JP2565794Y2 - 木質化粧シート - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、壁面化粧用等に使用
される木質化粧シート、更に詳しくは木質化粧単板の裏
面に裏打材が貼着された柔軟な化粧シートに関する。

【０００２】

【従来の技術と課題】従来、この種の木質化粧シートと
しては、化粧単板の裏面に裏打材として和紙を貼着した
ものが知られている。かかる従来の木質化粧単板は、主
に工場内で角柱、長押、敷居等の造作材の表面化粧用と
して、集成材の心材の表面に貼り付けて使用されている
が、広い面積のものを壁面に直接貼り付けて使用する壁
面化粧材としての用途には不向きであり、ほとんど実用
化されていないのが実情である。 その理由は主に次の
とおりである。即ち、和紙で裏打ちした上記木質化粧シ
ートは、壁紙の施工に一般的に使われるような水性の接
着剤、特に澱粉と酢酸ビニル系エマルジョン混合糊液を
使用して施工する場合、該接着剤の水分を吸収して著し
い谷反りが発生し、突き合わせ部に浮きが発生するなど
のトラブルを生じるため、安定施工が困難である。この
ため、畢竟初期接着力の強いゴム系の接着剤を用いて、
谷反り傾向の発生を防いで施工する必要があるが、この
ような接着剤を用いて施工する場合、初期接着力が強い
ために一旦壁面に接着するとその位置修正ができず、現
場施工作業が難しいものとなると共に、貼り付け前に接
着剤の適切な乾燥が必要となるなど、施工性に問題があ
った。

【０００３】更には、吸湿性のために寸法安定性が悪
く、保管中に吸湿して反りや波打ちが発生し易いという
ような取扱い上の問題もあった。

【０００４】この考案は、上記のような問題点を解決し
て、現場施工用の壁面化粧材としての用途にも好適使用
しうるような木質化粧シートを提供することを目的とす
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この考案は、上記の目的
において特に裏打ち材の層中に不透水性薄膜を介在して
水分、湿気を遮断すると共に、木質化粧単板の裏面に直
接接着される面に樹脂含浸紙を用いて寸法安定性、平滑
性を向上させ、更に壁面等に貼り付けられる下層部分
に、接着剤の過度の浸み込みを防止するサイズ性、及び
再施工時に要求される層間剥離性を付与した裏打紙を用
いることを特徴とするものである。

【０００６】即ち、この考案は、木質化粧単板の裏面に
柔軟な基材シートが貼着されてなり、該基材シートが、
上記化粧単板に直接接着された上層の樹脂含浸紙と、中
間の不透水性樹脂薄膜と、下層の裏打紙との積層シート
で構成され、かつ該裏打紙がサイズ性を有するととも
に、所定の引き剥がし力を加えた時に裏打紙自体を構成
する紙層の層間から剥離する層間剥離性を有しているこ
とを特徴とする木質化粧シートを要旨とする。

【０００７】

【実施例】図示実施例において、（１）は化粧面を構成
する木質化粧単板、（２）は適宜の接着剤（３）を介し
てその裏面に貼着された柔軟な裏打ち用の基材シートで
ある。該基材シート（２）は、化粧単板（１）側から上
層の樹脂含浸紙（４）と、中間の不透水性樹脂薄膜
（５）と、サイズ性及び層間剥離性が付与された下層の
裏打紙（６）との積層シートからなる。

【０００８】木質化粧単板（１）は、木材フリッチを薄
くスライスして得られる厚さ０．２〜１．５ｍｍ、好ま
しくは０．３〜０．６ｍｍ程度の突板単板である。樹種
は特に限定されない。積層フリッチをスライスして得ら
れる所謂デザイン単板を用いても良い。樹種等との関係
でおどりの強い単板の場合には、ポリエチレングリコー
ル等により事前に寸法安定化処理を施したものを用いる
ものが好ましい。また、製造上乾燥単板が用いられる。

【０００９】化粧単板（１）の裏面側に直接接着される
樹脂含浸紙（４）は、アクリル系、ゴム系等の硬化後に
柔軟性のある樹脂を含浸したものが好適であり、アート
紙、クラフト紙等のサイジング紙を包含する厚さ０．３
〜０．５ｍｍ程度のものが好適に使用される。特に厚手
の化粧単板（１）が用いられるような場合、あるいは用
途上化粧シートに硬さを必要とする場合には、フェノー
ル樹脂等の硬化性樹脂を含浸したものを用いても良い。
この樹脂含浸紙（４）は、化粧シートの寸法安定性を向
上し、かつある程度の剛性を付与して単板のおどりを防
止するのに有効に機能するものである。

【００１０】不透水性樹脂薄膜（５）は、澱粉と酢酸ビ
ニルエマルジョンの混合糊料等の水性接着剤による施工
を可能とするための水分遮断をはかることを主目的をす
る。樹脂含浸紙（４）と裏打紙（６）との接着に併用す
る上で、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢
酸ビニル共重合体等のホットメルト系樹脂フィルムを用
いるのが好適である。厚さ２０〜５０μ程度の上記フィ
ルムを用いる場合、樹脂含浸紙（４）と裏打紙（６）と
の間に挾んで熱圧することにより当該樹脂フィルムを溶
融させて接着と同時に薄膜（４）の形成を行なう。フィ
ルムを用いる場合のほか、ホットメルト系樹脂を加熱溶
融させた状態で樹脂含浸紙（４）または裏打紙（６）に
塗布し、直ちに相手材を重ね合わせて加圧接着するもの
としても良い。また、塩化ビニル樹脂等の有極性樹脂を
用いることも許容され、かかる樹脂の場合は接着剤を用
いて樹脂含浸紙（４）と裏打紙（６）との間に介在状態
に接着するものとする。

【００１１】裏打紙（６）は、ビニルクロス等の壁紙に
使用される所謂壁紙原紙を用いるのが好適であり、クラ
フト紙やアート紙等のサイジング紙の使用も許容され
る。厚さとしては、不透水性樹脂薄膜（５）の樹脂また
は貼り合わせ用の接着剤が裏面まで浸透しない程度の厚
さが必要であり、０．１〜０．２ｍｍ程度のものを用い
るのが好適である。またこの裏打紙（６）としては施工
用の接着剤の接着効果を十分に発揮させるために、接着
剤の水分が中芯部まで過度に浸透するのを防止するべく
サイズ性を付与したものであることを必要とする。サイ
ズ剤は裏打紙の抄造時に内添する方法と紙に含浸する方
法があり、内添用としてはロジンサイズ剤や合成サイズ
剤が使用され、含浸用としてはアクリル系、スチレン系
等のサイズ剤が使用される。更にまた、裏打紙（６）
は、化粧シートの貼り替え、即ち再施工のために剥離性
の良好なものであることが必要であり、このために所定
の引き剥がし力を加えた時に裏打紙（６）自体を構成す
る紙層の層間から剥離する層間剥離性が付与されたもの
が用いられる。このような層間剥離性は、例えば、紙の
製造段階でのすき上げ時に使用する糊液の種類や濃度な
どによって適宜に調整付与することができる。

【００１２】この考案に係る上記木質化粧シートは、壁
紙の施工に従来から一般的に用いられているような澱粉
と酢酸ビニル系エマルジョン混合物等からなる水性接着
剤を用いて、壁下地面上等に従来施工法と全く同様にし
て施工されるものである。

【００１３】

【考案の効果】この考案に係る木質化粧シートは、上述
のように、表面の木質化粧単板に裏打ちされた基材シー
トに、その中間層として不透水性樹脂薄膜が設けられて
いること、そしてまた裏打紙にサイズ性が付与されてい
ることにより、従来の壁紙施工に通常用いられているよ
うな安価な水性接着剤を用いて支障なく施工することが
できる。即ち、施工時に接着剤の水分が基材シートの上
層部分にまで移行することがなく、施工中に反りが発生
したり、突き合わせ部に浮きが発生するのを防止でき
る。従って、水性接着剤の使用をもって施工時に細かい
位置修正等も行うことが可能となり、従来の壁紙施工と
同様にして広い壁面への施工をも容易に行なうことがで
きる。

【００１４】また、表面の木質化粧単板に直接接着され
る基材シートの上層には、樹脂含浸紙が用いられている
ので、寸法安定性が良好であり、単板のおどりを防止で
きると共に、樹脂含浸紙の種類を選択することで、用途
に応じた剛性を付与し、あるいはまた化粧単板に厚さ
０．６〜１．０ｍｍのいわゆる厚単板を使用した木質化
粧シートの提供も可能となる。

【００１５】更にまた、裏打紙に、所定の引き剥がし力
を加えた時に該裏打紙自体を構成する紙層の層間から剥
離する層間剥離性が付与されていることにより、貼り替
え時のための剥離性も良好なものとなしうる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の実施例の構成図である。

【符号の説明】

１…化粧単板 ２…基材シート ４…樹脂含浸紙 ５…不透水性樹脂薄膜 ６…裏打紙

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 木質化粧単板の裏面に柔軟な基材シート
   が貼着されてなり、該基材シートが、上記化粧単板に直
   接接着された上層の樹脂含浸紙と、中間の不透水性樹脂
   薄膜と、下層の裏打紙との積層シートで構成され、かつ
   該裏打紙がサイズ性を有するとともに、所定の引き剥が
   し力を加えた時に裏打紙自体を構成する紙層の層間から
   剥離する層間剥離性を有していることを特徴とする木質
   化粧シート。