JP2573134B2 - 片面溶接用裏フラックス - Google Patents

片面溶接用裏フラックス

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JP2573134B2 JP5012761A JP1276193A JP2573134B2 JP 2573134 B2 JP2573134 B2 JP 2573134B2 JP 5012761 A JP5012761 A JP 5012761A JP 1276193 A JP1276193 A JP 1276193A JP 2573134 B2 JP2573134 B2 JP 2573134B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フラックス銅バッキン
グ片面溶接において、優れたビード形状と共に、溶接
後、銅当金へのこびりつきがない片面溶接用裏フラック
スに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、フラックス銅バッキング片面
溶接法は、鋼板裏面にフラックスが密着するため、バッ
キングの当りがよく、またフラックスの下の銅当金で裏
ビードの余盛高さを抑制するので、大電流を使用しても
美麗かつ健全なビードが得られるため、厚板の高能率溶
接法として造船を中心にさかんに適用されてきた溶接法
で、図2(a)、(b)に示すように、突き合わされた
被溶接材1、1′の裏面から、銅当金2上に層状に散布
した裏フラックス4、または耐火性キャンパス7内に収
納された裏フラックス4をエアーホース5等の押上機構
により被溶接材1、1′の裏面に押圧しておき、表側よ
りワイヤ3、フラックス6を用いてサブマージアーク溶
接を行い、被溶接材の表側と裏側に同時にビードを形成
する溶接方法である。このような片面溶接法において
は、銅当金上に裏フラックスを散布して溶接を行うが、
良好な裏ビードを得るために特公昭48−22572号
公報、特公昭49−31417号公報、特公昭56−2
0960号公報、特公昭61−13917号公報に開示
されている如く、通常のフラックス組成中に熱硬化性樹
脂を含有する裏フラックスが提案されている。また、樹
脂の変質によりフラックスが固化することを防止する目
的で、特公昭54−25507号公報なども開示されて
いる。しかしながら、この種の熱硬化性樹脂を含有する
裏フラックスでは、溶接終了後、固化した裏フラックス
が銅当金にこびりつき、この除去に多大な労力を要する
ため、工程上の大きな問題となっている。即ち、熱硬化
性樹脂は、比較的低温(80〜90℃)で、かつ銅当金
全体に幅広く溶融するため、固化した裏フラックスと銅
当金の剥離を著しく損ねている。なお、特公昭59−4
4958号公報等に開示されている如く、樹脂を含有し
ない粉粒体を下層に散布し、その上に樹脂含有裏フラッ
クスを散布する2層散布が提案されているが、2層の粉
体を正確な高さで均一に散布することが非常に難しいた
め、実用化されていないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記フラッ
クス銅バッキング片面溶接法において、溶接終了時に銅
当金へのこびりつきがない新規な裏フラックスを提供す
ることを目的としたものである。
【0004】
【課題を達成するための手段】本発明者らは上記事情に
鑑み種々検討した結果、フラックス銅バッキング片面溶
接法において、散布台車により裏フラックスを銅当金上
に散布する際、散布された裏フラックスは、図1に示す
ように粗粒の粒は上層に、細粒の粒は下層に散布される
ことが観察された。加えて、実作業では、裏フラックス
を鋼板の裏面に押圧した後、溶接直前に裏フラックスと
鋼板をより密着させるため、鋼板の表面より開先近傍を
鉄塊、鉄棒等により打撃するが、この衝撃により細粒の
粒は、下層に集積することがより助長される。従って、
こびりつきの主原因は、細粒の粒にあると考えられ、細
粒部に熱硬化性樹脂が含有されなければ、裏フラックス
の銅当金へのこびりつきを解消できる。一方、裏ビード
形成の面から、熱硬化性樹脂は必須であり、鋼板に密着
する粗粒部には、熱硬化性樹脂を含有する必要がある。
即ち、良好な裏ビード形成を行い、かつ裏フラックスの
銅当金へのこびりつきを解消するには、(1)熱硬化性
樹脂を含有するフラックスと熱硬化性樹脂を含有しない
粉粒体との混合フラックスとすること、(2)熱硬化性
樹脂を含有するフラックスの粒度構成は、熱硬化性樹脂
を含有しない粉粒体の粒度構成よりも粗粒であることが
重要であることを見出した。
【0005】即ち、本発明の要旨とするところは、フラ
ックス銅バッキング片面溶接用裏フラックスであって、
熱硬化性樹脂を含有するフラックスと、熱硬化性樹脂を
含有しない粉粒体を混合してなるフラックスであり、熱
硬化性樹脂を含有するフラックスの粒度構成は、熱硬化
性樹脂を含有しない粉粒体の粒度構成よりも粗粒である
ことを特徴とする片面溶接用裏フラックスを第1の発明
とし、更に上記第1発明の裏フラックスの熱硬化性樹脂
を含有するフラックスの粒径が、212μmより粗い粒
子を30%以上含有し、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒
体の粒径が、850μmより細かい粒子を50%以上含
有することを特徴とする片面溶接用裏フラックスを第2
の発明とするものである。
【0006】
【作用】以下に本発明について詳細に説明する。まず、
第1、第2発明においては、熱硬化性樹脂を含有するフ
ラックスと熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体を混合した
フラックスであることが必要である。熱硬化性樹脂を含
有するフラックスは、溶接が行われる前に溶接熱により
樹脂が溶融してフラックスを固化するため、フラックス
は鋼板の裏面形状に沿って密接し、良好な裏ビードを得
るのに有効である。一方、溶接終了後、固化した裏フラ
ックスが銅当金にこびりつくことを防止するには、熱硬
化性樹脂を含有しない粉粒体が必要である。この場合、
熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体の割合としては、0.
5〜30%が望ましい。
【0007】更に熱硬化性樹脂を含有するフラックスの
粒度構成は、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体の粒度構
成よりも粗粒であることが必要である。これは、前述の
通り、裏フラックスを散布台車により銅当金上に散布す
る際、散布された裏フラックスは、図1に示すように粗
粒の粒は上層に、細粒の粒は下層に散布されるからであ
る。熱硬化性樹脂を含有するフラックスの粒度構成が、
熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体の粒度構成よりも粗粒
であることにより、熱硬化性樹脂を含有するフラックス
は上層に、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体は下層に集
積し、熱硬化性樹脂が直接銅当金に当たらず、裏フラッ
クスのこびりつきを防止できる。
【0008】なお、熱硬化性樹脂を含有するフラックス
の粒度構成は、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体の粒度
構成よりも粗粒であるというのは、JIS Z−880
1規格における呼び寸法850μm以下のいかなるふる
いを用いてふるい分けを行っても、ふるい面上に残る熱
硬化性樹脂を含有するフラックスの割合が、多いことで
ある。
【0009】次に第2発明における熱硬化性樹脂を含有
するフラックスの粒径は、212μmより粗い粒が30
%以上必要である。即ち、212μmより細かい粒が多
いと、フラックスを銅当金上に散布した際、下層に散布
され、上記効果が得られないばかりか、フラックスの固
化力が低下し、健全な裏ビード形状が得られない。ここ
で、212μmより粗い粒が100%であるような粒度
構成でもかまわない。
【0010】次に第2発明における熱硬化性樹脂を含有
しない粉粒体の粒径は、850μmより細かい粒が50
%以上必要である。即ち、850μmより粗い粒が多い
と、フラックスを銅当金上に散布した際、上層に散布さ
れ、上記裏フラックスのこびりつき防止の効果が得られ
ないばかりか、フラックスの固化力が低下し、健全な裏
ビード形状が得られない。ここで、850μmより細か
い粒が100%であるような粒度構成でもかまわない。
【0011】ここでいう熱硬化性樹脂を含有するフラッ
クスとは、SiO2 、CaO、MgO、CaF2 、Al
2 3 、MnO、TiO2 、ZrO2 等を主成分とする
溶融フラックスおよびSiO2 、MgO、CaCO3
CaF2 、Al2 3 、MnO、TiO2 、鉄粉等を主
成分とし、これに脱酸剤としてSi、Mn、Al、T
i、Mg、Ca等の合金を添加したボンドフラックス
に、フェノール系樹脂、フラン系樹脂等、熱によって溶
融硬化する樹脂をエタノール、メタノール、アセトン等
の溶媒と共に添加、混練した後、樹脂の溶融温度以下で
乾燥したものである。この場合、樹脂と溶媒の添加につ
いては、事前に樹脂を溶媒により溶液状として添加、混
合しても、フラックスと樹脂を混合し、溶媒を添加して
樹脂を溶解しても、いずれの方法でもかまわない。
【0012】また、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体と
は、上記溶融フラックス、ボンドフラックスや、これら
フラックスの主成分の1種または2種以上を含むもの
で、溶接ビードに悪影響を与えないものであればいずれ
のものでもかまわない。以上本発明について詳述した
が、本発明の効果をさらに明確にするため、以下実施例
について述べる。
【0013】
【実施例】表1に示す鋼板に対し、表2のワイヤ、表3
の表フラックスを用いて、表4に示す条件により7種類
の片面サブマージアーク溶接を行った。表3のフラック
スは、原料粉を水ガラスを用いて造粒した後、400℃
×120分の条件でロータリーキルンで焼成したボンド
フラックスで、仕上がりフラックスの粒度は12×10
0メッシュで整粒した。
【0014】また、溶接に使用した裏フラックスに用い
た熱硬化性樹脂を含有するフラックスを表5に示す。本
発明実施例における裏フラックスおよび溶接結果を表
6、表7(表6のつづき)に示す。本発明例であるN
o.1〜4は本発明効果によりいずれも良好な溶接結果
を得ることができた。一方、比較例のNo.5の場合、
ビード形状は良好であったが、熱硬化性樹脂を含有しな
い粉粒体を混合していないため、溶接後、裏フラックス
が銅当金にこびりついた。また、No.6では、熱硬化
性樹脂を含有しない粉粒体の粒度が、850μmより細
かい粒が少なく、熱硬化性樹脂を含有するフラックスの
粒度構成は、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体の粒度構
成よりも細粒となり、フラックスの散布時に熱硬化性樹
脂を含有するフラックスは下層に集積し、熱硬化性樹脂
が直接銅当金に当たり、裏フラックスのこびりつきが発
生したばかりでなく、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体
は上層に集積し、樹脂の少ない状態で溶接が行われたた
め、健全なビードが得られなかった。さらに、No.7
では、熱硬化性樹脂を含有するフラックスの粒度が、2
12μmより粗い粒が少なく、熱硬化性樹脂を含有する
フラックスの粒度構成は、熱硬化性樹脂を含有しない粉
粒体の粒度構成よりも細粒となり、フラックスの散布時
に熱硬化性樹脂を含有するフラックスは下層に集積し、
熱硬化性樹脂が直接銅当金に当たり、裏フラックスのこ
びりつきが発生したばかりでなく、熱硬化性樹脂を含有
しない粉粒体は上層に集積し、樹脂の少ない状態で溶接
が行われたため、健全なビードが得られなかった。
【0015】尚、表4において、開先形状は図3に示す
形状を用いた。tは試験板の板厚、dはルートフェー
ス、θは開先角度である。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】
【表5】
【0021】
【表6】
【0022】
【表7】
【0023】
【発明の効果】以上実施例にて実証した如く本発明フラ
ックスは、フラックス銅バッキング片面溶接において、
優れたビード形状と共に良好な裏フラックス剥離性が得
られ、能率の向上に大きく貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】銅当金上に散布された裏フラックスの状態を示
す説明図である。
【図2】(a)、(b)は、片面サブマージアーク溶接
法の説明図である。
【図3】本発明実施例に用いた開先形状を示す図であ
る。
【符号の説明】
1、1′ 被溶接材 2 銅当金 3 電極ワイヤ 4 裏フラックス(粗粒) 4′ 裏フラックス(細粒) 5 エアーホース 6 フラックス 7 耐火性キャンパス
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭50−124847(JP,A) 特開 昭56−126071(JP,A) 特開 昭54−68744(JP,A) 特公 昭54−24379(JP,B2)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フラックス銅バッキング片面溶接用裏フ
    ラックスであって、熱硬化性樹脂を含有するフラックス
    と、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体を混合してなるフ
    ラックスであり、熱硬化性樹脂を含有するフラックスの
    粒度構成は、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体の粒度構
    成よりも粗粒であることを特徴とする片面溶接用裏フラ
    ックス。
  2. 【請求項2】 フラックス銅バッキング片面溶接用裏フ
    ラックスであって、熱硬化性樹脂を含有するフラックス
    と、熱硬化性樹脂を含有しない粉粒体を混合してなるフ
    ラックスであり、熱硬化性樹脂を含有するフラックスの
    粒径が、212μm(65メッシュ)より粗い粒子を3
    0重量%(以下%と記す)以上含有し、熱硬化性樹脂を
    含有しない粉粒体の粒径が、850μm(20メッシ
    ュ)より細かい粒子を50%以上含有することを特徴と
    する請求項1記載の片面溶接用裏フラックス。
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JPS5285036A (en) * 1976-01-07 1977-07-15 Nippon Steel Corp Method of improving exfoliation property of already welded back flux
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