JP2552417B2 - 高周波電源用フェライトコア及びその製造方法 - Google Patents

高周波電源用フェライトコア及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、2〜20MHzの高周
波における共振型スイッチング電源装置又はDC―DC
コンバータ等に用いられるトランスなどのフェライトコ
アに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、高周波スイッチング電源用トラン
スは、軽薄短小化が進み、それを実現する為の手段とし
ては、動作周波数の高周波化が最も有効であるとされて
いる。この様な高周波動作に適したフェライトコアとし
ては、当該高周波帯域で優れた磁気特性すなわち低損失
であることが必要とされる。従来、2MHz以下の高周
波スイッチング電源トランス用フェライトコアとして
は、Mn―Zn系フェライトコアを用いることが一般的
であった。また、2MHz以上の高周波では、高周波特
性の優れたNi―Zn系フェライトコアを用いた検討が
行なわれていた。この検討は、Andrew F.Go
ldberg氏他の文献”High Field Pr
operties ofNickel―Zinc Fe
rrites at 1〜10MHz”、IEEE P
ESC Record,Feb.1988,pp.31
1〜318で報告されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】高周波スイッチング電
源トランス用フェライトコアとしては、ヒステリシス損
失の小さいMn―Zn系フェライトコアを用いることが
一般的とされているが、2MHz以上の高い周波数帯域
では、磁気損失が急激に増加する。即ち、ヒステリシス
損失が増大し、また電気抵抗が1Ω・m以下と小さいた
めに、渦電流損失が増大する。2MHz以上の高周波ス
イッチング電源に用いた場合、発熱が著しくなり、その
結果、熱暴走し、機器全体を破壊する危険があるので実
用化できないとった問題点があった。また、高い周波
数帯域で比抵抗が106Ω・mと大きく渦電流損失が小
さい鉄不足系(Fe23≦50mol%)の従来のNi
―Zn系フェライトコアでは、Mn―Znフェライトコ
アに較べて、ヒステリシス損失が大きいため、全損失が
大きくなり、高周波スイッチング電源用フェライトコア
として充分な性能を発揮できなかった。さらに、パーミ
ンバフェライトとして知られるFe23の組成範囲が5
0モル%以上のNi―Zn―Coフェライトは、比抵抗
が大きく、ヒステリシス損失もB―H曲線の原点に狭い
ウエスト(くびれ)を有するヒステリシスループをもつ
ため小さく、2MHz以上の高い周波数帯域で、有効な
フェライトコアである。しかし、このフェライトコア
は、B―H曲線のメジャーループにおける保磁力(H
c)以上の直流磁界が一旦かかると、低損失性は完全に
消失し、これを回復させるには、キュリー点以上からの
焼鈍による消磁しか方法がなく、装置に組み込んだ後で
のダメージには、打つ手がないといった問題点があっ
た。
【0004】上述の様に2MHz以上の高周波スイッチ
ング電源トランス用フェライトコアとして、ヒステリシ
ス損失が小さく、高抵抗で渦電流損失が小さく、直流磁
界が一旦かかっても低損失性が消失しないものが望まれ
ている。本発明は、2MHz以上の高い周波数帯域で、
低損失なフェライトコアを提供することを目的とするも
のである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的に鑑み鋭意研究
の結果、10MHz、10mTにおけるコアロス(P
c)が、600kw/m3以下であるフェライトコア
を、2〜20MHzで動作する共振型スイッチング電源
又はDC―DCコンバータ等に使用すると、電力消費が
小さく、効率的な高周波動作が達成できることを見出し
本発明に想到した。すなわち、本発明のフェライトコア
は、Fe23 45〜49mol%、ZnO 15〜3
0mol%、CuO 2〜8mol%、残部がNiO、
これにCo34 0.1〜2.0wt%含有し、焼結密
度(ds)が5.0×103kg/m3以上であり、かつ
平均結晶粒径が0.05〜8μmであることを特徴とす
る。
【0006】また、本発明のフェライトコアは、初透磁
率(μi)が50≦μi≦250であり、かつ10MH
zにおける相対損失係数(tanδ/μi)が150×
10-6以下であることが好ましい。
【0007】
【実施例】本発明を表と図面を参照して以下詳細に説明
する。Fe23、ZnO、NiO、CuO、Co34
表1に示す割合で配合し、振動ミルにより2時間混合
し、その粉末混合物を920℃、2時間で仮焼成し、そ
の後振動ミル2時間粉砕した。これに有機バインダーを
加えて造粒、成形し、1020℃、2時間焼成して、外
径20mm、内径10mm、厚さ5mmのリング状のフ
ェライトコアを作製した。この試料の発熱状況を温度上
昇法により評価した。評価条件は、周波数10MHz、
Bm=10mTで、フェライトコアの温度上昇よりコア
ロス(Pc)を算出した。この結果を表1に示す。ま
た、同様に、図2に示したトランス形状とし、2個を組
み合せ、巻線を施し、トランスを形成した。このトラン
スの磁路長は30mm、有効断面積は50mm2であっ
た。このトランスを図3に示した電圧共振型コンバータ
回路に組み込み、10MHz、10mTで動作させた。
出力100Wに対する電力効率の結果を表1に示す。
【0008】
【表1】
【0009】表1から明らかなように、本発明の組成範
囲であって、かつコアロス(Pc)が600kw/m3
以下であれば、電圧共振型コンバータ回路に組み込んだ
場合、高い電力効率で動作できることがわかる。また、
比較例1、2、従来例1、2では、電力効率は60%以
下となり、トランスは10分以内に100℃以上とな
り、明らかに熱暴走状態を示していた。図1に、表1中
の実施例12のフェライトコアと比較例1のフェライト
コア及び従来例1のフェライトコアのPcの周波数特性
を、Bm=10mTについて示した。本発明のフェライ
トコアであれば、2〜20MHzの周波数範囲であれ
ば、周波数(MHz)とBm(mT)の積が200以下
で、高い電力効率で動作できる。
【0010】表2は、表1中の実施例12の組成からな
り、焼結密度(ds)と平均結晶粒径の異なるフェライ
トコアを作製し、同様に評価した結果である。
【0011】
【表2】
【0012】表2から明らかなように、dsが5.0×
103kg/m3以上でありかつ平均結晶粒径が、0.0
5〜8μmであってPcが600kw/m3以下であれ
ば、高い電力効率で動作できることがわかる。
【0013】表3は、特許請求の組成範囲からなり、初
透磁率(μi)と10MHzでの相対損失係数(tan
δ/μi)の異なるフェライトコアを作製し、同様に評
価した結果である。表3から明らかなように、μiが、
50〜250でありかつtanδ/μiが150×10
-6以下であってPcが600kw/m3以下であれば、
高い電力効率で動作できることがわかる。
【0014】
【表3】
【0015】表4は、表1中の実施例12の組成からな
り、フェライトコア作製条件の中で仮焼温度、粉砕粒
径、成形密度、焼成温度が異なる条件でフェライトコア
を作製し同様に評価した結果である。表4から明らかな
ように、仮焼成温度が750〜950℃、平均粉砕粒径
が0.8〜1.5μm、成形密度が3.1×103
3.6×103kg/m3、焼成温度が、900〜105
0℃であってPcが600kw/m3以下であれば、高
い電力効率で動作できることがわかる。ちなみに表1中
の実施例12のフェライトコアの抵抗率(ρ)は、3.
6×106Ω・m、最大磁界の強さ(Hm)が800A
/mのときの最大磁束密度(Bm)は300mT、残留
磁束密度(Br)は200mT、保磁力(Hc)は15
0A/mであった。また、Bm=20mTでのBrは5
mT以下であり、Hcは、5A/m以下と非常に小さか
った。
【0016】
【表4】
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、2MHz以上の高い周
波数帯域で動作する共振型スイッチング電源又はDC―
DCコンバータ等に使用されるフェライトコアにおい
て、組成、磁気特性、製造方法を限定することにより、
電力消費が小さく、効率的な高周波動作が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフェライトコアのコアロスの周波数特
性。
【図2】トランス用フェライトコアの形状図である。
【図3】電圧共振型コンバータの回路図である。
【符号の説明】
1 トランス 2 スイッチング素子 3 インダクタ 4 コンデンサ 5 ダイオード
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−190204(JP,A) 特開 昭59−182235(JP,A) 特開 昭59−227729(JP,A) 特開 平1−101609(JP,A) 特公 昭36−8840(JP,B1) 特公 昭52−18395(JP,B2)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe 2 3 45〜49mol%、ZnO
    15〜30mol%、CuO 2〜8mol%、残部
    がNiO、これにCo 3 4 0.1〜2.0wt%含有
    するフェライトコアであって、焼結密度(ds)が5.
    0×10 3 kg/m 3 以上であり、かつ平均結晶粒径が
    0.05〜8μmであって、10MHz、10mTにお
    けるコアロス(Pc)が600kw/m 3 以下であり、
    2〜20MHzで動作する共振型スイッチング電源又は
    DC―DCコンバータ等に使用されることを特徴とする
    高周波電源用フェライトコア。
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