JP2545506B2 - 四サイクルエンジンの動弁装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、四サイクルエンジンの動弁装置に関す
る。

〔従来の技術〕

四サイクルエンジンには、一つのシリンダーの吸気弁
と排気弁の上端に被着したタペットの直上に各々カムシ
ャフトのカムを配置し、カムシャフトのカムの回転で、
弁を開閉するようにしたものがある。この型の動弁装置
は、通称DOHC（ダブル、オーバー、ヘッド、カム）型と
称されるものであって、動弁系のメカニカルロスが小さ
く、高性能エンジンにできることが知られている。

〔発明が解決しようとする課題〕

しかしながら、従来の四サイクルエンジンの動弁装置
においては、一つのシリンダーに対して、二本のカムシ
ャフトが必要であるので、二つのシリンダーが前後に並
ぶような場合は、計４本のカムシャフトがシリンダーヘ
ッド内に設けられることになる。このため、従来の動弁
装置には、シリンダーヘッドの前後方向の寸法が大きく
なってエンジンが大型化してしまうという問題点があ
る。また、部品点数が多くなることから、エンジンの重
量が重くなると共に製造コストが高くつくという不都合
も生じる。

本発明は、前後に並べられた二つのシリンダーを備え
た四サイクルエンジンにおいて、エンジンの高性能を保
持しつつ、安価な構成でエンジンの小型化・軽量化が図
れる四サイクルエンジンの動弁装置を提供することを目
的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明は、前記目的を達成するため、次のような構成
を有する。

すなわち、本発明は、前後に並べられた二つのシリン
ダー（１），（２）の燃焼室に開口した吸気口および排
気口を、上下に往復運動する弁（4a），（4b），（4
c），（4d）の下端部で開閉するようにした四サイクル
エンジンの動弁装置において、前シリンダー（１）を担
当する弁（4a），（4b）のうち前側に配置された弁（4
a）の上方に配設され該弁（4a）を駆動する第１のカム
シャフト（６）と、後シリンダー（２）を担当する弁
（4c），（4d）のうち後側に配置された弁（4d）の上方
に配設され該弁（4d）を駆動する第２のカムシャフト
（７）と、前記第１のカムシャフト（６）と前記第２の
カムシャフト（７）との間に配設されて、前記前シリン
ダー（１）を担当する弁（4a），（4b）のうち後側に配
置された弁（4b）と前記後シリンダー（２）を担当する
弁（4c），（4d）のうち前側に配置された弁（4c）とを
駆動する第３のカムシャフト（10）とを備え、シリンダ
ー軸方向視で前記前シリンダー（１）の中心（1a）と前
記後シリンダー（２）の中心（2a）とを結んだ中心線
（Ｃ）が前記三本のカムシャフト（６），（７），（1
0）の軸方向と略直交するように前記前シリンダー
（１）および前記後シリンダー（２）を前後に直列させ
ると共に、前記前シリンダー（１）を担当する前記後側
の弁（4b）を前記中心線（Ｃ）に対して左右一側に偏在
させて配置する一方、前記後シリンダー（２）を担当す
る前記前側の弁（4c）を前記中心線（Ｃ）に対して左右
他側に偏在させて配置し、前記第３のカムシャフト（1
0）に前記中心線（Ｃ）を挟んで左右に設けられた一対
のカム（11），（12）のうち、前記一側に位置するカム
（11）を前記前シリンダー（１）を担当する前記後側の
弁（4b）に対応させ、前記他側に位置するカム（12）を
前記後シリンダー（２）を担当する前記前側の弁（4c）
に対応させて、前記第１のカムシャフト（６）と前記第
２のカムシャフト（７）と前記第３のカムシャフト（1
0）とをチェン（13）等で連動させるようにしたことを
特徴とする四サイクルエンジンの動弁装置である。

〔作用〕

本発明によれば、前記前シリンダー（１）の後側の弁
（4b）と前記後シリンダー（２）の前側の弁（4c）とを
駆動する第３のカムシャフト（10）を備えるため、三つ
のカムシャフト（６），（７），（10）を一つのチェン
（13）等で同時に駆動すると、前シリンダー（１）およ
び後シリンダー（２）に係る全ての弁（4a），（4b），
（4c），（4d）がそれぞれ上下に往復運動して前シリン
ダー（１）および後シリンダー（２）の吸排気口を開閉
するようになる。したがって、第３のカムシャフト（1
0）が前シリンダー（１），後シリンダー（２）に兼用
されるため、エンジンの高性能を保持しつつ、従来に比
べカムシャフトを一本減らすことができる。よって、カ
ムシャフトの本数を削減した分、シリンダーヘッド
（３）の前後方向の寸法を小さくすることができるた
め、エンジンの小型化を図ることができる。また、カム
シャフトを一体削減した分だけエンジンを軽量化できる
と共に動弁装置を安価に構成することもできる。

また、本発明では、前シリンダー（１）の中心（1a）
と後シリンダー（２）の中心（2a）とを結んだ中心線
（Ｃ）が三本のカムシャフト（６），（７），（10）の
軸方向と略直交するように前シリンダー（１）および後
シリンダー（２）を前後に直列させたので、シリンダー
ヘッド（３）の前後方向の寸法と同時に、シリンダーヘ
ッド（３）の左右方向の寸法（幅寸法）も小さくでき
る。したがって、エンジンをより一層小型化できるよう
になる。

そして、前シリンダー（１）の後側の弁（4b）を中心
線（Ｃ）に対して左右一側に偏在させて配置する一方、
後シリンダー（２）の前側の弁（4c）を中心線（Ｃ）に
対して左右他側に偏在させて配置して、第３のカムシャ
フト（10）の一対のカム（11），（12）それぞれを前シ
リンダー（１）の弁（4b），後シリンダー（２）の弁
（4c）に対応させたので、シリンダーヘッド（３）の幅
寸法を小さくするために前シリンダー（１），後シリン
ダー（２）を前後に直列させても、第３のカムシャフト
（10）を前シリンダー（１），後シリンダー（２）に兼
用することができるようになる。

〔実施例〕

以下、本発明を図面に示す実施例によって説明する。

第１図は、本実施例の動弁装置を示すシリンダーヘッ
ド部の側面図である。第２図は、該シリンダーヘッド部
をシリンダー軸方向から見た平面図である。

本実施例は、第１図および第２図に示すように、前後
に並べられた二つのシリンダー1,2の燃焼室に開口した
吸気口および排気口を、上下に往復運動する傘形の弁4
a,4b,4c,4dの下端部で開閉するようにした四サイクルエ
ンジンの動弁装置である。なお、前後に並んだ二つのシ
リンダー1,2は、前後に平行に並んだ二つのクランク軸
（図示略）にそれぞれが対応したものである。

前シリンダー１および後シリンダー２それぞれには、
それらの上側にあるシリンダーヘッド３内に設けられた
前後一対の弁4a,4bおよび弁4c,4dが対応しており、これ
らの弁4a,4b,4c,4dそれぞれの上端には、タペット５が
被着してある。

また、この動弁装置は、前シリンダー１を担当する弁
4a,4bのうち前側に配置された弁4aの上方に配設され弁4
aを駆動する第１のカムシャフト６と、後シリンダー２
を担当する弁4c,4dのうち後側に配置された弁4dの上方
に配設された弁4dを駆動する第２のカムシャフト７と、
第１のカムシャフト６と第２のカムシャフト７との間に
配設されて、前シリンダー１を担当する弁4a,4bのうち
後側に配置された弁4bと後シリンダー２を担当する弁4
c,4dのうち前側に配置された弁4cとを駆動する第３のカ
ムシャフト10とを備える。

さらに、本実施例においては、第２図に示すように、
シリンダー軸方向視で前シリンダー１の中心1aと後シリ
ンダー２の中心2aとを結んだ中心線Ｃが前記三本のカム
シャフト6,7,10の軸方向と略直交するように前シリンダ
ー１および後シリンダー２を前後に直列させると共に、
前シリンダー１を担当する後側の弁4bを中心線Ｃに対し
て左右一側に偏在させて配置する一方、後シリンダー２
を担当する前側の弁4cを中心線Ｃに対して左右他側に偏
在させて配置するようにしている。

また、第３のカムシャフト10に中心線Ｃを挟んで左右
に設けられた一対のカム11,12のうち、前記一側に位置
するカム11を前シリンダー１を担当する後側の弁4bに対
応させ、前記他側に位置するカム12を後シリンダー２を
担当する前側の便4cに対応させている。すなわち、前シ
リンダー１の後側のタペット５と後シリンダー２の前側
のタペット５とを各中央に寄せて第３のカムシャフト10
の軸方向に並べるように設け、その直上に第３のカムシ
ャフト10のカム11,12を配置している。

前シリンダー１の前側のタペット５、および、後シリ
ンダー２の後側のタペット５のそれぞれの直上には、第
１のカムシャフト６のカム８、および、第２のカムシャ
フト７のカム９を配置する。そして、第１のカムシャフ
ト６と第２のカムシャフト７と第３のカムシャフト10と
を一つのチェン13等でクランク軸に連動するように連結
する。

以上のように構成された本実施例の動弁装置によれ
ば、前シリンダー１の後側の弁4bと後シリンダー２の前
側の弁4cとを駆動する第３のカムシャフト10を備えるた
め、三つのカムシャフト6,7,10を一つのチェン13等で同
時に駆動すると、カム8,9,11,12が各々回転し、各タペ
ット５がそれぞれ上下に往復運動するので、前シリンダ
ー１および後シリンダー２に係る弁4a,4b,4c,4dが前シ
リンダー１および後シリンダー２の吸排気口を開閉する
ようになる。

したがって、第３のカムシャフト10が前シリンダー1,
後シリンダー２に兼用されるため、エンジンの高性能を
保持しつつ、従来に比べてカムシャフトを一本減らすこ
とができる。よって、シリンダーヘッド３の前後方向の
寸法を小さくすることができるため、エンジンの小型化
を図ることができる。また、カムシャフトを一本削減し
た分だけ、エンジンを軽量化できると共に動弁装置を安
価に構成することもできる。

また、前記中心線Ｃが三本のカムシャフト6,7,10の軸
方向と略直交するように前シリンダー１および後シリン
ダー２を前後に直列させたので、シリンダーヘッド３の
前後方向の寸法と同時に、シリンダーヘッド３の左右方
向の寸法（幅寸法）も小さくできる。したがって、エン
ジンをさらに小型化することができるようになる。

そして、前シリンダー１の弁4bを中心線Ｃに対して左
右一側に偏在させて配置する一方、後シリンダー２の弁
4cを中心線Ｃに対して左右他側に偏在させて配置して、
第３のカムシャフト10の一対のカム11,12をそれぞれ弁4
b,弁4cに対応させたので、前シリンダー１および後シリ
ンダー２を前後に直列させてシリンダーヘッド３の幅寸
法を小さくしながらも、第３のカムシャフト10を前シリ
ンダー1,後シリンダー２に兼用させることが可能とな
る。

〔発明の効果〕

以上の説明の通り、本発明によれば、前後に並べられ
た二つのシリンダーを備えた四サイクルエンジンにおい
て、カムシャフトの本数が削減されるので、エンジンの
高性能を保持しつつ、安価な構成でエンジンの小型化・
軽量化を図ることができる。また、シリンダーヘッドの
左右方向の寸法を小さくすることもできるため、エンジ
ンをより一層小型化することができる。

【図面の簡単な説明】

図は本発明の一実施例を示し、第１図は動弁装置を示す
シリンダーヘッド部の側面図、第２図は該シリンダーヘ
ッド部をシリンダー軸方向から見た平面図である。 １……前シリンダー、1a……前シリンダーの中心、２…
…後シリンダー、2a……後シリンダーの中心、4a,4b,4
c,4d……弁、５……タペット、６……第１のカムシャフ
ト、７……第２のカムシャフト、８……カム、９……カ
ム、10……第３のカムシャフト、11……カム、12……カ
ム、13……チェン、Ｃ……中心線。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】前後に並べられた二つのシリンダーの燃焼
   室に開口した吸気口および排気口を、上下に往復運動す
   る弁の下端部で開閉するようにした四サイクルエンジン
   の動弁装置において、前シリンダーを担当する弁のうち
   前側に配置された弁の上方に配設され該弁を駆動する第
   １のカムシャフトと、後シリンダーを担当する弁のうち
   後側に配置された弁の上方に配設され該弁を駆動する第
   ２のカムシャフトと、前記第１のカムシャフトと前記第
   ２のカムシャフトとの間に配設されて、前記前シリンダ
   ーを担当する弁のうち後側に配置された弁と前記後シリ
   ンダーを担当する弁のうち前側に配置された弁とを駆動
   する第３のカムシャフトとを備え、シリンダー軸方向視
   で前記前シリンダーの中心と前記後シリンダーの中心と
   を結んだ中心線が前記三本のカムシャフトの軸方向と略
   直交するように前記前シリンダーおよび前記後シリンダ
   ーを前後に直列させると共に、前記前シリンダーを担当
   する前記後側の弁を前記中心線に対して左右一側に偏在
   させて配置する一方、前記後シリンダーを担当する前記
   前側の弁を前記中心線に対して左右他側に偏在させて配
   置し、前記第３のカムシャフトに前記中心線を挟んで左
   右に設けられた一対のカムのうち、前記一側に位置する
   カムを前記前シリンダーを担当する前記後側の弁に対応
   させ、前記他側に位置するカムを前記後シリンダーを担
   当する前記前側の弁に対応させて、前記第１のカムシャ
   フトと前記第２のカムシャフトと前記第３のカムシャフ
   トとをチェン等で連動させるようにしたことを特徴とす
   る四サイクルエンジンの動弁装置。