JP2553132Y2 - デュプレクサ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、たとえば送信フィル
タと受信フィルタが一体化された送受共用器等として用
いられるデュプレクサに関する。

【０００２】

【従来の技術】誘電体ブロックの内部に内導体を形成
し、誘電体ブロックの外面に外導体を形成した誘電体共
振器や、誘電体基板の表面に複数のストリップライン共
振電極を形成し、対向面にアース電極をそれぞれ形成し
た２枚の誘電体基板を重ね合わせたいわゆるトリプレー
ト型の誘電体共振器が、たとえばマイクロ波帯における
フィルタ等として用いられている。

【０００３】このように誘電体内に複数の共振電極を設
けてなる一体型の誘電体フィルタは、たとえば複数の誘
電体共振器を用いるディスクリートタイプの誘電体フィ
ルタに比較して、共振器間の結合等をとるためのコイ
ル、コンデンサ、これらを搭載する基板および全体をシ
ールドするシールドケース等が不要であり、部品点数が
少なく、組み立て作業工程も単純であるという特長を備
えている。

【０００４】たとえば送信フィルタと受信フィルタを一
体化した送受共用器等，二組のフィルタを一体化したデ
ュプレクサを構成する場合にも、誘電体内に複数の共振
電極を設け、誘電体の外面にアース電極を形成すること
によって構成することができる。その一例を図３および
図４に示す。

【０００５】図３は従来技術によるデュプレクサの分解
斜視図である。図３において２０，２１はそれぞれ誘電
体基板である。誘電体基板２０の第１主面（図における
上面）には断面半円形の複数の溝を設け、各溝の内面に
共振電極１１，１２，１３，１４，１５，１６を形成し
ている。また、この誘電体基板２０の第２主面（図にお
ける底面）および四側面にはアース電極１０を形成して
いる。一方、誘電体基板２１の第１主面（図における底
面）には、誘電体基板２０における場合と同様の溝およ
び共振電極を形成している。誘電体基板２１の第２主面
（図における上面）には、共振電極１１に容量結合する
ＴＸ端子としての信号入力電極７、ＡＮＴ端子８、共振
電極１２に容量結合する結合用電極２３、位相整合をと
る位相吸収整合ライン２２、共振電極１３に容量結合す
る結合用電極２４および共振電極１６に容量結合するＲ
Ｘ端子としての信号入出力電極９をそれぞれ設けてい
る。

【０００６】この２枚の誘電体基板２０，２１を接合す
ることによって、図４に示すようなデュプレクサを構成
する。これにより、共振電極１１，１２による２段の共
振器をＴＸ端子７とＡＮＴ端子８間で送信フィルタとし
て用いることができ、共振電極１３，１４，１５，１６
による４段の共振器を、ＡＮＴ端子８とＲＸ端子９間で
受信フィルタとして用いることができる。

【０００７】

【考案が解決しようとする課題】図３および図４に示し
た従来技術によるデュプレクサでは、送信フィルタと受
信フィルタ間の位相整合をとるための位相吸収整合ライ
ンと、送信フィルタの最終段の共振電極に結合するため
の結合用電極２３および受信フィルタの初段の共振器に
結合するための結合用電極２４を、それぞれ誘電体基板
の、本来アース電極が形成されるべき外面に形成したた
め、送信フィルタと受信フィルタ間にシールドとなるも
のが存在しなくなり、両フィルタの共振器間が結合し、
そのためフィルタ特性が乱れるおそれがあった。

【０００８】この考案の目的は、一体型のデュプレクサ
において、２つのフィルタ間の位相整合をとり、しかも
２つのフィルタ間の不要結合を防止して、安定したフィ
ルタ特性の得られるデュプレクサを提供することにあ
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】この考案のデュプレクサ
は、第１の周波数帯域を通過させる第１の複数の共振電
極と、第２の周波数帯域を通過させる第２の複数の共振
電極と、前記第１の共振電極の一部と信号入出力共用電
極との間を容量結合する第１の結合用電極と、前記第２
の共振電極の一部と前記信号入出力共用電極との間を容
量結合する第２の結合用電極と、前記信号入出力共用電
極とアース間に配置される位相吸収整合ラインとを、二
枚の誘電体基板が積層されてなる誘電体ユニット内に設
け、前記第１の共振電極の一部に容量結合する第１の信
号入出力電極と、前記第２の共振電極の一部に容量結合
する第２の信号入出力電極と、前記信号入出力共用電極
の引き出し電極、およびアース電極とを前記誘電体ユニ
ットの外面に設けてなる。

【００１０】

【作用】この考案のデュプレクサでは、２枚の誘電体基
板が積層されて誘電体ユニットが構成されるが、その誘
電体ユニット内に第１の複数の共振電極、第２の複数の
共振電極、第１の結合用電極、第２の結合用電極および
位相吸収整合ラインとがそれぞれ設けられている。ま
た、前記誘電体ユニットの外面には、第１の信号入出力
電極、第２の信号入出力電極、信号入出力共用電極の引
き出し電極およびアース電極が設けられている。前記第
１の結合用電極は第１の共振電極の一部と信号入出力共
用電極間を容量結合させ、第２の結合用電極は、第２の
共振電極の一部と信号入出力共用電極との間を容量結合
させる。また、位相吸収整合ラインは、信号入出力共用
電極とアース間に配置されて、信号入出力共用電極部分
での位相を整合させる。

【００１１】このように第１・第２の結合用電極および
位相吸収整合ラインがそれぞれ誘電体ユニット内に設け
られ、誘電体ユニットの外面がアース電極で覆われてい
るため、第１・第２の複数の共振電極からなる共振器間
が結合せず、フィルタ特性が乱れることもない。

【００１２】

【実施例】この考案の実施例であるデュプレクサの構造
を図１および図２に示す。

【００１３】図１は分解斜視図であり、図１において２
０，２１はそれぞれ誘電体基板である。誘電体基板２０
の第１主面（図における上面）には、合計６本の断面半
円形の溝を設けるとともに、その内面に１１，１２，１
３，１４，１５，１６で示す共振電極を形成している。
誘電体基板２０の第１主面にはさらに位相吸収整合ライ
ン１７、第１の結合用電極１８および第２の結合用電極
１９を形成している。

【００１４】また、誘電体基板２０の第２主面（図にお
ける裏面）および四側面には一部を除いて略全面にアー
ス電極１０を形成している。さらに誘電体基板２０の側
面から第２主面にかけて２つの信号入出力電極を形成し
ている。図中の９はその内の一方の信号入出力電極を示
す。他方の誘電体基板２１の第１主面（図における底
面）には合計６本の断面半円形の溝を形成し、その内面
に、誘電体基板２０の第１主面に形成した電極パターン
とは面対称の関係にある電極パターンを形成している。
また、誘電体基板２１の第２主面および四側面には全面
にアース電極１０を形成している。

【００１５】図２は図１に示した２枚の誘電体基板２
０，２１を接合してなるデュプレクサの外観斜視図であ
る。ただし誘電体基板２０，２１の上下関係は逆とし、
かつ共振器の開放端側を手前にして表している。図２に
おいて１，２，３，４，５，６はそれぞれ２枚の誘電体
基板の接合によって形成される共振電極形成孔である。

【００１６】また８は図１に示した位相吸収整合ライン
１７から連続する信号入出力共用電極である。図２に示
すように、誘電体基板２０の第２主面（図における上
面）の一部にまで信号入出力電極７，９および信号入出
力共用電極８を延出形成している。ここで信号入出力電
極７は図１に示した共振電極１１の開放端付近と容量結
合し、信号入出力電極９は図１に示す共振電極１６の開
放端付近と容量結合する。

【００１７】また、信号入出力共用電極８は図１に示し
た結合用電極１８を介して共振電極１２の開放端付近と
容量結合し、結合用電極１９を介して共振電極１３の開
放端付近と容量結合する。

【００１８】図１および図２に示したデュプレクサの等
価回路を図５に示す。図５においてＲ１，Ｒ２は図１に
示した共振電極１１，１２による共振器、Ｒ３，Ｒ４，
Ｒ５，Ｒ６は図１に示した共振電極１３，１４，１５，
１６による共振器である。Ｃ１は図１に示した共振電極
１１と図２に示した信号入出力電極７間に形成される結
合容量、Ｃ４は図１に示した共振電極１６と信号入出力
電極９間に形成される結合容量である。また、Ｃ２は図
１に示した結合用電極１８と共振電極１２間に形成され
る結合容量、Ｃ３は図１に示した結合用電極１９と共振
電極１３間に形成される結合容量である。そしてＬは図
１に示した位相吸収整合ライン１７によるインダクタン
スである。図５におけるＡ部分は信号入出力共用電極部
における整合回路として作用する。共振器Ｒ１−Ｒ２間
はコムライン結合して２段の帯域通過フィルタとして作
用し、共振器Ｒ３〜Ｒ６は、隣接する共振器間でそれぞ
れコムライン結合して４段の帯域通過フィルタとして作
用する。以上のように構成したため、このデュプレクサ
を、たとえば図２に示した信号入出力電極７，９をそれ
ぞれＴＸ端子，ＲＸ端子とし、信号入出力共用電極８を
ＡＮＴ端子とする送受共用器として用いることができ
る。

【００１９】このように信号入出力共用電極部における
整合回路（図５におけるＡ部分）を誘電体ユニットの内
部に設け、その誘電体ユニットの外面には信号入出力電
極部分を除いて略全面にアース電極を形成したため、二
群の共振器のうち隣接する共振器（図１における共振電
極１２−１３）間の結合もなくなり、フィルタ特性が乱
れることがない。

【００２０】なお、上記実施例ではコムライン形フィル
タを例としたが、インタディジタル形フィルタであって
も同様に適用することができる。

【００２１】

【考案の効果】この考案によれば、信号入出力共用電極
部における２つのフィルタの位相整合を行う回路を誘電
体ユニットに一体に設け、外面にアース電極を形成した
ため、両フィルタ間の結合がなくなり、フィルタ特性に
優れたデュプレクサが得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の実施例であるデュプレクサの分解斜
視図である。

【図２】第１の実施例に係るデュプレクサの外観斜視図
である。

【図３】従来技術によるデュプレクサの構造を示す分解
斜視図である。

【図４】従来技術によるデュプレクサの外観斜視図であ
る。

【図５】実施例に係るデュプレクサの等価回路図であ
る。

【符号の説明】

１〜６−共振電極形成孔 ７−ＴＸ端子としての信号入出力電極 ８−ＡＮＴ端子としての信号入出力共用電極 ９−ＲＸ端子としての信号入出力電極 １０−アース電極 １１〜１６−共振電極 １７−位相吸収整合ライン １８，１９−結合用電極 ２０，２１−誘電体基板

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】第１の周波数帯域を通過させる第１の複数
   の共振電極と、第２の周波数帯域を通過させる第２の複
   数の共振電極と、前記第１の共振電極の一部と信号入出
   力共用電極との間を容量結合する第１の結合用電極と、
   前記第２の共振電極の一部と前記信号入出力共用電極と
   の間を容量結合する第２の結合用電極と、前記信号入出
   力共用電極とアース間に配置される位相吸収整合ライン
   とを、二枚の誘電体基板が積層されてなる誘電体ユニッ
   ト内に設け、 前記第１の共振電極の一部に容量結合する第１の信号入
   出力電極と、前記第２の共振電極の一部に容量結合する
   第２の信号入出力電極と、前記信号入出力共用電極の引
   き出し電極、およびアース電極とを前記誘電体ユニット
   の外面に設けてなるデュプレクサ。