JP2560221Y2 - 印刷機の刷版交換装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は版万力でくわえられて版
胴の周面に装着されている旧版と、版胴外に準備した新
版とを交換する印刷機の刷版交換装置に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】印刷機の版胴外周部には、胴の全長にお
よぶ切欠きが設けられており、この切欠き内には、刷版
（以下、単に版という）のくわえ側端部をくわえるくわ
え側版万力と、これにくわえられたのち胴周面に巻付け
られた版の尻側端部をくわえる尻側版万力とからなる版
万力装置が、切欠き底面に固定されて版胴の軸線方向に
延設されている。従来におけるこれらくわえ側，尻側の
版万力は、版胴の軸線方向に延びる長尺の万力台と、こ
の万力台の端縁部に複数個のボルトで揺動自在に枢支さ
れその摺動により開閉して万力台との間で版をくわえた
り放したりする複数個のくわえ板と、これら各くわえ板
の端縁部切欠きと係合する複数個のカムとを備えてお
り、複数個のカムは回動自在なカム軸上に並列して固定
されている。また、万力台とくわえ板との間には、くわ
え板を開方向に付勢する複数個の圧縮コイルばねが介装
されている。

【０００３】このように構成されていることにより、版
をくわえる場合には、カム軸を回動操作すると、版胴の
長さ方向へ複数個に分割されたくわえ板は、カムの係合
から解放されて圧縮コイルばねの弾発力によりいっせい
に開くので、くわえ板と万力台との間へ版の端を挿入し
たのち、カム軸を先程とは逆方向に回動させると、くわ
え板はカムの作用により圧縮コイルばねの弾発力に抗し
揺動して閉じ、版の端をくわえる。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の各版万力装置においては、上記のように版く
わえ面を開閉するためにカム軸を手動で回動操作しなけ
ればならないので、工数が増加して作業性が悪く、多大
の労力を必要とするばかりでなく、準備時間が延長して
生産性が低下するという問題があった。

【０００５】そこで本出願人は新版を保持した刷版保持
装置を印刷機のユニット間に設け、版胴から取外した旧
版をこの刷版保持装置内へ排出して保持し、その代りに
新版を刷版保持装置から排出して版胴に装着するように
した刷版交換装置を開発して提案したが、この場合、刷
版保持装置が格納状態にあるときにその下半部が印刷ユ
ニットの給水装置を覆うような位置を占めるために、給
水装置の保守点検や水舟内への湿し水の補給などの場合
にはこの刷版保持装置が邪魔になって作業性が悪く、と
いってガススプリング等の弾発力で刷版保持装置を上方
へ退去させた状態で給水装置の保守点検や水舟内への湿
し水の補給などを行うようにすると、これを長期間使用
することによりガススプリングが疲労して刷版保持装置
が次第に下がり、不安定であるし、刷版保持装置が急に
落下するおそれがあって、きわめて危険である。

【０００６】本考案は以上のような点に鑑みなされたも
ので、刷版保持装置の昇降を円滑にし上昇位置で確実に
係止することを可能にした印刷機の刷版交換装置を提供
することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために本考案では、刷版保持装置を揺動自在かつ略鉛
直方向に上下動自在に支持させるとともに、機台フレー
ム側に設けられ刷版保持装置の上昇位置において刷版保
持装置の被係合部と係合するストッパ部を設けた。

【０００８】

【作用】版の交換に際しては、刷版保持装置（以下ロー
ダという）を回動させてその先端部を版万力に対向さ
せ、また、印刷作業中は、ローダをその先端部が版万力
から離間するように垂下させて格納状態にする。給水装
置の保守点検や湿し水の供給などの場合には、格納状態
にあるローダを上昇させると、給水装置の作業面が開放
されるので、作業が容易になる。また、上下動が円滑に
行われるとともに、ローダが不意に下降することがな
い。

【０００９】

【実施例】図１ないし図６は本考案に係る印刷機の刷版
交換装置の実施例を示し、図１は刷版保持装置の正面
図、第２図は同じく側面図、図３はばね部材近傍の正面
図、図４は同じく側面図、図５は刷版交換装置の概要正
面図、図６は刷版保持装置を上昇させた状態で示す刷版
交換装置の概要正面図である。なお、刷版保持部材の支
持構造を除く刷版交換装置の構成は、本出願人が提案し
て特願平１−３３７３３８号明細書に開示されている枚
葉印刷機の刷版交換装置と同構成であるから、その詳し
い説明を省略する。

【００１０】図において、例えば４色刷枚葉輪転印刷機
の場合、印刷機１は、紙を積載する紙積台および紙を１
枚ずつ送り出す図示しない給紙装置と、４組の印刷ユニ
ット２と、印刷ユニット２で印刷された印刷物を積む紙
積台を有する図示しない排紙装置とを備えており、各印
刷ユニット２には、版胴３，ゴム胴４等の印刷胴と、図
示しないインキ装置と、水舟５，ローラ群６からなる給
水装置７が設けられている。そして、版胴３の外周切欠
き内には、刷版（以下、版という）の一端をくわえるく
わえ側版万力と、版万力の他端をくわえる尻側版万力と
が開閉自在に形成されて設けられており、版はくわえ側
版万力に一端をくわえられ、版胴３の周面に巻付けられ
たのち、尻側版万力に他端をくわえられることにより、
版胴３の周面に装着されるように構成されている。

【００１１】そして、各印刷ユニット２には、使用済の
旧版とこれから使用する新版とを交換する刷版交換装置
が付設されている。すなわち、２色目，３色目，４色目
の各印刷ユニット２に設けられたフレーム８の上端面
と、排紙装置始端部に４色目印刷ユニットのフレームと
空間部を隔てて設けられたフレーム（図示せず）の上端
面とには、直方形状に形成された左右一対のブラケット
９が、版胴３の斜め上方に位置して固定されており、こ
れらのブラケット９には、上方へ開口するＵ字状に形成
された軸受溝９ａが設けられている。そして、この軸受
溝９ａには、正面視を版胴３とほゞ同長の横長長方形状
に形成された刷版保持装置としてのローダ１０が、上端
部の中空状支持軸１０ａの両端部に設けられたころがり
軸受からなるころ１１を回動自在かつ上下方向へ着脱自
在に嵌合させて揺動自在に支持されている。

【００１２】一方、左右のフレーム８（以下、排紙装置
の始端部に設けられた前記フレームも含む）には、制御
装置に接続されたエアシリンダ１２が、ブラケット９に
近接して揺動自在に枢支されており、そのピストンロッ
ド１３の作用端には、フレーム８側に枢着されたレバー
１４と、ローダ１０側に着脱自在に枢着されたレバー１
５とが枢着されている。こうすることにより、エアシリ
ンダ１２のピストンロッド１３が進退すると、レバー１
４，１５を介してローダ１０が、符号１０で示す垂下状
態の格納位置と符号１０Ａで示す傾動状態の作動位置と
の間で揺動し、先端部が版胴３の周面に対する遠近方向
に移動するように構成されている。ローダ１０内には旧
版保持装置が設けられており、ローダ１０を符号１０Ａ
で示す傾動状態にして前記両版万力の開閉と版胴３の回
動とを行うことにより、版胴３から排出された使用済の
旧版がローダ１０Ａ内へ進入して保持されるように構成
されている。さらに、ローダ１０Ａ内には給版装置が設
けられており、あらかじめローダ１０Ａ内に保持させた
新版を排版のときとはほゞ逆順序で版胴３へ装着するよ
うに構成されている。

【００１３】そして本装置には、ローダ１０を上昇させ
て給水装置７の作業面を開放する装置が設けられてい
る。すなわち、各印刷ユニット２の左右のフレーム８に
は、長い伸縮ストロークを有するばね部材としてのガス
スプリング１６が、給水装置７の上端部近傍に固定され
たブラケット１７を介して基端部を揺動自在に枢支され
ており、このガススプリング１６の上端部は、前記支持
軸１０ａに割締め固定されたレバー１８の下端部に引掛
けられて固定されている。こうすることにより、ローダ
１０は、このガススプリング１６によって図６に示す状
態が上昇端限となるように上方へ付勢されており、上昇
させた結果、給水装置７の作業面が全面的に開放される
ように構成されている。１９は前記ブラケット９の上端
面に水平方向へ回動自在に枢着されたストップレバーで
あって、手動で水平方向へ回動操作されるように形成さ
れており、ローダ１０をガススプリング１６の弾発力に
抗して押下げた状態でストップレバー１９を回動操作す
ることにより、ローダ１０の上昇が規制されるように構
成されている。

【００１４】ローダ１０の左右の側板２０には、断面を
Ｌ字状に形成された上下一対のバー２１，２２が上下に
間隔をおいてねじ止めされていて、下側のバー２２に
は、フレーム８側のブラケット２３に枢着された鍔付き
のガイドころ２４が添接されており、ローダ１０の上下
動を案内しているとともに、断面Ｌ字状のバー２２とフ
レーム８との間の間隙に鍔を係入させることにより、ロ
ーダ１０の左右方向への移動を規制している。また、フ
レーム８に固定されたブラケット２５には、バー２２に
添接するカムフォロア２６が支持されており、ガイドこ
ろ２４とでバー２２を挟持してローダ１０の上下動を案
内するように構成されている。さらに、上側のバー２１
には、フレーム８側のスタッド２７に支持されたカムフ
ォロア２８と、フレーム８側のスタッド２９に支持され
たガイドころ３０とが両側から添接されており、ローダ
１０の上下動を案内するように構成されている。

【００１５】さらに、ローダ１０の両側側板２０には、
上下一対のピン孔３１，３２が穿設されており、また、
前記ブラケット２５には、ストッパピン３３が進退自在
に支持されている。そして、ストッパピン３３にはレバ
ー３４が固定されており、このレバー３４を把持してス
トッパピン３３を進退させ、ピン孔３１，３２のいずれ
かに選択的に挿入することにより、ローダ１０の上昇が
２箇所のうちの選択した箇所で係止されるように構成さ
れている。

【００１６】以上のように構成された刷版交換装置の動
作を説明する。印刷作業中には、ローダ１０がブラケッ
ト９の軸受孔９ａにころ１１を嵌合させて垂下姿勢で格
納されており、また、ローダ１０はストップレバー１９
によって上昇を規制されている。

【００１７】印刷作業が終了したのち旧版を新版に交換
する場合には、スタートボタンを押すと、エアシリンダ
１２が作動してレバー１４，１５を介しローダ１０が図
５に符号１０Ａで示すように版交換位置へ傾動する。ま
た、サーボモータが回転して版胴３が排版位置を占める
まで所定角度だけ回動する。このとき、左右のエアシリ
ンダが同時に作動すると、尻側版万力の版くわえ面も開
き、くわえから開放された版は、版胴３の回動とローダ
１０Ａ内に設けた排版装置の作動とによりローダ１０Ａ
内に排出されて収納される。次いで、あらかじめローダ
１０Ａ内に保持させておいた新版が、版胴の回動と版万
力の開閉およびローダ１０Ａ内に設けた給版装置の作動
とにより版胴３に装着される。版交換後はエアシリンダ
１２によりローダ１０Ａを垂下状態にしたのち、作業者
はユニット間の空間部に入ってローダ１０内の旧版を取
外し、次の新版をローダ内に保持させる。

【００１８】給水装置７を保守点検したり、水舟５内へ
湿し水を供給したりする場合には、図示しない機構によ
りレバー１５とローダ１０との連結を解いたのち、スト
ップレバー１９を水平方向に回動操作すると、ローダ１
０は上昇方向への係止を解かれ、ガススプリング１６の
弾発力によって上昇する。上昇に際しては、上部バー２
１がカムフォロア２８とガイドころ３０とで挟持されて
おり、また、下部バー２２がカムフォロア２６とガイド
ころ２４とで挟持されていてローダ１０の上昇を案内し
ていることにより、ローダ１０は図６に示す位置まで円
滑に上昇する。この場合、ガススプリング１６のばね力
をあまり強くするとローダ１０を下降させるときに大き
な力を要するので、ある位置まではガススプリング１６
のばね力で上昇させるが、残りは手動で上昇させる。ロ
ーダ１０が上昇したときには、このあと行う作業の種類
にしたがって孔３１，３２のいずれか一方を選択し、レ
バー３４を操作すると、ストッパピン３３が選択した孔
３１（３２）に挿入されるので、ローダ１０の下降が係
止される。この結果、給水装置７の作業面が全面的に開
放されるので、容易に作業を行うことができ、また、ロ
ーダが落下することがなく安全である。

【００１９】なお、本実施例ではストッパピン３３をレ
バー３４の手動操作で進退させる例を示したが、エアシ
リンダ等を用いて進退させることも容易であり、同様の
効果が得られる。また本実施例では、ローダ１０を上方
へ付勢するガススプリング１７を設けた例を示したが、
例えばラックとピニオンとの噛合によってローダ１０を
上下動させたり、手動で上下動させたりしても同様の効
果が得られる。

【００２０】

【考案の効果】以上の説明により明らかなように本考案
によれば印刷機の刷版交換装置において、刷版保持装置
を揺動自在かつ上下動自在に支持させるように構成した
ことにより、旧版と新版との交換作業を容易に自動化す
ることができて省力化が計れ、準備時間が短縮されて印
刷機の稼働率が向上するとともに、給水装置の作業面が
全面的に開放されるので、給水装置の保守，点検や水舟
への注水，ローラの交換等がきわめて容易に行われ、作
業性と安全性が向上する。また、機台フレーム側に設け
られ刷版保持装置の上昇位置において刷版保持装置の被
係合部と係合するストッパ部を設けたことにより、長期
間使用しても刷版保持装置が所定位置より下降したりす
ることがなく装置の機能や耐久性が向上するとともに、
上昇した刷版保持装置が不意に下降するおそれがなく、
安全性が向上する。さらに刷版保持装置の上下動が円滑
に行われ、装置の機能が向上する。また、刷版保持装置
の上下動が略鉛直方向に行われることにより、ユニット
間に刷版保持装置の上下動させるための余計な空間を必
要としないとともに、仮に保守，点検作業中に刷版保持
装置が誤って落下しても、ユニット間で作業している作
業者の安全性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】刷版保持装置の正面図である。

【図２】刷版保持装置の側面図である。

【図３】ばね部材近傍の正面図である。

【図４】ばね部材近傍の側面図である。

【図５】刷版交換装置の概要正面図である。

【図６】刷版保持装置を上昇させた状態で示す刷版交換
装置の概要正面図である。

【符号の説明】

１ 印刷機 ３ 版胴 ７ 給水装置 ８ フレーム １０ ローダ １０Ａ ローダ １６ ガススプリング ２１ バー ２２ バー ２４ ガイドころ ２６ カムフォロア ２８ カムフォロア ３０ ガイドころ ３１ ピン孔 ３２ ピン孔 ３３ ストッパピン

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 刷版保持装置を、先端部が印刷機の版万
   力に近接する傾動位置と版万力から離間する垂下位置と
   の間で移動するように機台側に揺動自在に支持させ、か
   つ前記垂下位置とこの垂下位置から上昇する位置との間
   で略鉛直方向に上下動自在に支持させるとともに、機台
   フレーム側に設けられ刷版保持装置の上昇位置において
   刷版保持装置の被係合部と係合するストッパ部を設けた
   ことを特徴とする印刷機の刷版交換装置。