JP2543885B2 - 車両のスリツプ制御装置 - Google Patents

車両のスリツプ制御装置

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JP2543885B2
JP2543885B2 JP62102611A JP10261187A JP2543885B2 JP 2543885 B2 JP2543885 B2 JP 2543885B2 JP 62102611 A JP62102611 A JP 62102611A JP 10261187 A JP10261187 A JP 10261187A JP 2543885 B2 JP2543885 B2 JP 2543885B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、車両の走行時における車輪のスリップ状態
を検出して、それを抑制する車両のスリップ制御装置に
関する。
(従来の技術) 車両の走行時において、車輪、特に駆動輪が路面に対
してスリップを生じる場合には、グリップ走行が行われ
ず、適正な走行特性が得られなくなってしまうが、この
ような駆動輪の路面に対するスリップは、一般に、駆動
輪に作用するトルクが過大となるとき生じると考えられ
る。斯かる問題に対して、例えば、特開昭58−16948号
公報、あるいは、特開昭60−56662号公報にも記載され
ている如く、駆動輪の路面に対するスリップが生じた場
合には、自動的に、駆動輪にブレーキ装置による制動力
を与える、あるいは、エンジンの吸気通路内に配された
スロットル弁の開度を調整してエンジンの出力を低下さ
せる、等の方法によって駆動輪に作用するトルクを低下
させ、それにより、駆動輪の路面に対するスリップを抑
制するようになすスリップ制御装置が提案されている。
このようなスリップ制御装置により駆動輪の路面に対
するスリップが抑制されるにあたっては、先ず、駆動輪
が路面に対してスリップを生じている状態が検出されな
ければならないが、駆動輪が路面に対してスリップを生
じている状態は、駆動輪の回転速度と従動輪の回転速度
とが比較されることにより検出される。即ち、路面に対
するスリップを生じる頻度が少ない従動輪の回転速度が
基準とされ、駆動輪の回転速度が従動輪の回転速度より
高いとき、駆動輪がスリップ状態にあると判断される。
(発明が解決しようとする問題点) しかしながら、駆動輪の路面に対するスリップが、駆
動輪の回転速度と従動輪の回転速度とが比較されること
により検出されるもとでは、例えば、前輪が駆動輪とさ
れ後輪が従動輪とされる前輪駆動車の旋回走行時等にお
いてタックイン現象が発生し、後輪、即ち、従動輪が横
すべりを生じるような場合に、前輪、即ち、駆動輪が路
面に対するスリップを生じていない場合であっても、従
動輪の回転速度が低下することによって駆動輪の回転速
度が相対的に高くなってしまい、それにより、実際には
駆動輪が路面に対してスリップを生じていないにもかか
わらず、駆動輪がスリップ状態にあるという誤検出がな
され、その結果、駆動輪に対する不所望な制御が行われ
てしまうという不都合が生じる。斯かる点に鑑み、本発
明は、車両における従動輪の回転速度と駆動輪の回転速
度との比較に基づいて駆動輪の路面に対するスリップが
検出され、しかも、車両の旋回走行時における従動輪の
横すべり等に起因して従動輪の回転速度が低下すること
により、駆動輪の回転速度が駆動輪の回転速度より高く
なる場合等において、駆動輪の路面に対するスリップに
ついての誤検出に基づいての駆動輪に対する不所望な制
御が行われる事態を、確実に回避することができるよう
にされた車両のスリップ制御装置を提供することを目的
とする。
(問題点を解決するための手段) 上述の目的を達成すべく、本発明に係る車両のスリッ
プ制御装置は、車両における駆動輪の回転速度を検出す
る駆動輪速度検出手段と、車両における従動輪の回転速
度を検出する従動輪速度検出手段と、駆動輪に作用する
トルクを低下させる駆動トルク低下手段に関連して配さ
れ、車両の走行状態に応じて駆動トルク低下手段を作動
させる第1の状態と駆動トルク低下手段の作動に関与し
ない第2の状態とを選択的にとる駆動トルク制御手段
と、駆動トルク制御手段に対する制御を行う動作制御手
段とを備えて構成され、動作制御手段が、駆動輪速度検
出手段により検出された駆動輪の回転速度が従動輪速度
検出手段により検出された従動輪の回転速度より高く、
かつ、検出された従動輪の回転速度が所定値以上の変化
率をもって低下する場合でないとき、駆動トルク制御手
段に第1の状態をとらせ、検出された駆動輪の回転速度
が検出された従動輪の回転速度より高いが、検出された
従動輪の回転速度が所定値以上の変化率をもって低下す
る場合には、駆動トルク制御手段に第2の状態をとらせ
るものとされる。
(作 用) 上述の如くの構成とされる本発明に係る車両のスリッ
プ制御装置においては、車両に走行時において、駆動輪
速度検出手段及び従動輪速度検出手段からの検出出力に
基づいて駆動輪の回転速度と従動輪の回転速度とを比較
が行われる。そして、駆動輪の回転速度が従動輪の回転
速度に比して高く、かつ、従動輪の回転速度が所定値以
上の変化率をもって低下する場合でないときには、駆動
輪が路面に対してスリップを生じていると判断されて、
動作制御手段により駆動トルク制御手段が第1の状態を
とるものとされ、それによって、駆動トルク低下手段が
作動せしめられて駆動輪に作用するトルクが低下せしめ
られる。また、駆動輪の回転速度が従動輪の回転速度に
比して高いが、従動輪の回転速度が所定値以上の変化率
をもって低下している場合には、駆動輪が路面に対して
スリップを生じている状態ではないと判断され、動作制
御手段により駆動トルク制御手段が第1の状態をとるも
のとされ、その結果、駆動輪に作用するトルクが低下せ
しめられることがない。
このようにされることにより、車両の旋回走行時にお
いて従動輪が横すべりを生じることに起因して従動輪の
回転速度が低下し、それにより、駆動輪の回転速度が従
動輪の回転速度より高くなる場合の如くの、実際には駆
動輪が路面に対してスリップを生じていない状態におい
て、駆動輪の路面に対するスリップについての誤検出が
なされ、それにより駆動輪に対する不所望な制御が行わ
れる事態が回避され、実際に駆動輪が路面に対してスリ
ップを生じた場合にのみ、駆動輪に対するスリップ制御
が適正に行われることになる。
(実施例) 以下、本発明の実施例について図面を参照して説明す
る。
第1図は、本発明に係る車両のスリップ制御装置の一
例を、それが適用された車両のブレーキ系統とともに概
略的に示す。なお、この例においては、駆動輪に対する
スリップ制御装置のみならず、ブレーキ操作に伴う駆動
輪及び従動のロックを防止する、アンチロック制御装置
も設けられている。
第1図において、車両の左前輪2,右前輪3,左後輪4及
び右後輪5には、夫々、ディスクブレーキ6,7,8及び9
が装備されている。そして、車両の前方側にエンジン10
が横置きに搭載されており、エンジン10の出力は、変速
機12及び差動装置14等を介して駆動軸16及び17に伝達さ
れ、さらに、駆動軸16及び17から、夫々、左前輪2及び
右前輪3に伝達される。即ち、この車両は、左前輪2及
び右前輪3が駆動輪とされ、左後輪4及び右後輪5が従
動輪とされた前輪駆動車とされているのである。なお、
エンジン10には、その吸気通路18内に配されたスロット
ル弁19の開度を調整するスロットルアクチュエータ20が
配されており、スロットルアクチュエータ20は、例え
ば、後述される制御ユニット100からの信号Saに応じ
て、スロットル弁19の開度を低減させるべく作動し、そ
れにより、エンジン10の出力を低下させる役目を果た
す。即ち、この例においては、ディスクブレーキ6及び
7、及び、スロットル弁19によって駆動トルク低下手段
が構成されているのである。
ディスクブレーキ6,7,8及び9の夫々におけるホイー
ルシリンダに供給されるブレーキ液圧の発生源として、
マスターシリンダ22が配されており、このマスターシリ
ンダ22は、ブレーキペダル23の踏込操作に応じてブレー
キ液を吐出する吐出口22a及び22bを有しており、これら
吐出口22a及び22bには、夫々、圧力通路24及び25の一端
部が連結されている。圧力通路24の他端部側には、分岐
通路24a及び24bが形成されており、また、圧力通路25の
他端部側には分岐通路25a及び25bが形成されている。そ
して、分岐通路24a及び24bは、夫々、ディスクブレーキ
7及び8のホイールシリンダに連結されており、分岐通
路25a及び25bは、夫々、ディスクブレーキ6及び9のホ
イールシリンダに連結されている。
分岐通路24aには、その上流側から下流側に沿って、
アンチロック制御用液圧制御弁26a及びスリップ制御用
液圧制御弁28Aが介在せしめられており、分岐通路24bに
は、その上流側から下流側に沿って、プロポーショニン
グ弁30a及びアンチロック制御用液圧制御弁26bが介在せ
しめられている。また、分岐通路25bには、その上流側
から下流側に沿って、プロポーショニング弁30b及びア
ンチロック制御用液圧制御弁26cが介在せしめられてお
り、分岐通路25aには、その上流側から下流側に沿っ
て、アンチロック制御用液圧制御弁26d及びスリップ制
御用液圧制御弁28Bが介在せしめられている。
プロポーショニング弁30a及び30bは、ディスクブレー
キ8及び9のホイールシリンダに供給されるブレーキ液
の圧力を、ディスクブレーキ6及び7のホイールシリン
ダに供給されるブレーキ液の圧力に比して所定の割合で
減少させ、左前輪2及び右前輪3に作用する制動力を、
左後輪4及び右後輪5に作用する制動力に比して大とな
す役割を果たす。
アンチロック制御用液圧制御弁26a〜26dは、第1図に
おいて二点鎖線で囲まれて示される圧力回路32に含まれ
ている。圧力回路32においては、ブレーキ液が蓄えられ
たリザーバ34が、連通路36を介してアキュムレータ38に
連通せしめられている。連通路36には、モータ40によっ
て駆動されるポンプ42が介装されており、連通路36にお
けるポンプ42を挾む2箇所には、逆止弁43が介在せしめ
られている。また、アキュムレータ38内のブレーキ液圧
に応じてオン・オフ制御され、それによりモータ40の作
動を制御する圧力スイッチ44が配されており、連通路36
における上流側及び下流側における所定位置には、リリ
ーフ弁46が介装されたリターン通路47の両端部が連結さ
れている。
リリーフ弁46は、アキュムレータ38内に蓄えられたブ
レーキ液の圧力が所定値以上となるときリターン通路47
を開通させて、ポンプ42から圧送されるブレーキ液を連
通路36とリターン通路47との先で循環させ、アキュムレ
ータ38内のブレーキ液圧を一定に維持すべく作動する。
また、圧力スイッチ44は、アキュムレータ38内に蓄えら
れたブレーキ液の圧力が所定値以上となるときオフ状態
とされ、モータ40を停止させてポンプ42の作動を停止さ
せ、また、アキュムレータ38内に蓄えられたブレーキ液
の圧力が所定値未満となるときオン状態とされ、モータ
40を動作させてポンプ42を作動させる。このようにし
て、常に一定のブレーキ液圧が蓄えられるアキュムレー
タ38には、圧力通路48の一端部が連結されており、圧力
通路48の他端部は、アンチロック制御用液圧制御弁26a
〜26dを介して連通路36に連結されている。
アンチロック制御用液圧制御弁26a〜26dは、ブレーキ
ペダル23の踏込操作がなされるとき、圧力通路48を通じ
て供給されるアキュムレータ38内に蓄えられた所定圧の
ブレーキ液を、分岐通路24a,24b,25a及び25bを通じてデ
ィスクブレーキ6〜9の各ホイールシリンダに夫々供給
し、左前輪2,右前輪3,左後輪4及び右後輪5(以下、各
車輪という)に対する制動力を高めるとともに、これら
各車輪がロックする兆候が検知された場合には、所定圧
のブレーキ液を圧力通路48を通じてリザーバ34に戻し、
各車輪に対する制動力を低下させる。このようにして、
各車輪の路面に対するスリップ率が常に一定の範囲内の
値をとるものとなるように、各車輪に対する制動力が調
整される。
スリップ制御用液圧制御弁28A及び28Bは、夫々同様の
構成を有するものとされ、例えば、第2図にスリップ制
御用液圧制御弁28Aがとりあげられて示される如くのも
のとされる。
第2図に示されるスリップ制御用液圧制御弁28Aは、
ケーシング50及びその中に摺動可能に挿入されたピスト
ン51を有しており、ケーシング50の内部は、ピストン51
によって通液室52と制御液室53とに仕切られている。ま
た、ケーシング50には、通液室52に開口する流入口54及
び流出口55、及び、制御液室53に開口する流入口56が形
成されている。通液室52内には、ケーシング50における
流入口54及び流出口55が形成された壁面に端面部が取り
付けられたガイド58、及び、ピストン51に端面部が取り
付けられたガイド59が配置されており、ガイド58及び59
の間には、ピストン51を、ガイド59がガイド58から離隔
する方向に付勢するコイルばね60が縮装されている。ガ
イド58及び59における互いに対向する面には透孔が形成
されており、この透孔には、逆止弁62が、ピストン51の
摺動方向に沿って移動可能に挿通されている。逆止弁62
の一端部には球面62aが形成されており、球面62aとガイ
ド58との間には、球面62aを流入口54を閉塞する方向に
付勢するコイルばね64が縮装されている。また、逆止弁
62の他端部にはストッパ62bが形成されており、ストッ
パ62bは、ガイド59がガイド58から最も離隔した位置を
とるとき、球面62aと流入口54との間に隙間が生じるよ
うに、逆止弁62の移動量を規制する。
従って、スリップ制御用液圧制御弁28Aにおいては、
制御液室53内に流入口56を通じて液圧が供給されると
き、ピストン51がコイルばね60の付勢力に抗して一点鎖
線で示される如くに変位し、それにより、逆止弁62の球
面62aがコイルばね64の付勢力によって流入口54を閉塞
するとともに、通液室52内のブレーキ液が、流出口55か
ら分岐通路24aを通じてディスクブレーキ7のホイール
シリンダに供給される。また、制御液室53内に液圧が供
給されないときには、ピストン510がコイルばね60の付
勢力によって実線で示される如くの位置をとり、それに
より、逆止弁62の球面62aが流入口54を開通させ、流入
口54を通じて通液室52内に導入されたブレーキ液が、そ
のまま流出口55から分岐24aを通じてディスクブレーキ
7のホイールシリンダに供給される。
斯かるスリップ制御用液圧制御弁28A及び28Bは、第1
図において二点鎖線で囲まれて示される圧力回路70に含
まれている。この圧力回路70においては、スリップ制御
用液圧制御弁28Aの制御液室53に開口する流入口56に、
連通路72の一端部が連結されており、連通路72の他端部
は、圧旅通路48に両端部が連結されている圧力通路74の
中間部に形成された分岐通路74aに連結されている。ま
た、スリップ制御用液圧制御弁28Bの制御液室53に開口
する流入口56には、連通路73の一端部が連結されてお
り、連通路73の他端部は、分岐通路74aとともに圧力通
路74の中間部に形成された分岐通路74bに連結されてい
る。
分岐通路74aにおける連通路72により上流側には、常
閉の電磁開閉弁76が配されており、分岐通路74aにおけ
る連通路72より下流側には、常閉の電磁開閉弁77が配さ
れている。また、分岐通路74bにおける連通路73より上
流側には、常閉の電磁開閉弁78が配されており、分岐通
路74bにおける連通路73より下流側には、常開の電磁開
閉弁79が配されている。電磁開閉弁76及び78は、各々の
ソレノイドに制御ユニット100からの信号Sb及びScが夫
々供給されるとき分岐通路74a及び74bを開通させ、信号
Sb及びScが供給されないとき分岐通路74a及び74bを閉塞
させる。また、電磁開閉弁77及び79は、各々のソレノイ
ドに制御ユニット100からの信号Sd及びSeが供給される
とき分岐通路74a及び74bを閉塞させ、信号Sd及びSeが供
給されないとき分岐通路74a及び74bを開通させる。
なお、分岐通路74aにおける電磁開閉弁76及び77の夫
々の上流側となる2箇所には、アキュムレータ38から圧
力通路48及び74を通じて分岐通路74aに供給されるブレ
ーキ液の流量を調整するオリフィス80が配されており、
また、分岐通路74bにおける電磁開閉弁78及び79の夫々
の上流側となる2箇所には、アキュムレータ38からの圧
力通路48及び74を通じて分岐通路74bに供給されるブレ
ーキ液の流量を調整するオリフィス82が配されている。
制御ユニット100には、各車輪、即ち、車両の左前輪
2,右前輪3,左後輪4及び右後輪5の各々の回転速度を夫
々検出する車輪速度センサ101,102,103及び104からの、
各車輪の回転速度に応じた検出信号Sf,Sg,Sh及びSi,車
速センサ106からの車速に応じた検出信号Sj,及び、アク
セルペダル112に関連して配されたアクセルペダルセン
サ114からの、アクセルペダル112の操作量に応じた検出
信号Sl等が供給される。そして、制御ユニット100は、
これらの検出信号Sf,Sg,Sh,Si,Sj,及びSlに基づいて車
両の走行状態を検知し、検知された車両の走行状態に応
じて、スロットルアクチュエータ20,スリップ制御用液
圧制御弁28A及び28B、及び、その他に対する制御を行
う。
斯かるもとでの車両の走行時において、制御ユニット
100は、車輪速度センサ101もしくは102からの検出信号S
fもしくはSgがあらわす、駆動輪である左前輪2もしく
は右前輪3の回転速度(駆動側車輪速度)Vdと、車輪速
度センサ103もしくは104からの検出信号ShもしくはSiが
あらわす、従動輪である左後輪4もしくは右後輪5の回
転速度(従動側車輪速度)Vlとに基づいて、駆動輪の路
面に対するスリップの程度を示すスリップ率Sを、以下
の式に基づいて算出する。
S=(Vd−Vl)/Vd そして、制御ユニット100は、原則として、算出され
たスリップ率Sが所定の値S1以上であるときには、駆動
輪の路面に対するスリップが生じていると判断する。し
かしながら、例えば、車両が旋回走行時においてタック
イン現象を生じ、従動輪である左後輪4もしくは右後輪
5が横すべりを生じる場合等においては、従動側車輪速
度Vlが低下し、それにより、実際には駆動輪の路面に対
するスリップが生じていないにもかかわらず、上述の如
くにして算出されるスリップ率Sが値S1以上の値をとる
ことになる虞がある。
そこで、制御ユニット100は、さらに、従動側車輪速
度Vlを微分し、得られる微分値のうち負の値をとるもの
に基づいて、従動輪の減速度−ΔVlを検出し、検出され
た従動輪の減速度−ΔVlの絶対値|ΔVl|が所定の値α
以上である場合には、従動輪に横すべりが生じている状
態と判断する。そして、制御ユニット100は、従動輪の
減速度−ΔVlの絶対値|ΔVl|が値α以上であって、従
動輪に横すべりが生じている状態であるとの判断がなさ
れた場合には、たとえ、上述の如くにして算出されたス
リップ率Sが値S1以上であっても、従動輪の横すべりに
よる従動側車輪速度Vlの低下が生じ、それによって駆動
側車輪速度Vdが従動側車輪速度Vlより高くなっている状
態であって、実際に駆動輪の路面に対するスリップが生
じている状態ではないと判断する。
このようにしてスリップ率Sの算出及び従動輪の減速
度−ΔVlの検出を行い、それらに基づく判断を行う制御
ユニット100は、算出されたスリップ率Sが値S1以上で
あり、かつ、従動輪の減速度−ΔVlの絶対値|ΔVl|が
値α以上でないとき、駆動輪が路面に対するスリップを
生じているとして、電磁開閉弁76〜79の各々のソレノイ
ドに、夫々、信号Sb〜Seを供給する。
それにより、電磁開閉弁76及び78が分岐通路74a及び7
4bを開通させる弁配置をとるとともに、電磁開閉弁77及
び79が分岐通路74a及び74bを閉塞する弁配置をとるもの
となる。そして、アキュムレータ38から、圧力通路48及
び74、及び、分岐通路74a及び74bを通じて流れるブレー
キ液の圧力が、連通路72及び73を通じてスリップ制御用
液圧制御弁28A及び28Bの夫々の制御液室53に供給され
る。それにより、スリップ制御用液圧制御弁28Aのピス
トン51が、第2図において一点鎖線で示される如くに変
位せしめられるとともに、スリップ制御用液圧制御弁28
Bのピストン51も同様に変位せしめられ、スリップ制御
用液圧制御弁28A及び28Bの夫々における通液室52内のブ
レーキ液が、流出口55から分岐通路24a及び25aを通じて
ディスクブレーキ7及び6のホイールシリンダに圧送さ
れ、駆動輪である左前輪2及び右前輪3に対する制動が
行われる。その結果、駆動輪の路面に対するスリップが
抑制されることになる。
また、制御ユニット100は、算出されたスリップ率S
が値S1以上であり、かつ、従動輪の減速度−ΔVlの絶対
値|ΔVl|が値α以上でないときであって、特に、スリ
ップ率Sが値S1より大なる所定の値S2以上である場合に
は、電磁開閉弁76〜79の各々のソレノイドに、夫々、信
号Sb〜Seを供給するに加えて、スロットルアクチュエー
タ20に信号Saを供給する。斯かる場合には、上述の如く
にして駆動輪である左前輪2及び右前輪3に対する制動
が行われるとともに、エンジン10の吸気通路18内に配さ
れたスロットル弁19の開度が低減されてエンジン10の出
力が低下せしめられ、駆動輪の路面に対するスリップが
さらに効果的に抑制される。
このようにして駆動輪の路面に対するスリップが抑制
されることにより、駆動輪のスリップ率Sが値S1未満と
なると、制御ユニット100は、電磁開閉弁76〜79の各々
のソレノイドに対する信号Sb〜Seの供給、及び、さらに
は、スロットルアクチュエータ20に対する信号Saの供給
を停止する。それにより、電磁開閉弁76及び78が分岐通
路74a及び74bを閉塞する弁配置をとるとともに、電磁開
閉弁77及び79が分岐通路74a及び74aを開通させる弁配置
をとるものとなる。そして、アキュムレータ38からスリ
ップ制御用液圧制御弁28A及び28Bの夫々の制御液室53に
対するブレーキ液圧の供給が停止され、スリップ制御用
液圧制御弁28Aのピストン51が第2図において実線で示
される如くの位置をとるものとなるとともに、スリップ
制御用液圧制御弁28Bのピストン51も同様な位置をとる
ものとなる。そのため、スリップ制御用液圧制御弁28A
の制御液室53内のブレーキ液が、連通路72,分岐通路74
a,圧力通路74及び48を通じてリザーバ34内に戻され、ま
た、スリップ制御用液圧制御弁28Bの制御液室53内のブ
レーキ液が、連通路73,分岐通路74b,圧力通路74及び48
を通じてリザーバ34内に戻されて、左前輪2及び右前輪
3に作用する制動力が解除される。また、スロットル弁
19が、アクセルペダルセンサ114からの検出信号Slがあ
らわすアクセルペダル112の踏込量に対応した開度に戻
される。
一方、算出されたスリップ率Sが値S1以上であるが、
従動輪の減速度−ΔVlの絶対値|ΔVl|が値α以上であ
るときには、制御ユニット100は、従動輪の横すべりに
伴う従動側車輪速度Vlの低下が生じているとして、駆動
輪の路面に対すスリップが生じている状態とは認識せ
ず、電磁開閉弁76〜79の各々のソレノイドに対する信号
Sb〜Seの供給を行わず、また、スロットルアクチュエー
タ20に対する信号Saの供給も行わない。それにより、車
両の旋回走行時等において左前輪2及び右前輪3につい
ての駆動トルクが不所望に低下せしめられてしまう事態
が回避される。
上述の如くにして行われる、左前輪2及び右前輪3に
対するスリップ制御は、主として、制御ユニット100に
内蔵されたマイクロコンピュータの動作に基づいて行わ
れるが、斯かるマイクロコンピュータが実行するプログ
ラムの一例を、第3図のフローチャートを参照して説明
する。
このプログラムは、例えば、エンジンが作動せしめら
れた時点でスタートし、プロセス120において検出信号S
f,Sg,Sh,Si,Sj,及びSlを読み込む。そして、プロセス12
2において、車輪速度センサ101もしくは102からの検出
信号SfもしくはSgがあらわす駆動側車輪速度Vdと、車輪
速度センサ103もしくは104からの検出信号ShもしくはSi
があらわす従動側車輪速度Vlとに基づいて、駆動輪につ
いてのスリップ率Sを算出し、続くディシジョン124に
おいて、算出されたスリップ率Sが所定値S1以上である
か否かを判断する。
斯かる判断の結果、スリップ率Sが値S1未満であると
判断された場合には、駆動輪が路面に対するスリップを
生じていないとして、プロセス120に戻る。一方、ディ
シジョン124において、スリップ率Sが値S1以上である
と判断された場合には、続くディシジョン130におい
て、検出信号ShもしくはSiがあらわす従動側車輪速度Vl
を微分し、得られる微分値のうち負の値をとるものに基
づいて、従動輪の減速度−ΔVlを検出し、検出された従
動輪の減速度−ΔVlの絶対値|ΔVl|が値α以上である
か否かを判断する。そして、絶対値|ΔVl|が値α以上
でないときには、駆動輪の路面に対するスリップが生じ
ているとして、ディシジョン128に進み、絶対値|ΔVl|
が値α以上であるときには、駆動輪の路面に対するスリ
ップは生じていないとして、プロセス136に進む。
ディシジョン128においては、プロセス122において算
出されたスリップ率Sが、値S1よりさらに大なる値S2
上であるか否かを判断する。斯かる判断の結果、スリッ
プ率Sが値S2未満であると判断された場合には、駆動輪
の路面に対するスリップの程度が比較的小であるとし、
プロセス132において、電磁開閉弁76〜79の各々のソレ
ノイドに、夫々、信号Sb〜Seを供給してディスクブレー
キ6及び7を作動させ、プロセス120に戻る。それによ
り、左前輪2及び右前輪3に対する制動が行われる、第
1のスリップ制御態様がとられる。
一方、ディシジョン128において、スリップ率Sが値S
2以上であると判断された場合には、駆動輪の路面に対
するスリップの程度が比較的大であるとし、プロセス13
4において、電磁開閉弁76〜79の各々のソレノイドに、
夫々、制御信号Sb〜Seを供給してディスクブレーキ6及
び7を作動させるとともに、スロットルアクチュエータ
20に信号Saを供給してスロットル弁19の開度を低減さ
せ、プロセス120に戻る。それにより、左前輪2及び右
前輪3に対する制動が行われるに加えて、エンジン10の
出力が低下せしめられる、第2のスリップ制御態様がと
られる。
また、ディシジョン130において絶対値|ΔVl|が値α
以上であると判断されたとき進むプロセス136において
は、電磁開閉弁76〜79の各々のソレノイドに対する信号
Sb〜Seの供給を停止し、さらに、スロットルアクチュエ
ータ20に対する信号Saの供給も停止して、スリップ制御
を停止し、プロセス120に戻る。
なお、上述の例においては、駆動輪の路面に対するス
リップを抑制するにあたり、ディスクブレーキ6及び7
による左前輪2及び右前輪3に対する制動が行われるよ
うにされ、あるいは、ディスクブレーキ6及び7による
左前輪2及び右前輪3に対する制動に加え、スロットル
弁19の開度を低減させてエンジン10の出力の低下を図る
ようにされているが、これとは異なって、駆動輪の路面
に対するスリップを抑制するにあたり、ディスクブレー
キ6及び7による左前輪2及び右前輪3に対する制動が
行われることなく、スロットル弁19の開度を低減させて
エンジン10の出力の低下を図るようにされてもよく、さ
らには、クラッチの接続状態を調整し、あるいは、変速
比を変化させて左前輪2及び右前輪3に作用するトルク
の低下を図るようにされてもよい。
(発明の効果) 以上の説明から明らかな如く、本発明に係る車両のス
リップ制御装置によれば、車両の走行時において、駆動
輪速度検出手段及び従動輪速度検出手段により夫々検出
される駆動輪の回転速度と従動輪の回転速度との比較が
行われて、検出された駆動輪の回転速度が検出された従
動輪の回転速度より高く、かつ、検出された従動輪の回
転速度が所定値以上の変化率をもって低下する場合でな
いときのみ、駆動輪に作用するトルクが低下せしめら
れ、検出された駆動輪の回転速度が検出された従動輪の
回転速度より高いが、検出された従動輪の回転速度が所
定値以上の変化率をもって低下する場合には、駆動輪に
作用するトルクが低下しないようにされるので、旋回走
行時における従動輪の横すべりに伴う従動輪の回転速度
の低下の結果、駆動輪の回転速度が従動輪の回転速度よ
り高くなる場合の如くの、実際には駆動輪の路面に対す
るスリップが生じていない状態において、駆動輪のスリ
ップについての誤検出がなされ、それにより、駆動輪に
対する不所望な制御がなされる事態を確実に回避するこ
とができる。従って、実際に駆動輪の路面に対するスリ
ップが生じた場合にのみ、駆動輪に対するスリップ制御
を適正に行うことができることになる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る車両のスリップ制御装置の一例
を、それが適用された車両のブレーキ系統とともに示す
概略構成図、第2図は第1図に示される例におけるスリ
ップ制御用液圧制御弁の構成の説明に供される断面図、
第3図は第1図に示される例に用いられる制御ユニット
に内蔵されたマイクロコンピュータが実行するプログラ
ムの一例を示すフローチャートである。 図中、6〜9はディスクブレーキ、19はスロットル弁、
20はスロットルアクチュエータ、22はマスターシリン
ダ、38はアキュムレータ、28A及び28Bはスリップ制御用
液圧制御弁、76〜79は電磁開閉弁、100は制御ユニッ
ト、101〜104は車輪速度センサである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車両における駆動輪の回転速度を検出する
    駆動輪速度検出手段と、上記車両における従動輪の回転
    速度を検出する従動輪速度検出手段と、上記駆動輪に作
    用するトルクを低下させる駆動トルク低下手段に関連し
    て配され、上記車両の走行状態に応じて上記駆動トルク
    低下手段を作動させる第1の状態と上記駆動トルク低下
    手段の作動に関与しない第2の状態とを選択的にとる駆
    動トルク制御手段と、上記駆動輪速度検出手段により検
    出された駆動輪の回転速度が上記従動輪速度検出手段に
    より検出された従動輪の回転速度より高く、かつ、上記
    検出された従動輪の回転速度が所定値以上の変化率をも
    って低下する場合でないとき、上記駆動トルク制御手段
    に上記第1の状態をとらせ、上記検出された駆動輪の回
    転速度が上記検出された従動輪の回転速度より高いが、
    上記検出された従動輪の回転速度が所定値以上の変化率
    をもって低下する場合には、上記駆動トルク制御手段に
    上記第2の状態をとらせる動作制御手段と、を備えて構
    成された車両のスリップ制御装置。
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