JPH0852573A - 多電極片面サブマージアーク溶接スタート方法 - Google Patents
多電極片面サブマージアーク溶接スタート方法Info
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- JPH0852573A JPH0852573A JP19061694A JP19061694A JPH0852573A JP H0852573 A JPH0852573 A JP H0852573A JP 19061694 A JP19061694 A JP 19061694A JP 19061694 A JP19061694 A JP 19061694A JP H0852573 A JPH0852573 A JP H0852573A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 本発明は、多電極片面サブマージアーク溶接
法において、完全自動アークスタート方法を確立すると
ともに、溶接作業効率を向上させた溶接法を提供する。 【構成】 4電極を用いる多電極片面サブマージアーク
溶接において、各電極のワイヤ径を、第1電極および第
3電極では4.0〜5.0mmφ、第2電極では4.0〜
7.0mmφ、第4電極では5.0〜7.0mmφとし、ア
ーク発生補助剤を用いながらアークは少なくとも第3電
極単独先行あるいは、第3電極と第4電極を同時先行で
発生させ、かつ、その直後に残りの電極のアークを発生
させるとともに、溶接台車が走行を開始することを特徴
とする多電極片面サブマージアーク溶接スタート方法。
法において、完全自動アークスタート方法を確立すると
ともに、溶接作業効率を向上させた溶接法を提供する。 【構成】 4電極を用いる多電極片面サブマージアーク
溶接において、各電極のワイヤ径を、第1電極および第
3電極では4.0〜5.0mmφ、第2電極では4.0〜
7.0mmφ、第4電極では5.0〜7.0mmφとし、ア
ーク発生補助剤を用いながらアークは少なくとも第3電
極単独先行あるいは、第3電極と第4電極を同時先行で
発生させ、かつ、その直後に残りの電極のアークを発生
させるとともに、溶接台車が走行を開始することを特徴
とする多電極片面サブマージアーク溶接スタート方法。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は片面溶接、特に造船の大
板継ぎなどで用いられている多電極片面サブマージアー
ク溶接法のアークスタートに関するものである。
板継ぎなどで用いられている多電極片面サブマージアー
ク溶接法のアークスタートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】造船の大板継ぎなどでは、高能率溶接法
として主として2〜3電極を用いた片面サブマージアー
ク溶接が採用されている。図4は片面サブマージアーク
溶接の溶接方向から見た正面図である。片面サブマージ
アーク溶接法は、図4に示すように、突き合わされた被
溶接材1,1aの裏面から、銅当金2上に層状に散布し
たバッキングフラックス4をエアーホース5等の押上機
構により被溶接材1,1aの裏面に押圧しておき表側よ
りワイヤ3、フラックス6を用いて溶接を行う。
として主として2〜3電極を用いた片面サブマージアー
ク溶接が採用されている。図4は片面サブマージアーク
溶接の溶接方向から見た正面図である。片面サブマージ
アーク溶接法は、図4に示すように、突き合わされた被
溶接材1,1aの裏面から、銅当金2上に層状に散布し
たバッキングフラックス4をエアーホース5等の押上機
構により被溶接材1,1aの裏面に押圧しておき表側よ
りワイヤ3、フラックス6を用いて溶接を行う。
【0003】近年、造船業界では溶接作業の効率化を目
的に、ワンマンコントロールによる完全自動化の溶接法
を望んでいる。このワンマンコントロールによる、片面
サブマージアーク溶接工程の完全自動化を進めるには、
前準備(鋼板の仮付け、セッティング等)、本溶接、溶
接後の後処理を一人で管理する必要がある。作業者はコ
ントロールボックスの様な管理棟より全ての装置を制御
しながら作業を進めるもので、従来のように溶接機の側
で作業することはできない。片面サブマージアーク溶接
は自動溶接の一種であり、溶接条件の制御やクレータ部
の処理においては、自動化の検討も行われ実用されてい
るが、アークスタートの自動化については、全く進んで
いないのが現状である。
的に、ワンマンコントロールによる完全自動化の溶接法
を望んでいる。このワンマンコントロールによる、片面
サブマージアーク溶接工程の完全自動化を進めるには、
前準備(鋼板の仮付け、セッティング等)、本溶接、溶
接後の後処理を一人で管理する必要がある。作業者はコ
ントロールボックスの様な管理棟より全ての装置を制御
しながら作業を進めるもので、従来のように溶接機の側
で作業することはできない。片面サブマージアーク溶接
は自動溶接の一種であり、溶接条件の制御やクレータ部
の処理においては、自動化の検討も行われ実用されてい
るが、アークスタートの自動化については、全く進んで
いないのが現状である。
【0004】従来のアークスタート方法は、まず第1,
第2電極をアークスタートさせ、その直後に溶接台車の
走行を開始させる。そして、第3電極のアークスタート
は第1,第2電極で形成された溶融プール上でアークを
発生させる、いわゆる、ランニングスタート方法を採用
している。この方法は、第2〜第3電極間が比較的短
く、かつ、溶接速度が遅い場合には有効な方法である。
第2電極をアークスタートさせ、その直後に溶接台車の
走行を開始させる。そして、第3電極のアークスタート
は第1,第2電極で形成された溶融プール上でアークを
発生させる、いわゆる、ランニングスタート方法を採用
している。この方法は、第2〜第3電極間が比較的短
く、かつ、溶接速度が遅い場合には有効な方法である。
【0005】また、高速の多電極片面サブマージアーク
溶接では、特開平4−309471号公報に開示されて
いるような、従来法と同様なランニングスタートでは、
第2〜第3電極間が長く溶接速度が速いため第1,第2
電極で形成されたスラグがすぐに凝固するため、第3電
極以降のアークはスラグ上で発生させることになり、ス
ラグ厚さによってはスティック現象(ワイヤ先端が赤熱
してアークが発生しない現象)等の問題があり、完全自
動化の技術としては未だ不十分である。
溶接では、特開平4−309471号公報に開示されて
いるような、従来法と同様なランニングスタートでは、
第2〜第3電極間が長く溶接速度が速いため第1,第2
電極で形成されたスラグがすぐに凝固するため、第3電
極以降のアークはスラグ上で発生させることになり、ス
ラグ厚さによってはスティック現象(ワイヤ先端が赤熱
してアークが発生しない現象)等の問題があり、完全自
動化の技術としては未だ不十分である。
【0006】
(1)スラグ上でアークが発生するランニングスタート
は、第3,第4電極の電流や溶接速度、あるいは第1,
第2電極で形成される凝固スラグ量に影響されるため確
実なアークスタートを達成する事は困難である。従っ
て、4電極のアークがスタートしてから溶接台車が走行
を開始する、静止スタートとすることが必要である。 (2)4電極溶接では、高速で裏ビードを形成するため
第1,第2電極は約1000A以上の高電流が必要とな
る。このため、アークスタートは特に問題ない。
は、第3,第4電極の電流や溶接速度、あるいは第1,
第2電極で形成される凝固スラグ量に影響されるため確
実なアークスタートを達成する事は困難である。従っ
て、4電極のアークがスタートしてから溶接台車が走行
を開始する、静止スタートとすることが必要である。 (2)4電極溶接では、高速で裏ビードを形成するため
第1,第2電極は約1000A以上の高電流が必要とな
る。このため、アークスタートは特に問題ない。
【0007】一方、第3,第4電極は表ビードの溶着量
を調整するため、薄板になると非常に低い電流を用い
る。作業者が側にいる場合はアークスタートを失敗した
ら、スティックしたワイヤを切断して再度アークスター
トすればよいが、完全自動化ではこのような処置はでき
ない。従って、第3,第4電極のアークスタートを確実
に行う手法および機構が必要である。
を調整するため、薄板になると非常に低い電流を用い
る。作業者が側にいる場合はアークスタートを失敗した
ら、スティックしたワイヤを切断して再度アークスター
トすればよいが、完全自動化ではこのような処置はでき
ない。従って、第3,第4電極のアークスタートを確実
に行う手法および機構が必要である。
【0008】本発明は、上記多電極片面サブマージアー
ク溶接法において、完全自動アークスタート方法を確立
するとともに、溶接作業効率を向上させた溶接法を提供
する事を目的としたものである。
ク溶接法において、完全自動アークスタート方法を確立
するとともに、溶接作業効率を向上させた溶接法を提供
する事を目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
とするところは、4電極の多電極片面サブマージアーク
溶接において、各電極のワイヤ径を、第1電極および第
3電極では4.0〜5.0mmφ、第2電極では4.0〜
7.0mmφ、第4電極では5.0〜7.0mmφとし、ア
ーク発生補助剤を用いながらアークは少なくとも第3電
極単独先行あるいは、第3電極と第4電極を同時先行で
発生させ、第1電極と第2電極は、第3電極と第4電極
のアーク発生後にアークを発生させ、かつ、その直後に
残りの電極のアークを発生させるとともに、溶接台車が
走行を開始することを特徴とする多電極片面サブマージ
アーク溶接スタート方法である。また、第3電極と第4
電極のアーク発生時において、該溶接電流をアーク発生
時とアーク発生直後の2段階制御としてアークスタート
することも本発明の構成要件である。
とするところは、4電極の多電極片面サブマージアーク
溶接において、各電極のワイヤ径を、第1電極および第
3電極では4.0〜5.0mmφ、第2電極では4.0〜
7.0mmφ、第4電極では5.0〜7.0mmφとし、ア
ーク発生補助剤を用いながらアークは少なくとも第3電
極単独先行あるいは、第3電極と第4電極を同時先行で
発生させ、第1電極と第2電極は、第3電極と第4電極
のアーク発生後にアークを発生させ、かつ、その直後に
残りの電極のアークを発生させるとともに、溶接台車が
走行を開始することを特徴とする多電極片面サブマージ
アーク溶接スタート方法である。また、第3電極と第4
電極のアーク発生時において、該溶接電流をアーク発生
時とアーク発生直後の2段階制御としてアークスタート
することも本発明の構成要件である。
【0010】
【作用】以下、本発明について詳細に説明する。図3は
アーク発生補助剤を用いる本発明溶接法の一例を示すも
のである。図中7は試供鋼板8のルートフェイス(R
f)、9は第1電極、10は第2電極、11は第3電
極、12は第4電極、13はアーク発生補助剤、14は
この補助剤を送給するノズル、15は溶接用表フラック
ス、16は該フラックスの送給ノズルである。
アーク発生補助剤を用いる本発明溶接法の一例を示すも
のである。図中7は試供鋼板8のルートフェイス(R
f)、9は第1電極、10は第2電極、11は第3電
極、12は第4電極、13はアーク発生補助剤、14は
この補助剤を送給するノズル、15は溶接用表フラック
ス、16は該フラックスの送給ノズルである。
【0011】まず、本発明における各電極に用いられる
ワイヤ径を限定する理由は以下の通りである。4電極を
用いる片面サブマージアーク溶接の各電極における役割
としては、第1電極と第2電極は先行電極として、溶接
裏ビード形成を担う。また、第3と第4電極は後行電極
として、溶接表ビードの形成および先行電極で形成され
た溶接金属の凝固形態に変化を与えるとともに、スラグ
巻き込み等の内部欠陥を防止する。
ワイヤ径を限定する理由は以下の通りである。4電極を
用いる片面サブマージアーク溶接の各電極における役割
としては、第1電極と第2電極は先行電極として、溶接
裏ビード形成を担う。また、第3と第4電極は後行電極
として、溶接表ビードの形成および先行電極で形成され
た溶接金属の凝固形態に変化を与えるとともに、スラグ
巻き込み等の内部欠陥を防止する。
【0012】第1電極は図3に示すRf(ルートフェイ
ス)7を溶融するためにアーク掘り下げ力を強くする必
要がある。このため、電流密度を高くする上でできるだ
け細径にすることは有効な手段であり、使用電流を考慮
すると5.0mmφ以下にする必要がある。しかし、4.
0mmφ未満では裏ビードが出すぎる。従って、第1電極
は4.0〜5.0mmφにした。
ス)7を溶融するためにアーク掘り下げ力を強くする必
要がある。このため、電流密度を高くする上でできるだ
け細径にすることは有効な手段であり、使用電流を考慮
すると5.0mmφ以下にする必要がある。しかし、4.
0mmφ未満では裏ビードが出すぎる。従って、第1電極
は4.0〜5.0mmφにした。
【0013】また、第2電極は第1電極で形成された裏
ビードの形を整える役割を果たしており、ビード趾端部
の立ち上がり角度をなめらかにする必要がある。このた
め、少なくとも、第1電極と同じかそれ以上の太いワイ
ヤが必要となる。しかし、7.0mmφを超えるとビード
が過大になる。従って、第2電極は4.0〜7.0mmφ
にした。
ビードの形を整える役割を果たしており、ビード趾端部
の立ち上がり角度をなめらかにする必要がある。このた
め、少なくとも、第1電極と同じかそれ以上の太いワイ
ヤが必要となる。しかし、7.0mmφを超えるとビード
が過大になる。従って、第2電極は4.0〜7.0mmφ
にした。
【0014】一方、第3電極はアーク発生を最優先に行
う上で電流密度を高めることが必須である。しかし、
4.0mmφ未満では厚板で高電流を使用できない。ま
た、5.0mmφを超えるとこの効果は期待できない等か
ら、第3電極のワイヤ径は4.0〜5.0mmφにした。
なお、第4電極に5.0〜7.0mmφの太径ワイヤを用
いることにより、適正溶着量の確保が可能になるととも
に、アークが広がりビードのなじみが良い、表ビードが
形成できる。
う上で電流密度を高めることが必須である。しかし、
4.0mmφ未満では厚板で高電流を使用できない。ま
た、5.0mmφを超えるとこの効果は期待できない等か
ら、第3電極のワイヤ径は4.0〜5.0mmφにした。
なお、第4電極に5.0〜7.0mmφの太径ワイヤを用
いることにより、適正溶着量の確保が可能になるととも
に、アークが広がりビードのなじみが良い、表ビードが
形成できる。
【0015】次に、アーク発生補助剤を用いる理由を説
明する。サブマージアーク溶接終了後のワイヤ先端部は
酸化膜で被われており、そのままの状態では通電性が劣
化しアーク発生が困難であった。そこで、アークを容易
に発生させるため、通電性のよいアーク発生補助剤を用
いる方法が採用されている。
明する。サブマージアーク溶接終了後のワイヤ先端部は
酸化膜で被われており、そのままの状態では通電性が劣
化しアーク発生が困難であった。そこで、アークを容易
に発生させるため、通電性のよいアーク発生補助剤を用
いる方法が採用されている。
【0016】実溶接作業における発生補助剤として、た
とえば、スチールウールが用いられている。スチールウ
ールは必要量に引き裂いた後、ある程度押圧して形を整
えてからワイヤと被溶接材との間に挟み込む、といった
作業を溶接者が行っていた。しかし、該セット方法は、
溶接作業者が溶接機の側で作業を行っていれば有効な手
段であるが、完全自動アークスタート方法を実現するに
は困難な方法である。
とえば、スチールウールが用いられている。スチールウ
ールは必要量に引き裂いた後、ある程度押圧して形を整
えてからワイヤと被溶接材との間に挟み込む、といった
作業を溶接者が行っていた。しかし、該セット方法は、
溶接作業者が溶接機の側で作業を行っていれば有効な手
段であるが、完全自動アークスタート方法を実現するに
は困難な方法である。
【0017】そこで本発明者らは、自動的にセットでき
るアーク発生補助剤を種々検討したところ、溶接用心線
の直径と同程度の長さに切断したカットワイヤの様なも
のや鉄粉を単独で用いる事でアークスタート性は向上し
た。また、アークスタート性をより高めるために、被覆
溶接棒先端に塗布されている炭化物を主成分とする塗布
剤を適量混合させることとした。
るアーク発生補助剤を種々検討したところ、溶接用心線
の直径と同程度の長さに切断したカットワイヤの様なも
のや鉄粉を単独で用いる事でアークスタート性は向上し
た。また、アークスタート性をより高めるために、被覆
溶接棒先端に塗布されている炭化物を主成分とする塗布
剤を適量混合させることとした。
【0018】これらはその形状から流動性も良く、フラ
ックス散布機構のようなものを用いることにより、その
供給時には図3に示すように、作業者がスイッチを入れ
ることにより自動散布され、表フラックスの下方に散布
できる。また、給電時にはアーク発生補助剤が伝導体と
なり電極ワイヤー被溶接材料間のアーク発生を助けるも
のである。上記、アーク発生補助剤は溶接金属性能を著
しく阻害しないものであれば、特に、限定されるもので
はない。本発明者らは、複雑な作業の簡略化ができ、か
つ、アーク発生が助長されるアーク発生補助剤を用いる
事とした。
ックス散布機構のようなものを用いることにより、その
供給時には図3に示すように、作業者がスイッチを入れ
ることにより自動散布され、表フラックスの下方に散布
できる。また、給電時にはアーク発生補助剤が伝導体と
なり電極ワイヤー被溶接材料間のアーク発生を助けるも
のである。上記、アーク発生補助剤は溶接金属性能を著
しく阻害しないものであれば、特に、限定されるもので
はない。本発明者らは、複雑な作業の簡略化ができ、か
つ、アーク発生が助長されるアーク発生補助剤を用いる
事とした。
【0019】さらに、第3電極あるいは第3電極と第4
電極優先でアークを発生する理由を説明する。近年の、
4電極を用いる高速片面サブマージアーク溶接のアーク
発生順番は、先行電極→台車走行開始→後行電極であ
り、詳しくは、静止状態で第1,第2電極の先行電極ア
ーク発生させた後、溶接台車の走行を開始し、第3電極
は台車走行開始後にアークスタートさせる、いわゆる、
ランニングスタート方法を採用してきた。しかし、高速
片面サブマージアーク溶接では、溶接速度が著しく向上
したため先行電極の溶融スラグの凝固が早く、第3電極
が第1,第2電極で形成された溶融スラグ上に到達した
時点では、溶融スラグは完全に凝固していることもあ
る。従って、この場合第3電極はこの凝固スラグを破砕
して、溶接金属との間にアークを発生する必要があっ
た。しかしながら、スラグ厚が厚く溶接金属に達しない
場合には、ワイヤ先端が加熱して部分溶融が起こるだけ
で、アークは発生しない、いわゆるスティック現象の発
生が懸念された。
電極優先でアークを発生する理由を説明する。近年の、
4電極を用いる高速片面サブマージアーク溶接のアーク
発生順番は、先行電極→台車走行開始→後行電極であ
り、詳しくは、静止状態で第1,第2電極の先行電極ア
ーク発生させた後、溶接台車の走行を開始し、第3電極
は台車走行開始後にアークスタートさせる、いわゆる、
ランニングスタート方法を採用してきた。しかし、高速
片面サブマージアーク溶接では、溶接速度が著しく向上
したため先行電極の溶融スラグの凝固が早く、第3電極
が第1,第2電極で形成された溶融スラグ上に到達した
時点では、溶融スラグは完全に凝固していることもあ
る。従って、この場合第3電極はこの凝固スラグを破砕
して、溶接金属との間にアークを発生する必要があっ
た。しかしながら、スラグ厚が厚く溶接金属に達しない
場合には、ワイヤ先端が加熱して部分溶融が起こるだけ
で、アークは発生しない、いわゆるスティック現象の発
生が懸念された。
【0020】そこで、本発明においては、第3,第4電
極の確実なアークスタートを実現する手法として、後行
電極→先行電極→台車走行開始の順番でアークを発生さ
せる。即ち、第3電極あるいは第3電極と第4電極を優
先してアークを発生する事とした。
極の確実なアークスタートを実現する手法として、後行
電極→先行電極→台車走行開始の順番でアークを発生さ
せる。即ち、第3電極あるいは第3電極と第4電極を優
先してアークを発生する事とした。
【0021】また、本発明において、第3電極あるいは
第3電極と第4電極のアークスタート時およびアークス
タート直後の溶接条件を2段階制御とする理由は次の通
りである。アーク溶接は電極と被溶接材料間にアークを
発生させ、アークによる発生熱を利用して溶融、接合さ
せるものであり、アーク溶接を実行させるためには、ア
ーク放電を安定させるとともに、その発生を確実に行う
必要がある。一般的に同一径のワイヤを使用した場合、
電流値が高いほど電流密度は高くなり通電性が良くな
る。逆に、同一電流では、ワイヤ径が細いほど電流密度
は高くなる。多電極片面サブマージアーク溶接において
も同様であり、電流密度を高くするにはワイヤ径を細く
する必要がある。しかしながら、第3,第4電極は後行
電極として、表ビードを形成する役目を果たしており、
適正溶着量を得るためには、上述ワイヤ径が必要であ
る。従って、アークスタート時は高電流を用いるのが有
効な手段である。
第3電極と第4電極のアークスタート時およびアークス
タート直後の溶接条件を2段階制御とする理由は次の通
りである。アーク溶接は電極と被溶接材料間にアークを
発生させ、アークによる発生熱を利用して溶融、接合さ
せるものであり、アーク溶接を実行させるためには、ア
ーク放電を安定させるとともに、その発生を確実に行う
必要がある。一般的に同一径のワイヤを使用した場合、
電流値が高いほど電流密度は高くなり通電性が良くな
る。逆に、同一電流では、ワイヤ径が細いほど電流密度
は高くなる。多電極片面サブマージアーク溶接において
も同様であり、電流密度を高くするにはワイヤ径を細く
する必要がある。しかしながら、第3,第4電極は後行
電極として、表ビードを形成する役目を果たしており、
適正溶着量を得るためには、上述ワイヤ径が必要であ
る。従って、アークスタート時は高電流を用いるのが有
効な手段である。
【0022】一方、適正な溶込みおよび溶着量を得るた
め、後行電極に必要な電流はかなり低い値である。即
ち、上記アークスタートを行う高電流のまま溶接を行う
と溶込みが深くなり、裏ビードが凸形状となりビード横
割れのおそれがある。また、表ビードの溶着量過多とな
り、後行電極の第3電極あるいは第3と第4電極はアー
ク発生を行った直後に電流を速やかに低減する必要があ
る。即ち、第3電極あるいは第3と第4電極はアークス
タート時およびアークスタート直後の2段階制御が必要
となる。
め、後行電極に必要な電流はかなり低い値である。即
ち、上記アークスタートを行う高電流のまま溶接を行う
と溶込みが深くなり、裏ビードが凸形状となりビード横
割れのおそれがある。また、表ビードの溶着量過多とな
り、後行電極の第3電極あるいは第3と第4電極はアー
ク発生を行った直後に電流を速やかに低減する必要があ
る。即ち、第3電極あるいは第3と第4電極はアークス
タート時およびアークスタート直後の2段階制御が必要
となる。
【0023】また、被溶接鋼板の厚さにより使用ワイヤ
径および適正電流は、ある程度限定されるものである
が、第3電極に4.0〜5.0mmφのワイヤを用いた場
合の溶接電流が、約1000Aを越える場合には、上
述、2段階の電流制御を用いなくとも、アークスタート
は可能である。
径および適正電流は、ある程度限定されるものである
が、第3電極に4.0〜5.0mmφのワイヤを用いた場
合の溶接電流が、約1000Aを越える場合には、上
述、2段階の電流制御を用いなくとも、アークスタート
は可能である。
【0024】図1は第3電極の2段階制御を説明するた
めの図である。図1によれば、第3電極はアークスター
ト時には、本溶接に必要な電流値I0 (A)より高い電
流値I1 (A)を通電し、アークスタート直後に本来の
I0 (A)に戻すものである。また、図2は、第3と第
4電極の2段階制御を説明した図である。図2によれ
ば、第3と第4電極のアークスタート時は本溶接に必要
な電流値I2 (A)より高い電流で通電しアークスター
ト直後にI3 に戻すものである。これら、電流の2段階
制御における通電時間(t0 →t1 ),(t2 →t3 )
は、できるだけ短いほうが良い。この場合の2段階制御
の方法としては、例えばシステム電源、パルス発生装置
あるいはスタート時のみ負荷する別電源の採用等が考え
られるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
めの図である。図1によれば、第3電極はアークスター
ト時には、本溶接に必要な電流値I0 (A)より高い電
流値I1 (A)を通電し、アークスタート直後に本来の
I0 (A)に戻すものである。また、図2は、第3と第
4電極の2段階制御を説明した図である。図2によれ
ば、第3と第4電極のアークスタート時は本溶接に必要
な電流値I2 (A)より高い電流で通電しアークスター
ト直後にI3 に戻すものである。これら、電流の2段階
制御における通電時間(t0 →t1 ),(t2 →t3 )
は、できるだけ短いほうが良い。この場合の2段階制御
の方法としては、例えばシステム電源、パルス発生装置
あるいはスタート時のみ負荷する別電源の採用等が考え
られるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】ところで、本発明溶接法は片面サブマージ
アーク溶接法であり、溶接材料として表側フラックス、
バッキングフラックスおよび電極ワイヤを必要とするも
のであるが、これら溶接材料に関しては、目的に応じた
適正な溶接金属を得ることの出来るものであればそれら
の組成については特に限定されるものではない。即ち、
表側フラックスとしては、SiO2 ,Al2 O3 ,Ti
O2 ,MnO,MgO等の金属酸化物、CaF2 ,Mg
F2 等の金属弗化物、CaCo3 等の金属炭酸塩、S
i,Mn等の脱酸剤、Ni,Mo等の合金剤あるいは鉄
粉を適宜配合して作製されたフラックスを用いればよ
い。フラックスタイプとしては、メルト形、ボンド形フ
ラックスのいずれでもよい。バッキングフラックスにつ
いても同様である。
アーク溶接法であり、溶接材料として表側フラックス、
バッキングフラックスおよび電極ワイヤを必要とするも
のであるが、これら溶接材料に関しては、目的に応じた
適正な溶接金属を得ることの出来るものであればそれら
の組成については特に限定されるものではない。即ち、
表側フラックスとしては、SiO2 ,Al2 O3 ,Ti
O2 ,MnO,MgO等の金属酸化物、CaF2 ,Mg
F2 等の金属弗化物、CaCo3 等の金属炭酸塩、S
i,Mn等の脱酸剤、Ni,Mo等の合金剤あるいは鉄
粉を適宜配合して作製されたフラックスを用いればよ
い。フラックスタイプとしては、メルト形、ボンド形フ
ラックスのいずれでもよい。バッキングフラックスにつ
いても同様である。
【0026】電極ワイヤはフラックス組成との関連で選
択されるものであるが、Mn:0.3〜3.2%、M
o:0.15〜0.75%の一種または二種を含有する
ワイヤが強度および靭性を確保する上で好ましい。以上
本発明について詳述したが、本発明効果をさらに明確に
するため、以下実施例について述べる。
択されるものであるが、Mn:0.3〜3.2%、M
o:0.15〜0.75%の一種または二種を含有する
ワイヤが強度および靭性を確保する上で好ましい。以上
本発明について詳述したが、本発明効果をさらに明確に
するため、以下実施例について述べる。
【0027】
【実施例】表1に示す鋼板に対し、表2のワイヤ、表3
のフラックス、表4のバッキングフラックスを用いて、
種類の片面サブマージアーク溶接を行った。表3のフラ
ックスは、原料粉を水ガラスを用いて造粒した後、40
0℃×120min の条件でロータリーキルンで焼成した
ボンドフラックスで仕上がりフラックスの粒度は12×
100メッシュで整粒した。また、表4のバッキングフ
ラックスは図4に示した銅当金併用型のバッキングフラ
ックスでボンド形フラックスである。尚、フェノール樹
脂は水およびアルコールをそれぞれ溶媒として溶解し、
粘液とした後、フラックス粒子に被覆した。
のフラックス、表4のバッキングフラックスを用いて、
種類の片面サブマージアーク溶接を行った。表3のフラ
ックスは、原料粉を水ガラスを用いて造粒した後、40
0℃×120min の条件でロータリーキルンで焼成した
ボンドフラックスで仕上がりフラックスの粒度は12×
100メッシュで整粒した。また、表4のバッキングフ
ラックスは図4に示した銅当金併用型のバッキングフラ
ックスでボンド形フラックスである。尚、フェノール樹
脂は水およびアルコールをそれぞれ溶媒として溶解し、
粘液とした後、フラックス粒子に被覆した。
【0028】本発明実施例における溶接結果を表5に示
す。本発明例であるNo.1〜3は、本発明効果によ
り、いずれも確実なアークスタートが行え良好な溶接部
を得ることができた。一方、比較例のNo.4の場合、
アーク発生補助剤を適用しなかったためにアーク発生が
困難となり、溶接を中断した。No.5〜6は2段階制
御によるアークスタートを実施して、アークは発生した
が、適用ワイヤ径が合わず、健全な溶接部を得ることが
できなかった。
す。本発明例であるNo.1〜3は、本発明効果によ
り、いずれも確実なアークスタートが行え良好な溶接部
を得ることができた。一方、比較例のNo.4の場合、
アーク発生補助剤を適用しなかったためにアーク発生が
困難となり、溶接を中断した。No.5〜6は2段階制
御によるアークスタートを実施して、アークは発生した
が、適用ワイヤ径が合わず、健全な溶接部を得ることが
できなかった。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明を用いれば
適用例にも示した通り、多電極の高速片面サブマージア
ーク溶接におけるアークスタートが確実なものとなり、
かつ、完全自動アークスタート方法の確立による溶接作
業の自動化および効率化が計れる。
適用例にも示した通り、多電極の高速片面サブマージア
ーク溶接におけるアークスタートが確実なものとなり、
かつ、完全自動アークスタート方法の確立による溶接作
業の自動化および効率化が計れる。
【図1】本発明溶接法の第3電極の2段階制御を説明す
るための図である。
るための図である。
【図2】本発明溶接法の第3,第4電極の2段階制御を
説明するための図である。
説明するための図である。
【図3】本発明溶接法のアーク発生補助剤の散布状態を
説明するための図である。
説明するための図である。
【図4】片面サブマージアーク溶接法を説明するための
正面図である。
正面図である。
【符号の説明】 1,1a…被溶接材 2…銅当金 3…電極ワイヤ 4…バッキングフラックス 5…エアーホース 6…フラックス 7…ルートフェイス 8…供試鋼板 9…第1電極 10…第2電極 11…第3電極 12…第4電極 13…アーク発生補助剤 14…アーク発生補助剤送給ノズル 15…溶接用表フラックス 16…溶接用表フラックス送給ノズル
Claims (2)
- 【請求項1】 4電極を用いる多電極片面サブマージア
ーク溶接において、各電極のワイヤ径を、第1電極およ
び第3電極では4.0〜5.0mmφとし、第2電極では
4.0〜7.0mmφ、第4電極では5.0〜7.0mmφ
とし、アーク発生補助剤を用いながらアークは少なくと
も第3電極単独先行あるいは、第3電極と第4電極を同
時先行で発生させ、かつ、その直後に残りの電極のアー
クを発生させるとともに、溶接台車が走行を開始するこ
とを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接スター
ト方法。 - 【請求項2】 第3電極あるいは第3,第4電極のアー
ク発生時において、第3電極の溶接電流をアーク発生時
とアーク発生直後の2段階制御として、アークスタート
することを特徴とする、請求項1記載の多電極片面サブ
マージアーク溶接スタート方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19061694A JPH0852573A (ja) | 1994-08-12 | 1994-08-12 | 多電極片面サブマージアーク溶接スタート方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19061694A JPH0852573A (ja) | 1994-08-12 | 1994-08-12 | 多電極片面サブマージアーク溶接スタート方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0852573A true JPH0852573A (ja) | 1996-02-27 |
Family
ID=16261042
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP19061694A Pending JPH0852573A (ja) | 1994-08-12 | 1994-08-12 | 多電極片面サブマージアーク溶接スタート方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0852573A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006297459A (ja) * | 2005-04-22 | 2006-11-02 | Nippon Steel & Sumikin Welding Co Ltd | アーク溶接装置 |
CN102161125A (zh) * | 2010-02-22 | 2011-08-24 | 株式会社神户制钢所 | 多电极单面焊接装置的起弧方法及多电极单面焊接装置 |
CN105939812A (zh) * | 2014-02-12 | 2016-09-14 | 株式会社神户制钢所 | 多电极单面埋弧焊方法、焊接物的制造方法 |
CN105960306A (zh) * | 2014-02-12 | 2016-09-21 | 株式会社神户制钢所 | 多电极单面埋弧焊接方法、焊接物的制造方法 |
-
1994
- 1994-08-12 JP JP19061694A patent/JPH0852573A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006297459A (ja) * | 2005-04-22 | 2006-11-02 | Nippon Steel & Sumikin Welding Co Ltd | アーク溶接装置 |
JP4632431B2 (ja) * | 2005-04-22 | 2011-02-16 | 日鐵住金溶接工業株式会社 | アーク溶接装置 |
CN102161125A (zh) * | 2010-02-22 | 2011-08-24 | 株式会社神户制钢所 | 多电极单面焊接装置的起弧方法及多电极单面焊接装置 |
CN105939812A (zh) * | 2014-02-12 | 2016-09-14 | 株式会社神户制钢所 | 多电极单面埋弧焊方法、焊接物的制造方法 |
CN105960306A (zh) * | 2014-02-12 | 2016-09-21 | 株式会社神户制钢所 | 多电极单面埋弧焊接方法、焊接物的制造方法 |
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