JPH077589Y2 - スクロ−ル気体圧縮機の給油配管固定装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、圧縮機の高圧側で圧縮気体から分離した潤滑
油を圧縮室などに戻す装置を有するスクロール気体圧縮
機の給油配管固定装置に関するものである。

従来の技術 低振動、低騒音特性を備えたスクロール圧縮機は、吸入
室が外周部にあり、吐出ポートがうず巻きの中心部に設
けられ、圧縮流体の流れが一方向で往復動式圧縮機や回
転式圧縮機のような流体を圧縮するための吐出弁を必要
とせず吐出脈動が比較的小さくて大きな吐出空間を必要
としないことがよく知られている。

しかし、特に気体を圧縮する場合などは圧縮部の漏れ隙
間を小さくするためにうず巻き部の寸法精度を極めて高
くする必要があるが部品形状の複雑さ、寸法バラツキな
どによりスクロール圧縮機のコストが高く性能バラツキ
も大きいという問題があった。

そこで、この種の問題解決のための方策として、圧縮途
中の気体漏れ防止のために潤滑油膜を利用したシール効
果により渦巻き部寸法精度の適正化と圧縮機性能の安定
化を期待して第８図に示すように潤滑油を圧縮途中の圧
縮室に直接流入させる構成が知られている。同図に示す
構成は、密閉容器701内の上部にモータ703を配置し下部
に圧縮部を配置して密閉容器内空間702を吐出室とした
構造で、吐出室底部の油溜710の潤滑油を固定スクロー
ル705の鏡板705aに挿入固定したキャピラリチューブな
どの絞り通路を有する油吸い込み管722を介して圧縮途
中の圧縮室723に直接流入させる構成であった（特開昭5
7-8386号公報）。

考案が解決しようとする問題点 しかしながら上記の第８図のような油吸い込み管722を
鏡板に挿入固定したのみの接続では、気体圧縮機高速回
転運転時などに油溜710に連通した密閉圧縮室（吐出ポ
ートにも吸入室にも連通しない圧縮空間）内で瞬時的に
液圧縮が生じて密閉圧縮室内が瞬時的に異常圧力上昇し
た場合には、油吸い込み管722の通路抵抗が大きいので
鏡板705aに挿入固定した油吸い込み管722が抜け出し圧
縮機破損を招くという問題があった。

また、油吸い込み管722の抜け出し防止のために鏡板705
aにネジ穴を設けて油吸い込み管722をねじ込む等の方法
もあるが両部品のコスト高を招き、細径の油吸い込み管
722を使用する場合や接着剤を使用して固定する場合な
どは固定強度不足を招くという問題があった。

そこで、本考案は鏡板への油吸い込み管の接続固定を逆
流防止弁装置など元来、吐出室に設けられて圧縮流体の
流れをコントロールするための部品を利用して部品コス
トが安く、安全性に優れたスクロール気体圧縮機を提供
するものである。

問題点を解決するための手段 上記問題を解決するために本考案のスクロール気体圧縮
機の給油配管固定手段は、吐出室の油溜（または吐出室
に通じる油溜）と圧縮空間（または吸入室）とを絞り通
路を有し且つ固定スクロールの鏡板を経由する給油通路
により配管連通し、その配管を吐出ポートと吐出室との
間に設けられ鏡板に取り付けられた逆流防止弁装置（ま
たは吐出室内の気体拡散防止のために鏡板に取り付けら
れた静流装置）などの流体制御部品により鏡板に共固定
する構成である。

作用 本考案は上記構成によって、気体と共に吸入室を経て圧
縮空間で吸入・圧縮された後に吐出室（または吐出室に
通じる空間）で圧縮気体から分離し油溜に収集された潤
滑油は、他の要素と共に圧縮空間を形成する鏡板に取り
付けられた流体制御部品によって鏡板に共固定されて接
続した絞り通路を有する給油配管を通じて圧縮空間（ま
たは吸入室）に流入し、圧縮空間の微少隙間を油膜密封
して圧縮気体漏れを防ぐ。万一、隙間を油膜密封された
圧縮空間で液圧縮による瞬時的異常圧力が発生した場合
でも流体制御部品と共に鏡板に接続固定された給油配管
は、異常内圧力に耐えて鏡板から離反することなく、そ
の後の圧縮空間などへの潤滑油給油を続けてスクロール
気体圧縮機の高効率運転に寄与することが出来るもので
ある。

実施例 以下本考案の一実施例のスクロール気体圧縮機につい
て、図面を参照しながら説明する。

第１図は本考案の第１の実施例におけるスクロール気体
圧縮機の縦断面図を示し、第２図は第１図のA-A線にお
ける圧縮部の横断面図を示し、第３図は第１図のＢ部と
Ｃ部の詳細図を示し、第４図〜第６図は本考案の別の実
施例の給油配管固定状態の部分断面図を示し、第７図は
本考案の別の実施例のスクロール気体圧縮機の縦断面図
を示す。

第１図において、1,2は鉄製の密閉ケース、３は鉄製の
フレームでその外周面部で密閉ケース1,2と共に単一の
溶接ビード４によって溶接密封された密閉ケース1,2内
を上側の吐出室５と下側の駆動室６（低圧側）とに仕切
っている。

フレーム３に支承されたインバータ電源（図示なし）に
よって運転制御されるモータ７により回転駆動される駆
動軸８の上端部の偏心穴９には旋回スクロール10の旋回
軸11がはめ込まれ、旋回スクロール10の自転阻止部品12
が旋回スクロール10とフレーム３に係合し、旋回スクロ
ール10に噛み合う固定スクロール13がフレーム３にボル
ト固定され、固定スクロール13の鏡板14には吐出ポート
15が設けられ、鏡板14の上面に吐出ポート15の開口端を
塞ぐフリーバルブ型の逆流防止弁装置16と多数の小穴を
有してその上部が傘状をしたパンチングメタル19とその
一端が吐出室５の底部の吐出室油溜18に浸漬し他端が逆
流防止弁装置16の弁押え17によってその通路方向に押圧
された軟銅製キャピラリチューブから成る給油配管26a,
26bが取り付けられている。給油配管26a,26bの鏡板14へ
の接続部は、第３図のようにその端部が部分的に拡管さ
れ、その拡管部27の端面28が弁押え17に押接されて接続
部が鏡板14に開設した細径のインジェクション穴30a,30
bに圧入固定され、拡管部27の端面29は気体密封が可能
なようにインジェクション穴30a,30bの拡穴段付き面31
a,31bに密着している。

インジェクション穴30a,30bは、第２図のように圧縮部
のほぼ中央部に配置された吐出ポート15に通ぜず圧縮部
の外周部に配置された吸入室33にも通じない第１圧縮室
39a,39bに開口し、その開口位置は互いに圧縮進度が等
しく配置されている。

密閉ケース１とパンチングメタル19との間には細鉄線か
ら成るフィルター20が詰められ、吐出室５は密閉ケース
１の上面に設けられた吐出管21を通じて外部の配管系
（冷凍サイクル配管系）を経て密閉ケース２の側面に設
けられた吸入管22を通じて低圧側の駆動室６に連通し、
駆動室６の底部にはモータ室油溜23が設けられ、偏心穴
９とモータ室油溜23とを連通する偏心油穴24を有した駆
動軸８の下端がモータ室油溜23に埋没している。

第４図〜第６図は鏡板14a〜14cへの給油配管26a,26bの
取り付け方を示す別の実施例で、第４図は給油配管26a,
26bの拡管部27の端面31a,31bを鏡板14aの平面部に当接
しており、第５図は給油配管26a,26bの拡管部27の端面3
1a,31bとインジェクション穴30a,30bの拡穴段付き面29
との間に接続部シール性向上のためにテフロン製パッキ
ン32を挾んでおり、第６図は給油配管26cがリード弁型
の逆流防止弁装置26aのリード弁34によって鏡板14cに押
圧固定されて、その管端面がインジェクション穴30a,30
bの拡穴段付き面29に当接してシール機能を有した構成
である。

第７図は、吐出気体中の潤滑油を分離させるためのパン
チングメタル19aを密閉ケース１に取り付け、吐出室５
内での吐出気体の拡散によって吐出室油溜18の潤滑油面
の波立つ防止のために鏡板14に仕切り板35が取り付けら
れ、仕切り板35によって給油配管26a,26bを鏡板14に接
続固定した別の実施例である。

以上のように構成されたスクロール気体圧縮機につい
て、その動作を説明する。

第１図〜第３図において、モータ７によって駆動軸８が
回転駆動されると旋回スクロール10が旋回運動をし、圧
縮機に接続した冷凍サイクルから吸入冷媒ガスが吸入管
22を通して駆動室６に流入し、その中に含まれる潤滑油
の一部が分離された後に吸入室33に吸入され、この吸入
冷媒ガスは旋回スクロール10と固定スクロール13との間
に形成された圧縮室内に閉じ込められ、旋回スクロール
10の旋回運動に伴って順次圧縮され中央部の吐出ポート
15、逆流防止弁装置16を経て吐出室５へ吐出され、吐出
冷媒ガス中に含まれる潤滑油の一部はその自重およびパ
ンチングメタル19の小穴や細鉄線から成るフィルター20
を通過する際にその表面に付着などして吐出冷媒ガスか
ら分離して吐出室油溜18に収集され、残りの潤滑油は吐
出冷媒ガスと共に吐出管21を経て外部の冷凍サイクルへ
搬出され、再び吸入冷媒ガスと共に吸入管22を通して圧
縮機内に帰還する。

一方、駆動室６で吸入冷媒ガスから分離した底部のモー
タ室油溜23に収集された潤滑油は駆動軸８の偏心油穴24
による遠心ポンプ作用で偏心油穴24、駆動軸８に係わる
軸受隙間（偏心穴９と旋回軸11との隙間を含む）、旋回
スクロール10に係わるスラスト軸受部や自転阻止部品12
の摺動面を順次潤滑して吸入冷媒ガスと共に吸入室33へ
流入する。

また、吐出室油溜18の潤滑油は絞り通路を有した給油配
管26a、26bおよびインジェクション穴30a,30bを通り、
漸次減圧されながら圧縮途中の第１圧縮室39a,39bに差
圧給油され、吸入室33を経由して圧縮室に流入して来た
モータ室油溜23の潤滑油と共に隣接する圧縮室間の隙間
を油膜で密封し圧縮冷媒ガスの漏洩を少なくする。

第７図において、吐出冷媒ガス中に含まれた潤滑油の一
部はその自重およびパンチングメタル19aの小穴や細鉄
線から成るフィルター20を通過する際にその表面に付着
して吐出冷媒ガスから分離して密閉ケース１の内壁や仕
切板35の切り欠き穴などを通じて吐出室油溜18に収集さ
れる。パンチングメタル19aとフィルター20を通過した
吐出冷媒ガスはそのガス圧脈動を減衰されて圧縮機外部
の冷凍サイクルへ送出される。パンチングメタル19aと
仕切り板35との間の空間には吐出冷媒ガス量が増加する
と激しい気体拡散が生じる。吐出室油溜18の潤滑油面高
さは仕切板35によって拡散気流の影響をあまり受けずに
変化が少ない。

以上のように上記実施例によれば吐出室油溜18と圧縮途
中の第１圧縮室39a,39bとの間を絞り通路を有したキャ
ピラリチューブから成り且つ鏡板14に設けられたインジ
ェクション穴30a,30bに接続された給油配管26a,26bによ
り連通し、吐出ポート15と吐出室５との間に設けられ鏡
板14に取り付けられた逆流防止弁装置16または吐出室油
溜18の潤滑油拡散防止のために鏡板14に取り付けられた
仕切り板35によって給油配管26a,26bを鏡板14への接続
固定が簡単で取り付けコストも安く、省スペースで給油
配管26a,26bの内径や長さ設定時の自由度も高く、吐出
室15の小容積化による圧縮機の小型化が図れる。

また、万一、吐出ポート15に連通しない第１圧縮室39a,
39b内で潤滑油や未蒸発冷媒液の液圧縮が発生し、瞬時
的にインジェクション穴30a,30bを通じて給油配管の接
続部に超高圧力が作用した場合でも、逆止弁装置16の弁
押え17または仕切り板35と共に鏡板14に接続固定された
給油配管26a,26bは超高内圧力に耐えて鏡板14から離反
せず、その後の第１圧縮室39a,39bへの潤滑油給油を続
けて高圧縮効率運転に寄与する。

また、上記実施例では逆流防止弁装置16のリード弁34ま
たは弁押え17により給油配管26a,26bを鏡板14に固定す
ることにより、逆流防止弁装置16が圧縮部の中心部に配
置されるため給油配管26a,26bの接続固定スペースをほ
とんど必要とせず潤滑油分離や潤滑油溜などに吐出室５
内をより有効に活用できる。

また、上記実施例では鏡板14への接続部における給油配
管26a,26bの一部の外径を拡大し、その拡管外端面31a,3
1bを鏡板14に押接することにより、接続部のシールが簡
易に実現できる。

また、上記実施例では給油配管26a,26bの拡管部27の端
面28を弁押え17によって鏡板14の側へ押接することによ
り、鏡板14への強固な取り付けが必要な剛性を有した弁
押え17とで抜け止め防止部を共固定するためその信頼性
は極めて大きい。

また、上記実施例では給油配管26a,26bの拡管部27の端
面31a,31bと鏡板14の接続面との間にパッキン32を介在
させることにより、その接続部のシール性は極めて高
い。

なお、上記実施例では吐出室油溜18と第１圧縮室39a,39
bとの間を給油配管26a,26bにより連通したが、圧縮気体
の種類や圧縮比あるいは圧縮空間の容積などに応じて吸
入室33または吸入室33に通じる第２圧縮室40a,40b（第
２図参照）との間を連通した場合でもその作用、効果は
同様であり、また吐出室15内の吐出室油溜18の代りに圧
縮機外の高圧側に油溜を設けて密閉シェル１を貫通する
給油配管によって圧縮室内などに給油させてもよい。

考案の効果 以上のように本考案は、吐出室の油溜または吐出室に通
じる油溜と圧縮空間または吸入室とを絞り通路を有し且
つ固定スクロールの鏡板を経由する給油通路によって配
管連通し、吐出ポートと吐出室との間に設けられ鏡板に
取り付けられた逆流防止弁装置または吐出室内の気体拡
散防止のために鏡板に取り付けられた整流装置などの流
体制御部品により給油通路の配管を鏡板に共固定して接
続することにより、配管の鏡板への接続固定が新たな部
品を必要とせず簡単に取り付けコストが安く、しかも省
スペースなため配管の内径や長さを設定する際の選択自
由度も高く、吐出室の小容積化によって圧縮機の小型化
を図ることも出来る。

また、万一、圧縮室内で液圧縮が生じ瞬時的に鏡板への
配管接続部に超高圧力が作用する場合でも、配管が鏡板
から離反せず、その後の圧縮空間などへの給油を続けて
圧縮効率の向上に寄与するなど簡易構成によって小型化
および耐久性と効率に優れた効果を奏するスクロール気
体圧縮機を実現できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第１の実施例におけるスクロール気体
圧縮機の縦断面図、第２図は第１図のA-A線における圧
縮部の横断面図、第３図は第１図のＢ部およびＣ部の詳
細説明図、第４図，第５図，第６図は本考案の別の実施
例の部分断面図、第７図は本考案のさらに別の実施例の
スクロール気体圧縮機の縦断面図、第８図は従来の油吸
い込み管を備えたスクロール気体圧縮機の断面図を示
す。 1,2……密閉ケース、５……吐出室、６……駆動室、７
……モータ、10……旋回スクロール、13……固定スクロ
ール、15……吐出ポート、16,16a……逆流防止弁装置、
17……弁押え、18……吐出室油溜、23……モータ室油
溜、26a,26b,26c……給油配管、27……拡管部、30a,30b
……インジェクション穴、32……パッキン、33……吸入
室、35……仕切り板。

Claims (5)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】固定スクロールの一部をなす鏡板の一面に
   形成された渦巻き状の固定スクロールラップに対して旋
   回スクロールの一部をなすラップ支持円盤上の旋回スク
   ロールラップを揺動回転自在に噛み合わせ、両スクロー
   ル間に渦巻き形の圧縮空間を形成し、前記固定スクロー
   ルラップの中心部には吐出ポートを設け、前記固定スク
   ロールラップの外側には吸入室を設け、前記圧縮空間は
   吸入側より吐出側に向けて連続移行する複数個の圧縮室
   に区画されて流体を圧縮するスクロール式圧縮機構を形
   成し、前記吐出室の油溜と前記圧縮空間または前記吸入
   室とを絞り通路を有し、且つ前記鏡板を経由する給油通
   路により配管連通し、前記吐出ポートと前記吐出室との
   間に設けられて前記鏡板に取り付けられた逆流防止弁装
   置または前記吐出室の気体拡散防止のために前記鏡板に
   取り付けられた整流装置などの流体制御部品によって前
   記配管を前記鏡板に共固定し接続したスクロール気体圧
   縮機の給油配管固定装置。
2. 【請求項２】逆流防止弁装置の弁体または弁押えにより
   配管を鏡板に固定した実用新案登録請求の範囲第１項記
   載のスクロール気体圧縮機の給油配管固定装置。
3. 【請求項３】鏡板接続部における配管の一部の外周を拡
   大し、その配管拡大外表面を鏡板に押接した実用新案登
   録請求の範囲第１項または第２項記載のスクロール気体
   圧縮機の給油配管固定装置。
4. 【請求項４】配管拡大部を弁押えにより鏡板の側へ押接
   した実用新案登録請求の範囲第３項記載のスクロール気
   体圧縮機の給油配管固定装置。
5. 【請求項５】配管拡大外表面と鏡板の接続面との間にシ
   ール材を介在させた実用新案登録請求の範囲第４項記載
   のスクロール気体圧縮機の給油配管固定装置。