.USA 78(1981)、P611−615

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1 緩衝作用を有する化合物を 0.001〜10重量%含有す
    るpH5〜 8.5の液を、カラムに充填した硫酸化多糖類
    (ただし、ヘパリンを除く)硬質ゲルである水不溶性
    担体に固定した吸着体の内容液として用いることを特徴
    とする体外循環治療用吸着カラムの保存安定性を改良す
    る方法。 2 前記内容液として用いる液が緩衝作用を有する化合
    物を 0.01 〜2重量%含有する特許請求の範囲第1項記
    載の方法。 3 緩衝作用を有する化合物がクエン酸、リン酸、酢
    酸、ホウ酸、酒石酸、炭酸、マレイン酸、グリシンまた
    はそれらの塩の少なくとも1種である特許請求の範囲第
    1項または第2項記載の方法。
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JP4226050B1 (ja) * 2007-09-12 2009-02-18 株式会社Reiメディカル 体液浄化処理用吸着カラム
JP5924637B2 (ja) * 2011-07-11 2016-05-25 国立研究開発法人国立循環器病研究センター Pcsk9の吸着器

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