JP2574621B2 - 長尺成形体の焼成炉 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、セラミックス材料から
なる長尺成形体の焼成炉に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】セラミックスフィルター、セラミックス
ヒーター等においては、細長い筒状の成形体を焼成する
必要がある。このため、細長い成形体の上端部をピン等
で固定し、この長尺成形体を吊り下げて焼成することが
行われている。

【０００３】従来の焼成炉においては、円環形状の耐火
レンガを多数、炉内に積み上げ、この積層体の上端面
に、耐火物製の平板を複数個水平に架け渡す。そして、
隣り合う平板の間に長尺成形体を挟み、長尺成形体の上
端部をピン等で固定し、吊り下げる。また、炉体の炉壁
に耐火レンガを積み、炉壁の上端面に上記平板を水平に
架け渡す方法もある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の耐火レ
ンガは、焼成工程を繰り返し実施するうちに徐々に変形
し、寸法が変ってくる。このため、支持用の平板の両端
の高さが徐々に食い違ってくるので、平板が傾き、水平
度が失われてくる。この結果、平板から吊り下げられた
長尺成形体の下端部が互いに接触したり、更には長尺成
形体を所定位置に吊り下げることが難しくなるという問
題が生じた。

【０００５】本発明の課題は、セラミックス材料からな
る長尺成形体の上端部を支持材によって支持することで
長尺成形体を炉内に吊り下げ、焼成する焼成炉であっ
て、焼成工程を繰り返し実施しても支持材が傾斜してこ
ない焼成炉を提供することである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、耐火物からな
る支持材が炉内に水平方向に支持され、セラミックス材
料からなる長尺成形体の上端部を前記支持材によって支
持することで前記長尺成形体を炉内に吊り下げ、この長
尺成形体を焼成する焼成炉であって、前記支持材を支持
する金属部材と、この金属部材を冷却する冷却機構と、
前記金属部材を固定する炉外の構造物とを備えている、
長尺成形体の焼成炉に係るものである。

【０００７】

【作用】本発明によれば、支持材を金属部材によって支
持し、炉外の構造物によってこの金属部材を固定してい
るので、焼成工程を多数回繰り返しても、支持材の支持
高さは変動せず、従って支持材が傾斜してくることはな
い。

【０００８】また、上記金属部材を冷却する冷却機構を
備えているので、焼成時においても、金属部材を冷却す
ることで金属部材の膨張を抑えることができる。従っ
て、焼成時においても支持材の支持高さは変化せず、支
持材が傾斜することはない。

【０００９】

【実施例】図１は、平板状支持材４の端部の周辺を拡大
して示す断面図である。図２は、金属部材10、耐火物
７、平板状支持材４等のみを概略的に示す平面図であ
る。即ち、図２においては、上記の主要部材の平面的形
状のみを図示してある。

【００１０】本実施例では、炉蓋１と炉体14との間に、
平板状支持材４の支持構造が形成されている。炉蓋１
は、矢印Ａのように上下動可能であり、炉蓋１にヒータ
ー２が固定されている。炉体14の内壁面に沿ってヒータ
ー15が設けられている。

【００１１】炉内空間３の上部には、特に図２に示すよ
うに、複数本の平板状支持材４が水平方向に架け渡され
ている。隣り合う平板状支持材４の間隙23に、それぞれ
複数本の長尺成形体５の上部が挿通されている。各長尺
成形体５の上部5aにそれぞれ貫通孔5bが設けられ、各貫
通孔5bにピン６が挿通されている。各ピン６の端部は、
それぞれ平板状支持材４の上側面4aによって支持されて
いる。

【００１２】本実施例では、炉内空間３の平面形状が略
正方形である。むろん、この平面形状は、長方形、円形
等、種々の形状とすることができる。炉体14の上に金属
部材10が配置される。本実施例では、金属部材10の平面
形状は口の字状である。炉外の構造物12の固定用枠13に
対して、金属部材10の炉外部分10a が機械的に固定され
ている。この固定方法は任意である。

【００１３】金属部材10の炉内部分10b は炉体14の直上
に位置するが、炉内部分10b と炉体14との間には空隙16
が形成されている。炉内部分10b の水平方向の全体に亘
って、水冷用の水流通孔11が設けられている。

【００１４】耐火物からなる平板７の平面形状も、図２
に示すように口の字状である。各平板状支持材４の端面
4cが、それぞれ平板７の内側面7aに当接する。平板７の
底面7bが金属部材10の上側面に当接し、平板７の外側面
7cが、固定用枠13に当接する。平板７の上部が炉蓋１に
嵌め合わされている。

【００１５】金属部材10と平板状支持材４との間には、
それぞれ耐火物からなる断熱材８，９が挟まれている。
断熱材８は平板状であり、平板状支持材４の底面4bの端
部に当接し、平板状支持材４の端部を直接に支持してい
る。断熱材９の幅方向断面は略Ｌ字状であり、垂直部分
9aと水平部分9bとからなる。垂直部分9aは、炉体14に嵌
め合わされ、かつ金属部材10の端面に当接している。炉
内部分10b の上に水平部分9bが支持され、水平部分9bの
上に断熱材８が支持されている。

【００１６】本実施例によれば、炉外の固定用枠13に対
して金属部材10が固定されているので、焼成工程を多数
回繰り返しても、平板状支持材４が傾斜してくることは
ない。また、金属部材10に、水冷用の水流通孔11が設け
られているので、焼成時に金属部材10を水冷し、金属部
材10の膨張を抑えることができる。この結果、平板状支
持材４の端部の高さの変動を抑え、傾斜を防ぐことがで
きる。

【００１７】また、金属部材10と炉体14との間に空隙16
が設けられているので、焼成時に炉体14が膨張し、冷却
時に炉体14が収縮しても、炉体14が金属部材10に接触し
たり、圧力を加えたりするのを防止できる。

【００１８】また、金属部材10と平板状支持材４との間
に、耐火物８，9bが挟まれている。これにより、平板状
支持材４からの熱伝導量を少なくし、金属部材10の温度
上昇を抑える効果がある。

【００１９】また、金属部材10と炉内空間３との間に、
耐火物からなる断熱材９（特に垂直部分9a）が介在して
いるので、炉内空間３からの金属部材10への熱伝導量を
少なくすることができる。

【００２０】また、従来は、炉内空間３に作業者が入
り、長尺成形体５を平板状支持材４に吊り下げる作業が
必要であった。ところが、長尺成形体５の長さが２ｍ以
上にもなると、作業者の身長を大きく超えるので、狭い
炉内空間３で上記作業を行うことは困難である。

【００２１】この点、本実施例では、炉蓋１が矢印Ａ方
向に上下動可能である。従って、炉蓋１を上方に動かし
て後、支持材４の上の方から長尺成形体５を差し込ん
で、平板状支持材４に吊り下げる作業を行い、次いで炉
蓋１を下方に動かし、図１に示すように設置することが
できる。炉外の空間には大きな余裕があるので、長尺成
形体５が長くなっても、炉体14の上方から長尺成形体５
を吊り下げる作業は容易である。

【００２２】上記において、支持材の形状は、平板状以
外に、角棒状、丸棒状等にすることができる。また、平
板状支持材４に長尺成形体５を吊り下げる方法として、
更に以下の方法が考えられる。

【００２３】(1)長尺成形体の上部5aに、ピン６に相当
する形状の棒状突出部を形成しておき、この棒状突出部
を平板状支持材４に載置する。 (2)長尺成形体５の上部5aに円錐台形状のフランジを設
け、このフランジを平板状支持材４に載置する。

【００２４】長尺成形体５の幅方向断面形状は、円形、
円環状、正方形等、任意の形状とできる。長尺成形体５
の材質も任意であるが、アルミナ、ジルコニア、窒化珪
素、ムライト等を例示できる。

【００２５】金属部材10の水流通孔11には、水以外の冷
媒液体又は冷媒気体を流通させることもできる。また、
金属部材10を熱電冷却素子で冷却することもできる。

【００２６】図３〜図６は、本発明の他の実施例を説明
するためのものである。本実施例では、台車式の炉体20
を用いる。図３に示すように、炉体20は、扉部20a と、
扉部20a の内側面に突出する突起20b と台座20c とから
なる。台座20c には車輪21が設けられており、炉体20
は、図示しないレール上を走行できるようになってい
る。

【００２７】扉部20a の内側に支持材22が水平方向に延
びており、複数本の長尺成形体５が支持材22に吊り下げ
られている。図４は、支持材22を示す斜視図である。平
板状部22a が互いにほぼ平行に複数列設けられ、各平板
状部22a の両端が、それぞれ平板状部22b に連続してい
る。この結果、隣り合う平板状部22a の間に、一定間隔
の細長い間隙23が形成される。

【００２８】そして、図５に示すように、各間隙23に長
尺成形体５を挿通し、各長尺成形体５の上端部5aをピン
６で平板状部22a に載置し、各長尺成形体を吊り下げ
る。支持材22の端部の支持方法は、図１に示したものと
同じなので、説明は省略する。ただし、支持材22、金属
部材10Ａ及び平板７Ａの平面的位置関係のみを、図５に
示す。

【００２９】本例では、金属部材10Ａの平面形状は長方
形である。そして、支持材22の端面22c が平板７Ａに当
接し、支持材22の端部が、金属部材10Ａの炉内部分10b
によって支持されている。

【００３０】そして、図３及び図５に示すように、長尺
成形体５を支持材22から吊り下げた後、炉体20を走行さ
せ、図６に示すように、本体27に嵌合させる。この状態
で、本体27、扉部20a 及び台座20c によって炉内空間28
が形成される。

【００３１】本実施例においては、前述した効果に加
え、炉体20を本体27と全く分離させた状態で、長尺成形
体５を支持材22から吊り下げる作業を行えるので、この
作業が極めて容易になる。

【００３２】

【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、支
持材を金属部材によって支持し、炉外の構造物によって
この金属部材を固定しているので、焼成工程を多数回繰
り返しても、支持材の支持高さは変動せず、従って支持
材が傾斜してくることはない。

【００３３】また、上記金属部材を冷却する冷却機構を
備えているので、焼成時においても、金属部材を冷却す
ることで金属部材の膨張を抑えることができる。従っ
て、焼成時においても支持材の支持高さは変化せず、支
持材が傾斜することはない。

【図面の簡単な説明】

【図１】平板状支持材４の端部の周辺を拡大して示す断
面図である。

【図２】平板状支持材４、平板７、金属部材10の平面的
形状を示すための概略平面図である。

【図３】台車のついた炉体20を概略的に示す正面図であ
る。

【図４】支持材22を示す斜視図である。

【図５】支持材22、平板７Ａ、金属部材10Ａの平面的形
状を示すための概略平面図である。

【図６】炉体20を本体27に嵌め合わせて焼成炉を形成し
た状態を、概略的に示す正面図である。

【符号の説明】

１ 炉蓋 3,28 炉内空間 4,22 支持材 ５ 長尺成形体 7,7A 耐火物からなる平板 8,9 耐火物からなる断熱材 10,10A 金属部材 １１ 水冷のための水流通孔 １２ 炉外の構造物 １３ 金属部材の固定用枠 １４ 炉体 １６ 炉体14と金属部材10との空隙 ２３ 長尺成形体を挿通するための間隙

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−190764（ＪＰ，Ａ) 実開 平５−3897（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭59−80697（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭61−93795（ＪＰ，Ｕ)

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 耐火物からなる支持材が炉内に水平方向
   に支持され、セラミックス材料からなる長尺成形体の上
   端部を前記支持材によって支持することで前記長尺成形
   体を炉内に吊り下げ、この長尺成形体を焼成する焼成炉
   であって、前記支持材を支持する金属部材と、この金属
   部材を冷却する冷却機構と、前記金属部材を固定する炉
   外の構造物とを備えている、長尺成形体の焼成炉。
2. 【請求項２】 前記金属部材と炉体との間に空隙が形成
   されている、請求項１記載の長尺成形体の焼成炉。
3. 【請求項３】 前記金属部材と前記支持材との間に耐火
   物が挟まれている、請求項１記載の長尺成形体の焼成
   炉。