JP2559875Y2 - シリンダヘッドガスケット - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、金属積層形シリンダヘ
ッドガスケットに関し、更に詳細には、シリンダ穴のシ
ール部の構造に特徴のある金属積層形シリンダヘッドガ
スケットに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】内燃機関の金属積層形シリンダヘッドガ
スケットのシリンダ穴には、例えば、ドイツ特許公開第
ＤＥ ３２４５３８３ Ａ１号公報に記載されているよ
うに、該シリンダ穴の周囲を囲むビードと、該ビードを
覆う金属板から成るグロメットとを設け、積層板間に燃
焼ガスが進入しないようにしたものがある。更に、別の
金属積層形シリンダヘッドガスケットとしては、高温高
圧ガスをシールするために、シール部を２重に設けたも
のが使用されていることは周知である。そして、前記２
重シール部の構造としては、内燃機関のシリンダボアの
構造に合わせて種々のものがある。

【０００３】即ち、前記２重シール部の特徴として、例
えば、シリンダ穴に対し中側のシール部剛性を外側のシ
ール部剛性より低くし、シリンダライナーの鍔部付け根
部や、シリンダボディの前記鍔の支持部の付け根に、集
中応力が発生しないようにしたもの、かかる応力の発生
が問題とならない場合には、前記と逆に、中側のシール
部剛性を外側シール部剛性より高くし、シリンダ穴から
接合面に燃焼ガスが侵入することの防止を主体とし、外
側シール部を補助的に考えるようにしたもの、などがあ
る。そして、高い剛性のシール部を得る手段として、ワ
イヤーリングとしたものがある。また、ビードの弾性の
調節は、ビードの幅や高さ、板厚、材質の硬度などを変
化させて行うことができる。

【０００４】

【考案が解決しょうとする課題】ところで、シリンダ穴
の周囲にグロメットを設け、且つ、２重シール部を形成
した金属積層形シリンダヘッドガスケットにおいても、
燃焼ガスが漏洩する場合があり、なお、改善の必要が認
められる。本考案は、主シール部にワイヤーリングを使
用し、副シール部にビードを使用した、２重にシール部
でシリンダ穴の周囲をシールする際に、より簡単な構成
でヘッドボルトの締め付けによりシリンダヘッドに反り
が発生しても、シール性能が低下しない金属積層形シリ
ンダヘッドガスケットを提供することを目的としてい
る。

【０００５】

【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するた
めの本考案のシリンダヘッドガスケットは、シリンダ穴
の周囲に第１の鍔部と円弧部と前記第１の鍔部より短い
第２の鍔部で形成したグロメットと、前記円弧部に沿わ
せて配置したワイヤリングと、前記第１の鍔部の内面に
配置したビードを有するビード板と、前記第２の鍔部の
内面に配置した表面板と、前記ビード板と表面板との間
に積層した第１の中間板と第２の中間板とから成り、前
記第１の中間板のシリンダ穴側に向かう端部はビードを
避けた外方に、また、前記第２の中間板のシリンダ穴側
に向かう端部はビードの背後にそれぞれ位置させ、前記
ワイヤリングが配置されている部分に主シール部を、こ
の主シール部より外方であって、ビードと第２の中間板
の端部が配置されている部分に副シール部を、この副シ
ール部より外方であって、ビード板と第１の中間板と第
２の中間板と、更に表面板が積層されている部分に平坦
部をそれぞれ形成し、前記主シール部の圧縮時の厚みよ
りも副シール部の合計板厚を薄く、次いで前記平坦部の
合計板厚を薄く形成している。

【０００６】このように構成することによって主シール
部１６で強く押圧してこの部分で主たるシールを行な
い、この主シール部１６でシールできなかった一部の排
ガスは次に強くシールされている副シール部１８でシー
ルするという多段階的なシールを行なう。更にシリンダ
ボデイとシリンダヘッドとをヘッドボルトで締め付けた
際の圧力は平坦部２４で受ける。前記ヘッドボルトの締
め付け圧によってシリンダヘッドが反って平坦性が失わ
れた状態となった時は、主シール部１６と副シール部１
８と、更に平坦部２４からなるシール部で３段階でシー
ルすることによって優れたシール性を発揮することがで
きるようにしている。

【０００７】

【実施例】以下添付の図を参照して、一実施例により本
考案を具体的に説明する。図１に示す実施例の金属積層
形シリンダヘッドガスケット（以下単にガスケットとい
う）１は、シリンダ穴２の周囲に取り付けたグロメット
４、該グロメット４の断面Ｕ状に折り返した円弧部内に
抱かれて配置されたワイヤーリング５、一方の表面板を
兼ねるビード板６、第１の中間板８、第２の中間板１
０、及び、他方の表面板１２からなるものであり、ビー
ド板６には、前記シリンダ穴２に沿ってビード１４を設
けている。そして、シリンダ穴２を囲み、ワイヤーリン
グ５による主シール部１６と、ビード１４による副シー
ル部１８とを形成し、前記グロメット４の一方の第２の
鍔部２０は主シール部１６のみを覆う幅に形成し、他方
の第１の鍔部２２は副シール部１８まで覆う幅に形成し
ている。

【０００８】即ち、主シール部１６は、ワイヤーリング
５、グロメット４を形成している第２の鍔部２０と第１
の鍔部２２、第１の表面板を形成するビード板６、及
び、第２の表面板を形成する表面板１２によって形成
し、ガスケット１をシリンダヘッド（図示せず）とシリ
ンダボディ（同様に図示せず）とで圧縮した際に、ワイ
ヤーリング５の弾性により高いシール面圧を発生させる
ようにした。次に、副シール部１８は、グロメット４の
第１の鍔部２２、ビード板６のビード１４を設けた部
分、第２の中間板１０、及び表面板１２によって形成
し、積層した板６，１０，１２及び２２の合計板厚を、
主シール部１６の圧縮時の厚みより薄く形成し、ガスケ
ット１を圧縮した際に、ビード１４の弾性によって、シ
ール面圧を発生させるようにした。したがって、該副シ
ール部１８のシール面圧は、主シール部１６のシール面
圧より低い値となる。

【０００９】更に、第１の鍔部２２の外側の平坦部２４
は、ビード板６、第１の中間板８と第２の中間板１０、
及び表面板１２によって形成し、該平坦部２４は、図示
しないシリンダヘッドなどの接合面が、ヘッドボルト
（図示せず）の締め付け力により変形するなど、平坦性
が失われた場合以外、接合面に接触しないようにした。
即ち、主シール部１６を圧縮した際の厚みをｔ_Ｂで表
し、副シール部１８の合計板厚をｔ_Ｓで表し、平坦部２
４合計板厚をｔ_Ｆで表すと、ｔ_Ｂ＞ｔ_Ｓ＞ｔ_Ｆで表すこ
とができる。以上説明した実施例のガスケット１を、図
示しないシリンダヘッドとシリンダボディとの間に介装
し、ヘッドボルトで締め付けると、主シール部１６に高
いシール面圧が発生して燃焼ガスの侵入を防ぐと共に、
副シール部１８を高い圧縮力と高温の燃焼ガスから保護
する。したがって、なんらかの理由で主シール部１６か
ら燃焼ガスが洩れることがあっても、副シール部１８で
確実に洩れを防止することができる。

【００１０】

【考案の効果】本考案のシリンダヘッドガスケット１
は、シリンダ穴２の周囲に第１の鍔部２２と円弧部と前
記第１の鍔部２２より短い第２の鍔部２０で形成したグ
ロメット４と、前記円弧部に沿わせて配置したワイヤリ
ング５と、前記第１の鍔部２２の内面に配置したビード
１４を有するビード板６と、前記第２の鍔部２０の内面
に配置した表面板１２と、前記ビード板６と表面板１２
との間に積層した第１の中間板８と第２の中間板１０と
から成り、前記第１の中間板８のシリンダ穴２側に向か
う端部はビード１４を避けた外方に、また、前記第２の
中間板１０のシリンダ穴２側に向かう端部はビード１４
の背後にそれぞれ位置させ、前記ワイヤリング５が配置
されている部分に主シール部１６を、この主シール部１
６より外方であって、ビード１４と第２の中間板１０の
端部が配置されている部分に副シール部１８を、この副
シール部１８より外方であって、ビード板６と第１の中
間板８と、第２の中間板１０と、更に表面板１２が積層
されている部分に平坦部２４をそれぞれ形成し、前記主
シール部１６の圧縮時の厚みよりも副シール部１８の合
計板厚みを薄く、次いで前記平坦部２４の合計板厚を薄
く形成している。

【００１１】即ち、本考案のシリンダヘッドガスケット
１は、シリンダ穴２の周囲に多段階に、しかも次第に低
下するシール力を発生させるように構成した点に特徴が
ある。前記のように構成したことによって、シリンダ穴
２の周囲に大きなシール力を発生させ、その外方に行く
にしたがって副シール部１８と平坦部２４に次の段階の
シール力を発生させることができるから、シリンダヘッ
ドがヘッドボルトの締め付けによって変形してシリンダ
穴２の周囲で接合面の間隙が開くことがあっても、前記
ワイヤリング５が配置されている主シール部１６が最も
高いシール面圧を発生し、副シール部１８には大きな面
圧が発生しないようにしてこれを保護する。そして前記
主シール部１６によってシールできなかった排気ガス
は、次の副シール部１８によってシールできるので、排
気ガスは多段階のシールで確実にシールされることにな
る。また、シリンダヘッドの大きな変形に対しては平坦
部２４が面圧を負担することから、主シール１６と副シ
ール部１８とが大きく変形するのを防止できるためにシ
ール性を確実に保持することができる。更に、長さのこ
となく第１の鍔部２２と第１の鍔部２０を持ち、円弧部
にワイヤリング５を抱持したグロメット４を使用するに
よってシリンダヘッドをヘッドボルトで締め付ける際
に、このグロメット４部分の変形が正確に行なわれて所
定のシール性を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例による本考案の金属積層形シリンダヘッ
ドガスケットの要部断面図である。

【符号の説明】

１ 金属積層形シリンダヘッドガスケット（ガスケッ
ト） ２ シリンダ穴 ４ グロメット ５ ワイヤーリング ６ ビード板 ８ 中板 １０ 中板 １２ 表面板 １４ ビード １６ 主シール部 １８ 副シール部 ２０ 鍔 ２２ 鍔 ２４ 平坦部 ２６ ワイヤーリ
ング

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダ穴の周囲に第１の鍔部と円弧部
   と前記第１の鍔部より短い第２の鍔部で形成したグロメ
   ットと、前記円弧部に沿わせて配置したワイヤリング
   と、前記第１の鍔部の内面に配置したビードを有するビ
   ード板と、前記第２の鍔部の内面に配置した表面板と、
   前記ビード板と表面板との間に積層した第１の中間板と
   第２の中間板とから成り、前記第１の中間板のシリンダ
   穴側に向かう端部はビードを避けた外方に、また、前記
   第２の中間板のシリンダ穴側に向かう端部はビードの背
   後にそれぞれ位置させ、前記ワイヤリングが配置されて
   いる部分に主シール部を、この主シール部より外方であ
   って、ビードと第２の中間板の端部が配置されている部
   分に副シール部を、この副シール部より外方であって、
   ビード板と第１の中間板と第２の中間板と、更に表面板
   が積層されている部分に平坦部をそれぞれ形成し、前記
   主シール部の圧縮時の厚みよりも副シール部の合計板厚
   を薄く、次いで前記平坦部の合計板厚を薄く形成した金
   属積層形シリンダヘッドガスケット。