JP2560567B2 - 水素吸蔵合金の製造方法 - Google Patents

水素吸蔵合金の製造方法

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JP2560567B2 JP3122056A JP12205691A JP2560567B2 JP 2560567 B2 JP2560567 B2 JP 2560567B2 JP 3122056 A JP3122056 A JP 3122056A JP 12205691 A JP12205691 A JP 12205691A JP 2560567 B2 JP2560567 B2 JP 2560567B2
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  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水素吸蔵合金の製造方法
に係る。
【0002】
【従来の技術】水素をある種の金属又は合金に吸蔵させ
て金属水素化物の形で貯蔵し又は移送し、さらにその応
用として水素精製,ヒートポンプ,冷暖房システムの部
材として利用する技術が開発されている。この場合、金
属水素化物が水素の吸蔵,放出を行なう時には必ず発
熱,吸熱を伴うのでこの性質に着目して熱交換装置やヒ
ートポンプに利用できるのである。現在まで水素吸蔵合
金として発表され一部実用化されている合金の組合せと
しては、Mg−Ni,Mg−Cu,Ca−Ni,Fe−
Ti,Ti−Mn,La−Ni,ミッシュメタル−Ni
などを主な基本成分として、この一部を別の金属で置き
替えた合金も多数報告されている。たとえば、Mg2
0.75Cr0.25 ,Ca0.7Mn0.3Ni5 ,LaNi
4.7Al0.3 ,TiFe0.8Mn0.2 などが知られてい
る。一般的に言えば、Mg,Ca,La,ミッシュメタ
ル,Tiなどで形成する一群から選んだ1又は2以上の
金属とNi,Al,V,Cr,Fe,Co,Zn,C
u,Mnで形成する一群から選んだ1又は2以上の金属
とを合金化することによって製造される。水素吸蔵合金
を製造するためには原料である異種金属を高周波誘導炉
や弧光式高温溶解炉で溶解する。高周波誘導炉は量産化
に適当であるが、原料金属のうちとくにMg,Ca,A
lなどは蒸気圧が大きく酸素との親和力の強いものが多
いので炉内をArガスなどで不活性な雰囲気に調整して
金属の酸化を防止しなければならない。材料金属が溶解
して相互に混合し高温下において合金反応が十分進んで
すべての材料が所望の合金組成となったところで非酸化
性雰囲気下で金型内へ鋳造して造塊する。得られたイン
ゴットは熱処理を施し、合金を完結させたのち非酸化性
雰囲気下においてクラッシャ内で粉砕し所望の粒度の水
素吸蔵合金の粉末を得る。
【0003】一方溶解をせず固体のままで所望の合金組
成を得ようとする技術も最近脚光を浴びている。これは
一般にメカニカルアロイング法と呼ばれ、1970年代
にアメリカのインコ社(INCO)のベンジャミンによ
ってはじめて開発され、高エネルギーボールミル(アト
ライタ)などによって金属粉末へ機械的エネルギーを与
えて冷間圧着と破壊を繰り返して超微粒子を分散する方
法である。メカニカルアロイングの原理については、衝
撃力の大きいミリングによって粉末はまず鍛造され偏
平,片状化し、次に加工硬化した粒子は破壊または剥離
し冷間鍛接が繰り返され(混練)、続いて合金成分間に
ラメラ組織が発達し結晶粒は急激に微細化し一方の粒子
が他方の粒子内で微細に分散し、最後に粒子形状が等軸
形状となってランダム化すると説いている。エム ワイ
ソングとイー アイ イワノフは遊星ボールミルを使って
MgとNiの粉末をメカニカルアロイング法によって合
金化する実験結果をハイドロゼンエナージィー誌(Hydro
gen Energy vol10 No.3 P169-178,1985)に発表してい
る。この報告の中で遊星ボールミルの加速度は6.1G
とし、Niはカルボニールタイプを使用してArガス雰
囲気中で30分混合して得られた試料に対し種々の水素
化処理を加えたものをX線回析によって比較検討してい
る。結果的には水素化を1回から58回まで繰り返した
試料のうち、水素化数の少ないものは Mg2 Ni,微量
のMgO,Mg,Ni相が混在していることが検知され
たが熱処理(アンニーリング)を施し、かつ水素化数の
多いものについてはMgとNiは殆ど Mg2Niになっ
たと認められ、特に水素化の繰り返しよりも熱処理の効
果がより強く認められ、不完全ながら溶解によらないで
水素吸蔵合金を製造する方法を初めて報告した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来技術のうち溶解に
よって水素吸蔵合金を製造することは相当高度の技術と
よく管理された設備を必要とする。例えば Mg2Niを
製造する場合、Niの蒸気圧は10℃で2057mmHg,
760℃で2732mmHgと高いレベルで変動し、一方M
gは同じくそれぞれ743mmHgから1107mmHgと変動
する。Caも同983mmHgから1487mmHgと変動し、
これらの蒸気圧のバランスを保ちながら炉内を昇温して
いくことは非常に難しい。一方溶解一般の原則から見て
両成分の固溶度の多少も合金の難易度に影響を与える
が、一番問題となるのは両成分の密度と溶融点の差であ
る。Niのそれは8.90g/cm3,1455℃であり、
Mgは1.74g/cm3,650℃、Caは1.55g/c
m3,850℃である。従ってMg又はCaとNiとの合
金化が如何に困難であるかはこのことだけでも明らかで
ある。これに反しLaは密度6.15g/cm3 ,溶融点8
26℃であり、Niと密度が近いだけでも困難さは軽減
されるが、一般に稀土類元素は資源的に貴重な存在でし
かも高価である。MgとNiを合金化するとき大きな課
題となるのはMgの蒸気圧がNiの溶融点近くにおいて
はほぼ25気圧に達し、この蒸気圧のため溶湯中からの
Mgの蒸発を避けることが難しいのでNiが過剰となっ
て製品の一部が水素化物をつくらない MgNi2となる
ことである。またこれを防止するためにMgをはじめか
ら過剰に配合しておくと、例えば化学式をMg2.35Ni
で表わしているが実態はMg2Ni+Mg0.35の ように
遊離したMg単体を含む原因となっている。
【0005】水素吸蔵合金の特性の上にこのことがどう
関わるかを図8,図9について説明する。図8は溶解法
によって製造した水素吸蔵合金Mg2.35Niの圧力−組
成等温線図(以下、「PCT線図」という)であり、縦
軸に水素圧P(単位はMPa)をとり、横軸に水素ガス
と金属の原子比H/Mをとって一定温度(350℃)に
おける水素ガスの吸蔵,放出に伴う原子比の挙動を図表
化したものである。図において曲線は水素圧が0.5近
くに達すと吸蔵,放出ともに緩やかな傾斜を辿って右方
へ移る範囲Aとほぼ水平に右方へ移る範囲Bとに明確に
分れ、範囲AがMg単体による水素の吸蔵,放出を示
し、範囲Bが Mg2Niによる水素の吸蔵,放出を示し
ている。換言すれば範囲Aが認められるということは水
素ガスと結合するMgが存在することを示し、水素との
親和力において Mg2Niよりはるかに劣るMgが合金
内に含まれ水素吸蔵合金として求められる機能を低下さ
せていることを示す。
【0006】図9は同じ試料の高圧熱示差分析図(以
下、「DTA線図」という)であって、縦軸に温度、横
軸に時間を目盛り、一定圧(1.1MPa)の水素を密
閉容器内へ封入し、容器を外部から最高500℃まで加
熱し、又は500℃から冷却した時、容器内に封入した
Mg2.35Niの温度を測定して示した曲線C、およびこ
の試料と比較のため容器内へ封入した標準試料(アルミ
ナ)との間に生じる温度差を示した曲線Dとを表わして
いる。水素吸蔵合金は水素ガスを吸蔵する時には発熱
し、放出する時には吸熱するので、曲線Dにおいても加
熱時には放出に伴う下向きのピークが、また冷却時には
吸蔵に伴う上向きのピークがそれぞれ認められる。とこ
ろが点P,Q,Rに明らかに認められるようにこのピー
クが尖った1点だけではなくダブルピーク及至はピーク
に近い異常な屈折点があるということは Mg2NiとM
2NiH4の相変化の他に、MgとMgH2との相変化
もあることを示している。 これは同一水素圧の下では
Mgの方がMg2Niより高温側で解離することによっ
て生じる。何れにしても溶解法で製造する水素吸蔵合金
には製造上の困難さの他に機能低下をもたらす成分がな
お混在することが避け難いという課題がある。
【0007】一方溶解によることなくいわゆるメカニカ
ルアロイング法によってMg2Niを得ようとする試み
は一応技術的に可能という示唆を与えた。しかし水素圧
0.7MPaの条件で温度300℃に保って、試料の合
金へ水素化,脱水素化を繰り返して判ったことは、数回
程度の水素化の繰り返しでは単相のMgやNiの存在は
消滅できず、水素圧0.25〜0.85MPaにおいて
270〜300℃の温度を2ヶ月保つ熱処理を行ない、
かつ水素化処理を58回も繰り返してはじめてほぼ全量
がMg2Ni になったと認められるに過ぎない。思うに
いまメカニカルアロイング法を機械的合金法と邦訳して
いるが、現段階の技術レベルでは単体の異種金属同士の
完全合金化に到達しているとまでは認められず、金属粒
子中に同系の酸化物を超微粒的に分散したり、金属間化
合物を出発原料として異なる相に変化する(例えばアモ
ルファス相)程度にとどまっていると評価するのが妥当
である。本発明は以上の課題を解決するために選ばれた
二種類以上の金属を溶解することなく合金化率の高い水
素吸蔵合金を製造する方法とその装置の提供を目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る水素吸蔵合
金の製造方法は、合金化して水素吸蔵合金を形成し得る
2以上の異種金属の粉末と、助剤として当該金属粉末の
0.5〜1.5重量%の高級脂肪酸と、粉砕媒体として
粉砕ボールとを高速ボールミルのミルポット内へ密封
し、ミルポット内を非酸化性雰囲気に調整したのち、重
力加速度の30倍以上の加速度をミルポット内に加え
て、混合,粉砕,分散を経て合金化率の高い水素吸蔵合
金を形成することによって前記の課題を解決した。な
お、具体的には非酸化性雰囲気が、Arガス,Heガ
ス,Nガスの何れかによってミルポット内を充満させ
たことや、2以上の異種金属は、Mg,Ca,La,ミ
ッシュメタル,Tiの一群から選んだ一種以上の金属
と、Ni,Al,V,Cr,Fe,Co,Zr,Cu,
Mnの一群から選んだ一種以上の金属とよりなること、
並びに助剤として添加する高級脂肪酸のうちステアリン
酸が最も望ましいことを併せて示した。さらに本発明を
実施するうえで最も望ましい高速ボールミルとしては、
非酸化性雰囲気の調整手段と着脱自在に連結するミルポ
ットを有し、主軸の回転によって公転するとともに自己
の回転軸を中心に自転する回分式遊星ボールミルが最適
であり、この場合
【数2】 で表わされるミルポット内部へ加わる合成粉砕加速度比
Gが少なくとも30以上であり、かつ自公転角速度比率
Rが1.9以下の運転条件に限定して作動させることが
最良の実施方法となる。
【0009】
【作用】本発明に係る製造方法は水素吸蔵合金を形成し
得る二種以上の金属を炉内で溶解することなく合金化す
るものであるから、メカニカルアロイング法適用の一種
と言えるが、従来の周知慣用的な高速ボールミルとは桁
外れな加速度をミルポット内に加え従来に比べるとはる
かに合金化率の高い合金を得た。この加速度は重力加速
度の30倍以上を要件としているのでこの加速度の得ら
れる装置が製造方法実施上の最大の前提となることは言
うまでもない。メカニカルアロイングのプロセスについ
てはまだ研究途上にあって正確なことは判っていない
が、条件として原子の相互拡散が十分に起ることと混合
のエンタルピーΔHmが負で大きいことが大切であると
説かれている。低温での原子の相互拡散は与える有効な
エネルギーが大きいほど進行が加速することは当然であ
る。 従来のメカニカルアロイングが粒子の偏平,片状
化,冷間鍛接(混練),ラメラ組織化,分散,ランダム
化の経過を辿って微細化,均質化されていたのに対し、
本発明の場合はより強力な原子結合の段階にまで合金化
が完結したと見るべきであると考察する。
【0010】合成粉砕加速度比Gを大きくする程、メカ
ニカルアロイングの完結するのに必要な時間が短縮する
ことは容易に推察できるが、同じ加速度を加えた場合で
もミルポット内へ金属粉末および粉砕ボールとともに助
剤を添加すると完結するまでに必要な時間に著しい差の
生じることが確認できた。助剤として脂肪酸の一種を選
びかつその添加量を変え、その他の条件を全く同一にし
て高速ボールミルを運転し、比較的短時間で運転停止
後、合金化の進行状態を調べると、助剤の有無およびそ
の添加割合と実際の製品との間にある因果関係が認めら
れ、この関係を利用して好ましい条件を設定すれば発明
の目的がより容易に、かつより確実に達成できる。その
理論的解明は今後の研究に譲るが、助剤としてステアリ
ン酸を選びかつ装入する金属粉末の0.5〜1.5重量
%を添加したとき合金化の進行が最も活発であることを
確認した、
【0011】
【実施例】本発明の製造方法を実施するときに使用する
回分式の遊星ボールミル1を図1と図2に示す。図にお
いて一般的な構造を説明するとモータ6によって駆動さ
れる主軸22の回転を受けて、公転する複数のミルポッ
ト21を主軸22の周囲に均等に(2ヶならば対称的
に、3ヶ以上ならば主軸22から等距離放射状に)配設
し、該ミルポット21自体も自己の回転軸を中心に自転
するものである。具体的には主軸22と共に回転するミ
ルポット21の外周に遊星歯車8を周設し、この遊星歯
車8と噛合する太陽歯車7を別に回転または停止させて
(図では停止)、ミルポット21を公転しつつ、自転さ
せる。太陽歯車7は主軸22に外嵌されている。ミルポ
ット21の内部には粉砕媒体である粉砕ボールBと金属
の粉末Mが収納され、処理中の金属の粉末Mの酸化を防
止するため、内部雰囲気はArガスなどの不活性ガスに
置換されている。雰囲気調整手段2の実施例としてAr
ガスに置換するには、図1に示すようにミルポット21
の蓋に管31を、その先端に一対のワンタッチカプラ3
2を取付け、さらに管33とバルブ11を介して真空ポ
ンプ41に、バルブ13と管34を介して圧力計61
に、管35とバルブ12を介してArガス充填ボンベ5
1に接続する。バルブ12を全閉にし、バルブ11,1
3を全開にした状態で真空ポンプ41で真空引きを行な
い、ミルポット21内の空気を排除する。圧力計61で
所定の真空度に到達したことを確認後、バルブ11を全
閉にしバルブ12を開け、Arガス充填ボンベ51から
Arガスをミルポット21に充填する。圧力計61によ
り充填Arガス圧力が大気圧と同じまたはそれ以上の所
定圧力に達したことを確認後、バルブ12も全閉し、ワ
ンタッチカプラ32部で管31と管33を切り離す。ミ
ルポット21内のArガスはワンタッチカプラ32の片
方で保持される。このArガス充填作業は1回以上行な
う。以上のようにミルポット21に粉砕ボールBと金属
粉末Mを入れArガスを充填した後、遊星ボールミルを
運転することにより、公転,自転運動による遠心力とコ
リオリス力とが相乗的に粉砕ボールBと金属粉末Mに作
用し、金属粉末Mが加工される。
【0012】図2は遊星ボールミルのミルポットの運動
模式図であり、 公転角速度ω1 ,公転直径Kを0.5
2m, ミルポット内径Nを0.075m, R=ω2
ω1,ω2 は公転に対する自転の相対角速度とし、合成
粉砕角速度比Gを前に挙げた数式で計算して90となる
ようにω1を43.4(1/s)、ω2を59.0(1/s)と設定
した。ここで ω2/ω1(=R)を1.36に設定したの
は次の理由による。図3(イ),(ロ),(ハ)はミルポット
内におけるボールBの運動状態とミルの公転,自転の角
速度の相対的比率の関係を示したものである。公転角速
度をω1 、自転の相対角速度をω2 、両者の比率R=ω
2/ω1 として図(イ)はRが0.5のミルポット内の状
態を示している。ここではボールは一体的,集団的にミ
ルポットの内周面に沿ってサージングし内周面とボー
ル、ボール同士の間で装入された金属へ有効な圧縮力,
剪断力を与えてすべてメカニカルアロイングに有効な作
用を及ぼしている。図(ロ)はR=1.0、図(ハ)はR=
1.22の場合のボールの挙動を示したもので自転角速
度が相対的に大きな割合になるほどボールの一部が内周
面から離れてミルポット内の空間を飛翔しはじめ、ボー
ル同士の衝突でエネルギーの一部が無駄に消費されメカ
ニカルアロイングの目的からは後退した現象を見せはじ
める。この傾向はRが大きくなるほど大きくなりRが
1.9を超えると、いかに合成粉砕加速度比Gが30以
上であっても合金化率の高い水素吸蔵合金は得られなく
なる。今回はこの点を考慮に入れてRを1.36に選ん
だが望ましくはRは1.5〜0.5の範囲が良いと考え
られる。
【0013】この実施例では水素吸蔵合金のうち Mg2
Niを選びその原料として平均粒径9μのNi粉末と平
均粒径85μのMg粉末を合金組成の割合に秤量してミ
ルポット内へ装入し、高炭素Cr軸受鋼を材料とする直
径3.9mmの粉砕ボールをミルポットの空間容積30%
に相当する量だけ装入した。助剤の高級脂肪酸としては
ミスチリン酸,パルミチン酸,ラウリン酸,オレイン
酸,リノレン酸など一群の組成物の中からステアリン酸
[CH3(CH216COOH]を選び添加量を金属粉末
に対する重量比で0〜2.0%に変え、添加量0の場合
のみ粉砕時間を240分とし、その他は添加の多少に拘
らず30分と一定に保って同条件で処理した。各試料に
ついて金属粉末が全て合金化しているか、それとも未反
応のMgが単相の形で残っているかをDTA分析によっ
て検査した。試料番号とステアリン酸の添加割合および
自由粉の割合を表1に示す。ここで自由粉とは粉砕処理
が終ってミルポットの蓋を開き内部の処理物を取り出し
たときボールやミルポットの内面に付着せず直ちに回収
された処理物の割合をいう。すなわち割合が100%と
いうのは全量の処理物が何ら手を加えなくても回収した
ことを示している。
【0014】
【表1】
【0015】粉砕の実際作業において、試料1において
はミルポット内の処理物はすべて粉砕ボール,ミルポッ
ト内周面に付着し、手を加えずに回収できた処理物は0
であった。また試料2は付着が無くなり自由粉としての
回収がほぼ100%になるが、粉砕ボールと粉体との篩
いによる分離作業に発火があり不適当である。
【0016】DTA分析で一番明瞭に現われるのは成分
ごとに異なる金属水素化物の解離圧の温度依存性であ
る。図4において、いま水素の解離圧が1MPaとなる
温度を求めるとMgが1MPaと交叉する温度T1はM
2Niが1MPaと交叉する温度T2より常に高温側に
あることが示されている。従って水素化物を作る金属が
単相であるか、または二種以上が共存している複合相で
あるかは水素の解離又は結合を示す温度が単一であるか
複数であるかによって識別することができる。
【0017】試料1から試料6についてDTA分析とP
CT線図を作成し上記の原理に基づいて Mg2Niへの
合金化を検査した。このうち代表例として試料1と試料
4を取り出しその結果を図示する。 (1) 試料1 図5はこの試料のDTA分析である。示差熱を表わす曲
線DにおいてMg2NiH4がMg2NiとH2に解離する
ピーク点Eの他にMgH2がMgとH2に解離するピーク
点Fがあり、Mg2NiがH2 と結合するピーク点Iの他
に MgH2が生じるピーク点Jがあり、単相のMgがか
なり存在することを示している。 (2) 試料4 図6はこの試料のPCT線図であり、図8に示した従来
技術(溶解法)と比べると明瞭な差が認められる。すな
わち図8では水素圧が0.6MPa近くに達すると吸
蔵,放出ともに緩やかな傾斜をたどる範囲Aがあり、こ
れがMg単相の存在を示すと説明したが、試料4には範
囲Aに相当するような部分がなくMgがほぼ完全に M
2Niになっていることを表している。図7は同じ試
料のDTA分析であり、
【数3】 で示される相変化だけが認められ、単相のMgの存在を
示すダブルピーク及至屈折点は全く見られない。
【0018】以上に述べたとおり、ステアリン酸を助剤
として加えると、粉末と粉砕ボールやミルポット内周面
への付着が抑制され、分散が良くなって合金化反応が促
進され、合金化完了までに要する時間は大幅に短縮す
る。すなわちこの例でステアリン酸が添加割合0のとき
には粉砕時間を240分かけても、なお単相のMgが若
干残っている(試料1)が、ステアリン酸を0.25以
上添加すると粉砕時間を1/6にしても単相のMgが消
滅した合金を得ることができた。しかし自由粉の割合か
らみると下限としてステアリン酸は0.5以上が望まし
くまた2%以上とすると活性が大きくなり過ぎて粉砕ボ
ールと粉末との篩による分離時に発火する恐れがあるの
で1.5%を上限とするのが望ましく、結局この発明で
助剤としての高級脂肪酸の添加する割合を0.5〜1.
5重量%に特定する根拠となった。
【0019】
【発明の効果】本発明は以上に述べたとおり溶解による
ことなく水素吸蔵合金を製造し、かつ従来に比べて水素
化物へ有効迅速に相変化する合金だけを含み、その他の
単相金属を含まないきわめて合金化率の高い合金体を得
ることができる。従って水素との反応速度が早くその吸
蔵,放出能力は理論値の近くまで強化されている。その
ため従来から適用されてきた種々の用途に取付けた時に
は従来よりはるかに優れた結果をもたらすことが期待さ
れる。しかも非溶解法による製造方法の中でも、その合
金化の速度に着目して最良の条件の一つを見出し最も効
率の良い製造方法の一つをつきとめたので量産性,経済
性において従来のレベルを大幅に向上することができ
た。なお、従来技術である溶解法によるものよりも格段
に製造コストが低いうえ、高価なLaを使わない合金で
も自由に製造できるから、その点についても品質の向上
とともに大きな経済的効果を得ることは言うまでもな
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法の実施に用いる遊星ボールミ
の縦断正面図である。
【図2】同遊星ボールミルの運動の模式図である。
【図3】(イ),(ロ),(ハ)によってボールの運転
状態とミルの自転,公転の角速度相対的比率の関係を示
す。
【図4】MgおよびMg2Niなどの水素解離圧と温度
との関係図である。
【図5】本発明の比較例のDTA線図である。
【図6】本発明の実施例のPCT線図である。
【図7】本発明の実施例のDTA線図である。
【図8】従来技術のPCT線図である。
【図9】従来技術のDTA線図である。
【符号の説明】
1 遊星ボールミル 2 雰囲気調整手段 7 太陽歯車 8 遊星歯車 21 ミルポット 22 主軸 41 真空ポンプ 51 Arガス充填ボンベ

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合金化して水素吸蔵合金を形成し得る2
    以上の異種金属の粉末と助剤として当該金属粉末の0.
    5〜1.5重量%の高級脂肪酸と、粉砕媒体として粉砕
    ボールとを高速ボールミルのミルポット内へ密封し、ミ
    ルポット内を非酸化性雰囲気に調整したのち、重力加速
    度の30倍以上の加速度をミルポット内に加えて、混
    合,粉砕,分散を経て合金化率の高い水素吸蔵合金を形
    成することを特徴とする水素吸蔵合金の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において非酸化性雰囲気が、A
    rガス,Heガス,N2ガス の何れかをミルポット内へ
    充填したことを特徴とする水素吸蔵合金の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において、2以上の異種
    金属はMg,Ca,La,ミッシュメタル,Tiの一群
    から選んだ一種以上の金属と、Ni,Al,V,Cr,
    Fe,Co,Zr,Cu,Mnの一群から選んだ一種以
    上の金属とよりなることを特徴とする水素吸蔵合金の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1及至3のいずれかにおいて、高
    級脂肪酸がステアリン酸であることを特徴とする水素吸
    蔵合金の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1における高速ボールミルとし
    、非酸化性の雰囲気調整手段と着脱自在に連結するミ
    ルポットを有し、主軸の回転によって公転するとともに
    自己の回転軸を中心に自転する回分式遊星ボールミルを
    使用し、かつ 【数1】 で表わされるミルポット内部へ加わる合成粉砕加速度比
    Gが少なくとも30以上であり、かつ自公転角速度比率
    Rが1.9以下の条件に限定して作動することを特徴と
    する水素吸蔵合金製造方法。
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