JP2540905C - - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
この発明は、硬質材料基体に対する硬質被覆層の付着性にすぐれ、連続切削は
勿論のこと、特に断続切削に用いた場合にも、硬質被覆層に剥離の発生がなく、
硬質被覆層のもつすぐれた耐摩耗性と相俟って、著しくすぐれた切削性能を長期
に亘って発揮する表面被覆硬質材料製切削工具に関するものである。 〔従来の技術〕 従来、特開昭62-56565号公報に記載されるように、スローアウェイチップやエ
ンドミルなどの切削工具として、 炭化タングステン(以下WCで示す)基超硬合金や、炭窒化チタン(以下Ti
CNで示す)基サーメット、さらに高速度鋼で構成された硬質材料を基体とし、
この基体の表面に、耐摩耗性を向上させる目的で、 TiとAlの複合炭化物、複合炭窒化物、および複合窒化物{以下、それぞれ
(Ti,Al)C、(Ti,Al)CN、(Ti,Al)Nで示し、かつこれら
全体を(Ti,Al)C・Nで示す}のうちの1種の単層または2種以上の複層 からなる平均層厚:0.5〜5μmの硬質被覆層を形成してなる表面被覆硬質材料製
切削工具が知られている。 〔発明が解決しようとする課題〕 しかし、上記の従来表面被覆硬質材料製切削工具においては、硬質被覆層の硬
質材料基体に対する付着強度が十分でないために、これを例えばフライス切削な
どに苛酷な切削条件下で用いた場合に、硬質被覆層に剥離が生じ、比較的短時間
で使用寿命に至るのが現状である。 〔課題を解決するための手段〕 そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来表面被覆硬質材料
製切削工具に着目し、硬質被覆層の硬質材料基体表面に対する付着強度を向上せ
しめるべく研究を行なった結果、硬質被覆層と硬質材料基体との間に、 炭窒化チタン層および/または窒化チタン層(以下、それぞれTiCN層およ
びTiN層で示し、かつこれら全体をTiC・N層で示す)を介在させると、前
記TiC・N層は、硬質被覆層および硬質材料基体のいずれに対しても強固な付
着強度を示すことから、硬質被覆層は硬質材料基体に対して強固に付着するよう
になり、苛酷な条件での切削でも硬質被覆層の剥離が著しく抑制され、硬質被覆
層のもつすぐれた耐摩耗性と相俟って、すぐれた切削性能を長期に亘って発揮す
るようになるという知見を得たのである。 この発明は、上記知見にもとづいてなされたものであって、WC基超硬合金、
TiCN基サーメット、および高速度鋼のうちのいずれかで構成された硬質材料
基体の表面に、 TiCN層および/またはTiN層からなる平均層厚:0.5〜10μmの付着強化
層を介して、 (Ti,Zr)C・Nのうちの1種の単層または2種以上の複層からなる平均
層厚:0.5〜5μmの硬質被覆層を形成してなる表面被覆硬質材料製切削工具に特
徴を有するものである。 なお、この発明の切削工具において、付着強化層は、その平均層厚が0.5μm未
満では、所望の付着強度を確保することができないので、0.5μm以上にする必要
があるが、それも平均層厚で10μmまでで十分であり、これ以上の厚さは必要が
な いことから、経済性も考慮して0.5〜10μmと定めたものであり、また硬質被覆層
の平均層厚を0.5〜5μmと定めたのは、その平均層厚が0.5μm未満では所望のす
ぐれた耐摩耗性が得られず、一方その平均層厚が5μmを越えると耐欠損性が低
下するようになるという理由によるものである。 〔実施例〕 つぎに、この発明の切削工具を実施例により具体的に説明する。 実施例1 基体として、重量%で、WC−9%Co−8%TiC−10%TaCからなる組
成を有するWC基超硬合金で構成され、かつJIS・SNG432の形状をもった
切削チップを用意し、この切削チップの表面に、まず、化学蒸着装置(第1表に
はCVDで示す)および物理蒸着装置の1つであるイオンプレーティング装置(
第1表にはPVDで示す)を用い、通常の条件で、それぞれ第1表に示される組
成および平均層厚を有する付着強化層を形成し、引続いて別途用意したイオンプ
レーティング装置にて、同じく第1表に示される組成および平均層厚の硬質被覆
層を形成することによって本発明表面被覆硬質材料製切削工具(以下、本発明被
覆切削工具という)1〜6をそれぞれ製造した。 また、比較の目的で、付着強化層の形成を行なわず、かつ硬質被覆層の層厚を
第1表に示される層厚とする以外は同一の条件で従来表面被覆硬質材料製切削工
具(以下、従来被覆切削工具という)1〜10を製造した。 つぎに、この結果得られた各種の被覆切削工具について、 被 削 材:JIS・SNCM439(硬さ:HB270)、 切削速度:160m/min、 送 り:0.2mm/刃、 切 込 み:3mm、 切削時間:40分、 の条件で鋼のフライス切削試験を行ない、試験後の切刃の逃げ面摩耗幅を測定す
ると共に、切刃の摩耗状況観察した。これらの結果を第1表に示した。 第1表に示される結果から、本発明被覆切削工具1〜6は、いずれもすぐれた
耐摩耗性を有し、かつ硬質被覆層の付着性がすぐれているので、欠けやチッピン
グの発生がなく、すぐれた切削性能を示すのに対して、従来被覆切削工具1〜10
は、いずれも切刃に欠けやチッピングが発生し、耐摩耗性の劣ったものであるこ
とが明らかである。 実施例2 基体として、重量%で、TiCN−15%WC−10%TaC−9%Mo2C−6
%Ni−12%Coからなる組成を有するTiCN基サーメットで構成され、かつ
JIS・SNPR432の形状をもった切削チップを用意し、この切削チップの表
面に、イオンプレーティング装置にて、通常の条件で、付着強化層としてのTi
N:3μmと、硬質被覆層としての(Ti,Al)N:2μm(いずれも平均層厚
を示す)を形成するすることによって本発明被覆切削工具7を製造した。 また、比較の目的で、付着強化層としてのTiN層の形成を行なわず、かつ硬
質被覆層としての(Ti,Al)Nの平均層厚を3.5μmとする以外は同一の条件
で従来被覆切削工具11を製造した。 つぎに、この結果得られた被覆切削工具について、 被 削 材:JIS・SNCM439(硬さ:HB250)、 切削速度:210m/min、 送 り:0.25mm/rev.、 切 込 み:1mm、 切削時間:30分、 の条件で鋼の旋削試験を行ない、試験後の切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。 この結果、本発明被覆切削工具7は、切刃に欠けやチッピングの発生がなく、
逃げ面摩耗幅:0.12mmのすぐれた耐摩耗性を示すのに対して、従来被覆切削工具
11には、チッピングの発生があり、0.40mmの逃げ面摩耗幅を示し、耐摩耗性の劣
るものであった。 実施例3 基体として、JIS・SKH55に相当する組成を有する高速度鋼で構成された
直径:8mmφの4枚刃エンドミルを用意し、これの表面に、イオンプレーティン グ装置にて、通常の条件で、付着強化層としての平均層厚:2μmのTiNと、
硬質被覆層としての平均層厚:1μmの(Ti,Al)Nを形成することにより
本発明被覆切削工具8を製造した。 また比較の目的で、付着強化層としてのTiN層の形成を行なわず、かつ硬質
被覆層としての(Ti,Al)Nの平均層厚を3μmとする以外は同一の条件で
従来被覆切削工具12を製造した。 ついで、この結果得られた2種の被覆切削工具について、 被 削 材:JIS・S45C(硬さ:HB250)、 切削速度:60m/min、 送 り:0.03mm/刃、 切 込 み:3mm、 切 削 長:50m、 の条件で炭素鋼のエンドミル加工を行ない、外周2番摩耗幅を測定した。 この結果、本発明被覆切削工具8は、摩耗幅:0.14mmのすぐれた耐摩耗性を示
し、かつ切刃も正常摩耗を示すのに対して、従来被覆切削工具12は、チッピング
の発生が原因で、0.49mmの摩耗幅を示すものであった。 〔発明の効果〕 上述のように、この発明の表面被覆硬質材料製切削工具は、付着強化層の介在
によって硬質被覆層の付着性がすぐれているので、苛酷な条件下での切削でも硬
質被覆層の剥離発生が著しく抑制され、硬質被覆層のもつすぐれた耐摩耗性と相
俟って、きわめて長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するのである。
勿論のこと、特に断続切削に用いた場合にも、硬質被覆層に剥離の発生がなく、
硬質被覆層のもつすぐれた耐摩耗性と相俟って、著しくすぐれた切削性能を長期
に亘って発揮する表面被覆硬質材料製切削工具に関するものである。 〔従来の技術〕 従来、特開昭62-56565号公報に記載されるように、スローアウェイチップやエ
ンドミルなどの切削工具として、 炭化タングステン(以下WCで示す)基超硬合金や、炭窒化チタン(以下Ti
CNで示す)基サーメット、さらに高速度鋼で構成された硬質材料を基体とし、
この基体の表面に、耐摩耗性を向上させる目的で、 TiとAlの複合炭化物、複合炭窒化物、および複合窒化物{以下、それぞれ
(Ti,Al)C、(Ti,Al)CN、(Ti,Al)Nで示し、かつこれら
全体を(Ti,Al)C・Nで示す}のうちの1種の単層または2種以上の複層 からなる平均層厚:0.5〜5μmの硬質被覆層を形成してなる表面被覆硬質材料製
切削工具が知られている。 〔発明が解決しようとする課題〕 しかし、上記の従来表面被覆硬質材料製切削工具においては、硬質被覆層の硬
質材料基体に対する付着強度が十分でないために、これを例えばフライス切削な
どに苛酷な切削条件下で用いた場合に、硬質被覆層に剥離が生じ、比較的短時間
で使用寿命に至るのが現状である。 〔課題を解決するための手段〕 そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来表面被覆硬質材料
製切削工具に着目し、硬質被覆層の硬質材料基体表面に対する付着強度を向上せ
しめるべく研究を行なった結果、硬質被覆層と硬質材料基体との間に、 炭窒化チタン層および/または窒化チタン層(以下、それぞれTiCN層およ
びTiN層で示し、かつこれら全体をTiC・N層で示す)を介在させると、前
記TiC・N層は、硬質被覆層および硬質材料基体のいずれに対しても強固な付
着強度を示すことから、硬質被覆層は硬質材料基体に対して強固に付着するよう
になり、苛酷な条件での切削でも硬質被覆層の剥離が著しく抑制され、硬質被覆
層のもつすぐれた耐摩耗性と相俟って、すぐれた切削性能を長期に亘って発揮す
るようになるという知見を得たのである。 この発明は、上記知見にもとづいてなされたものであって、WC基超硬合金、
TiCN基サーメット、および高速度鋼のうちのいずれかで構成された硬質材料
基体の表面に、 TiCN層および/またはTiN層からなる平均層厚:0.5〜10μmの付着強化
層を介して、 (Ti,Zr)C・Nのうちの1種の単層または2種以上の複層からなる平均
層厚:0.5〜5μmの硬質被覆層を形成してなる表面被覆硬質材料製切削工具に特
徴を有するものである。 なお、この発明の切削工具において、付着強化層は、その平均層厚が0.5μm未
満では、所望の付着強度を確保することができないので、0.5μm以上にする必要
があるが、それも平均層厚で10μmまでで十分であり、これ以上の厚さは必要が
な いことから、経済性も考慮して0.5〜10μmと定めたものであり、また硬質被覆層
の平均層厚を0.5〜5μmと定めたのは、その平均層厚が0.5μm未満では所望のす
ぐれた耐摩耗性が得られず、一方その平均層厚が5μmを越えると耐欠損性が低
下するようになるという理由によるものである。 〔実施例〕 つぎに、この発明の切削工具を実施例により具体的に説明する。 実施例1 基体として、重量%で、WC−9%Co−8%TiC−10%TaCからなる組
成を有するWC基超硬合金で構成され、かつJIS・SNG432の形状をもった
切削チップを用意し、この切削チップの表面に、まず、化学蒸着装置(第1表に
はCVDで示す)および物理蒸着装置の1つであるイオンプレーティング装置(
第1表にはPVDで示す)を用い、通常の条件で、それぞれ第1表に示される組
成および平均層厚を有する付着強化層を形成し、引続いて別途用意したイオンプ
レーティング装置にて、同じく第1表に示される組成および平均層厚の硬質被覆
層を形成することによって本発明表面被覆硬質材料製切削工具(以下、本発明被
覆切削工具という)1〜6をそれぞれ製造した。 また、比較の目的で、付着強化層の形成を行なわず、かつ硬質被覆層の層厚を
第1表に示される層厚とする以外は同一の条件で従来表面被覆硬質材料製切削工
具(以下、従来被覆切削工具という)1〜10を製造した。 つぎに、この結果得られた各種の被覆切削工具について、 被 削 材:JIS・SNCM439(硬さ:HB270)、 切削速度:160m/min、 送 り:0.2mm/刃、 切 込 み:3mm、 切削時間:40分、 の条件で鋼のフライス切削試験を行ない、試験後の切刃の逃げ面摩耗幅を測定す
ると共に、切刃の摩耗状況観察した。これらの結果を第1表に示した。 第1表に示される結果から、本発明被覆切削工具1〜6は、いずれもすぐれた
耐摩耗性を有し、かつ硬質被覆層の付着性がすぐれているので、欠けやチッピン
グの発生がなく、すぐれた切削性能を示すのに対して、従来被覆切削工具1〜10
は、いずれも切刃に欠けやチッピングが発生し、耐摩耗性の劣ったものであるこ
とが明らかである。 実施例2 基体として、重量%で、TiCN−15%WC−10%TaC−9%Mo2C−6
%Ni−12%Coからなる組成を有するTiCN基サーメットで構成され、かつ
JIS・SNPR432の形状をもった切削チップを用意し、この切削チップの表
面に、イオンプレーティング装置にて、通常の条件で、付着強化層としてのTi
N:3μmと、硬質被覆層としての(Ti,Al)N:2μm(いずれも平均層厚
を示す)を形成するすることによって本発明被覆切削工具7を製造した。 また、比較の目的で、付着強化層としてのTiN層の形成を行なわず、かつ硬
質被覆層としての(Ti,Al)Nの平均層厚を3.5μmとする以外は同一の条件
で従来被覆切削工具11を製造した。 つぎに、この結果得られた被覆切削工具について、 被 削 材:JIS・SNCM439(硬さ:HB250)、 切削速度:210m/min、 送 り:0.25mm/rev.、 切 込 み:1mm、 切削時間:30分、 の条件で鋼の旋削試験を行ない、試験後の切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。 この結果、本発明被覆切削工具7は、切刃に欠けやチッピングの発生がなく、
逃げ面摩耗幅:0.12mmのすぐれた耐摩耗性を示すのに対して、従来被覆切削工具
11には、チッピングの発生があり、0.40mmの逃げ面摩耗幅を示し、耐摩耗性の劣
るものであった。 実施例3 基体として、JIS・SKH55に相当する組成を有する高速度鋼で構成された
直径:8mmφの4枚刃エンドミルを用意し、これの表面に、イオンプレーティン グ装置にて、通常の条件で、付着強化層としての平均層厚:2μmのTiNと、
硬質被覆層としての平均層厚:1μmの(Ti,Al)Nを形成することにより
本発明被覆切削工具8を製造した。 また比較の目的で、付着強化層としてのTiN層の形成を行なわず、かつ硬質
被覆層としての(Ti,Al)Nの平均層厚を3μmとする以外は同一の条件で
従来被覆切削工具12を製造した。 ついで、この結果得られた2種の被覆切削工具について、 被 削 材:JIS・S45C(硬さ:HB250)、 切削速度:60m/min、 送 り:0.03mm/刃、 切 込 み:3mm、 切 削 長:50m、 の条件で炭素鋼のエンドミル加工を行ない、外周2番摩耗幅を測定した。 この結果、本発明被覆切削工具8は、摩耗幅:0.14mmのすぐれた耐摩耗性を示
し、かつ切刃も正常摩耗を示すのに対して、従来被覆切削工具12は、チッピング
の発生が原因で、0.49mmの摩耗幅を示すものであった。 〔発明の効果〕 上述のように、この発明の表面被覆硬質材料製切削工具は、付着強化層の介在
によって硬質被覆層の付着性がすぐれているので、苛酷な条件下での切削でも硬
質被覆層の剥離発生が著しく抑制され、硬質被覆層のもつすぐれた耐摩耗性と相
俟って、きわめて長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するのである。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット、およ
び高速度鋼のうちのいずれかで構成された硬質材料基体の表面に、 炭窒化チタン層および/または窒化チタン層からなる平均層厚:0.5〜10μmの
付着強化層を介して、 TiとAlの複合炭化物、複合炭窒化物、および複合窒化物のうちの1種の単
層または2種以上の複層からなる平均層厚:0.5〜5μmの硬質被覆層を形成して
なる表面被覆硬質材料製切削工具。
Family
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