JP2522122Y2 - 印刷機の刷版交換装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は版万力でくわえられて版胴の周面に装着され
た旧版と、装置外に準備した新版とを交換する印刷機の
刷版交換装置に関するものである。

〔従来の技術〕

印刷機の版胴外周部には、胴の全長におよぶ切欠きが
設けられており、この切欠き内には、刷版（以下、単に
版という）のくわえ側端部をくわえるくわえ側版万力
と、これにくわえられたのち胴周面に巻付けられた版の
尻側端部をくわえる尻側版万力とからなる刷版固定装置
が、切欠き底面に固定されて胴軸方向に延設されてい
る。

従来におけるこれらくわえ側，尻側の版万力は、胴軸
方向に延びる長尺の万力台と、この万力台の端縁部に複
数個のボルトで揺動自在に枢支されその揺動により開閉
して万力台との間で版をくわえたり放したりする複数個
のくわえ板と、これら各くわえ板の端縁部切欠きと係合
する複数個のカムとを備えており、複数個のカムは回動
自在なカム軸上に並列して固定されている。また、万力
台とくわえ板との間には、くわえ板を開方向に付勢する
複数個の圧縮コイルばねが介装されている。

このように構成されていることにより、版をくわえる
場合には、カム軸を回動操作すると、胴長方向へ複数個
に分割されたくわえ板は、カムの係合から解放されて圧
縮コイルばねの弾発力によりいっせいに開くので、くわ
え板と万力台との間へ版の端を挿入したのち、カム軸を
先程とは逆方向に回動させると、くわえ板はカムの作用
により圧縮コイルばねの弾発力に抗し揺動して閉じ、版
の端をくわえる。

また、例えば特開平1-127346号公報に開示されている
装置は、従来版胴の円周方向に形成されていた版の尻側
くわえ面が、版胴の半径方向に形成されるように万力台
とくわえ板とが版胴の半径方向に配設されており、ま
た、版の端部が別に設けた版曲げ機によって直角状に曲
げられている。このように構成されていることにより、
くわえ側端部をくわえられて胴周面に巻付けられた版の
尻側端部は、折り曲げ部を万力台とくわえ板との間へ挿
入され、カム機構でくわえ板を揺動させることにより、
版の折り曲げ片がくわえられるので、このあと、尻側版
万力全体を円周方向へ移動させることにより、版が均一
に張られて胴周面に密着する。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、このような従来の各版万力装置におい
ては、上記のように版くわえ面を開閉するためにカム軸
を手動で回転操作しなければならないので、工数が増加
して作業性が悪く、多大の労力を必要とするばかりでな
く、準備時間が延長して生産性が低下するという問題が
あった。

そこで本出願人は版胴から取外した旧版と、その代り
に版胴へ供給する新版との少なくとも一方を保持する刷
版保持部材を印刷機のユニット間に設けて版の交換を自
動的に行う刷版交換装置を開発して提案したが、この場
合、ユニット間に作業者が入っていたり障害物が置かれ
ていたりするときに刷版保持部材が作動して移動するこ
とが考えられ、きわめて危険である。

〔課題を解決するための手段〕

このような課題を解決するために本考案では、ユニッ
ト間に位置して揺動端部が版万力に近接する作動位置と
版万力から難間する格納位置との間で揺動して前記ユニ
ット間の作業空間部を移動するようにアクチュエータで
駆動される刷版保持部材を設けるとともに、この刷版保
持部材の揺動端部付近に位置し、前記ユニット間の作業
空間部を機側部において開閉する方向に移動可能な安全
バーと、この安全バーの開閉状態を検知して前記アクチ
ュエータを作動不能・可能な状態にする検出器とを設け
た。

〔作用〕

版の交換に際しては、刷版保持部材（以下ローダとい
う）を回動させてその揺動端部を版万力に対向させて行
うが、この場合、安全装置の安全バーが開いていると、
スイッチが開いていてローダが回動せず、また、安全バ
ーを閉じるとローダが回動可能になるが作業者は閉塞さ
れた安全バーで遮断されてユニット間の作業空間部に入
ることができず安全である。

〔実施例〕

第１図ないし第５図は本考案に係る刷版交換装置の実
施例を示し、第１図はその正面図、第２図は同じく平面
図、第３図は第１図のIII視側面図、第４図（ａ）はバ
ー先端部の拡大正面図、第４図（ｂ）は同じく正面図、
第５図は本考案を実施した４色刷枚葉印刷機の正面図で
ある。なお、安全装置を除く刷版交換装置の構成は、本
出願人が提案して特願平1-337378号明細書に開示されて
いる枚葉印刷機の刷版交換装置と同構成であるから、そ
の詳しい説明を省略する。

図において、印刷機１は、紙２を積載する紙積台およ
び紙２を１枚ずつ送り出す給紙装置を有する給紙ユニッ
ト３と、４組の印刷ユニット４と、印刷ユニット４で印
刷された印刷物を積む紙積台を有する排紙装置５とを備
えており、各印刷ユニット３には、版胴6,ゴム胴７など
の印刷胴とインキ装置および給水装置が設けられてい
る。版胴６の外周切欠き内には、刷版（以下、版とい
う）の一端をくわえるくわえ側版万力と、版万力の他端
をくわえる尻側版万力とが開閉自在に形成されて設けら
れており、版は、くわえ側版万力に一端をくわえられ、
胴周面に巻付けられたのち尻側版万力に他端をくわえら
れることにより、胴周面に装着されるように構成されて
いる。第１図に符号８で示すものは版万力を開閉させる
開閉装置であって、フレーム９の上端面にブラケット10
を介して揺動自在に枢支されたエアシリンダ11を備えて
いて、このエアシリンダ10のピストンロッド12は、リン
ク13を介して前記版万力に連結されており、ピストンロ
ッド12を進退させることにより、両方の版万力が所定の
タイミングで開閉されるように構成されている。

第１図に符号14で示すものは、各印刷ユニット４にお
ける版胴６の周面前方を全長にわたって覆うカバーであ
って、フレーム９の上端面にブラケット15を介して回動
自在に枢支されたＬ字レバー16の遊端部に枢着されてお
り、Ｌ字レバー16には、反対側のフレームに枢支された
エアシリンダのピストンロッドが枢着されている。こう
することにより、エアシリンダのピストンロッドが進退
すると、カバー14が開閉するように構成されている。

そして、前記版万力とその開閉装置には，使用済の旧
版とこれから使用する新版とを交換する刷版交換装置が
付設されている。すなわち、２色目,3色目,4色目の各印
刷ユニット４に設けられたフレーム９の上端面と、排紙
装置５始端部に設けられたフレーム17の上端面とには、
左右一対のブラケット18が版胴６の斜め上方に位置して
固定されており、これらのブラケット18に回動自在に軸
支された揺動支軸19には、正面視を版胴６とほゞ同長の
横長長方形状に形成された刷版保持部材としてのローダ
20が、基端部を固定されて揺動自在に設けられている。
一方、左右のフレーム９（以下、フレーム17も含む）に
は、制御装置に接続されたエアシリンダ21が、ブラケッ
ト18に近接して揺動自在に枢支されており、そのピスト
ンロッド22の作用端には、フレーム９側に枢着されたレ
バー23と、ローダ20側に枢着されたレバー24とが枢着さ
れている。こうすることにより、エアシリンダ21のピス
トンロッド22が進退すると、レバー23,24を介してロー
ダ20が揺動し、図に符号20で示す格納状態の垂下姿勢
と、符号20Aで示す作動状態の傾動姿勢との間で揺動
し、先端部が版胴６の周面に対する遠近方向に移動する
ように構成されている。

ローダ20内には旧版保持装置が設けられており、ロー
ダ20を傾斜姿勢20Aにして前記両版万力の開閉と版胴６
の回動とを行うことにより、版胴６から排出された使用
済の旧版がローダ20A内へ進入して保持されるように構
成されている。さらにローダ20A内には給版装置が設け
られており、予めローダ20A内に保持させた新版を排版
のときとはほゞ逆順序で版胴６へ装着するように構成さ
れている。

そして本装置には移動するローダ20に対して作業者を
保護する安全装置が設けられている。すなわち、４組の
各印刷ユニット４の左右のフレーム９には、Ｌ字状に形
成されたブラケット30がローダ20装着側とは反対側の端
部に版胴６の軸芯とほゞ同じ高さに位置して固定されて
おり、このブラケット30には、カラー31で軸方向への移
動を規制された支持軸32が回動自在に軸支されている。
この支持軸32のブラケット30からの突出端部には、隣接
するフレーム９間の間隔とほゞ同長の棒状に形成された
安全バー33が固定されており、この安全バー33を支持軸
32とともに回動させて水平姿勢にすることにより、フレ
ーム９間の空間部が機側部において閉塞され、また安全
バー33を回動させて直立姿勢にすることにより空間部が
解放されるように構成されている。34はフレーム９側に
植設されて安全バー33の溝と嵌合し安全バー33を水平姿
勢で固定するピンであり、また、35はフレーム９側に固
定されて安全バー33を挟持し安全バー33を直立姿勢で固
定するホルダである。さらに、支持軸32には，周面の一
部を面取りしたカム36が一体的に固定されており、ま
た、フレーム９側には前記ローダ20駆動用のエアシリン
ダ21と電気的に接続されたリミットスイッチ37がカム36
に対向して設けられている。この結果、安全バー33を水
平姿勢にすると、カム36の面取り部が接点に対向するこ
とによりリミットスイッチ37がONとなってエアシリンダ
21が作動可能となり、また、安全バー33を直立姿勢にす
ると、カム36の円弧部が接点に対向することによりリミ
ットスイッチ37がOFFとなってエアシリンダ21が作動不
能となるように構成されている。

以上のように構成された刷版交換装置の動作を説明す
る。印刷作業中には、ローダ20は揺動支軸19から垂下さ
れて格納されており、また、安全バー33は直立姿勢でホ
ルダ35に挟持されている。したがって、カム36の円弧部
がリミットスイッチ37の接点に対向していてエアシリン
ダ21が作動不能になっている。この印刷作業中に作業者
はユニット間の空間部に入ってローダ20内に新版を保持
させるが、ローダ20が回動不能になっており、不意に回
動してくることがないので安全である。印刷作業が終了
したのち旧版を新版に交換する場合には、安全バー33を
水平姿勢にしてピン34で固定することによりエアシリン
ダ21を作動可能にしたのち、スタートボタンを押すと、
エアシリンダが作動してカバー14が図に示すように開く
とともに、エアシリンダ21が作動してレバー23,24を介
しローダ20が版交換位置へ傾動する。またサーボモータ
が回転して版胴６が排版位置を占めるまで所定角度だけ
回動する。このとき、左右のエアシリンダ11が同時に作
動すると、尻側版万力の版くわえ面が開くと同時に、く
わえ側版万力５の版くわえ面も開き、くわえから解放さ
れた版は、版胴６の回動とローダ20A内排版装置の作動
とによりローダ20A内に排出されて収納される。次いで
版胴の回動と版万力の開閉およびローダ20A内給版装置
の作動とにより新版が版胴６に装着される。このような
版交換作業中は安全バー33が水平姿勢でユニット間の空
間部を閉塞しているので、作業者がユニット間に入るこ
とがなく安全である。

版交換後はローダ20Aを垂下状態にしたのち、安全バ
ー33を開いてエアシリンダ21を作動不能状態にし、作業
者はユニット間の空間部に入ってローダ20内の旧版を取
外し、次の新版をローダ20内に保持させるが、ローダ20
が不意に回動してくることがないので安全である。

なお、本実施例では安全バーを回動自在に形成しこれ
を回動させることによりユニット間の作業空間部を開閉
する例を示したが、安全バーを軸線方向へ進退させたり
して空間部を開閉するようにしてもよい。また、本実施
例では、旧版と新版との両方を保持する刷版保持部材を
例示したが、旧版と新版とのいずれか一方を保持させる
ようにしてもよい。

〔考案の効果〕

以上の説明により明らかなように本考案によれば印刷
機の刷版交換装置において、ユニット間に位置して揺動
端部が版万力に近接する作動位置と版万力から離間する
格納位置との間で揺動して前記ユニット間の作業空間部
を移動するようにアクチュエータで駆動される刷版保持
部材を設けるとともに、この刷版保持部材の揺動端部付
近に位置し、前記ユニット間の作業空間部を機側部にお
いて開閉する方向に移動可能な安全バーと、この安全バ
ーの開閉状態を検知して前記アクチュエータを作動不能
・可能な状態にする検出器とを設けたことにより、旧版
と新版の交換作業を、自動化することが容易になって省
力化が計れ、準備時間が短縮されて生産性が向上すると
ともに、安全装置の安全バーが開いているとスイッチが
開いていてローダが回動せず、また、安全バーを閉じる
とローダが回動可能になるが作業者は閉塞された安全バ
ーで遮断されてユニット間の作業空間部に入ることがで
きないので、安全性が向上する。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第５図は本考案に係る安全装置の実施例を
示し、第１図はその正面図、第２図は同じく平面図、第
３図は第１図のIII視側面図、第４図（ａ）はバー先端
部の拡大正面図、第４図（ｂ）は同じく正面図、第５図
は本考案を実施した４色刷枚葉印刷機の正面図である。 １……印刷機、４……印刷ユニット、６……版胴、17…
…フレーム、19……揺動支軸、20,20A……ローダ、21…
…エアシリンダ、30……ブラケット、32……支持軸、33
……安全バー、34……ピン、35……ホルダ、36……カ
ム、37……リミットスイッチ。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ユニット間に位置して揺動端部が版万力に
   近接する作動位置と版万力から離間する格納位置との間
   で揺動して前記ユニット間の作業空間部を移動するよう
   にアクチュエータで駆動される刷版保持部材を設けると
   ともに、この刷版保持部材の揺動端部付近に位置し、前
   記ユニット間の作業空間部を機側部において開閉する方
   向に移動可能な安全バーと、この安全バーの開閉状態を
   検知して前記アクチュエータを作動不能・可能な状態に
   する検出器とを設けたことを特徴とする印刷機の刷版交
   換装置。