JPS6233119Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、前段の羽根車で半径方向外方に放出
された液体が次段の羽根車の流入口に流入するた
めに、外周から内側に向つて半径方向内方に流れ
る流路部分を有する多段ポンプに関する。

［従来技術］ 従来の多段ポンプは、ガイドベーン式、ボリユ
ート式の別を問わずデイフユーザ装置はすべて羽
根車外周を出た部分に取付けられており、その流
れの方向は中心より外周向きか、ごく特殊なもの
では軸方向向きであつた。このため液体を次段の
羽根車入口に導くには別個にリターンガイドベー
ン（返り羽根）を要し、構造上複雑であるのみで
あるばかりでなく、羽根車出口直後の強いウエイ
クを生じている流れが直にデイフユーザ装置に流
入するため、デイフユーザ装置のガイドベーン先
端における流体衝撃が大きく、騒音、圧力脈動の
原因となり、さらにはガイドベーン先端が侵食作
用を受けることも多かつた。このため従来は羽根
車外周とデイフユーザ装置始端（すなわち内側）
との距離を大きくとる方法によつてこれ等の軽減
を図る等の対策が取られていた。

例えば第１図，に示されている従来構造に
ついて説明すると、１は羽根車、２は中胴、３は
中胴２と一体のリターンガイドベーン（返り羽
根）、４は羽根車１の外周に設けたガイドベー
ン、５はポンプ軸である。なお、リターンガイド
ベーン（返り羽根）３とガイドベーン４を一体と
し、中胴２とリターンガイドベーン３を切りはな
した設計もあるが、後述の事柄は全く異るところ
はなく同様に論じることができる。

羽根車１によりエネルギを与えられた液体は矢
印ａ，ｂ，ｃ，ｄの経路で次段の羽根車入口に流
入するが、その際ガイドベーン４の入口部Ａにお
いて絞られ、羽根車の外径、出口幅、回転数と相
俟つてポンプ最高効率点の流量を定める。そして
それに続く矢印ｂ部では入口部Ａで絞られた液体
流速を極力損失が少いように緩かに減じ、途中に
急拡大等の大きな損失を生じることなく流速を通
常1/4以下に減じてリターンガイドベーン（返り
羽根）３の部分に流入させる。リターンガイドベ
ーン（返り羽根）３はガイドベーン４より流出し
た液体を損失なく受けとめ、それの方向を規正し
て次段の羽根車吸込に都合のよい方向に向ける。
特殊な場合を除いて内側すなわち半径方向内方の
軸中心の方向に向けるのが普通である。

したがつて、ガイドベーン４によつて前述の欠
点の他に中胴２の半径方向の長さが増大するか、
或いは、隣接する羽根車間の長さが増大すること
になる。

羽根車の半径方向外方にガイドベーンを設けな
い技術は例えば特公昭29−7680号公報に記載され
ているが、この公知技術は固形物の詰りを防止し
たものであり、効率の低下は免れず、通常の多段
ポンプに実施するには不適当である。すなわちか
かる公知技術では羽根車の後置段として通常設置
されているガイドベーンやデイフユーザやボリユ
ートがない点が特色であり、この構造によれば、
羽根車からの流体は全く自由に旋回流動し、流量
や方向を規制する装置は何ら有していなので、羽
根車の最高効率点が定めにくくなり、一般に著し
く大流量側に偏倚し、効率自体も著しく低下して
しまう。しかるにこの種のポンプにおいてガイド
ベーンを設ければ異物の閉塞の原因となり、この
公知技術の目的を達成できなくなる。したがつて
この公知技術はポンプの効率を犠牲にして異物を
通過させ得るようにしたものである。

また実公昭39−28417号公報にはリターンガイ
ドベーンを有する多段遠心送風機が開示されてい
る。しかしながら、この公知技術は羽根車の半径
方向外方にガイドベーンを設け、半径方向内方を
向う流路部分にリターンガイドベーンを設け、も
つて少ない損失で次段の羽根車の入口に導くよう
になつており、このようなリターンガイドベーン
では圧縮性の流体を取扱う送風機においては役立
つても、非圧縮性の液体を取扱うポンプにおいて
は、羽根車の効率を最高となるように流量を規制
しなければならないので、そのまま適用できな
い。すなわち送風機に用いるリターンガイドベー
ンは単なるガイドベーンであつて、少ない損失で
次段の羽根車の入口に導くものであり、半径方向
の寸法が大きくなり、かつ流量の規制手段がない
ので、ポンプに適用しても羽根車の効率の設定が
困難である。

［考案の目的］ したがつて本考案の目的は、半径方向の長さを
小さくでき、しかも効率を高めることのできる多
段ポンプを提供するにある。

［考案の構成］ 本考案によれば、前段の羽根車で半径方向外方
に放出された液体が次段の羽根車の流入口に流入
するために外周から内側に向つて半径方向内方に
流れる流路部分を有し、羽根車の半径方向外方に
ガイドベーンを設けない多段ポンプにおいて、前
記外周から内側に向う流路部分にリターンガイド
ベーンが設けられ、そのリターンガイドベーン
は、ベーン間隔が入口では絞られて漸次拡大して
デイフユーザ機能を有する半径方向外方の部分
と、その半径方向外方の部分と連接して設けられ
ベーン間隔が絞られて次段の羽根車の流入口に液
体を導く半径方向内方の部分とより成つている。

このようにベーン間隔が漸時拡大し、次いで絞
られているので、本明細書では、半径方向外方の
部分とはベーン間隔が漸次拡大している部分をい
い、半径方向内方の部分とはベーン間隔が漸次絞
られている部分をいう。したがつてベーン間隔が
一番拡大しているところが、半径方向外方の部分
と半径方向内方の部分との連接点になつている。
またベーン間隔と直角方向のベーンの高さはポン
プの構造上、実質的に一定であるから、流路の断
面積はベーン間隔によつて定められる。

［考案の作用］ したがつて前段の羽根車から放出された液はそ
の羽根車の半径方向外方に形成された室から半径
方向内方を向う液路部分のリターンガイドベーン
に流入する。そしてリターンガイドベーンの半径
方向の外方の部分で液路の断面積が拡大するの
で、デイフユーザ効果により速度エネルギが圧力
エネルギに変換され、次いで狭められている半径
方向内方の部分を通つて次段の羽根車の流入口に
導かれる。一般にポンプの効率の最高点は、羽根
車の理想特性曲線とベーンすなわち案内装置の理
想曲線との交点で定まる。そしてこの案内装置の
特性は入口の断面積によつて定まるので、ポンプ
の運転流量に対して入口の断面積すなわちベーン
間隔をあらかじめ羽根車の理想特性に適合するよ
うに設定すればよい。そのために入口のベーン間
隔をあらかじめ所定流量においてポンプが最高効
率を得るように設定し、次いで半径方向外方の部
分で昇圧させるのである。

リターンガイドベーンのこの半径方向内方の部
分は、ベーン前半によつて減速圧力回復した流体
を、次段の羽根車の吸込口へスムーズに流入する
ように導く役割をなしている。したがつてこの半
径方向内方の部分の流路において若干圧力ヘツド
が速度ヘツドに変換されて次段の羽根車の吸込口
へ流入する。羽根車内流れは、メリデイアン方向
（回転体表面に巻きついた流路を流れる流れにつ
いて流速のベクトル量の回転体子午面方向の成
分、すなわち軸方向の成分）において減速流であ
るため、入口部の流速は速くなつている。このリ
ターンガイドベーンの出口部分（半径方向内方の
出口部分）は、前半において減速された流体を羽
根車入口流速に適合するように加速するため順次
狭くなつている。そのために、次段の羽根車に対
して効率のよい適正な速度で液体を流入させるこ
とができる。

したがつて、リターンガイドベーンの入口部分
をポンプの効率と適合され、かつ出口部分を次段
の羽根車に効率よく液を流入させることができ
る。

そしてこのリターンガイドベーンの出口部分は
従来のリターンベーンと同じ役割を果している
が、減速・加速が一続きの流路内で行われるた
め、従来の構造のもののようにデイフユーザベー
ンを流出した流体が次のリターンベーンに流入す
るといつた切れ目がないため、その各々の終端・
始端における損失がなく、効率は改善される。

このように羽根車の半径方向外方にガイドベー
ンを設けないために、多段ポンプの半径方向の寸
法を小さくでき、また半径方向内方を向う液路部
分において、流量の規制、昇圧作用および次段の
羽根車の流入口に向う流れが得られ、多段ポンプ
としての効率を向上させることができる。

その上、ガイドベーンの省略によつて部品点数
を減少でき、ポンプ全体の小型軽量化の上で極め
て好ましい。

〔実施例〕

以下第２図およびを参照して本考案の実施
例を説明する。

第２図，は本考案の実施例を示すもので、
第１図に示す従来例のガイドベーン４は取り除か
れ、代りにリターンガイドベーン（返り羽根）３
の形状を変えて入口部Ａにおいてベーン間隔を絞
り漸次拡大して第１図の従来例のガイドベーン４
にみられるように緩かな流路断面積拡大が行われ
てデイフユーザ機能をもたせてある。次いで次段
の羽根車に適切な流入角度をなすようにベーンは
曲げられ出口のベーン間隔は絞られている。この
ようにして本考案を実施したリターンガイドベー
ン（返り羽根）３は第１図，に示す従来例の
リターンガイドベーン（返り羽根）３とガイドベ
ーン４の機能を兼ね備えたものとすることがで
き、前述の種々の利点をもたせることができる。
羽根車１から出た液体は室６内を周方向に高速で
流れるが、中胴２の内面を滑かに製作することに
よりそれによる損失はきわめて少くすることがで
き、第１図，に示す従来例のものに比べ不利
となる点はない。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案は、羽根車の半径方
向外方にガイドベーンを設けることなく、リター
ンガイドベーン（返り羽根）をベーン間隔が入口
では絞られ漸次拡大して緩かな流路断面積拡大を
行うものとしたので、リターンガイドベーン（返
り羽根）に従来のガイドベーンとリターンガイド
ベーン（返り羽根）の機能、すなわちデイフユー
ザ機能と整流機能をもたせることができる。この
ように羽根車外周に設けられていた従来のガイド
ベーンを除去することにより、ガイドベーン先端
の侵食等の不都合を解消し、また部品点数を減少
させると共に、羽根車外周方向スペースを小さく
することができて小型、軽量化の上で好ましいも
のとなり、さらに胴体製作上も良好なものとなつ
て鋳造以外のプレス成形による製作も可能となる
等の数々の優れた効果をもたらすものである。

【図面の簡単な説明】

第１図，は従来の多段ポンプの一部を示
し、は縦断面図、は平面図である。第２図
，は本考案の実施例に係る多段ポンプの一部
を示し、は縦断面図、は平面図である。 １……羽根車、２……中胴、３……リターンガ
イドベーン、５……ポンプ軸。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 前段の羽根車で半径方向外方に放出された液体
   が次段の羽根車の流入口に流入するために外周か
   ら内側に向って半径方向内方に流れる流路部分を
   有し、羽根車の半径方向外方にガイドベーンを設
   けない多段ポンプにおいて、前記外周から内側に
   向う流路部分にリターンガイドベーンが設けら
   れ、そのリターンガイドベーンは、ベーン間隔が
   入口では絞られて漸次拡大してデイフユーザ機能
   を有する半径方向外方の部分と、その半径方向外
   方の部分と連接して設けられベーン間隔が絞られ
   て次段の羽根車の流入口に液体を導く半径方向内
   方の部分とより成ることを特徴とする多段ポン
   プ。