JP2552156Y2 - 筆記具 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案はインクを中綿等に吸蔵さ
せないで直接貯溜するインクタンクを有し、又インクタ
ンク内の空気が温度上昇等の原因によって膨張した場合
にインクタンクから押し出されるインクを筆先部や空気
孔からボタ落ちさせないために一時的に保留するインク
保溜体を付設した筆記具のキャップと軸筒の改良に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来の直接貯溜方式の筆記具のキャップ
は、キャップの脱着時にシール筒内の容積変化を起こさ
ないようにシール筒を軸方向に移動可能にしシール筒の
開口縁部を筆記具軸筒に当接させ密封しているが、これ
はシール筒の軸方向の弾性変形を抑制すると共に各部材
の寸法ばらつきを吸収し部品製作の容易化を計ってい
る。またシール筒はキャップに軸筒に冠着保持した時、
シール筒はキャップを外す方向に反力を発生させるため
キャップの冠着保持力よりもだいぶ弱い押し圧力でシー
ル筒を当接する必要があり、弱い押し圧力でもシール筒
の開口縁部が筆記具軸筒に密着するようにシール筒は柔
らかい弾性に富むゴム等で出来ている。このためシール
筒はそのままではキャップ内に組み込むことが出来ず、
ポリプロピレンやポリエチレン等で出来た簡単には変形
し難い内キャップに収容しキャップに組み込まれ弱いバ
ネで押し圧出来るような構造になっている。

【０００３】ここで直接貯溜方式の筆記具においてキャ
ップの着脱時にシール筒内の容積変化を起こさせないよ
うにしているのは、中綿方式の筆記具のようにキャップ
の着脱時にキャップ内が加圧減圧を起こすと、加圧され
た時にはシール筒内の空気が圧縮されその分だけ空気孔
からインク保溜体を通ってインクタンク内に気泡として
浸入しその分だけインクが溢れ出してインク保溜体に保
留される。また逆に軸筒からキャップを外す場合、シー
ル筒内の空気は上記の現象とは逆に減圧される事にな
り、そのためインクタンク内のインクが引き出されやは
りインク保溜体に保留される。このようにキャップの着
脱の度にインク保溜体のインク保溜量が増加していき最
後には保溜能力を超過して空気孔からインクが吹き出す
が、この現象を防ぐために上記のような構造を採用して
いる。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】前記、従来の直接貯溜
方式の筆記具のキャップは、キャップの脱着時にシール
筒内を加圧減圧させないでかつ密封するようにシール筒
を軸方向に移動可能にして開口縁部を筆記具軸筒に密着
させるために柔らかくて弾性に富むゴム等の材質で出来
ており、更にシール筒は内キャップに収納されている
が、ゴムで出来たシール筒はガスバリアー性が悪く軸筒
にどんなに密着をよくしてもインク中の水分が比較的早
く減量していく欠点が有り、又柔らかくて弾性に富むシ
ール筒を内キャップに自動組立機で速く大量に組み込む
には非常な困難を伴い単価の上昇の要因にもなってい
る。本考案の目的はかかる弊害を解決したキャップを提
供可能とすることにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に案出された本考案の筆記具のキャップはポリプロピレ
ン、ポリエチレン等のガスバリアー性に富む樹脂で成形
された内キャップを軸方向に移動可能にし、その内キャ
ップの開口端部を筆記具軸筒の適宜な円錐面に適宜な押
し圧力で食いつかせペン先と空気孔を密閉する事により
上記問題点を解消するものである。

【０００６】

【実施例】図１は本考案の一実施例を示したもので、以
下図面に基づき詳説する。筆記具本体はその軸筒１の後
部をインクタンク２となし前方には外周面に多数の週溝
３とその週溝３を連通させる縦溝４を有するインク保溜
体５が装着され、そのインク保溜体５の中心部に軸方向
に開通する縦孔６にはインク誘導芯７が貫装され、更に
インク誘導芯７の先にはペン芯８がインク誘導芯７に連
接してインク保溜体５の先端部に装着されている。また
軸筒１の先端の開口部には片側傾斜角度５度から２０度
の円錐面が形成された先端筒９が圧入され、その先端筒
９の内壁と保溜体５の先部に形成された溝とで空気孔１
０が形成されている。

【０００７】次にキャップ１１は開口縁近傍内面に軸筒
１と係合するための係合突起１２と中程に内キャップ１
３の係止突起１４を有し更に先端部天壁１５の中心部に
は通孔１６が開設され、キャップ１１内には内キャップ
１３が軸方向に摺動可能に装着されている。この内キャ
ップ１３はキャップ段部１７と内キャップ１３の段部１
８との間にバネ１９を付勢し内キャップ１３の開口縁部
２０を先端筒９の円錐面２１に当圧させペン芯８と空気
孔を密封している。尚内キャップ１３はキャップ１１を
軸筒から外したときキャップ１１内から飛び出さないよ
うに内キャップ１３の外周に設けられた数条の縦リブ２
２の角がキャップ１１の内面の係止突起１４に当接し飛
び出さないようになっている。ところで内キャップ１３
をキャップ１１に組み込むには内キャップ１３とキャッ
プ１１の弾性変形で内キャップ１３は係止突起１４を通
過し組み込まれ、逆にバネ１９によるキャップ１１の開
口部方向への押し圧力を受けるが、この程度の押し圧で
は通過不能で、即ち内キャップ１３は抜け止めされてい
る。

【０００８】以上の如く構成された筆記具に於て、筆記
具本体にキャップ１１を装着するとペン芯８と空気孔１
０を含む先端部が内キャップ１３の内部に入り込み内キ
ャップ１３の開口縁部２０が先端筒９の円錐面２１に当
接し密着するが、この当接力はバネ１９の押し圧力で決
まり、此の押し圧力はキャップ１１を装着する際の反発
力になるので使用感からすると２００グラム程が上限と
なり又下限としては内キャップ１３のキャップ１１内で
の軸方向の円滑な移動を保証し且つ内キャップ１３の開
口縁部２０が先端筒９の円錐面２１に当接し密着するの
に必要な最小の押し圧力は５０グラム程度は必要にな
る。また先端筒９の円錐面２１に内キャップ１３の開口
縁部２０を５０グラム程度で押し圧し密着させる場合、
先端筒９の円錐面２１の片側傾斜角度を５度程度にする
必要があり、これ以下になると内キャップ１３が先端筒
９の円錐面２１に当接し内キャップ１３の開口縁部２０
が円錐面２１に密着した後も円錐面２１の傾斜が緩いた
め開口縁部２０が密着しながら弾性変形をして先端筒９
に対して移動し、内キャップ１３内は加圧され気泡がイ
ンクタンク２内に入ってしまう。また５０グラム程度で
円錐面２１が５度以上になると開口縁部２０の密着が不
安定になり、５度以上にする場合は内キャップ１３の押
し圧力を高める必要があり、上記した上限の２００グラ
ム程度の押し圧力にすると円錐面２１は２０度程度が適
当な角度になり、それ以上であると開口縁部２０の先端
筒９への密着が不安定となり、またそれ以下であると内
キャップ１３が先端筒９の円錐面２１に当接し開口縁部
２０が円錐面２１に密着した後も円錐面２１に開口縁部
２０が密着しながら弾性変形をして先端筒９に対して移
動し、内キャップ１３内はやはり加圧され気泡がインク
タンク２内に入る不都合が生じる。以上の如く内キャッ
プ１３の押し圧力が小さい場合は先端筒９の円錐面２１
の角度も小さくし、押し圧力が大きい場合には円錐面２
１の角度も大きくする必要があるが、安定した内キャッ
プ１３の密閉を得るには円錐面２１の傾斜角度は８から
１５度で内キャップ１３の押し圧力を８０から１５０グ
ラムの範囲が好適で角度が大きくなるに従い押し圧力も
大きい値を取るのが好ましい。

【０００９】

【考案の効果】本考案の構成及び作用は以上の通りであ
り、従来の内キャップのようにその中に弾性に富むゴム
等で出来たシール筒を必要としないため、組み立てが簡
単になり安価になると共にガスバリアー性の高いポリプ
ロピレン、ポリエチレン等の樹脂で出来た内キャップで
直接密封するためインクの揮発減量がゴムに比べ非常に
少なくなり長期間に亘って良好な品質を維持する事が可
能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の筆記具の縦断面図である。

【符号の説明】

１ 軸筒 ２ インクタンク ３ 周溝 ４ 縦溝 ５ インク保溜体 ６ 縦孔 ７ インク誘導芯 ８ ペン芯 ９ 先端筒 １０ 空気孔 １１ キャップ １２ 係合突起 １３ 内キャップ １４ 係止突起 １５ 天壁 １６ 通孔 １７ キャップ段部 １８ 段部 １９ バネ ２０ 開口縁部 ２１ 円錐面

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 軸筒後部にインクを直に貯溜するタンク
   を有し、かつ軸筒前方にはインク保溜体を有したインク
   直接貯溜方式の筆記具において、キャップ内部に軸方向
   に移動可能な内キャップを配し、筆記具の空気置換孔よ
   り後方位置の円錐面に内キャップの開口端部を５０グラ
   ムから２００グラム、好ましくは８０グラムから１５０
   グラムの押し圧力で当接させ空気置換孔とペン先をシー
   ルするように設定した場合、筆記具円錐面の片側傾斜角
   度を５度から２０度、好ましくは８度から１５度の円錐
   面に設定したことを特徴とする筆記具のキャップ。