JP2566971Y2 - 遠心ポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、例えば小型給水装置な
どにおけるように、主として吸上げ運転される遠心ポン
プに関する。

【０００２】

【従来の技術】遠心ポンプを締切運転に近い極小流量域
で吸上げ運転すると、負圧になる羽根の入口近傍におい
ては水流方向と羽根表側との挟角が大きいため水の剥離
現象が生じ、水中の空気が遊離して生じた気泡が滞留す
る。このような現象は吸上げ揚程が大きいほど、また、
吐出流量が少ないほど発生しやすく、長引くと滞留気泡
量が増加して吐出揚程が低下し、遂には揚水不能に陥っ
てしまう。

【０００３】従来は、このような問題の解決策としてジ
ェット方式あるいは逃がし弁方式などにより揚水の一部
を吐出側から吸込側に還流させ、需要流量が少なくても
インペラにおける通過流量を多くするようにしていた。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】上述のような従来の解
決策では、ジェットポンプまたは逃がし弁のみならずバ
イパス流路等が必要なため装置構造が複雑で部品点数も
多く、必然的に製造コストが高くなる。また、気泡の発
生を防止するために余分の水を吸上げることになるので
運転コストも増大するなどの難点がある。

【０００５】本考案は上述のような問題点を解決するた
めになされたもので、吸上げ揚程が大きく、かつ極小流
量域でも気泡の発生が防止され、しかも製造コストおよ
び運転コストを節減できる遠心ポンプを提供することを
目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案は、遠心ポンプに
おけるインペラが、流路の周方向中央から最寄りの羽根
表側までの範囲で、かつインペラリングの外周部から羽
根の内周部までの範囲に対向位置して後シュラウドに開
設された貫通孔を具備することを特徴とするものであ
る。

【０００７】

【作用】上記構成において、ポンプ運転中はインペラか
ら吐出された高圧水の一部が後シュラウドの背後から貫
通孔を経て羽根の内周部近傍に導かれ、そのため負圧が
緩和されることにより気泡の発生ないし滞留が防止され
る。

【０００８】

【実施例】以下、本考案につき図１および図２に示す一
実施例を参照しながら説明する。図１において、遠心ポ
ンプのケーシング１およびケーシングカバー２の内部に
は、電動機３の主軸４に支持されたインペラ５が回転自
在に収容されており、その軸方向両側にはそれぞれ若干
の間隙６，７が形成されている。

【０００９】インペラ５は、図２に示すように前後方向
に対向する一対の前シュラウド８および後シュラウド９
ならびに、これらの間に介在して周方向に交互に配設さ
れた複数の渦巻状羽根１０（図は３つのみを示す）およ
び流路１１を備えている。また、前シュラウド８の前側
にはインペラリング１２が軸方向に突設されている。そ
して、インペラ５の流入口１３はインペラリング１２に
開設されており、流出口１４は外周部に配設されてい
る。

【００１０】上記後シュラウド９には、上記流路１１の
周方向中央１５から最寄りの羽根１０の表側１６までの
範囲で、かつ上記インペラリング１２の外周部１７から
羽根１０の内周部１８までの範囲に対向位置して（２つ
の範囲の共通部分にハッチングを施して示す）流路１１
と間隙７とを連通する所望数（図は２つの場合）の貫通
孔１９が開設されている。次に上記実施例の作用を説明
する。

【００１１】上記電動機３を介してインペラ５を回転駆
動すると、流入口１３から吸込まれた水が遠心力により
昇圧されて流出口１４から吐出され、大部分は外部に供
給されるが一部は上記間隙６，７に導かれる。その際、
相隣る羽根１０，１０の間における水圧は流出口１４に
近づくほど高くなるから、一旦流出口１４から流出した
高圧水の一部は、後シュラウド９の外側間隙７から貫通
孔１９を経て羽根１０の内周部１８近傍に流出する。

【００１２】いま、貫通孔１９を羽根１０の外周部寄り
に設けたと仮定すれば、外周部に近付くほど流路内圧力
が高くなるため空気の遊離が少なく、必然的に十分な気
泡防止効果は得られない。また、流路１１内における水
流の周方向成分が羽根１０の表側から裏側に向かってい
るので、貫通孔１９を羽根の裏側近傍に設けると噴出さ
れた圧力水が表側方向には拡散されず、表側近傍におい
ては圧力が上昇しないため空気の遊離に基づく気泡が発
生することになる。

【００１３】これに対し、上記実施例においては圧力が
最低な羽根内周部１８近傍に高圧水が噴出されるから、
低圧部の圧力が極めて効果的に上昇される。したがって
締切運転に近い極小流量域で高揚程の吸込運転を行って
も気泡の発生ないし成長が効果的に防止され、滞留気泡
によってポンプが揚水不能に陥るようなことはない。し
かも、そのためには上記貫通孔１９を開設するだけでよ
いから構造が簡単で追加部品が不要であり、かつ小形化
も可能であるから製造コストを節減することができる。
また、高圧側から低圧側に還流される水量が僅かである
から運転コストの増加も僅少ですむ。

【００１４】なお、本考案は上記実施例のみに限定され
るものではなく、例えば多段遠心ポンプにおける１段目
に適用すれば効果的である。その他、本考案の要旨とす
るところの範囲内で種々の変更ないし応用が可能であ
る。

【００１５】

【考案の効果】以上説明したように本考案によれば、吸
上げ揚程が大きく、かつ極少流量域でも気泡の発生が防
止され、しかも製造コストおよび運転コストを節減可能
な遠心ポンプを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す切欠側面図。

【図２】同実施例におけるインペラを示し、（Ａ）は
（Ｂ）のＡ−Ａ線に沿う断面図、（Ｂ）は（Ａ）のＢ−
Ｂ線に沿う断面図。

【符号の説明】

５…インペラ，８…前シュラウド、９…後シュラウド、
１０…羽根、１１…流路、１２…インペラリング、１５
…中央、１６…表側、１７…外周部、１８…内周部、１
９…貫通孔。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−88896（ＪＰ，Ａ) 特開 昭58−48796（ＪＰ，Ａ) 実開 昭51−108202（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 軸方向に突設されたインペラリングを有
   する前シュラウド、これと対向する後シュラウドならび
   に、これらシュラウド間に介在して周方向に交互に配設
   された複数の渦巻状羽根および流路を有するインペラを
   備えた遠心ポンプにおいて、上記流路の周方向中央から
   最寄りの羽根表側までの範囲で、かつ上記インペラリン
   グの外周部から羽根の内周部までの範囲に対向位置して
   上記後シュラウドに開設された貫通孔を具備することを
   特徴とする遠心ポンプ。