JP2535402B2 - 高温炉用断熱構造体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、高温炉用断熱構造体に関する。

（従来の技術） 高温炉、例えば熱間静水圧加圧装置（以下、HIP装置
という）は、上蓋と下蓋とを有する高圧容器内に円筒状
の断熱層を配置すると共に、この断熱層内に加熱装置を
配置し、金属粉末、セラミック或いはこれらの混合物か
ら成る被処理体を断熱座上に載置した後、高圧容器内に
アルゴンガス、窒素ガス等を封入して、加圧ガス雰囲気
中で被処理体を焼結するようになっている。

この種のHIP装置では、その性能を基本的に支配する
重要なものは断熱層であり、また加圧ガス雰囲気下とい
う特殊な条件で使用されるため、通常の断熱層とは違っ
た構成が要求される。

そこで、例えば、特開昭57−101601号公報に開示され
る如く、気体浸透性の小さいシートを多層に積層すると
共に、そのシート相互間にワイヤーを介して小さい隙間
を形成した断熱層が使用されている。これは、シート相
互の接触面積が非常に小さいので、断熱性に優れた利点
がある。

（発明が解決しようとする課題） しかし、従来の断熱層は、ワイヤーで網体を構成し、
この網体とシートとを重ね合わせて多層に積層した構造
であって、網体とシートとが別個のものであるため、実
際上、組立作業が極めて煩雑であり、特に大型用の場合
には作業が困難で、均一に組立てることは実際上不可能
であった。従って、断熱性能に局部的不均一が生じる欠
点があった。

また加熱、冷却を繰返すので、使用中に網体がずれて
下方に下がり、上部の断熱性能が劣化してしまう惧れが
あり、特に網体のワイヤーがカーボン材のように自立性
が全くない場合にはこの傾向が著しくなっていた。

本発明は、このような従来の課題に鑑み、組立作業が
容易であると共に、断熱性能が均一で安定し、しかも使
用中のずれ等がなく耐久性に優れた断熱構造体を提供す
ることを目的とする。

（課題を解決するための手段） 本発明は、そのための手段として、気体浸透性の小さ
いシート９を多層に積層すると共に、シート９相互間に
ワイヤー10を介して小さい隙間13を形成して成る断熱層
４を高圧容器１内に配置し、この断熱層４の内側に加熱
装置６を設け、加圧ガス雰囲気中で使用するようにした
高温炉において、シート９にワイヤー10を縫付けたもの
である。

（作 用） 気体浸透性の小さいシート９にワイヤー10を縫付けて
いるので、組立時にこれらを一体物として取扱うことが
でき、作業が非常に容易であり、また大型の場合でも、
全体にわたって均一に組立ることができ、断熱性能が均
一で安定している。

更にワイヤー10をシート９に縫付けているため、加
熱、冷却の過程等で使用中にワイヤー10が下方にずれる
こともなく、耐久性に優れ寿命が長くなる。

（実施例） 以下、図示の実施例について本発明を詳述する。

第２図はHIP装置を示し、１は高圧容器で、この高圧
容器１の上下開口端には上蓋２及び下蓋３が気密状に嵌
着されている。４は円筒状の断熱層で、高圧容器１内に
配置されており、この断熱層４の上部には上部断熱層５
が設けられている。６は加熱装置で、断熱層４の内側に
配設されている。７は断熱座、８は被処理体である。

断熱層４は、第１図に示すように、気体浸透性の小さ
いシート９にワイヤー10を一体に縫付けた構造体11を使
用し、これを芯金用の円筒体12に多層に巻付けて積層状
に形成したものであって、シート９相互間にはワイヤー
10の線径に相当する小さな隙間13が形成されている。な
お、シート９は例えば厚さ0.38mmの可撓性黒鉛から成
り、ワイヤー10は線径0.5mmのカーボンヤーンから成
る。

シート９に対するワイヤー10の縫付け形態は、第３図
及び第４図に示す如く、ワイヤー10がシート９の表裏に
交互に出るようにして、全体にわたって平行に縫付けて
も良いし、また第５図及び第６図に示す如く、シート９
の表裏に対応して２本のワイヤー10を使用し、これらワ
イヤー10を絡ませて縫付けても良い。

更にワイヤー10は平行に限らず、第７図に示す縦横の
クロス状、或いは第８図に示す斜めクロス状等に配置し
ても良いし、第９図に示す同心円状に配置しても良く、
シート９の全面にわたって略均等にワイヤー10が分布す
るように縫付ければ十分であり、方法、配列等は特に問
題とはならない。

このような構成の断熱構造体11を用いれば、ワイヤー
10を縫付けたシート９を円筒体12に単に巻付ければ良い
ので、組立作業が極めて容易であり、シート９を容易か
つ整然と積層できる。またシート９の表面とワイヤー10
は線接触状態にあるので、接触面積が極めて小さく、し
かもシート９相互間の隙間13をワイヤー10によって更に
小空間に分割できるので、隙間13内でのガス流動を抑制
でき、断熱性能が向上する。更に、シート９とワイヤー
10が一体であり、整然と円筒体12に巻付けることができ
るので、全体にわたって均一に組立ることができ、断熱
性能の局部的な不均一がなく、断熱性能が均一で安定し
たものになる。また使用中にワイヤー10が下方にずれる
こともなく、しかも長期間の使用でシート９にクラック
が入った場合でも、ワイヤー10がクラックの進展を抑制
するので、耐久性に優れており寿命が大幅に向上する。

シート９及びワイヤー10の材質は、使用条件、即ち最
大温度領域、ガス雰囲気等に応じて適宜選択すれば良
い。

例えば最大温度領域1250℃のアルゴンガスと酸素ガス
との混合ガス雰囲気中で使用する場合には、シート９及
びワイヤー10ともニッケル合金製とし、また最大温度領
域が1700℃の場合にはシート９をセラミックペーパーと
し、ワイヤー10をセラミックヤーンとする。

更に最大温度領域1500℃のアルゴンガス雰囲気中で使
用する場合には、シート９及びワイヤー10ともモリブデ
ン製とし、また最大温度領域2600℃のアルゴン、チッ素
ガス雰囲気中で使用する場合には、シート９を可撓性黒
鉛、ワイヤー10をカーボンファイバーとする。

シート９間の間隔は2mm以下が好ましい。これは、2mm
程度以下であれば、流体力学的な境界層の厚み近くにな
り、ガスの流動が極めて少なくなるからである。

またシート９の厚みは、断熱性に殆んど寄与しないの
で、ハンドリングできる範囲で薄いことが好ましい。

（発明の効果） 本発明によれば、シート９にワイヤー10を縫付けて断
熱構造体11を構成しているので、従来に比較して、組立
作業が非常に容易であると共に、断熱性能が均一で安定
し、しかも使用中のずれ等がなく耐久性に優れている。

【図面の簡単な説明】 図面は本発明の実施例を示し、第１図は断熱層の拡大断
面図、第２図はHIP装置の断面図、第３図は構造体の斜
視図、第４図はその断面図、第５図は構造体の斜視図、
第６図はその断面図、第７図は構造体の斜視図、第８図
及び第９図は構造体の平面図である。 １……高圧容器、４……断熱層、６……加熱装置、９…
…シート、10……ワイヤー、11……断熱構造体、13……
隙間。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】気体浸透性の小さいシート（９）を多層に
   積層すると共に、シート（９）相互間にワイヤー（10）
   を介して小さい隙間（13）を形成して成る断熱層（４）
   を高圧容器（１）内に配置し、この断熱層（４）の内側
   に加熱装置（６）を設け、加圧ガス雰囲気中で使用する
   ようにした高温炉において、シート（９）にワイヤー
   （10）を縫付けたことを特徴とする高温炉用断熱構造
   体。