JP2556114B2 - 耐摩耗性のすぐれた高強度高靭性Cu基焼結合金 - Google Patents

耐摩耗性のすぐれた高強度高靭性Cu基焼結合金

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JP2556114B2 JP63270111A JP27011188A JP2556114B2 JP 2556114 B2 JP2556114 B2 JP 2556114B2 JP 63270111 A JP63270111 A JP 63270111A JP 27011188 A JP27011188 A JP 27011188A JP 2556114 B2 JP2556114 B2 JP 2556114B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、耐摩耗性にすぐれ、かつ高強度および高
靭性を有し、さらに摩擦係数で評価される相手部材に対
する同期特性にもすぐれ、したがってこれらの特性が要
求される変速機のシンクロナイザリンやエンジンのバル
ブガイド、さらにターボチャージャの軸受などとして用
いるのに適したCu基焼結合金に関するものである。
〔従来の技術〕
従来、上記の各種部材の製造に、重量%で(以下%は
重量%を示す)、Cu−28%、Zn−6%Alの代表組成を有
するCu基焼結合金を用いることが提案されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、上記の従来Cu基焼結合金は、焼結体であるた
めに、相手部材に対する同期特性にはすぐれているもの
の、十分な耐摩耗性、強度、および靭性を具備するもの
ではなく、したがって近年の各種機器の小型化および軽
量化、並びに高出力化に対応することができず、より一
段とすぐれた耐摩耗性、高強度および高靭性を具備する
Cu基焼結合金の開発が強く望まれている。
〔課題を解決するための手段〕
そこで、本発明者等は、上述のような観点から特に上
記の従来Cu基焼結合金に着目し、一段とすぐれた耐摩耗
性、強度、および靭性を有するCu基焼結合金を開発すべ
く研究を行なった結果、 Zn:10〜40%、Al:0.3〜6%、 Mn:0.1〜5%、Si:0.1〜3%、 WおよびMoのうちの1種または2種:0.1〜3%、 酸素:0.03〜1%、 を含有し、さらに必要に応じて、 (a) Fe,Ni,およびCoのうちの1種または2種以上:
0.1〜5%、 (b) Sn:0.1〜4%、 (c) Cr:0.1〜3%、 以上(a)〜(c)のうちのいずれか1種または2種
以上を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成、
並びに素地中に酸化アルミニウム(Al2O3)を主体とし
た微細な酸化物および金属間化合物が均一に分散した組
織を有するCu基焼結合金は、すぐれた耐摩耗性を有する
と共に、高強度および高靭性を有することから、各種機
器の小型化および軽量化、並びに高出力化に十分対応す
ることができる構造部材の製造に適用することができる
という知見を得たのである。
この発明は、上記知見にもとづいてなされたものであ
って、この発明のCu基焼結合金は、上記組成によって、
素地中に、1〜40μmの粒度範囲内に分布したAl2O3
主体とした酸化物が0.5〜15%の面積率で均一分散し、
かつ同じく1〜25μmの粒度範囲内に分布した金属間化
合物が1〜10%の面積率で均一分散した組織をもつよう
になり、これら酸化物と金属間化合物によって耐摩耗性
が著しく向上するようになり、特に酸化物の均一分散に
よって耐焼き付性が向上するようになるほか、摩擦面の
耐熱性が向上することを合まって高負荷条件下でもすぐ
れた耐摩耗性を示すようになるものである。
つぎに、この発明のCu基焼結合金において、成分組成
を上記の通り限定した理由を説明する。
(a) Zn Zn成分には、CuおよびAlと共に素地を形成し、合金の
強度および靭性を向上させる作用があるが、その含有量
が10%未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方
その含有量が40%を越えると、前記作用に劣化現象が現
われるようになることから、その含有量を10〜40%と定
めた。
(b) Al Al成分には、上記の通りCuおよびZnと高強度および高
靭性を有する素地を形成するほか、酸素と結合して酸化
物を形成し、もって常温は勿論のこと、高温条件下での
耐摩耗性を向上させる作用があるが、その含有量が0.3
%未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方その
含有量が6%を越えると、素地の靭性が低下するように
なることから、その含有量を0.3〜6%と定めた。
(c) Mn Mn成分には、Siと結合して、素地中に微細に分散する
金属間化合物を形成して耐摩耗性を向上させると共に、
一部が素地に固溶して、強度を向上させる作用がある
が、その含有量が0.1%未満では前記作用に所望の効果
が得られず、一方その含有量が5%を越えると靭性が低
下するようになることから、その含有量を0.1〜5%と
定めた。
(d) Si Si成分には、Mn,WおよびMo,さらに必要に応じて含有
されるCrと結合して硬く微細な金属間化合物を形成する
ほか、酸素と結合してAlなどとの複酸化物を形成して、
耐摩耗性を向上させ、特に前記複酸化物の存在によって
上記の通り耐焼き付性および摩擦面の耐熱性が向上する
ようになるので、例えば高負荷条件下でもすぐれた耐摩
耗性を示すようになるが、その含有量が0.1%未満では
所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その含有
量が3%を越えると靭性が低下するようになることか
ら、その含有量を0.1〜3%と定めた。
(e) WおよびMo これらの成分には、強度向上作用のほか、必要に応じ
て含有されるFe,Ni,およびCoと結合して微細な金属間化
合物を形成し、また酸素と結合して微細な酸化物を形成
し、もって耐摩耗性を向上させる作用があるが、その含
有量が0.1%未満では所望の強度および耐摩耗性を確保
することができず、一方その含有量が3%を越えると、
靭性が低下することから、その含有量を0.1〜3%と定
めた。
(f) 酸素 酸素には、上記の通りAlや、Si,W,およびMo,さらに必
要に応じて含有されるCrと結合して、素地中に微細均一
に分散する酸化物を形成し、もって耐摩耗性を向上さ
せ、特に、耐焼き付性および耐熱性の改善によって高負
荷条件下での耐摩耗性を向上させる作用があるが、その
含有量が0.03%未満では酸化物の形成が少なすぎて所望
の耐摩耗性を確保することができず、一方その含有量が
1%を越えると酸化物の粒径が40μmを越えて粗大化す
るばかりでなく、面積率で15%を越えて多くなりすぎ、
合金の強度および靭性が低下するようになるほか、相手
攻撃性も増すようになることから、その含有量を0.03〜
1%と定めた。
(g) Fe,Ni,およびCo これらの成分には、素地中に分散して合金の強度およ
び靭性を向上させると共に、CuおよびAl、さらにW,Moお
よびCrと結合して、素地中に分散する微細な金属間化合
物を形成して耐摩耗性を向上させる作用があるので必要
に応じて含有されるが、その含有量が0.1%未満では前
記作用に所望の効果が得られず、一方その含有量が5%
を越えると靭性が低下するようになることから、その含
有量を0.1〜5%と定めた。
(h) Sn Sn成分には、素地に固溶して、これを強化するほか、
高負荷条件下での耐焼き付性を改善し、もって耐摩耗性
の向上に寄与する作用があるので、必要に応じて含有さ
れるが、その含有量が0.1%未満では前記作用に所望の
向上効果が得られず、一方その含有量が4%を越える
と、靭性が低下するようになるほか、特に摩擦面の耐熱
性が低下するようになり、耐摩耗性が損なわれることか
ら、その含有量を0.1〜4%と定めた。
(i) Cr Cr成分には、WおよびMoと同様に必要に応じて含有さ
れる鉄属金属と金属間化合物を形成するほか、酸化物を
形成し、耐摩耗性を一段と向上させる作用があるので、
必要に応じて含有されるが、その含有量が0.1%未満で
は対摩耗性に所望の向上効果が得られず、一方その含有
量が3%を越えると靭性が低下するようになることか
ら、その含有量を0.1〜3%と定めた。
なお、この発明のCu基焼結合金は、不可避不純物とし
てP,Mg,およびPbを含有する場合があるが、その含有量
が合計で1.5%以下であれば、合金特性が何ら損なわれ
るものでないので、その含有を許容できる。
〔実 施 例〕
つぎに、この発明のCu基焼結合金を実施例により具体
的に説明する。
原料粉末として、いずれも200mesh以下の粒度を有
し、表面酸化層の層厚を調整することによりO2含有量を
それぞれ4%および2%とした2種のCu−Al合金(Al:5
0%含有)粉末、Cu粉末、Zn粉末、Al粉末、Mn粉末、Si
粉末、W粉末、mo粉末、Fe粉末、Ni粉末、Co粉末、Sn粉
末、およびCr粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ
第1表に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時
間湿式粉砕混合し、乾燥した後、4〜6ton/cm2の範囲内
の所定の圧力で圧粉体にプレス成形し、ついで、露点:0
℃〜−30℃のH2ガス雰囲気中、800〜900℃の範囲内に所
定温度に1時間保持の条件で焼結することにより、圧壊
荷重測定用として外径:72mm×内径:62mm×厚さ:8mmの寸
法をもち、また摩耗試験用として幅:10mm×厚さ:10mm×
長さ:40mmの寸法をもち、さらに摩擦係数測定用として
外径:10mm×高さ:20mmの寸法をそれぞれ有し、かついず
れも配合組成と実質的に同一の成分組成をもった本発明
Cu基焼結合金1〜30、比較Cu基焼結合金1〜7、および
従来Cu基焼結合金をそれぞれ製造した。
なお、本発明Cu基焼結合金1〜30は、いずれも微細な
酸化物および金属間化合物が素地中に均一に分散する組
織をもつものであった。
また、比較Cu基焼結合金1〜7は、いずれも構成成分
のうちのいずれかの成分含有量(第1表に※印を付した
もの)がこの発明の範囲から外れたものである。
つぎに、この結果得られた各種のCu基焼結合金につい
て、強度および靭性を評価する目的で圧壊荷重を測定
し、さらに耐摩耗性を評価する目的で、 試片形状:8mm×8mm×30mm、 相手材:材質がSUH36にして、外径:30mm×幅:5mmのリン
グ、 オイル:5Wのエンジンオイル、 油温:80℃、 摩擦速度:8m/sec.、 最終荷重:5kg、 滑り距離:1.5km、 の条件でブロックオンリング摩耗試験を行ない、比摩耗
量で測定し、さらに相手部材に対する同期特性を評価す
る目的で、 試片形状:2mmの直径を有するピン、 相手材:SUH36のディスク、 オイル:5Wのエンジンオイル、 油温:80℃、 摩擦速度:8m/sec.、 圧力:2kg、 滑り距離:1.5km の条件でピン摩耗試験を行ない、トルクメーターから摩
擦係数を算出した。これらの結果を第1表に示した。
〔発明の効果〕
第1表に示される結果から、本発明Cu基焼結合金1〜
30は、いずれも従来Cu基焼結合金と同等の摩擦係数を有
し、これは相手部材に対する同期特性にすぐれているこ
とを示し、また従来Cu基焼結合金に比して一段とすぐれ
た耐摩耗性、強度、および靭性をもつものに対して、比
較Cu基焼結合金1〜7に見られるように、構成成分のう
ちのいずれかの成分含有量でもこの発明の範囲から外れ
ると、耐摩耗性、強度、および靭性のうちの少なくとも
いずれかの性質が劣ったものになることが明らかであ
る。
上述のように、この発明のCu基焼結合金は、すぐれた
耐摩耗性を有し、かつ高強度および高靭性を有し、さら
に相手部材に対する同期特性にもすぐれているので、小
型化および軽量化、並びに高出力化が要求される各種機
器の構造部材としての適用に十分に対応することができ
るものであり、しかも実用に際してはすぐれた性能を長
期に亘って発揮するようになるなど工業上有用な特性を
有するのである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−174843(JP,A) 特開 昭60−114545(JP,A) 特開 昭63−206441(JP,A) 特開 昭57−76143(JP,A) 特公 昭59−52944(JP,B2)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Zn:10〜40%、Al:0.3〜6%、 Mn:0.1〜5%、Si:0.1〜3%、 WおよびMoのうちの1種または2種:0.1〜3%、 酸素:0.03〜1%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に酸化アルミニウムを主体とし
    た微細な酸化物および金属間化合物が均一に分散した組
    織を有することを特徴とする耐摩耗性のすぐれた高強度
    高靭性Cu基焼結合金。
  2. 【請求項2】Zn:10〜40%、Al:0.3〜6%、 Mn:0.1〜5%、Si:0.1〜3%、 WおよびMoのうちの1種または2種:0.1〜3%、 酸素:0.03〜1%、 を含有し、さらに、 Fe,Ni,およびCoのうちの1種または2種以上:0.1〜5
    %、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に酸化アルミニウムを主体とし
    た微細な酸化物および金属間化合物が均一に分散した組
    織を有することを特徴とする耐摩耗性のすぐれた高強度
    高靭性Cu基焼結合金。
  3. 【請求項3】Zn:10〜40%、Al:0.3〜6%、 Mn:0.1〜5%、Si:0.1〜3%、 WおよびMoのうちの1種または2種:0.1〜3%、 酸素:0.03〜1%、 を含有し、さらに、 Sn:0.1〜4%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に酸化アルミニウムを主体とし
    た微細な酸化物および金属間化合物が均一に分散した組
    織を有することを特徴とする耐摩耗性のすぐれた高強度
    高靭性Cu基焼結合金。
  4. 【請求項4】Zn:10〜40%、Al:0.3〜6%、 Mn:0.1〜5%、Si:0.1〜3%、 WおよびMoのうちの1種または2種:0.1〜3%、 酸素:0.03〜1%、 を含有し、さらに、 Cr:0.1〜3%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に酸化アルミニウムを主体とし
    た微細な酸化物および金属間化合物が均一に分散した組
    織を有することを特徴とする耐摩耗性のすぐれた高強度
    高靭性Cu基焼結合金。
  5. 【請求項5】Zn:10〜40%、Al:0.3〜6%、 Mn:0.1〜5%、Si:0.1〜3%、 WおよびMoのうちの1種または2種:0.1〜3%、 酸素:0.03〜1%、 を含有し、さらに、 Fe,Ni,およびCoのうちの1種または2種以上:0.1〜5%
    と、 Sn:0.1〜4%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に酸化アルミニウムを主体とし
    た微細な酸化物および金属間化合物が均一に分散した組
    織を有することを特徴とする耐摩耗性のすぐれた高強度
    高靭性Cu基焼結合金。
  6. 【請求項6】Zn:10〜40%、Al:0.3〜6%、 Mn:0.1〜5%、Si:0.1〜3%、 WおよびMoのうちの1種または2種:0.1〜3%、 酸素:0.03〜1%、 を含有し、さらに、 Fe,Ni,およびCoのうちの1種または2種以上:0.1〜5%
    と、 Cr:0.1〜3%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に酸化アルミニウムを主体とし
    た微細な酸化物および金属間化合物が均一に分散した組
    織を有することを特徴とする耐摩耗性のすぐれた高強度
    高靭性Cu基焼結合金。
  7. 【請求項7】Zn:10〜40%、Al:0.3〜6%、 Mn:0.1〜5%、Si:0.1〜3%、 WおよびMoのうちの1種または2種:0.1〜3%、 酸素:0.03〜1%、 を含有し、さらに、 Sn:0.1〜4%、Cr:0.1〜3%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に酸化アルミニウムを主体とし
    た微細な酸化物および金属間化合物が均一に分散した組
    織を有することを特徴とする耐摩耗性のすぐれた高強度
    高靭性Cu基焼結合金。
  8. 【請求項8】Zn:10〜40%、Al:0.3〜6%、 Mn:0.1〜5%、Si:0.1〜3%、 WおよびMoのうちの1種または2種:0.1〜3%、 酸素:0.03〜1%、 を含有し、さらに、 Fe,Ni,およびCoのうちの1種または2種以上:0.1〜5
    %、 Sn:0.1〜4%、およびCr:0.1〜3%、 を含有し、残りがCuと不可避不純物からなる組成(以上
    重量%)、並びに素地中に酸化アルミニウムを主体とし
    た微細な酸化物および金属間化合物が均一に分散した組
    織を有することを特徴とする耐摩耗性のすぐれた高強度
    高靭性Cu基焼結合金。
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