JP2562256B2 - 方向性電磁鋼板の脱炭酸化層中の鉄系酸化物量の制御方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の脱炭酸化層中の鉄系酸化物量の制御方法

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JP2562256B2 JP4184198A JP18419892A JP2562256B2 JP 2562256 B2 JP2562256 B2 JP 2562256B2 JP 4184198 A JP4184198 A JP 4184198A JP 18419892 A JP18419892 A JP 18419892A JP 2562256 B2 JP2562256 B2 JP 2562256B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、方向性電磁鋼板の脱炭
焼鈍における脱炭酸化層中のFeO量の制御に係わり、
目標のFeO量を確実に得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】脱炭焼鈍工程の目的は、鋼板を脱炭する
ことに加えその表面に、その後に焼鈍分離剤を塗布し行
う仕上焼鈍でグラス被膜を形成するに必要なSiO2
主成分とする酸化層を形成することである。特にこの酸
化層は、最終的に製品の表面に形成されるグラス被膜の
品質に大きく影響することから、その量を厳密にコント
ロールすることが必要である。
【0003】従来からグラス被膜の特性向上を図るた
め、方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍についての提案がなされ
ている。例えば特開昭56−72178号公報では脱炭
焼鈍を700〜900℃で行い、方向性電磁鋼板の酸素
目付量を1.0〜2.0g/m2 とすることが開示され
ている。
【0004】ところで方向性電磁鋼板の脱炭酸化層中の
FeO量は、脱炭焼鈍の温度、時間、雰囲気露点、鋼板
表面性状等によって変わり、これまではグラス被膜にシ
モフリの欠陥が発生することがあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は脱炭焼鈍の途
中に温度や露点に変動があっても、又通板される方向性
電磁鋼板の板厚、表面状況が異なっても、通板材に所望
の鉄系酸化物量を付与することをを目的とし、結果的に
グラス被膜品質が優れた製品を安定して得るものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は方向性電
磁鋼板の脱炭焼鈍において、脱炭酸化層中の鉄系酸化物
(FeO)量を制御するにあたり、雰囲気ガス露点、炉
温または板温を検出し、予め定めた脱炭焼鈍での脱炭酸
化層中のFeO量を焼鈍の酸化度と反応温度と反応時間
から推定する式により脱炭酸化層中のFeO量を推定
し、当該推定FeO量と被焼鈍方向性電磁鋼板の目標F
eO量を比較し、その差がなくなるように雰囲気ガス露
点、加熱温度、均熱温度、還元温度、通板速度の少なく
とも1つを制御することを特徴とする脱炭酸化層中のF
eO量の制御方法にある。
【0007】以下本発明について詳細に説明する。方向
性電磁鋼板のグラス被膜は、脱炭焼鈍時に形成されるS
iO2 を主成分とする酸化層と、脱炭焼鈍後に塗布され
るMgOとが仕上焼鈍時に反応してMg2SiO4 のフ
ォルステライトが生成したものだが、このグラス被膜に
シモフリと呼ばれる円形の被膜が剥離した欠陥が発生す
ることがある。
【0008】シモフリは仕上焼鈍時に鋼中の窒素が放出
する際に発生し、シモフリを制御するには脱炭焼鈍時中
に0.05〜0.5g/m2 の鉄系の酸化物(FeO)
を含む酸化層をつくることが有効である。
【0009】FeOは仕上焼鈍時のフォルステライトの
形成を促進する作用を持ち、比較的低温でフォルステラ
イト被膜を形成することで、仕上焼鈍の雰囲気中の窒素
の鋼中への侵入を防ぐ働きを持つ。そのため脱炭酸化層
中のFeO量を厳密にコントロールする必要がある。
【0010】以下実施例に基づき図面を用いて説明す
る。図面において1は脱炭焼鈍炉であり、この実施例で
は加熱帯2、均熱帯3、還元帯4が設けられていて、最
終板厚に圧延された方向性電磁鋼板5が仕上焼鈍に先立
って脱炭される。
【0011】脱炭焼鈍炉1の加熱帯2および均熱帯3に
は、H2 を含んだ湿潤ガスが雰囲気供給ガス管6よりそ
れぞれ供給される。ガスは加湿器7により所望の露点に
調整される。
【0012】還元帯4には加熱帯、均熱帯より低い露点
のH2 を含んだガスが雰囲気供給ガス管8より供給さ
れ、雰囲気ガスは加湿器9により所望の露点に調整され
る。
【0013】脱炭焼鈍炉1の加熱帯2と均熱帯3はそれ
ぞれ所定の温度、例えば前者は800〜860℃に、後
者は820〜850℃とされていて、炉入口のシール装
置10を経て炉内に入る方向性電磁鋼板5が加熱・均熱
され、湿潤雰囲気ガス中の水分と鋼板中の炭素とが反応
し、COを発生して脱炭すると同時に鋼板表面が同様に
水分で酸化され、SiO2 を含む酸化膜が形成される。
【0014】還元帯4は820〜870℃の所定の温度
とされており、均熱帯とはシール装置11,11−1を
介して雰囲気が分離されている。還元帯では加均熱帯で
形成された酸化層を一部還元する。
【0015】加均熱帯の雰囲気ガスは鋼板通板方向と逆
方向に流れブリーダ12を介して炉外に送出される。こ
れらの反応により雰囲気ガス中の水分が消費された結
果、炉内には反応に応じた露点の分布が生じる。
【0016】13は鋼板の温度を検出する放射温度計で
あり、この実施例では加熱帯2後部に設け、板温の検出
とともに当該放射温度計13の設置位置と、別途求めた
通板時間とにより加熱速度が判明するようにしている。
また13−1は均熱帯3に、13−2は還元帯4に設け
た放射温度計である。
【0017】14,14−1,14−2は炉内雰囲気ガ
スの露点を検出する露点計であり、酸化還元挙動の正確
な推定のため加熱帯2、均熱帯3、還元帯4にそれぞれ
設けてある。
【0018】15は演算装置で、前記放射温度計13,
13−1,13−2からの温度検出信号、露点計14,
14−1,14−2からの露点信号が入力される。また
脱炭焼鈍炉1の通板速度信号、被焼鈍方向性電磁鋼板5
の板厚、板幅、脱炭焼鈍前の鋼板の炭素量が別途入力さ
れる。
【0019】本発明者達は脱炭焼鈍における方向性電磁
鋼板5のFeO量の変動なくし所定量とすべく実験・研
究したところ、FeO量は脱炭焼鈍時の酸化度と反応温
度と反応時間で推定できることを見出した。
【0020】酸化度は雰囲気ガス中の水分分圧と、水素
濃度の比で決定されるが、雰囲気ガスの組成を一定にし
ておけば、水分分圧すなわち露点により決まる。FeO
量に影響するのは主に均熱帯の露点であるが、鋼板の昇
温過程の露点即ち加熱帯の露点、FeOを一部還元する
還元帯の露点を考慮することで推定精度は上がる。
【0021】同様に、FeO量には主に均熱時の温度が
影響するが、加熱速度、還元温度を考慮することで精度
が上がる。また、炉内には反応による水分消費の結果露
点分布が生じるため、加熱帯、均熱帯、還元帯での考慮
する露点測定場所を増やすことで、さらに推定精度を上
げることができる。
【0022】次に加熱帯の露点、加熱速度、均熱帯の温
度、均熱帯の露点、均熱時間、還元帯の温度、還元帯の
露点、還元時間を考慮したFeO量の推定式を示す
((1)式)。 FeO=K1 DPh +K2 h +(K3 s +K4 DPs +K5 )ts +(K1 d +K7 DPd +K8 )td (1) 但し DPh は加熱帯の露点 vh は加熱速度 Ts は均熱帯の温度 DPs は均熱帯の露点 ts
均熱時間 Td は還元帯の温度 DPd 還元帯の露点 td
還元時間 K1 ,K2 ,K3 ,K4 ,K5 ,K6 ,K7 ,K8 は脱
炭焼鈍炉、 被焼鈍方向性電磁鋼板の板厚、板幅、鋼の成分によって
定まる係数。 加熱帯、均熱帯、還元帯の雰囲気ガスをH2 75%、N
2 25%とし、加熱帯2の温度を840〜860℃、露
点を55〜65℃、均熱帯3の温度を820〜850
℃、露点を55〜65℃、還元帯の温度を820〜85
0℃、露点を−20〜0℃として方向性電磁鋼板を脱炭
焼鈍した際に、前記推定式(1)よりFeO量を推定し
た量と、脱炭焼鈍量の実測したFeO量の関係を図2に
示す。
【0023】これから分かるように(1)式にてFeO
量が精度よく推定できる。FeOの量は、脱炭焼鈍後の
酸化層のみを剥離し、その中の鉄分量を測定し求めFe
O量に換算したものである。
【0024】この推定式を活用して脱炭焼鈍を制御する
と、当該方向性電磁鋼板に適した所望FeO量とするこ
とができる。そこで方向性電磁鋼板を脱炭焼鈍する際
は、放射温度計13で検出した加熱帯板温Th 、放射温
度計12−1からの均熱帯板温Ts 、放射温度計12−
2から還元帯板温が、露点計11,11−1,11−2
からの加熱帯露点DPh 、均熱帯露点DPs 、還元帯露
点DPd の検出信号が演算・制御装置15に入力され
る。
【0025】また、前述のように通板速度信号、被焼鈍
方向性電磁鋼板5の板厚、板幅が別途入力され、演算・
制御装置15で前記式(1)の演算を行い通板方向性電
磁鋼板のFeO量を推定する。この推定FeO量と目標
FeO量とを比較しその差が無くなるように、この実施
例では均熱帯露点DPs を変更する。この変更は次式の
ように演算して定める。
【0026】 DPst=(FeOt −FeOe )/K4 s +DPs (2) 但し DPstは変更後の均熱帯露点 FeOt は目
標FeO量 FeOe は推定FeO量 ts は均熱時間 DPs は均熱帯の検出露点
【0027】この実施例では均熱帯露点DPs を調整し
たが、加熱帯2の露点DPh や加熱速度、均熱露点や均
熱温度や均熱時間、還元露点や還元温度や還元時間を調
整してFeO量を目標量にしてもよい。
【0028】また、前記演算式(1)における係数
1 ,K2 ,K3 ,K4 ,K5 ,K6 ,K7 ,K8 は実
操業における操業実績値とこれに対応する実績のFeO
量から重回帰分析によって求める。
【0029】FeO量制御の推定精度の向上を図るに
は、一定のデータの蓄積毎に繰り返しK1 ,K2
3 ,K4 ,K5 ,K6 ,K7 ,K8 の再計算、置き換
えを行う学習機能を演算・制御装置15ですることが好
ましい。
【0030】この例では加熱速度、均熱温度、還元温度
を求めるのに板温計を用いたが、加熱速度は加熱帯の炉
温から放射伝熱計算で加熱速度を求めても良い。均熱温
度、還元温度として均熱帯の炉温、還元帯の炉温を用い
てもよい。
【0031】
【実施例】本発明により脱炭焼鈍においてFeO量の制
御を行った例と従来法との比較で述べる。Si3.2
%、CO0.57%、Al0.027%、Mn0.15
%、S0.007%、N0.007%、P0.024%
を含有する電磁鋼スラブを熱間圧延し熱延板焼鈍後、冷
間圧延し0.23mmの板厚とした。
【0032】その後、加熱帯、均熱帯、還元帯の雰囲気
をH2 75%、N2 25%とし、加熱帯温度を800
℃、均熱帯温度を820〜840℃、加熱帯および均熱
帯の露点を60℃と初期設定し湿潤H2 雰囲気中で脱炭
焼鈍し、さらに露点−15℃で還元処理を行うに当たり
本発明に基づきFeO量を制御した場合と制御しない比
較例(従来法)についてFeO量の変動状態の測定結果
を図3に示す。
【0033】この図には併せてその後、MgOを鋼板に
塗布して仕上焼鈍し形成されたグラス被膜の欠陥を調査
した結果をも示す。この場合の欠陥はシモフリであっ
た。
【0034】この図から分かるように、本発明によると
目標FeO量との変動が小さくグラス被膜は欠陥がなく
良好であった。一方、比較例では目標FeO量との差が
大きく、グラス被膜には欠陥が発生したものがあった。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば脱炭焼鈍で方向性電磁鋼
板に所望のFeO量を付加することができ、その後形成
されるグラス被膜は良好である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるFeO量制御システ
ムの構成を示す概略側面図である。
【図2】本発明による推定演算FeO量と実績FeO量
の関係を示す図表である。
【図3】FeO量の変化とグラス被膜の調査結果を示す
図表である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍において、脱
    炭酸化層中の鉄系酸化物(FeO)量を制御するにあた
    り、雰囲気ガス露点、炉温または板温を検出し、脱炭焼
    鈍での脱炭酸化層中のFeO量を焼鈍時の酸化度と反応
    温度と反応時間から推定する予め定めた式により脱炭酸
    化層中のFeO量を推定し、当該推定FeO量と被焼鈍
    方向性電磁鋼板の目標FeO量を比較し、その差がなく
    なるように雰囲気ガス露点、加熱温度、均熱温度、還元
    温度、通板速度の少なくとも1つを制御することを特徴
    とする脱炭酸化層中のFeO量の制御方法。
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