JP2564715Y2 - スクロール形圧縮機 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、冷凍装置の冷媒圧縮用等に組込まれて使用
されるスクロール形圧縮機に関する。

（従来の技術） 一般に、スクロール形圧縮機では、可動スクロールと
固定スクロールとの間で円滑な摺動を行わせるため、摺
動部分に多量の潤滑油を供給する必要があり、このた
め、圧縮流体への油混入量が多くなり、これに伴い吐出
管から外部へ流出される油量も多くなって、外部配管に
油が滞留し、圧縮機の必要油量が確保できずに軸受焼損
等の問題を招くと共に、油が配管壁に付着して流通面積
が縮小し、圧力損失が大きくなり、しかも油が熱交換器
の管内面に付着して熱交換効率が低下し、全体として製
品の性能低下を招く問題が起こる。

このため、以前に、特願昭63−69156号（昭和63年３
月22日出願）で、油上がり低減策について提案した。

このものは、第６図に示すようにハウジング（１）の
上部に、固定及び可動スクロール（２）（３）を上下対
向状に支持し、ハウジングトップ（1b）と固定スクロー
ル（２）との間に形成する吐出チャンバー（５）に、吐
出口（21）を覆う油分離体（６）を配設すると共に、こ
の油分離体（６）の外周側に、吐出チャンバー（５）の
底部とハウジング（１）の底部油溜に通じる低圧域とを
連通するキャピラリーチューブ等の油戻し路（10）を介
装し、又、油分離体（６）の側面と対向するハウジング
トップ（1b）の側壁（1c）に、吐出管（７）の接続口
（81′）と吐出チャンバー（５）への開放口（82′）と
を水平方向にストレートに連通した継手（８′）を取付
けたものである。こうして、吐出口（21）から吐出され
た吐出ガス中の油を油分離体（６）で分離して、ガスの
みを吐出管（７）へと吐出し、分離油は、油戻し路（1
0）を介して油溜へと戻すようにしている。

（考案が解決しようとする課題） ところが、前記油戻し路（10）は高圧の吐出チャンバ
ー（５）と低圧域とを連通するものだから、キャピラリ
ーチューブ等の小口のものとならざるを得ず、前記油分
離体（６）で分離された分離油は固定スクロール（２）
の上面に溜りやすく、また、前記開放口（82′）を前記
固定スクロール（２）の上面近くで、前記油分離体
（６）の側面に対向するように水平方向に開口させてい
るため、せっかく油を分離しても、前記固定スクロール
（２）の上面に溜った油が、前記開放口（82′）から吐
出ガスと共に流出してしまい、油上がり対策としては確
実なものではない問題がある。

この場合、前記ハウジングトップ（1b）の側壁（1c）
を高くして、継手（８′）の取付位置を高くすることが
考えられるが全体の高さが高くなりコンパクト化の要請
に反する問題がある。

又、継手（８′）をハウジングトップ（1b）の頂部に
取付けることも考えられるが吐出チャンバー（５）の底
部と開放口（82′）との距離が離れすぎ、油戻し路（1
0）が詰まる等の事故が起こった場合、ほぼ吐出チャン
バー（５）の容積分の油が溜まるまで吐出管（７）に油
が流出しないため、冷凍装置側を経由した油戻しが期待
できず、逆に非常時の給油保証が行えず信頼性に欠ける
問題が起こる。

本考案の目的は、装置の大形化や信頼性の低下を招く
ことなく、通常使用される部品を利用して、油上がりを
良好に防止できるスクロール形圧縮機を提供することに
ある。

（課題を解決するための手段） そこで本考案では、固定スクロール（２）の上面とド
ーム形ハウジングトップ（1b）の内面との間に吐出チャ
ンバー（５）を形成し、この吐出チャンバー（５）に吐
出口（21）を覆う油分離体（６）を配設すると共に、該
吐出チャンバー（５）の底部に低圧域に延びる油戻し路
（10）を開口し、かつ、前記ハウジングトップ（1b）の
側壁（1c）に、吐出管（７）の接続口（81）と前記吐出
チャンバー（５）内に開放する開放口（82）とを連通す
る内部通路（83）をもつ継手（８）を接続したスクロー
ル形圧縮機において、前記継手（８）に、前記側壁（1
c）における固定スクロール（２）の上面近くで、前記
油分離体（６）の側面に対向し、前記開放口（82）を前
記吐出チャンバー（５）の内部において上方に指向させ
る壁部（86）を設けることとした。

また、前記継手（８）の外面（84）はストレートな筒
形面で構成し、前記吐出チャンバー（５）内に開放する
開放口（82）を前記外面（84）に開口させることが好ま
しい。

（作用） 前記継手（８）に、前記側壁（1c）における固定スク
ロール（２）の上面近くで、前記油分離体（６）の側面
に対向し、前記開放口（82）を前記吐出チャンバー
（５）の内部において上方に指向させる壁部（86）を設
けたから、前記継手（８）を固定スクロール（２）の上
面に平行状にして、この上面近くのハウジング側壁（1
c）に接続しても、前記継手（８）の壁部（86）によ
り、前記吐出チャンバー（５）に溜る油を前記壁部（8
6）頂部の高さまでは、吐出ガスと共に前記吐出管
（７）へと流入していくのを防止することができるので
あり、油分離されたガスによる吐出チャンバー（５）に
溜る油の吐出管（７）側への流出が抑制できる。

従って、圧縮機全体が嵩高くなることなく、油の流出
を抑制できるのである。

また、前記継手（８）の外面（84）をストレートな筒
形面とし、前記吐出チャンバー（５）内に開放する開放
口（82）を前記外面（84）に開口させることにより、ハ
ウジングトップ（1b）への挿入が該ハウジングトップ
（1b）の外側から行え、ロボット等による自動化への対
応に便利となる。

（実施例） 第５図に示したスクロール形圧縮機は、円筒形胴部
（1a）と、該胴部（1a）の上部側に固定したドーム形の
ハウジングトップ（1b）とから成る密閉構造のハウジン
グ（１）を形成して、該ハウジング（１）の内方上部側
に、中心部に吐出口（21）をもった固定スクロール
（２）と可動スクロール（３）とを、架構（４）を介し
て上下対向状に支持すると共に、前記胴部（1a）の下部
側にインバータ制御により可変速としたモータ（Ｍ）を
配設して、このモータ（Ｍ）の駆動軸（Ｓ）を前記可動
スロール（３）に伝動機構（Ｄ）を介して連結する一
方、前記ハウジングトップ（1b）の内部で固定スクロー
ル（２）の上部側に、吐出チャンバー（５）を形成して
いる。

又、前記吐出チャンバー（５）内で固定スクロール
（２）の上部側に、その吐出口（21）を取り囲むよう
に、筒状のデミスタ（61）と、該デミスタ（61）を保持
し、上面が閉鎖され、側面にガス流通穴を有する蓋状の
保持体（62）とから成る油分離体（６）を配設して、こ
の油分離体（６）で前記吐出口（21）からの吐出流体中
に混入する油を分離可能となすと共に、前記油分離体
（６）の外周側で固定スクロール（２）と架構（４）と
に、上下方向に延び、一端が前記吐出チャンバー（５）
の底部に開口し、他端が前記モータ（Ｍ）を配設する低
圧域に開口する貫通孔（９）を形成して、該貫通孔
（９）にキャピラリーチューブなどの油戻し路（10）を
挿通し、この油戻し路（10）を介して前記油分離体
（６）による分離油を前記ハウジング（１）の低圧域ひ
いては底部油溜に戻すようにしている。

又、前記ハウジングトップ（1b）の側壁（1c）におけ
る前記固定スクロール（２）の上面近くに取付孔（1d）
を開設し、この取付孔（1d）に、長さ方向一側に吐出管
（７）の接続口（81）をもち、かつ、他端側に前記吐出
チャンバー（５）の内部で前記油分離体（６）の外部側
に開口される開放口（82）をもち、さらにこれら接続口
（81）と開放口（82）とを連通する内部通路（83）をも
った継手（８）を接続して、この継手（８）を介して前
記吐出管（７）を前記ハウジングトップ（1b）に接続し
ている。

そして、以上の構成において、前記継手（８）に、前
記側壁（1c）における固定スクロール（２）の上面近く
で、前記油分離体（６）の側面に対向し、前記開放口
（82）を前記吐出チャンバー（５）の内部において上方
に指向させる壁部（86）を設けることにより、前記開放
口（82）を、前記接続口（81）と連続する内部通路（8
3）を介して吐出チャンバー（５）の内部上方に向けて
開口するのである。

具体的には、第１図及び第２図で詳しく示すように、
前記継手（８）を形成するにあたって、１つの円形棒状
体を用い、その長さ方向一側端面に、前記吐出管（７）
を接続する接続口（81）を開設し、かつ、長さ方向他側
端面に、前記油分離体（６）の側面に対向する壁部（8
6）を設けて、前記吐出チャンバー（５）内に臨む開放
口（82）を上向きに開設すると共に、前記継手（８）の
内部に、前記接続口（81）と開放口（82）とを連通する
概略Ｌ形状の内部通路（83）を連続状に形成するのであ
る。

以上のように、前記継手（８）に、前記側壁（1c）に
おける固定スクロール（２）の上面近くで、前記油分離
体（６）の側面に対向し、前記開放口（82）を前記吐出
チャンバー（５）の内部において上方に指向させる壁部
（86）を設けて、この壁部（86）の上端部に上方に指向
する前記開放口（82）を設けたから、前記継手（８）を
固定スクロール（２）の上面に平行状にして、この上面
近くのハウジング側壁（1c）に接続しても、油が分離さ
れた吐出ガスは、前記壁部（86）の上端に至ってから、
前記開放口（82）に導入されるので、前記油分離体
（６）で分離された油が、前記固定スクロール（２）上
に溜る場合、前記壁部（86）の上端に至るまでは、前記
開放口（82）から吐出ガスと共に前記吐出管（７）側に
油が排出されるのを防止することができるのであり、油
の外部への排出量が極めて少なくなって、油上がりが低
減される。

従って、圧縮機全体の大形化や信頼性の低下を招くこ
となく、油分離されたガスによる吐出チャンバー（５）
内の貯溜油の吐出管（７）側への流出を従来に比べて抑
制して油上がりの低減を行えるのである。

又、前記継手（８）の外面（84）は、ストレートな筒
形面となし、かつ、前記吐出チャンバー（５）内に開放
する開放口（82）を前記外面（84）に上方に指向させて
開口させると共に、前記継手（８）における開放口（8
2）の形成側で下部側一部には、水平方向に延びる切欠
段部（85）を形成するのであり、斯くするときには、前
記継手（８）を前記ハウジングトップ（1b）の取付孔
（1d）に、ロボットなどで自動組付を行う場合、この取
付孔（1d）に対する継手（８）の挿入と位置決め作業と
が簡単に行えるのである。

即ち、ロボットによる自動組付作業時には、第３図に
示したごとく、基台（Ｋ）上に前記ハウジングトップ
（1b）を載置して、該ハウジングトップ（1b）の外方側
から取付孔（1d）へと前記継手（８）を挿入するのであ
るが、該継手（８）の外面（84）がストレートな筒形面
とされているため、前記取付孔（1d）への挿入作業が簡
単にでき、また、斯かる挿入作業時に、前記段部（85）
を前記基台（Ｋ）上に設けた治具（Ｇ）に当接させるこ
とにより、前記継手（８）のハウジングトップ（1b）に
対する取付位置の位置決めが簡単かつ正確に行えるので
ある。

尚、前記継手（８）の開放口（82）には、ストレート
なパイプを取付け、開口高さを調節するようにしてもよ
いし、又、この継手（８）は、第４図に示すように、そ
の全体形状を断面概略Ｌ形となし、その横方に延びる一
側部に前記吐出管（７）が接続される接続口（81）を、
他端側に、上方に延びる壁部（86）により筒部を形成し
て、この壁部（86）の上端部に上方に向かって指向する
開放口（82）を設けて、この開放口（82）を前記吐出チ
ャンバー（５）内に開放させると共に、これら接続口
（81）と開放口（82）とをＬ形の内部通路（83）で連通
させるようにしてもよい。

（考案の効果） 以上本考案では、吐出管（７）の接続口（81）と前記
吐出チャンバー（５）内に開放する開放口（82）とを連
通する内部通路（83）をもつ継手（８）に、前記側壁
（1c）における固定スクロール（２）の上面近くで、前
記油分離体（６）の側面に対向し、前記開放口（82）を
前記吐出チャンバー（５）の内部において上方に指向さ
せる壁部（86）を設けたから、前記継手（８）を固定ス
クロール（２）の上面に平行状にして、この上面近くの
ハウジング側壁（1c）に接続しても、前記継手（８）の
壁部（86）により、前記吐出チャンバー（５）に溜る油
を前記壁部（86）頂部の高さまでは、吐出ガスと共に前
記吐出管（７）へと流入していくのを防止することがで
きるのであるり、油分離されたガスによる吐出チャンバ
ー（５）に溜る油の吐出管（７）側への流出が抑制でき
るのである。

従って、圧縮機全体の大形化や信頼性の低下を招くこ
となく、油上がりを低減できるのである。

また、前記継手（８）の外面（84）をストレートな筒
形面とし、前記吐出チャンバー（５）内に開放する開放
口（82）を前記外面（84）に開口させることにより、ハ
ウジングトップ（1b）への挿入が該ハウジングトップ
（1b）の外側から行え、ロボット等による自動組付けが
容易に行えるのである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に使用する継手の断面図、第２図は同正
面図、第３図は同継手の自動組付作業工程を説明する説
明図、第４図は他の実施例を示す断面図、第５図はスク
ロール形圧縮機の全体構造を示す一部省略縦断面図、第
６図は従来例を示す断面図である。 （1b）……ハウジングトップ （1c）……側壁 （２）……固定スクロール （21）……吐出口 （５）……吐出チャンバー （６）……油分離体 （７）……吐出管 （８）……継手 （81）……接続口 （82）……開放口 （83）……内部通路 （84）……外面 （86）……壁部 （10）……油戻し路

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 合議体 審判長 鈴木 泰彦 審判官 浜 勇 審判官 小池 正利 (56)参考文献 実開 昭61−179389（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭62−150592（ＪＰ，Ｕ)

Claims (2)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】固定スクロール（２）の上面とドーム形ハ
   ウジングトップ（1b）の内面との間に吐出チャンバー
   （５）を形成し、この吐出チャンバー（５）に吐出口
   （21）を覆う油分離体（６）を配設すると共に、該吐出
   チャンバー（５）の底部に低圧域に延びる油戻し路（1
   0）を開口し、かつ、前記ハウジングトップ（1b）の側
   壁（1c）に、吐出管（７）の接続口（81）と前記吐出チ
   ャンバー（５）内に開放する開放口（82）とを連通する
   内部通路（83）をもつ継手（８）を接続したスクロール
   形圧縮機において、 前記継手（８）に、前記側壁（1c）における固定スクロ
   ール（２）の上面近くで、前記油分離体（６）の側面に
   対向し、前記開放口（82）を前記吐出チャンバー（５）
   の内部において上方に指向させる壁部（86）を設けてい
   ることを特徴とするスクロール形圧縮機。
2. 【請求項２】前記継手（８）の外面（84）がストレート
   な筒形面で、吐出チャンバー（５）内に開放する開放口
   （82）を前記外面（84）に開口させている請求項１記載
   のスクロール形圧縮機。