JP2830241B2 - フェライト磁性体 - Google Patents

フェライト磁性体

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JP2830241B2 JP1330509A JP33050989A JP2830241B2 JP 2830241 B2 JP2830241 B2 JP 2830241B2 JP 1330509 A JP1330509 A JP 1330509A JP 33050989 A JP33050989 A JP 33050989A JP 2830241 B2 JP2830241 B2 JP 2830241B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、フェライト磁性体はトランス,インダク
タ,磁気ヘッド等の各種電子部品に利用される高結晶性
フェライト粉末をガラス材で結着固化してなる超低収縮
率のフェライト磁性体に関するものである。
従来の技術 従来のフェライト磁性体の製造方法は、主として粉体
冶金法、すなわち、粉末成型と高温焼成の工程を必要と
する焼結法がほとんどである。
Ni−Zn−Cu系フェライト磁性体を作る場合は、出発原
料であるFe2O3,NiO,ZnO,CuOを所定の割合で配合し、脱
ガスおよびある程度の固相反応を進めるために、700〜1
000℃程度で仮焼,粉砕し(これを仮焼粉という)、造
粒,成型という工程を経て、その成型体を適切な雰囲気
中で前記の仮焼成温度より高温である1000〜1400℃程度
で本焼成することによって多結晶質のフェライト磁性体
を得ている。所望の磁気特性を得るために、上記の出発
原料にさらに様々な酸化物が少量される場合も多い。
低損失のNi−Zn−Cu系フェライト磁性体を得ようとす
る場合、Co2O3の少量添加が有効であることは公知であ
る。しかし、一般にCo2O3の添加は同時に透磁率を著し
く減少させてしまう。そこで、例えば特公昭35−1576号
公報に記載されているようにCo2O3と同様にBi2O3を添加
し、透磁率の低下を抑え、低損失でかつ高透磁率のフェ
ライト磁性体を得ている。Bi2O3と同様に、V2O5,PbOの
少量添加も透磁率向上に有効であることもよく知られて
いる。この効果は、それぞれが添加されることにより、
フィェライト粒界が活性化し焼結反応が促進され、収
縮,ち密化が進み、すなわちフェライトが高結晶化する
ことに帰因するとされている。
発明が解決しようとする課題 従来の技術によって得られるフェライト磁性体は、本
焼成で数10%の収縮が生じるという欠点を有していた。
そのため以下のようにして超低収縮フェライト磁性体を
得ることを可能にした。すなわち、高温で十分にフェラ
イト化させた高結晶フェライト粉末と、この焼成温度よ
り低い軟化点を持つガラス粉末を混合し、このガラス粉
末の軟化点温度以上でかつ上記高結晶性フェライト粉末
の焼成温度以下の範囲で加熱処理することによって高結
晶性フェライト粉末をガラスに結着し、収縮率を数%に
抑えることを可能にした。
ところが、上記の超低収縮フェライト磁性体では、用
いるフェライト粉末は高温焼成によって十分に高結晶化
するために、従来の高透磁化のための酸化物の微量添加
はほとんど影響を与えない。そのため従来のようにCo2O
3とBi2O3のような高透磁率のための酸化物の複合添加で
は低損失化は達成されるものの透磁率の著しい減少を抑
えることができず、低損失高透磁率の超低収縮フェライ
ト磁性体を得ることが困難であった。
本発明の目的は、超低収縮フェライト磁性体で、低損
失のフェライト磁性体を提供するものである。
課題を解決するための手段 上記課題を解決するために本発明では、高結晶性フェ
ライト粉末と少なくともCo成分を含有するガラス粉末と
の混合物もしくは高結晶性フェライト粉末とガラス粉末
と酸化コバルトとの混合物を、このガラスト粉末と酸化
コバルトの溶融反応の生じる温度以上でかつ上記高結晶
性フェライト粉末の焼成温度以下の範囲で加熱処理し
て、高結晶性フェライト粉末をガラスで結着した構造を
持つ超低収縮フェライト磁性体とするものである。
作用 以上のように高結晶性フェライト粉末の結着材である
ガラス材に含まれるCo成分が加熱処理中に高結晶フェラ
イト粉末内に拡散していく段階で、処理時間が短かいた
めに十分拡散できずに結着部分にCo成分が多く存在する
ような構造となり、透磁率の低下が少ないにもかかわら
ず低損失化がなされるという従来とは異なる挙動を示す
と考えられる。
なお、高結晶性フェライト粉末とガラス粉末と酸化コ
バルトの混合物を用いた場合でも同様の結果が得られた
のは、ガラス粉末と酸化コバルトの溶融反応が先に生
じ、Co成分を含有したガラスが溶融した場合と同じ状態
になり、次にCo成分の一部がフェライト粉末中に拡散す
るというプロセスをとるためと考えられる。
実施例 以下、本発明の実施例について説明する。
すなわち、本発明は、第1図に示すように高結晶性フ
ェライト粉末1をこの高結晶性フェライト粉末1の焼成
温度以下で軟化溶融するCo成分を含有するガラス材2で
結着した構造とするものである。なお、図中3は空隙、
4は高結晶性フェライト粉末1中のポアである。
具体的には、高結晶性フェライト粉末1とCo成分を含
有したガラス粉末とをよく混合する。場合によっては、
例えば、ガラス作成が困難なほどCo成分を多く含有させ
たい場合などでは、高結晶性フェライト粉末1とガラス
粉末と粉末状酸化コバルトをよく混合する。この混合物
を造粒,加圧成型した後、この成型体中の高結晶性フェ
ライト粉末1間に混在する上記ガラス粉末を軟化溶融さ
せることにより、高結晶性フェライト粉末1をガラス材
2で結着し固化した磁性体をいう。ただし、粉末状酸化
コバルトを混合する場合は、ガラス粉末と酸化コバルト
が溶融反応する温度まで加熱する必要がある。
ここで使用する高結晶性フェライト粉末1は、高温焼
成によって十分にフェライト化したものであって、通常
は900℃以上で焼成したものが望ましい。
軟質フェライト磁性体を得たい場合は、高結晶性フェ
ライト粉体1の保磁力Hcが小さいほどよいので、磁性粒
子のサイズが大きいほど望ましいが、一方、高結晶性フ
ェライト粉末1の充填密度が下がるので実際には100〜2
00μm径までが適している。
次に、高結晶性フェライト粉末1を結着するガラス軟
化温度は加熱処理温度以下であればよいが、本発明によ
るフェライト磁性体の応用を考えると耐熱性の観点から
下限は300℃以上であることが望ましい。高結晶性フェ
ライト粉末1に加えるガラス粉末の量は0.3〜30wt%が
よく0.3wt%より少ないと高結晶性フェライト粉末1の
結着効果が小さく機械的強度が確保できない。一方、30
wt%より多いガラス量では、結着力は十分に強くなるが
非磁性量が増すためにフェライト磁性体としての磁気特
性が著しく悪化して好ましくない。
なお、用いる酸化コバルトは、Co2O3,CoOのようにCo
の価数が変化しても同様な結果が得られる。
以下、具体的な実施例について説明する。
(実施例1) Fe2O3とNiOとZnOとCuOの配合モル比が48.5:15.3:32.
2:3.5よりなる混合物と上記混合物に対しCo2O3を0.2重
量部添加した混合物を別々に1320℃6時間焼成し、平均
粒径70μmのNi−Zn−Cu系フェライト本焼成分を2種類
準備した。X線解析した結果では2種類とも軟質フェラ
イト特有の鋭いスピネル構造回折線が得られ、結晶性の
非常に高いフェライト磁性粉末であることを確認した。
一方、Co成分を含まない無アルカリほうけい酸鉛系ガ
ラスにCo2O3を6.6重量部添加し、800℃に加熱溶融させ
た後、急冷し、平均粒径1μmのCo成分を含有したガラ
ス粉末を準備した。X線解析した結果ではガラス質特有
の回折パターンが得られ、十分反応しガラス化している
ことを確認した。
Co2O3を添加していない上記高結晶性フェライト粉末
に対し、3.2重量部の上記のCo成分を含有したガラス粉
末をよく混合し、その混合物を造粒後、3ton/cm2の圧力
で内径7mm,外径12mm,厚さ3mmのリング状成型品を作成し
た。この成型品を電気炉内に配置し、1200℃で60分間空
気中で加熱処理し、ガラス結着型のリング状フェライト
コアを得た(本発明品1)。
一方、Co2O3を添加していない上記高結晶性フェライ
ト粉末と、Co成分を含まないガラス粉末と、Co2O3を10
0:3:0.2重量比でよく混合し、その混合物から本発明品
1と同一条件でガラス結着型のリング状フェライトコア
を得た(本発明品2)。
比較のため、Co2O3を添加した上記高結晶性フェライ
ト粉末にCo成分を含まない無アルカリほうけい酸鉛系ガ
ラスを3.0重量部添加した混合物から本発明品1と同一
条件でガラス結着型のリング状フェライトコアを得た
(比較品)。
本発明品1,本発明品2,比較品は組成的には全く同じで
ある。また、これらの微細構造の走査型電子顕微鏡での
観察では差異は認められない。
これらの材料特性を第1表に示す。
本発明品1と本発明品2はほぼ同じ特性を有してい
る。比較品に対しては損失(tanδ)は50%以下に低下
したにもかかわらず、透磁率は2倍近くあり、低損失高
透磁率の超低収縮率のフェライト磁性体が得られた。
(実施例2) 実施例1と同一条件で作成したリング状成型体を3個
ずつ(本発明品1,本発明品2,比較品を1つずつ)電気炉
内に設置し、1200℃で加熱処理した。その際の温度プロ
フィールは、昇温速度を170℃/1h,降温速度を300℃/hと
し、1200℃での保持時間を30〜180分で行った。得られ
たフェライト磁性体の特性を第2図に示す。本発明品1
と本発明品2とでは特性にほとんど差は認められず、比
較品に対しては、いずれの保持時間においても、損失
(tanδ)は小さく、透磁率(μ)が大きくなってい
る。ただし、保持時間が長くなるにしたがってその特性
は比較品に近づいている。微細構造を走査電子顕微鏡観
察したが、フェライト粒径等の構造変化は認められず、
このことは、本発明品は高結晶性フェライト粉末の結着
部分にCo成分が局在しており、保持時間が長くなるに従
って、Co成分が高結晶フェライト粉末内に拡散してい
き、組成的に比較品に近づくことを意味すると考えられ
る。第2図から保持時間を120分以下としたときに本発
明の特徴が多く現われている。
(実施例3) Fe2O3とNiOとZnOとCuOのモル比が48.5:15.3:32.2:3.5
よりなる出発混合物にCo2O3を0〜0.5重量部添加し、よ
く混合した後、1320℃6時間焼成し、平均粒径70μmの
Ni−Zn−Cu系軟質フェライト本焼成粉を準備した。X線
解析した結果では、軟質フェライト特有の鋭いスピネル
構造回折線が得られ、結晶性の非常に高いフェライト磁
性粉であることを確認した。
Co2O3を出発混合物に添加しなかった上記高結晶性フ
ェライト粉末に対し、粉末状Co2O3を0〜0.5重量部添加
し、さらに、その混合物に対してCo成分を含まない無ア
ルカリほうけい酸鉛系ガラス粉末を3重量部添加した混
合物から、実施例1と同一条件でリング状フェライトコ
アを作成した(本発明品)。
一方、出発混合物にCo2O3を添加した上記高結晶性フ
ェライト粉末に対し、Co成分を含有しない無アルカリほ
うけい酸鉛系ガラス粉末を3重量部添加した混合物か
ら、実施例1と同一条件でリング状フェライトコアを作
成した(比較品)。それぞれの特性を第3図に示す。
すべてのCo2O3の添加量で、本発明品は、低損失高透
磁率磁性体であることを示している。
ここで、高結晶性フェライト粉末に混合した粉末状Co
2O3の一部もしくはすべてを無アルカリほうけい酸鉛系
ガラスのCo成分とした場合でも、同一の特性が得られる
ことは実施例1から明らかである。
なお、上記実施例において、透磁率の測定は、JIS規
格(C2561)に準じ、まず前述のリング状フェライトコ
アに絶縁テープを一層巻いた後、線径0.26mmφの絶縁銅
線を全周にわたって一層巻いた試料を準備した。次にこ
の1MHzでの自己インダクタンスLおよび500kHzでのQを
マスクウェルブリッジで測定磁界の強さが0.8(A/m)以
下にて測定し、透磁率はこの自己インダクタンスLから
算出した。損失(tanδ)はQの逆数とした。
さらに収縮率は熱処理前のリング状成型品と熱処理後
のリング状フェライトコアの外径寸法をそれぞれ測定
し、熱処理前後による寸法収縮率を算出した。
発明の効果 以上のように、本発明によれば、高結晶性フェライト
粉末を用いたガラス結着型低収縮フェライト磁性体で、
結着部分にCo成分が局在した構造となることによって、
寸法精度がよく、低損失高透磁率の磁性材料となり、各
種磁気応用製品に使われる有用な電子部品,材料として
優れた効果を奏しうるものである。
【図面の簡単な説明】 第1図は本発明のフェライト磁性体の一実施例を示す微
細構造の模式図、第2図は成型体の加熱処理における12
00℃での保持時間と損失(tanδ),透磁率(μ)の関
係を示す特性図、第3図はCo2O3の配合量と損失(tan
δ),透磁率(μ)の関係を示す特性図である。 1……高結晶性フェライト粉末、2……ガラス材、3…
…空隙、4……ボア。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−253209(JP,A) 特開 昭63−158810(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01F 1/34

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高温焼成で十分にフェライト化が進んだNi
    −Zn系もしくはNi−Zn−Cu系の高結晶性フェライト粉末
    を、この焼成された高結晶性フェライト粉末より低い軟
    化点を持つガラス粉末で結着し、高結晶性フェライト粒
    内よりも結着部分にCo成分をより多く有するフェライト
    磁性体。
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