JP2539965B2 - 有機化学における改良 - Google Patents

有機化学における改良

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JP2539965B2
JP2539965B2 JP3201750A JP20175091A JP2539965B2 JP 2539965 B2 JP2539965 B2 JP 2539965B2 JP 3201750 A JP3201750 A JP 3201750A JP 20175091 A JP20175091 A JP 20175091A JP 2539965 B2 JP2539965 B2 JP 2539965B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、トロンビン、第Xa
因子、カリクレイン、プラスミンのようなセリンプロテ
アーゼ類、およびその他のプロリルエンドペプチターゼ
およびIgAIプロテアーゼのようなセリンプロテアー
ゼ類の阻害物質に関する。凝固系における最終酵素であ
るトロンビンは、可溶性フィブリノーゲンをフィブリン
へ分解し、フィブリンはついで架橋して、血栓のための
マトリックスを形成する不溶性ゲルを生成する。血管が
損傷した場合、上記の過程は出血を止めるために必要で
ある。正常状態では測定可能なトロンビン量は血漿中に
存在しない。トロンビン濃度が増大すると凝塊の生成が
起こり、現代の最も共通した重大な医学的課題の1つで
ある血栓性塞栓疾患をひき起こす危険を生じる。
【0002】
【従来の技術】トロンビンは、数種の生物反応によって
止血制御に関与している。フィブリノーゲンをフィブリ
ンへ変換する本来の機能に加えて、トロンビンは第XIII
因子を活性化し、これがフィブリン架橋の原因となる。
またトロンビンは、第Vおよび第VIIIの両因子の活性化
を含む正のフィードバック機構によって作動するが、こ
れらの両因子は何れもプロトロンビンからトロンビン自
身を生成するために必要である。またトロンビンは、血
小板へ結合して一次止血をもたらす血小板の放出、凝集
を開始するもう1つの重要な役割を有している。
【0003】さらにトロンビンの反応は、血漿中にある
天然の阻害因子によって制御される。これらのうち最も
重要なのは抗トロンビンIIIおよびヘパリンである。こ
れら2つの化合物は単離され、プロトロンビン活性化の
危険を伴う止血機構に不均衡のある状態に治療的および
予防的に使用される。
【0004】経口で活性を示す合成トロンビン阻害物質
は、これら天然の阻害因子の非経口投与の代替物として
有用である。この領域における多くの研究の結果、試験
管内でトロンビンの良好な阻害物質が合成されたが、経
口治療使用の目的に真に良好な候補はまだ見いだされて
いない。トロンビンの重要な天然基質であるフィブリノ
ーゲンのアミノ酸配列を真似ることによって、トロンビ
ンに対する幾つかの良好な短鎖ペプチド基質が生産され
た。またこれらのペプチド基質はこの酵素の阻害物質へ
と変形された。即ち、色素産生性基質であるD−Phe
−Pro−Arg−pNAおよびD−Phe−Pip−
Arg−PNAは、トロンビンによって分断される結合
に先行している配列を模倣したものである。対応する可
逆的または不可逆的な阻害物質、D−Phe−Pro−
アルギナルおよびD−Phe−Pro−Arg−CH2
Clは試験管内で10-8Mの範囲で阻害を示す。
【0005】一般にクロロメチルケトン類は、あまりに
非特異的に反応性であるため治療的用途に理想的である
とは言い難く、上に例示したペプチドアルデヒドは極め
て低いLD50値を示す。
【0006】第Xa因子はトロンビンのチモーゲンであ
るプロトロンビンの限定的タンパク質分解によって、ト
ロンビンを産生する働きをもつ凝固酵素である。重量対
重量基準で第Xa因子は、生体内でトロンビンより少な
くとも10倍強くトロンボゲン性である。 これは、第
Xa因子がカスケード系の増幅においてトロンビンより
一段階高いことに起因し、したがって第Xa因子の1分
子は、トロンビン前駆体から多くのトロンビン分子を産
生することができる。またその有効性は生体による第X
a因子の除去がやや遅いことにも起因し得る。トロンビ
ンは第Xa因子とは異なり、血管壁の高親和性部位へ循
環血から急速に除去される。内在性および外在性経路の
接合点での第Xa因子の中心的な位置を考慮すると、こ
の因子を止血機構を変化させ得る好適な標的とすべきで
ある。
【0007】カリクレインは、負に荷電した表面上にあ
るとき第XII因子の作用によってプレカリクレインから
生成される。ついで今度はカリクレインが第XII因子を
第XIIa因子へ切断することができ、それによって相互
活性化系が成立する。第XIIa因子は凝固系内在性部分
の最初の因子である。接触系の意味は、恐らく表面媒介
性の防御機構であり、ショックまたは播種性血管内凝固
(DIC)の際にこの系の大規模な活性化が自然に出現
する。この段階でのカリクレインの役割は、高分子量の
キニノーゲンを切断し、血管拡張因子であるブラジキニ
ンを放出することである。ブラジキニンはまた、血管透
過性、疼痛、および好中球遊走の増大を起こす。キニン
生成阻害物質は関節炎および膵炎等を含む一定の型の炎
症に有用であることが判明し、喘息の処置にも有用であ
り得る。カリクレイン阻害物質として臨床的な意義をか
ち得た唯一の物質は、アプロチニン(トラジロール(Tra
syl-ol))である。アプロチニンは分子量6500のポ
リペプチドであり、タンパク質分解酵素類と10-10
10-13Mの結合定数を有する安定した複合体を形成す
る。
【0008】線溶はフィブリノーゲンおよびフィブリン
塊の酵素的溶解を起こす反応過程である。血漿はタンパ
ク質プラスミノーゲンを含有しており、このタンパク質
は、種々の活性化因子の影響下にタンパク質分解酵素プ
ラスミンへ変換されるが、その活性はトリプシンの活性
と似ている。プラスミンはフィブリノーゲンおよびフィ
ブリンをフィブリン/フィブリノーゲン分解産物へ分解
する。
【0009】正常条件下では、線溶系は凝固系と均衡を
保っている。血流中で生成した小血栓は酵素的に溶解す
ることができ、血管内循環は生体内線溶系の活性化によ
って回復することができる。線溶活性があまり高すぎる
と出血を起こし、あるいは延引させる。その活性は血液
中の天然阻害因子によって阻害され得る。
【0010】プロリルエンドペプチダーゼはペプチド鎖
内のプロリン残基のカルボキシル側でペプチド結合を切
断する。この酵素は、サブスタンスP、ニューロテンシ
ン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、および黄体形成
ホルモン放出ホルモン等を含む多くの神経ペプチドを容
易に分解し、細胞のインターロイキン2(IL−2)産
生能に関係しているセリンプロテアーゼである。この酵
素は14nMのKiを有するベンゾイルオキシカルボニ
ル−プロリル−プロリナールによって阻害される。プロ
リルエンドペプチダーゼの生理学的な役割についてはほ
とんど分かっていないにもかかわらず、この酵素が種々
の神経ペプチドの生物活性調節に顕著な役割を演じてい
る可能性があり得る。
【0011】IgAプロテイナーゼが触媒する、感染防
御の第一線を構成する抗体の優勢な形であるIgAの分
解は、分子の抗原結合性Fab領域からFcを分離す
る。そのような分解はその抗微生物活性を損ない、また
はこれを消失させることが予想される。即ち同定された
すべてのIgAプロテイナーゼは、ヒトIgAのヒンジ
領域内のプロリン残基から後方を切断する。ペプチドプ
ロリル−ボロン酸はナイセリア・ゴノロエエ(Neisseria
gonorrhoea)およびヘモフィルス・インフルエンゼ(Hem
ophilus influenzae)からIg A1プロテイナーゼを阻
害し、これらの酵素がタンパク質分解酵素のセリンプロ
テアーゼ系統群に属すことを示している。
【0012】ガン、炎症、およびニューロン活性のよう
な病理学的障害に随伴する種々の生理的過程でトロンビ
ンが演じる多様な役割は、心血管系に厳密に関連してい
ない幾つかの適応におけるトロンビン阻害物質の用途の
可能性を示唆している。
【0013】多数の腫瘍細胞がトロンビン生成に伴う凝
血促進性の活性を誘発することが報告されている。その
結果、腫瘍の増殖に重要であると思われる局所的なフィ
ブリンの蓄積および凝固が起こる。そのうえ内皮細胞に
対するトロンビンの効果からトロンビンが転移中の腫瘍
細胞の溢出を促進することも考えられ得る。したがって
トロンビン阻害物質は、ある種のガンの処置に有用であ
るばかりではなく、化学療法剤で治療中の患者でしばし
ば観察される凝固過多を低下させるのにも有用であり得
る。
【0014】内皮細胞のトロンビン活性化は、インター
ロイキン−1、プロスタグランジン類、および血小板活
性化因子の合成および放出のような多くの前炎症性変化
を誘発する。しかもトロンビンは、内皮細胞表面への白
血球接着の原因となる2つの接着性分子、GMP−14
0およびCD63の露出を誘発する。またトロンビン
は、好中球を含む作用であるタンパク質の血管透過性を
増大し、呼吸器系疾患、慢性関節リウマチ、および潰瘍
性大腸炎に関与すると推測されるペプチド、即ちインタ
ーロイキン−8−前駆体タンパク質を切断する。
【0015】トロンビンがこれらの前炎症性過程のすべ
てに関与していることから、トロンビンを、炎症が関係
している病理学的障害のトロンビン阻害物質による治療
的処置の可能性ある標的となし得る。
【0016】神経成長の活性調節因子であり特異的な天
然のトロンビン・アンタゴニストであるタンパク質分解
酵素ネキシン−1の活性は、アルツハイマー病患者で顕
著に特異的に減少する。このことは、アルツハイマー病
患者の脳でトロンビン様活性が増大する観察と相俟っ
て、トロンビン阻害物質がトロンビン機能亢進に関連す
るニューロン性病理的変化を抑制し、または逆行させ得
る可能性のあることを示唆している。
【0017】ボロン酸は種々のセリンエステラーゼおよ
びプロテアーゼの阻害物質として研究されてきた。プロ
テアーゼ阻害物質として使用された最初のボロン酸含有
アミノ酸類似体は、N−アセチル−L−フェニルアラニ
ンのボロン酸類似体であって、この物質はキモトリプシ
ンおよびズブチリシンの阻害物質として使用された。ペ
プチドボロン酸はキモトリプシン、ズブチリシンおよび
エラスターゼの阻害物質として使用された。
【0018】生体系におけるタンパク質分解酵素とボロ
ン酸の相互作用は既知であり、多数の簡単なボロン酸が
ヒトで使用して十分無毒であることが分かっている。最
近、エラスターゼのペプチドボロン酸阻害物質が、気腫
に関連した動物試験に使用された。ペプチドクロロメチ
ルケトンとは異なり、生物学的有効投与量の水準で報告
された毒性はなかった。
【0019】ヨーロッパ特許出願第293881号に
は、リシン、オルニチン、アルギニンのC−末端ボロン
酸誘導体を含むペプチドの製造、およびそれらのトリプ
シン様セリンプロテアーゼ阻害物質としての用途が報告
された。ペプチド中のその他のアミノ酸は、すべて天然
に存在する20種類のアミノ酸のD−型またはL−型の
どちらかである。
【0020】この発明によってペプチドが疎水性側鎖を
有する少なくとも1個の非天然α−アミノ酸を含んでい
る場合、トリプシン様セリンプロテアーゼの阻害物質と
して一層優れた性質を有する化合物が得られることが判
明した。
【0021】
【発明の構成】したがってこの発明は、式(I)
【化13】 [式中、Wは水素またはN−保護基、Yはn個のアミノ
酸からなる配列(ここで、nは1〜10、好ましくは1
〜4の整数で、配列中、少なくとも1個のアミノ酸は疎
水性側鎖を有する非天然アミノ酸である)であって、n
+1個のアミノ酸ペプチド、Y−LysまたはY−Ar
gがトリプシン様プロテアーゼの活性部位に対して親和
性を有するように選ばれた配列、Q1およびQ2は同一で
も異なってもよく、−OH、−COR1、−CONR1
2、−NR12、および−OR3から選ばれ、またはQ1
およびQ2は互いに一緒になってジオール残基を作り、
1、R2およびR3は同一でも異なってもよく、C1〜10
アルキル、C6〜10アリール、C6〜10アラルキル、また
はC1〜4アルキル、ハロゲンおよびC1〜4アルコキシか
ら選ばれた3種類までの基によって置換され得るフェニ
ル、R4は水素またはC1〜10アルキル、R5は−A−X
基(ここで、Aは−(CH2)z−(式中、zは2、3、
4、または5である)、または−CH(CH3)−(CH2)
2−、−CH2−CH(CH3)−CH2、−(CH2)2−CH
(CH3)−、−(CH2)2−C(CH3)2−、−CH(CH3)
−(CH2)3−、−CH2−CH(CH3)−(CH2)2−、−
CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、(CH2)3−CH
(CH3)−、−(CH2)3−C(CH3)2、C6〜10アリー
ル、C6〜10アラルキル、Xは−NH2、−NH−C(N
H)−NH2、−S−C(NH)−NH2、−N3、C1〜4
ルコキシ、C1〜4アルキルチオ、または−Si(CH3)3
である)であり、またはR4およびR5は一緒になってト
リメチレン基を作り、*印で示した不斉炭素原子はD−
またはL−配置を有し得、またはこれらの任意の混合物
を表し得る]で示される化合物を提供する。
【0022】非天然アミノ酸とは、D−またはL−Al
a、Arg、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Il
e、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Tr
p、Tyr、またはVal以外の任意のアミノ酸をいう。
【0023】好ましくはN−保護基Wは、式H(CH2
2O)p−(ここで、pは3〜30)、R6CO−、R7
OCO−またはR8SO2−(ここで、R6はC1〜6アル
キル、R7はC1〜6アルキル、フェニル、ベンジル、ま
たはナフチル、R8はフェニル、ナフチル、またはC
1〜4アルキルフェニルである)で示される基であり、こ
のうちR7OCO−が好ましい。最も好ましい保護基
は、式R7'OCO−[ここで、R7'は第3級ブチル(B
ocで表す)、およびR7'はベンジル(Zで表す)]で
示される基である。
【0024】好ましくはR5はR5'[ここで、R5'は−
(CH2)z'−X'(X'は−NH2、−NHC(NH)−NH
2、−N3 または−Si(CH3)3、z'は2、3または
4)]である。
【0025】好ましい化合物は、式(Ia)
【化14】 (式中、W、Y、R4およびR5は前記と同意義、R9
よびR10はジヒドロキシ化合物の残基を表す)で示され
る化合物である。
【0026】有用な例は、2,3−ブタンジオール、カ
テコール、2,3−ジメチルブタンジオール−2,3、
シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、1,2
−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、ジエ
タノールアミン、または隣接する炭素原子、または他の
1つの炭素原子で置換された炭素原子に置換したヒドロ
キシ基を有する脂肪族または芳香族化合物である。
【0027】特に好ましいのは、Q1およびQ2が一緒に
なって、式(a)で示される基OPin、または式
(b)
【化15】 で示される基を表す化合物である。
【0028】Yを構成するアミノ酸は、タンパク質中に
天然に存在するL−アミノ酸、それらの対応する鏡像体
D−アミノ酸、またはグルタミン酸γ−ピペリジド
【化16】 またはピペコリン酸(Pip)のような化学的に修飾さ
れたα−アミノ酸から選ばれ得るα−アミノ酸であり、
ただし少なくとも1アミノ酸は疎水性側鎖を有する非天
然アミノ酸である。
【0029】好ましい非天然アミノ酸は、式(II)
【化17】 −NH−CH(−R11)−C(=O)− (II) (式中、R11は疎水基である)で示されるものである。
好ましい疎水基は、所望により極性基によって置換され
た少なくとも2個の環を有する芳香族基または脂環式基
および非極性置換基へ結合し、または第3級ブチルまた
はトリメチルシリル基へ結合したメチレン基からなる。
好ましくはR11はR11'(ここで、R11'は式(c)、
(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、または
(i)
【化18】 で示される基)である。
【0030】式(II)の非天然アミノ酸は、D−型また
はL−型またはこれらの任意の混合物であって、ただし
好ましくはD−型である。
【0031】一層好ましい化合物は、式(I)(式中、
Yは2個のアミノ酸配列であって、そのうちN−末端ア
ミノ酸は非天然アミノ酸であり、他のアミノ酸は、式
【化19】 で示されるL−プロリン(Pro)である)で示される
トロンビン阻害物質である。
【0032】これらの一層好ましい化合物は、式
(I')
【化20】 (式中、W、R4、R5、R11、Q1およびQ2は前記と同
意義である)を有する。特に好ましい化合物は、式
(I")
【化21】 (式中、W、R4、R5'およびR11は前記と同意義であ
る)で示される化合物である。
【0034】最も好ましい化合物は、式(III)
【化22】 の化合物、式(IV)
【化23】 の化合物、および式(V)
【化24】 の化合物である。
【0035】個々のペプチドが解離定数として10-3
またはそれより低い値を示す場合、ペプチドはトリプシ
ン様プロテアーゼの活性部位に対して親和性を有すると
考えられる。
【0036】式(I)(式中、Xは−NH−C(NH)−
NH2)の化合物は、式(I)(式中、Xは−NH2)の
化合物を、有機溶媒中、強酸条件下でシアナミドと反応
することによって製造し得る。また式(I)(式中、X
は−NH2)の化合物は、式(I)(式中、Xは−N3
の化合物を水素化することによって製造し得る。水素化
は標準的な条件下に、例えばPd/C触媒を使用して実
施する。
【0037】式(I)(式中、Xは−N3)の化合物
は、式(VI)
【化25】 [式中、W、Y、Q1およびQ2は前記と同意義、R12
−A−Br(ここで、Aは前記と同意義)である]の化
合物を、ジメチルスルホキシドのような極性疎水性溶媒
中でアジ化ナトリウムと反応することによって製造し得
る。式(I)(式中、Xはアルキルチオ基)の化合物
は、式(VI)の化合物を、グアニジンのような有機塩基
の存在でチオールと反応することによって製造し得る。
【0038】式(VI)の中間体、および式(I)(式
中、Xは−Si(CH3)3 またはアルコキシ基)の化合
物は、式(VII)
【化26】 [式中、Q1およびQ2は前記と同意義、R13は−A−B
r、A−Oアルキル、または−A−Si(CH3)3(ここ
で、Aは前記と同意義)]で示される化合物をLiN
[Si(CH3)3]2と反応させ、ついで3モル当量の酸で
加水分解し、式(VIII)
【化27】 (式中、WおよびYは前記と同意義)で示される保護ペ
プチドと結合することによって得ることができる。
【0039】反応は好ましくは乾燥した非プロトン性極
性溶媒、例えばテトラヒドロフラン中で−78℃〜室温
で実施する。
【0040】式(VII)の中間体はマテソンらの方法
[オーガノメタリックス(Organometal-lics)、3巻、1
284〜8頁(1984年)]によって得ることができ
る。
【0041】式(VIII)の保護ペプチドは、ペプチド化
学で通常行われる方法によって、所望の非天然アミノ酸
から出発して製造し得る。そのようなアミノ酸は商業的
に入手可能であるか(例えば式中、R11が基cであるア
ミノ酸)、または文献上に報告されている方法[例えば
アンゲバンテ・ヒェミー(Angew. Chem.)、93巻、79
3頁(1981年)、およびジャーナル・オブ・ジ・ア
メリカン・ケミカル・ソサエティー(J. Am. Chem. So
c.)、109巻、6881頁(1987年)]と類似の
方法によって製造し得る。
【0042】式(I)の化合物はトリプシン様プロテア
ーゼの阻害物質として有用であり、試験管内でこれらの
酵素の診断学的および作用機序的な研究に使用し得る。
またその阻害作用のため、調節系における酵素の過剰に
よって起こる疾患の予防または処置、例えば線溶系の凝
固の調節への使用に適用される。
【0043】トロンビンまたは第Xa因子の阻害物質で
あるこの発明の化合物類は、抗トロンボゲン作用を有
し、抗トロンボゲン剤を必要とする場合に使用し得る。
一般にこれらの化合物は経口または非経口で宿主に投与
して、抗トロンボゲン効果を挙げることができる。ヒト
のような比較的大きい哺乳動物の場合は、化合物を単独
または製薬用の担体または希釈剤と一緒に体重1kg 当
たり0.02〜15mg、好ましくは1〜10mgの投与量
で投与して、抗トロンボゲン効果を挙げることができ、
1回投与または分割投与により、または徐放性製剤とし
て投与することができる。体外血液循環を患者に設置す
る場合は、0.1〜1mg/kgを静脈内に投与し得る。全
血で使用するには、1リットル当たり1〜10mgによっ
て、凝固防止を提供し得る。製薬用の希釈剤は周知のも
のであり、錠剤、カプセル剤、注射用溶液等を製造する
のに使用し得る糖類、デンプン、水等が含まれる。この
発明の化合物は、血液凝固防止の目的で、採血、または
血液配布用容器、管材料、または血液と接触する移植可
能な装置で血液へ添加し得る。
【0044】この発明の化合物の利点は、経口による活
性、活性の迅速な発現、および低い毒性等である。しか
もこれらの化合物は、ヘパリンのような化合物に過敏性
である患者の処置に特に有用性を示し得る。
【0045】
【実施例】以下の実施例において、次の記号は下記の意
味を表す。 Z =ベンジルオキシカルボニル Boc =第3級ブチルオキシカルボニル Ac =アセチル MeOH =メチルアルコール EtOAc =酢酸エチル DCC =ジシクロヘキシルカルボジイミド HONSu =N−ヒドロキシ−スクシンイミド OPin =ピナンジオール THF =テトラヒドロフラン n−Bu =正ブチル Np =p−ニトロフェニル TLC =薄層クロマトグラフィー Bzl =ベンジル Baa =−NH−CH−(CH2CH2CH2Br)B− TMSal =トリメチルシリルアラニン Adal =アダマンチルアラニン Naphal =2−ナフチルアラニン BoroOrn =−NH−CH−(CH2CH2CH2NH2)B− BoroArg =−NH−CH−[CH2CH2CH2NHC(NH)NH2]B− Adgly =1−アダマンチルグリシン BoroPro−Opin =−COOH基をB−OPinで置き換えたプロリン類似体 BoroLys =−NH−CH−(CH2−CH2−CH2−CH2−NH2)B− BoroHArg =−NH−CH−(CH2CH2CH2CH2NHC(NH)NH2)B− BoroMpg =−NH−CH−(CH2CH2CH2−OCH3)B− p−OH−Me−Phal =p−ヒドロキシメチル−フェニルアラニン p−TBDPS−O−Me−Phal =p−第3級ブチル−ジフェニル−シリル−オキシ−メチル− フェニルアラニン
【0046】ペプチド−arg−pNAの酵素触媒によ
る加水分解の阻害によって速度論的パラメーターKi、
kon、およびkoff を測定する。この加水分解はp−ニ
トロアニリンを生成するので、時間に依存するその放出
を、405nmで測定した光学密度によって定量化し、阻
害反応および阻害されない反応の速度を測定する。
【0047】96穴マイクロウエル板を単一セル・カイ
ネティックリーダーと組み合わせて速度論的測定を実施
する。活性部位を滴定したヒト・トロンビンを0.1M
NaClおよび0.1%ウシ血清アルブミンを含有する
0.1Mリン酸塩緩衝液(pH7.4)に溶解し、活性酵
素400nMを含有する原液とする。色原体検定のため、
この溶液をこれと同一の緩衝液に溶解して0.4nMにす
る。基質2AcOH−H−D−シクロヘキシル−ala
−arg−pNAを同じ緩衝液に0.5mM濃度で溶解す
る。阻害物質を最初クレモホル/エタノール(1:1)
に溶解し、ついで蒸留水で希釈して1mM原液とする。そ
の後の希釈は上記のリン酸塩緩衝液で実施する。
【0048】酵素溶液100μlを阻害物質100μlお
よび基質50μl含有の混合溶液へ添加することによ
り、測定を開始する。405nMにおける光学密度の増
大を測定することによって、ペプチジル−p−ニトロア
ニリド基質の加水分解からのp−ニトロアニリンの放出
を30分〜1時間追跡する。得られた成績を使用して阻
害物質の存在する場合および存在しない場合の速度論的
パラメーターを計算する。他の作用機構を除外できない
が、トロンビン阻害物質のこの型の特徴は、観察される
2つの主要な機序、即ち高速可逆的結合阻害および低速
密着結合型競合阻害に限定される。高速可逆的結合阻害
機序を示すこれらの化合物の速度論的定数、即ちIt>
>Et(全阻害物質濃度/全酵素濃度)における高速結合
(対照の初速度v0>阻害物質添加のときの初速度v0)を
1/v:阻害物質濃度[I]のプロットから、線形回帰
に当てはめて計算する。Ki値は水平切片Ki,appから、
等式(1)
【数1】 Ki,app=Ki(1+S/KM) (1) により求める。酵素との相互作用速度が遅く(v0が阻害
物質によって影響されない)、密着する(KiがEtへ接近
し、またはそれより低い)ため、阻害された定常状態の
速度に徐々にしか到達しないなら、pNA生成の進行曲
線は、等式(2)
【数2】 [式中、pは時間tで生成したpNA量、V0は初速
度、Vsは定常状態の速度、kobsはEt、It、Ki,app
の関数とした見掛けの包括的な反応速度であって、阻害
物質および酵素間の相互作用について観察された2次速
度定数(k'on)である]で示される。低速、密着結合
型阻害測定の成績は、推定値kobsが得られる非線形回
帰分析によって等式(2)へ当てはめる。ついでkob
s:[I]のプロットからk'on、koff、およびKi,app
の値が得られる。koffの値は垂直切片によって得ら
れ、k'onおよびKiの値は、等式(1)を用いて接線勾
配および水平切片からそれぞれ計算する。
【0049】実施例1 Boc−TMSal−Pro−NH−CH[(CH2)3
3]BOPin (A) Boc−D−TMSal−OH D−TMSalエチルエステル(21.5g、113.7
ミリモル)[アンゲバンテ・ヒェミー、93巻、793
頁(1981年)に報告された方法にしたがって製造]
をCH2Cl2に溶解し、過剰量のBoc2OのCH2Cl
2溶液を添加する。室温で15時間後、氷冷した0.25
N塩酸500mlを加える。有機層を5%NaHCO3
よび食塩水で洗浄し、ついでNa2SO4で乾燥し、真空
で濃縮する。
【0050】粗製物(無色の油状物質)を加水分解段階
に直接使用する。これをメタノールに溶解し、0℃に冷
却し、1N NaOH 510mlと混合し、0℃で3時間
撹拌する。1N HClでpH1の酸性にしたのち、混
合物をエーテルで数回抽出する。有機層を合わせ、食塩
水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、真空で濃縮する。生
成物(油状物質、29.7g)をそれ以上精製すること
なく、次の段階に使用する。
【0051】(B) Boc−D−TMSal−Pro−
ONSu Boc−D−TMSal−OH(29.7g、113.7
ミリモル)およびp−ニトロフェノール(19.0g、
136.3ミリモル)をEtOAcに溶解する。0℃に
冷却したのち、DCC(23.4g、113.6ミリモ
ル)を添加し、混合物を0℃で1時間、ついで室温で1
5時間撹拌する。沈殿を濾去し、EtOAcで洗浄し、
濾液を真空で濃縮する。得られた油状物質をフラッシュ
クロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc、9:1)
によって精製し、所望のBoc−D−TMSal−ON
pを白色結晶として得る。
【0052】Boc−D−TMSal−ONp(51.
6g、113.7ミリモル)をTHFに溶解し、プロリ
ンおよびEt3Nの等モル量水溶液をこれに加える。室
温で20時間後、THFを真空で留去し、水性残留物を
水で希釈し、ついでEtOAcで数回抽出する。10%
クエン酸を加えることによって水層のpHを3に調節す
る。生じた油状生成物をEtOAcで数回抽出する。合
わせた有機層を食塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、
真空で濃縮する。無色の油状物質をエーテル/ヘキサン
から再結晶し、ジペプチドBoc−D−TMSal−P
ro−OHを白色結晶性化合物として得る。mp:17
6℃。
【0053】得られたジペプチド(26.0g、72.5
ミリモル)をEtOAcに溶解する。0℃に冷却したの
ち、HONSu(9.8g、85.5ミリモル)およびD
CC(14.9g、72.3ミリモル)を添加する。混合
物を0℃で3時間、ついで室温でさらに15時間撹拌す
る。混合物を再度0℃に冷却し、ジシクロヘキシル尿素
を濾去し、EtOAcで数回洗浄する。濾液を0.1M
水性Na2CO3、ついで2%水性KHCO3で洗浄す
る。Na2SO4で乾燥後、真空で濃縮してBoc−D−
TMSal−Pro−ONSuを白色の泡状物質として
得る。
【0054】(C) Boc−D−TMSal−Pro−
Baa−OPin この方法は、キラルなα−(ビストリメチルシリル)ア
ミドボロネートの生成、2個のトリメチルシリル基の加
水分解、および生成したα−アミノボロネートを段階B
で作成した活性エステル(Boc−D−TMSal−P
ro−ONSu)と結合させる反応を、そのまま連続的
に実施する1ポット−3段階法である。一連の反応はす
べてアルゴン大気下で実施する。キラルなα−クロロ−
ボロネート((+)−ピナンジオール−(S)−1−クロロ
−4−ブロモ−ブタン−1−ボロネート)(1.75
g、5.0ミリモル)をTHF2.5mlに溶解し、予め冷
却したヘキサメチルジシラザンリチウムのヘキサン溶液
(−78℃)(1.0M溶液5ml、5.0ミリモル)へこ
れを添加する。30分間−78℃で撹拌し、溶液を1夜
加温して室温へ戻す。−78℃に再冷却後、HCl 3
モル当量のジオキサン溶液を加える。混合物を加温して
室温に戻し、この温度で2時間撹拌する。ついで−20
℃に再冷却し、段階Bの活性エステルのCH2Cl2溶液
6ml(2.28g、5.0ミリモル)を加え、さらにトリ
エチルアミン1.39ml(10.0ミリモル)を加える。
【0055】混合物を−13℃で1時間撹拌し、加温し
て室温へ戻し、この温度で2時間撹拌する。混合物を濾
過し、濾液を真空で濃縮し、残留物をエーテルで希釈し
て、これを2N HCl、5%NaHCO3、食塩水で順
次洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥し、真空で濃縮
する。残留物を放置して結晶化させ、所望のキラルなペ
プチドボロネートを白色結晶性化合物として得る。
【0056】(D) Boc−D−TMSal−Pro−
NH−CH[(CH2)33]BOPin 段階Cの生成物、Boc−D−TMSal−Pro−B
aa−OPin(804mg、1.2ミリモル)をDMS
O 13mlに溶解し、アジ化ナトリウム(156mg、2.
4ミリモル)を添加する。混合物を室温で3時間撹拌す
る。エーテル/氷水を加えると、直ちに白色の結晶が混
合物から沈殿する。白色沈殿を濾取し、エーテルで洗浄
して、アジ化物0.6gを白色結晶性化合物として得
る。
【0057】実施例2 Boc−D−TMSal−Pro−BoroOrn−O
pin 実施例1のアジ化物(569mg、0.9ミリモル)をE
tOAc 25ml に溶解し、10%Pd/C 0.5gの
存在で水素化する。2.5時間後、触媒を除去し、溶液
を真空で濃縮して、白色の泡状物質を得る。これをEt
OAc/エーテルから再結晶し、所望の生成物を白色結
晶性化合物として得る。 mp:200〜202℃。 [α]D 20=−11.6°(c=0.5;MeOH溶
媒)。
【0058】実施例3 Boc−D−TMSal−Pro−boroArg−OPin(ベンゼ
ンスルホン酸塩) 実施例2のBoc−D−TMSal−Pro−boro
Orn−OPin(250mg、0.412ミリモル)を
エタノール2mlに溶解する。ベンゼンスルホン酸(6
5.2mg、0.412ミリモル)をこれに添加する。室温
で15分間撹拌後、シアナミド(86.6mg、2.06ミ
リモル)を添加して、混合物を加熱還流する。アミン出
発物質のニンヒドリンスポットの消失と生成物のサカグ
チ線の出現を観察するRP−TLCで反応の進行を監視
する。7日後に、アミンはもはや検出できず、溶液を真
空で濃縮する。残留物をMeOHに溶解し、セファデッ
クス(Sephadex) LH−20カラム(5×55cm)でM
eOHでクロマトグラフィー精製を行う。所望の生成物
を白色の泡状物質として得る。 [α]D 20=−45.3°(c=1;CH2Cl2溶媒)。
【0059】実施例4 Boc−D−TMSal−Pro−NH−CH((C
2)33)B−OPin (A) (+)−ピナンジオール−(S)−1−クロロ−5−
ブロモ−ペンタン−1−ボロネート 4−ブロモ−1−ブテン(20.8ml、203.3ミリモ
ル)をカテコールボラン(24.4g、203.3ミリモ
ル)と100℃で16時間反応させる。粗製物を真空で
蒸留して4−ブロモ−ブタン−1−ボロネートを白色結
晶性化合物として得る。(+)−ピナンジオール(27.
7g、163ミリモル)をTHFに溶解し、先に合成し
た4−ブロモ−ブタン−1−ボロネート(41.6g、
163ミリモル)をこれに添加する。室温で1時間後、
THFを真空で留去し、残留物をフラッシュクロマトグ
ラフィー(ヘキサン/EtOAc、90:10)により
精製して、所望の(+)−ピナンジオール−4−ブロモ−
ブタン−1−ボロネートを無色の油状物質として得る。
【0060】オーガノメタリックス、3巻、1284頁
(1984年)に報告された方法により、所望の(+)−
ピナンジオール−(S)−1−クロロ−5−ブロモ−ペン
タン−1−ボロネートを製造する。即ち、塩化メチレン
(9.8ml)のTHF溶液を−100℃に冷却し、n−
ブチルリチウム(1.6M溶液71.6ml、114.5ミ
リモル)を20分間かけて加える。−100℃で15分
後、(+)−ピナンジオール−5−ブロモ−ペンタン−1
−ボロネート(32.8g、104.1ミリモル)のTH
F冷溶液(−78℃)を加える。−100℃でさらに1
時間保ち、無水ZnCl2(7.1g、52.0ミリモ
ル)のTHF溶液を加える。−100℃でさらに15分
間保ったのち、反応混合物を室温に加温し、この温度で
2時間撹拌する。溶媒を真空で留去し、残留物をヘキサ
ン/水で希釈して、ヘキサンで数回抽出する。Na2
4で乾燥後、溶媒を真空で留去し、(+)−ピナンジオ
ール−(S)−1−クロロ−5−ブロモ−ペンタン−1−
ボロネートを黄色の油状物質として得る。生成物をそれ
以上精製することなく次の段階に直接使用する。
【0061】(B) Boc−D−TMSal−Pro−NH−
CH((CH2)4Br)B−OPin LiN(SiMe3)2のTHF溶液(1.0M溶液65.2m
l、65.2ミリモル)を−78℃に冷却する。段階Aの
α−クロロ−ボロネート(23.7g、65.2ミリモ
ル)のTHF溶液をこれに添加する。−78℃で1時間
撹拌後、混合物を室温で15時間撹拌する。この時点
で、反応混合物を−78℃に再冷却する。HClのジオ
キサン溶液(6.56N溶液29.8ml、196ミリモ
ル)を加え、溶液を−78℃で45分間、ついで室温で
2時間撹拌する。混合物を−15℃に冷却し、実施例1
のBoc−TMSal−Pro−ONSu(29.7
g、65.2ミリモル)のCH2Cl2溶液を添加し、つ
いでトリエチルアミン(18.1ml、130.4ミリモ
ル)を添加して、結合反応を開始する。−15℃で1時
間撹拌後、混合物を室温で2時間撹拌する。混合物をハ
イフロー(Hyflo)で濾過し、真空で濃縮する。残留物を
エーテル/水で希釈して、エーテルで数回抽出する。N
2SO4で乾燥後、真空で濃縮し、所望のBoc−D−
TMSal−Pro−NH−CH((CH2)4Br)B−
OPinをエーテル/ヘキサンから結晶化して、白色結
晶性化合物を得る。mp:74℃。
【0062】(C) Boc−D−TMSal−Pro−NH−
CH((CH2)43)B−OPin 段階Bの生成物(33.3g、48.6ミリモル)をDM
SOに溶解し、アジ化ナトリウム(6.3g、97.2ミ
リモル)を添加する。混合物を室温で6時間撹拌する。
エーテル/氷水を加え、混合物をエーテルで数回抽出す
る。Na2SO4で乾燥後、真空で濃縮し、得られた油状
物質を結晶化してBoc−D−TMSal−Pro−N
H−CH((CH2)43)B−Pinを白色結晶性化合
物として得る。mp:69〜70℃。αD=−74.4°
(c=1.0;MeOH溶媒)。
【0063】実施例5 Boc−D−TMSal−Pro−BoroLys−O
Pin 実施例4のアジ化物(22.0g、34.0ミリモル)を
EtOAcに溶解し、10%Pd/C 4.0gの存在で
水素化する。9時間後、触媒を除去し、溶液を真空で濃
縮する。得られた泡状物質をEtOAcに溶解し、結晶
化して所望のBoc−D−TMSal−Pro−Bor
oLys−OPinを白色結晶として得る。mp:12
8〜129℃。 αD=−59.6°(c=1.0;MeOH溶媒)。
【0064】実施例6 Boc−D−TMSal−Pro−BoroHArg−OPin(ベン
ゼンスルホン酸塩) 実施例5のBoc−D−TMSal−Pro−Boro
Lys−OPinのベンゼンスルホン酸塩(800m
g、1.03ミリモル)をエタノールに溶解する。シア
ナミド(210mg、5.0ミリモル)を添加し、混合物
を還流下に加熱する。アミン出発物質のニンヒドリンス
ポットの消失と生成物のサカグチ線の出現を観察するR
P−TLCで反応の進行を監視する。7日後に、アミン
はもはや検出できず、溶液を真空で濃縮する。残留物を
MeOHに溶解し、セファデックスLH−20カラム
(5×55cm)でMeOHでクロマトグラフィー精製を
行う。所望の生成物を白色泡状物質として得る。 αD=−40.8°(c=0.5;CH2Cl2溶媒)。
【0065】実施例7〜29 実施例1〜6の方法と類似の方法によって、式
【化28】 (式中、R4、R5'、R11、Q1+Q2、およびAAは下
表Iに示した内容を有する)の化合物を得ることができ
る。
【0066】
【表1】
【0067】実施例30 Boc−D−TMSal−Pro−BoroMpg−O
Pin (A) (+)−ピナンジオール−(S)−1−クロロ−4−
メトキシ−ブタン−1−ボロネート 3−メトキシ−1−プロペン(6.0g、83.3ミリモ
ル)をカテコールボラン(10.0g、83.3ミリモ
ル)と100℃で24時間反応する。粗製物を真空で蒸
留して、3−メトキシ−プロパン−1−ボロネートを無
色の油状物質として得る。(+)−ピナンジオール(1
0.6g、62.5ミリモル)をTHFに溶解し、先に合
成した3−メトキシ−プロパン−1−ボロネート(1
2.0g、62.5ミリモル)をこれに添加する。室温で
1時間後、THFを真空で留去し、残留物をフラッシュ
クロマトグラフィー(ヘキサン/EtOAc、80:2
0)により精製し、(+)−ピナンジオール−3−メトキ
シ−プロパン−1−ボロネートを無色の油状物質として
得る。
【0068】オーガノメタリックス、3巻、1284頁
(1984年)に報告された方法により、所望の(+)−
ピナンジオール−(S)−1−クロロ−4−メトキシ−ブ
タン−1−ボロネートを製造する。即ち、塩化メチレン
(2.2ml)のTHF溶液を−100℃に冷却し、n−
ブチルリチウム(1.6M溶液13.8ml、22.0ミリ
モル)を20分間かけて加える。−100℃で15分間
後、(+)−ピナンジオール−3−メトキシ−プロパン−
1−ボロネート(5.04g、20ミリモル)のTHF
溶液を加え、さらに無水ZnCl2(1.42g、10.
0ミリモル)を加える。−100℃でさらに15分間保
ち、反応混合物を室温に加温し、この温度で2時間撹拌
する。溶媒を真空で留去し、残留物をエーテルで希釈
し、水で洗浄する。有機層をNa2SO4で乾燥して、濃
縮し、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/Et
OAc、9:1)により精製して、所望の(+)−ピナン
ジオール−(S)−1−クロロ−4−メトキシ−ブタン−
1−ボロネートを無色の油状物質として得る。
【0069】(B) Boc−D−TMSal−Pro−
BoroMpg−OPin LiN(SiMe3)2 のTHF溶液(1.0M溶液5ml、
5.0ミリモル)を−78℃に冷却する。段階Aのα−
クロロ−ボロネート(1.53g、5.0ミリモル)のT
HF溶液をこれに添加する。−78℃で1時間撹拌後、
混合物を室温で15時間撹拌する。この時点で、反応混
合物を−78℃に再冷却し、HClのジオキサン溶液
(5.65N溶液2.7ml、15.0ミリモル)を加え、
溶液を−78℃で30分間、ついで室温で2時間撹拌す
る。混合物を−15℃に冷却し、実施例1のBoc−T
MSal−Pro−ONSu(2.28g、5.0ミリモ
ル)のCH2Cl2溶液を加え、さらにトリエチルアミン
(1.39ml、10.0ミリモル)を加えて、結合反応を
開始する。−15℃で1時間撹拌後、混合物を室温で2
時間撹拌する。混合物をハイフローで濾過し、真空で濃
縮する。残留物をEtOAcで希釈し、0.2N HC
l、5%NaHCO3で洗浄し、最後に食塩水で洗浄す
る。溶媒を留去して、油状物質を得、これをフラッシュ
クロマトグラフィー(EtOAc)により精製して、B
oc−D−TMSal−Pro−BoroMpg−OP
inを白色の泡状物質として得る。 αD=−48.8°(c=0.25;CH2Cl2溶媒)。
【0070】実施例31 Boc−D−(p−(TBDPS−O)メチル)Phal−Pro−
BoroOrn−OPin (A) Boc−D−(p−((1,1−ジメチルエチル)
ジフェニル−シリル)オキシ)メチル−フェニルアラニ
ン 反応物のアジド基を選択的に還元するため、チオフェノ
ール(7.27g、66.0ミリモル)をSnCl2(3.
12g、16.5ミリモル)のCH2Cl2懸濁液へ加え
る。トリエチルアミン(6.8ml、49.5ミリモル)を
加えると、黄色の溶液が得られる。Boc無水物(4.
8g、22.0ミリモル)を加え、さらに(3(2S),
4S−3−(2−アジド−3−(p−((1,1−ジメチ
ル)ジフェニル−シリル)オキシ−メチル)フェニル−1
−オキソ−プロピル)−4−(フェニル−メチル)−2
−オキサゾリジノン(95<の%、6.8g、11.0ミ
リモル)[ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカ
ル・ソサエティー、109巻、6881頁(1987
年)に報告された方法により製造]のCH2Cl2溶液を
加える。室温で2.5時間撹拌後、混合物をEtOAc
/2N NaOHで希釈し、ハイフローで濾過する。有
機層を2%NaHSO4水溶液、5%NaHCO3水溶液
で洗浄し、最後に食塩水で洗浄する。Na2SO4で乾燥
後、真空で濃縮して、得られた黄色の油状物質をフラッ
シュクロマトグラフィーにより精製して、(3(2S),4
S)−3−(2−(((第3級ブチルオキシ)−カルボニル)
アミノ)−3−(p−(((1,1−ジメチルエチル)ジフェ
ニル−シリル)オキシ)−メチル)−フェニル−1−オキ
ソプロピル)−4−(フェニルメチル)−2−オキサゾリ
ジノンを白色の泡状物質として得る。この化合物(2.
0g、2.88ミリモル)をTHF/水に溶解し、0℃
でその場で発生させたLiOOH(5.76ミリモル)
で加水分解する。0℃で1.75時間後、Na2SO
3(1.25g、9.9ミリモル)の水溶液を加える。T
HFを真空で留去し、残留物のpHを1〜2に調節し、
混合物をEtOAcで3回抽出する。合わせた有機層を
水洗し、Na2SO4で乾燥し、真空で濃縮する。ヘキサ
ン/エーテルから結晶化して、オキサゾリジノンを白色
結晶として得る。濾液を真空で濃縮し、所望の表題化合
物を泡状物質として得る。
【0071】(B) Boc−D−(p−(((1,1−ジメチル
エチル)ジフェニル−シリル)オキシ)−メチル)−フェ
ニルアラニン−Pro−ONSu 段階Aの表題化合物(1.6g、2.88ミリモル)およ
びp−ニトロフェノール(0.43g、3.12ミリモ
ル)の混合物のEtOAc溶液へ、0℃でDCC(0.
59g、2.88ミリモル)を加える。反応混合物を室
温で16時間撹拌する。0℃に冷却したのち、沈殿を濾
過し、冷EtOAcで洗浄する。濾液を真空で濃縮す
る。得られた油状物質(Boc−D−(p−TBDPS
−O−Me)−Phal−ONp)をそれ以上精製する
ことなく次の段階へ使用する。
【0072】Boc−D−(p−TBDPS−O−M
e)−Phal−ONp(2.2g、2.88ミリモル)
をTHFに溶解し、L−プロリン(365mg、3.17
ミリモル)およびEt3N(0.88ml、6.33ミリモ
ル)の水溶液をこれに加える。室温で15時間後、TH
Fを真空で留去する。10%クエン酸を添加することに
より、pH3に調節する。得られた油状の生成物をEt
OAcで数回抽出する。合わせた有機層を食塩水で洗浄
し、Na2SO4で乾燥し、真空で濃縮する。無色の油状
物質をフラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2/E
tOH、9:1でp−ニトロフェノールを溶出し、つい
でCH2Cl2/EtOH、80:20)により精製し
て、Boc−D−(p−TBDPS−O−Me)−Ph
al−Pro−OHを白色の泡状物質として得る。
【0073】このジペプチド(1.3g、2.06ミリモ
ル)をEtOAcに溶解する。0℃に冷却したのち、H
ONSu(220mg、2.47ミリモル)およびDCC
(330mg、2.06ミリモル)を加える。混合物を0
℃に再冷却し、ジシクロヘキシル尿素を濾過し、冷Et
OAcで数回洗浄する。濾液を0.1%Na2CO3水溶
液、8%NaHSO4水溶液、ついで食塩水で洗浄す
る。Na2SO4で乾燥後、真空で濃縮して、表題の化合
物Boc−D−(p−TBDPS−O−Me)−Phal
−Pro−ONSuを白色の泡状物質として得る。
【0074】(C) Boc−D−(p−TBDPS−O−M
e)−Phal−Pro−Baa−OPin 実施例1cのBoc−D−TMSal−Pro−Baa
−OPinの合成で報告した方法と同様の1ポット−3
段階法により、表題の化合物を得る。即ち、キラルなα
−クロロ−ボロネート((+)−ピナンジオール−(S)−
1−クロロ−4−ブロモ−ブタン−1−ボロネート)
(659mg、2.0ミリモル)をLiN(SiMe3)
2(2.0ミリモル)と反応し、HClで加水分解するこ
とによって得られた中間体α−アミノ−ボロネートを段
階Bの活性エステル(1.45g、2.0ミリモル)とE
3N(4.0ミリモル)の存在で反応させ、表題化合物
を得る。これをフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサ
ン/EtOAc、1:1)により精製する。
【0075】(D) Boc−D−(p−TBDPS−O−Me)−P
hal−Pro−BoroOrn−OPin 段階Cの生成物(680mg、0.72ミリモル)をDM
SOに溶解し、アジ化ナトリウム(94mg、1.44ミ
リモル)を添加する。混合物を室温で4時間撹拌する。
エーテル/氷水を加えると、直ちに白色の結晶が混合物
から沈殿する。白色沈殿を濾取し、水洗して、Boc−
D−(p−TBDPS−O−Me)−Phal−Pro−
NH−CH((CH2)33)B−OPinを白色結晶性化
合物として得る。このアジ化物(272mg、0.3ミリ
モル)をEtOAcに溶解し、リンドラー触媒の存在で
水素化する。8時間後、触媒を除去し、溶液を真空で濃
縮する。粗製物をフラッシュクロマトグラフィー(Et
OAc、ついでEtOH)により精製して、所望の表題
化合物を白色の泡状物質として得る。 αD=−32.4°(c=0.25;MeOH溶媒)。
【0076】実施例32 Boc−D−(p−OH−Me)−Phal−Pro−BoroOrn−
OPin 実施例31のボロ−オルニチン(132mg、0.15ミ
リモル)をTHFに溶解し、n−Bu4NF(1.1M溶
液0.3ml、0.3ミリモル)と反応する。室温で45分
間後、氷水を加え、得られた混合物をEtOAcで数回
抽出する。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥し、真空
で濃縮する。得られた油状物質をショートクロマトグラ
フィー(EtOAc、ついでEtOH)により精製し
て、所望の表題化合物を白色の泡状物質として得る。 αD=−34.0°(c=0.1;MeOH溶媒)。
【0077】実施例33 Boc−D−TMS−al−Adgly−boroPr
o−OPin (A) L−1−アダマンチルグリシン (3(2S),4S)−3−(2−アジド−2−アダマンタ−
1−イル−1−オキソエチル)−4−(フェニルメチル)
−2−オキサゾリドン(95<の%、9.86g、25.0
ミリモル)[ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミ
カル・ソサエティー、109巻、6881頁(1987
年)に報告された方法により製造]をTHF/H2
(3:1)の混合液320mlに溶解し、0℃に冷却し、
過酸化水素4当量およびLiOH 2当量と混合する。
得られた混合物を反応物が消費されつくすまで0℃で撹
拌し(30分間)、10%過剰の1.5N Na2SO3
溶液で0℃で過酸化物(ペルカルボキシレート)を失活
させる。NaHCO3水溶液で緩衝化(pH9〜10)
したのち、混合物をEtOAcで数回抽出し、オキサゾ
リジノンのキラルな副生物を除去する。酸性(pH1〜
2)にした水層をEtOAcで抽出し、Na2SO4で乾
燥し、真空で濃縮することにより、生成物カルボン酸を
単離する。所望の(S)−アジド−アダマンタ−1−イル
酢酸を白色結晶として単離し(5.29g)、それ以上
精製することなく次の段階に使用する。2(S)−アジド
−アダマンタ−1−イル酢酸(5.29g、22.5ミリ
モル)をEtOH 110mlおよび2N HCl 11.3
mlに溶解し、10%Pd/C 0.7gの存在で水素化す
る。2.5時間後、触媒を除去し、溶液を真空で濃縮し
て所望のアミノ酸を塩酸塩として得る。得られた塩酸塩
をH2O 40mlに懸濁し、固体NaHCO3 1.9gで
処理する。得られたアミノ酸を濾取し、数回水洗する。
真空乾燥後、L−1−アダマンチル−グリシンを白色結
晶性化合物として得る。 [α]D 20=+3.0°(c=1.0;MeOH溶媒)。
【0078】(B) Boc−D−TMSal−Adgl
y−ONSu 実施例1のBoc−D−TMSal−ONp(7.71
g、20.2ミリモル)をTHFに溶解し、1−アダマ
ンチル−グリシンおよびEtN3の等モル量の水溶液を
加える。室温で20時間後、THFを真空で留去し、水
性残留物を0.1N HCl 150mlで希釈し、ついで
EtOAcで数回抽出する。合わせた有機層を食塩水で
洗浄し、Na2SO4で乾燥して、真空で濃縮する。油状
の生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(CH2
2)に掛け、ジペプチドBoc−D−TMSal−A
dgly−OHを油状物質として得る。Boc−D−T
MSal−Adgly−OH(6.9g、15.2ミリモ
ル)をEtOAc 80mlに溶解する。0℃に冷却し、
HONSu(2.1g、18.0ミリモル)およびDCC
(3.1g、15.2ミリモル)を添加する。混合物を0
℃で3時間、ついで室温でさらに15時間撹拌する。混
合物を0℃に再冷却して、ジシクロヘキシル尿素を濾去
し、EtOAcで洗浄する。濾液を0.1MNaHCO3
水溶液、ついで2%KHSO4水溶液で洗浄する。Na2
SO4で乾燥後、真空で濃縮して、Boc−D−TMS
al−Adgly−ONSu(7.2g)を白色の泡状
物質として得る。
【0079】(C) Boc−D−TMSal−Adgl
y−boroPro−OPin 実施例1cのBoc−D−TMSal−Pro−Baa
−OPinの合成で報告した方法と同様の1ポット−3
段階法により、表題化合物を得る。立体障害性のある段
階Bの活性エステル(2.7g、5.0ミリモル)の低い
反応性ため、キラルなα−クロロ−ボロネート((+)−
ピナンジオール−(S)−1−クロロ−4−ブロモ−ブタ
ン−1−ボロネート)(1.7g、5.0ミリモル)をリ
チウムヘキサメチルジシラザン(5.0ミリモル)と反
応させ、HClで加水分解して得られた中間体α−アミ
ノ−ボロネートを環化してボロ−プロリン誘導体とし、
ついでこれを段階Bの活性エステルと反応すると、予想
外にもBoc−D−TMSal−Adgly−boro
Pro−OPinが主生成物として得られる。粗製物を
フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/EtOA
c、2:1)により精製して、表題化合物(0.48
g)を白色の泡状物質として得る。これをエーテル/ヘ
キサンから再結晶してさらに精製することにより、所望
の生成物Boc−D−TMSal−Adgly−bor
oPro−OPinを白色結晶性化合物として得る。m
p:187〜188℃。 [α]D 20=+2.8°(c=1.0;CH2Cl2
媒)。 この発明によって下記の各事項が可能となる。 (1)式(I)
【化29】 [式中、Wは水素またはN−保護基、Yはn個のアミノ
酸からなる配列(ここで、nは1〜10の整数で、配列
中、少なくとも1個のアミノ酸は疎水性側鎖を有する非
天然アミノ酸である)であって、n+1個のアミノ酸ペ
プチド、Y−LysまたはY−Argはトリプシン様プ
ロテアーゼの活性部位に対して親和性を有するような配
列、Q1およびQ2は同一でも異なってもよく、−OH、
−COR1、−CONR12、−NR12、または−O
3から選ばれ、またはQ1およびQ2は一緒になってジ
オール残基を作り、R1、R2およびR3は同一でも異な
ってもよく、C110アルキル、C610アリール、C6
10アラルキル、またはC14アルキル、ハロゲンおよ
びC14アルコキシから選ばれた3つまでの基によって
置換され得るフェニル、R4は水素またはC110アルキ
ル、R5は−A−X基(ここで、Aは−(CH2)z−(式
中、zは2、3、4、または5である)、または−CH
(CH3)−(CH2)2−、−CH2−CH(CH3)−CH2
−(CH2)2−CH(CH3)−、−(CH2)2−C(CH3)2
−、−CH(CH3)−(CH2)3−、−CH2−CH(C
3)−(CH2)2−、−CH2−CH2−CH(CH3)−C
2−、(CH2)3−CH(CH3)−、−(CH2)3−C(C
3)2、C610アリール、C610アラルキル、Xは−
NH2、−NH−C(NH)−NH2、−S−C(NH)−N
2、−N3、C14アルコキシ、C14アルキルチオ、
または−Si(CH3)3である)であり、またはR4およ
びR5は一緒になってトリメチレン基を作り、*印で示
した不斉炭素原子はD−またはL−配置を有し得、また
はこれらの任意の混合物を表し得る]で示される化合
物。 (2)WがH(CH2CH2O)p、R6CO−、R7OCO
−、またはR8SO2−(ここで、pは3〜30、R6
16アルキル、R7はC16アルキル、フェニル、ベ
ンジル、またはナフチル、R8はフェニル、ナフチル、
またはC14アルキルフェニルである)である1に記載
の化合物。 (3)式(Ia)
【化30】 (式中、W、Y、R4およびR5は1または2の記載と同
意義、R9およびR10はジヒドロキシ化合物の残基であ
る)で示される1または2に記載の化合物。 (4)Q1およびQ2が一緒になって、式(a)または
(b)
【化31】 で示される基を表す1または2に記載の化合物。 (5)非天然アミノ酸が、式(II)
【化32】 −NH−CH(−R11)−C(=O)− (II) (式中、R11は疎水基である)で示されるアミノ酸であ
る1〜4の何れか1項に記載の化合物。 (6)R11がR11'であって、式(c)、(d)、
(e)、(f)、(g)、(h)、または(i)
【化33】 で示される基である5に記載の化合物。 (7)Yは2つのアミノ酸からなる配列であって、その
N−末端アミノ酸が非天然アミノ酸であり、残りのアミ
ノ酸がL−プロリンである1に記載の化合物。 (8)式(III)
【化34】 で示される1に記載の化合物。 (9)式(IV)
【化35】 で示される1に記載の化合物。 (10)式(V)
【化36】 で示される1に記載の化合物。 (11)(i) Xが−NH−C(NH)−NH2である場合
は、式(I)(式中、Xは−NH2である)の化合物を
シアナミドと反応させ、 (ii) Xが−NH2である場合は、式(I)(式中、Xは
−N3である)の化合物を水素化し、 (iii) Xが−N3である場合は、式(VI)
【化37】 [式中、W、Y、Q1およびQ2は1の記載と同意義、R
12は−A−Br(ここで、Aは1の記載と同意義)であ
る]の化合物をアジ化ナトリウムと反応し、 (iv)Xが−Si(CH3)3またはO−アルキルである場
合は、式(VII)
【化38】 [式中、Q1およびQ2は1の記載と同意義、R13は−A
−Br、A−O−アルキルまたは−A−Si(CH3)3
(ここで、Aは前記と同意義)である]で示される化合
物をLiN[Si(CH3)3]2と反応し、ついで酸加水分
解して、 式(VIII)
【化39】 (式中、WおよびYは1の記載と同意義ある)で示され
る保護ペプチドと結合させることを含む1に記載の式
(I)の化合物の製造方法。 (12)1〜10の何れか1項に記載の化合物のトリプ
シン様セリンプロテアーゼ阻害物質としての用途。 (13)1〜10の何れか1項に記載の化合物を製薬上
許容し得る添加剤および/または希釈剤とともに含有し
てなる治療用組成物。 (14)トリプシン様セリンプロテアーゼ阻害に使用す
る13に記載の治療用組成物の用途。 (15)トリプシン様セリンプロテアーゼがトロンビ
ン、第Xa因子、カリクレイン、プラスミン、プロリル
エンドペプチダーゼ、およびIg AIプロテアーゼで
ある12および14に記載の用途。 (16)1〜10の何れか1項に記載の化合物を製薬上
許容し得る添加剤および/または希釈剤とともに含有し
てなる抗トロンボゲン活性を有する治療用組成物。 (17)1〜10の何れか1項に記載の化合物のトロン
ビン阻害剤としての用途。 (18)式(IIa)
【化40】 H2N−CH(−R11")−C(=O)−OH (IIa) [式中、R11"は6に記載した式(d)、(e)、
(f)、(g)、(h)または(i)の基である]で示
される非天然アミノ酸。
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Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I) 【化1】 [式中、Wは水素またはN−保護基、 Yはn個のアミノ酸からなる配列(ここで、nは1〜10
    の整数で、配列中、少なくとも1個のアミノ酸は疎水性
    側鎖を有する非天然アミノ酸である)であって、n+1
    個のアミノ酸ペプチド、Y−LysまたはY−Argは
    トリプシン様プロテアーゼの活性部位に対して親和性を
    有するような配列、 Q1およびQ2は同一でも異なってもよく、−OH、−C
    OR1、−CONR12、−NR12、または−OR3
    ら選ばれ、またはQ1およびQ2は一緒になってジオール
    残基を作り、 R1、R2およびR3は同一でも異なってもよく、C110
    アルキル、C610アリール、C610アラルキル、また
    はC14アルキル、ハロゲンおよびC14アルコキシか
    ら選ばれた3つまでの基によって置換され得るフェニ
    ル、 R4は水素またはC110アルキル、 R5は−A−X基(ここで、Aは−(CH2)z−(式中、z
    は2、3、4、または5である)、または−CH(CH3)
    −(CH2)2−、−CH2−CH(CH3)−CH2−、−(C
    2)2−CH(CH3)−、−(CH2)2−C(CH3)2−、−
    CH(CH3)−(CH2)3−、−CH2−CH(CH3)−(C
    2)2−、−CH2−CH2−CH(CH3)−CH2−、−
    (CH2)3−CH(CH3)−、−(CH2)3−C(CH3)
    2−、C610アリール、C610アラルキル、 Xは−NH2、−NH−C(NH)−NH2、−S−C(N
    H)−NH2、−N3、C14アルコキシ、C14アルキ
    ルチオ、または−Si(CH3)3である)であり、または R4およびR5は一緒になってトリメチレン基を作り、 *印で示した不斉炭素原子はD−またはL−配置を有し
    得、またはこれらの任意の混合物を表し得る]で示され
    る化合物。
  2. 【請求項2】 (i) Xが−NH−C(NH)−NH2であ
    る場合は、式(I)(式中、Xは−NH2である)の化
    合物をシアナミドと反応させ、 (ii) Xが−NH2である場合は、式(I)(式中、Xは
    −N3である)の化合物を水素化し、 (iii) Xが−N3である場合は、式(VI) 【化2】 [式中、W、Y、Q1およびQ2は請求項1の記載と同意
    義、R12は−A−Br(ここで、Aは請求項1の記載と
    同意義)である]の化合物をアジ化ナトリウムと反応さ
    せ、 (iv)Xが−Si(CH3)3またはO−アルキルである場
    合は、式(VII) 【化3】 [式中、Q1およびQ2は請求項1の記載と同意義、R13
    は−A−Br、A−O−アルキルまたは−A−Si(C
    3)3 (ここで、Aは前記と同意義)である]で示され
    る化合物をLiN[Si(CH3)3]2と反応させ、ついで
    酸加水分解し、更に式(VIII) 【化4】 (式中、WおよびYは請求項1の記載と同意義ある)で
    示される保護ペプチドと結合させることを含む請求項1
    に記載の式(I)の化合物の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の化合物を含む、トリプシ
    ン様セリンプロテアーゼ阻害剤。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の化合物を含む、抗トロン
    ボゲン活性を有する剤。
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