JP2534166B2 - 高周波磁気特性に優れた非晶質合金薄帯の製造方法 - Google Patents

高周波磁気特性に優れた非晶質合金薄帯の製造方法

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JP2534166B2
JP2534166B2 JP3099740A JP9974091A JP2534166B2 JP 2534166 B2 JP2534166 B2 JP 2534166B2 JP 3099740 A JP3099740 A JP 3099740A JP 9974091 A JP9974091 A JP 9974091A JP 2534166 B2 JP2534166 B2 JP 2534166B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、200KHz以上の高い周
波数において使用される各種ノイズフィルター、ノイズ
アブソーバー、可飽和リアクトル、高周波トランスその
他のコイルやインダクタンス素子用の巻磁心用素材とし
て好適な非晶質合金薄帯の製造法に関わるものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の小型化が急速に進み、
それにともない電子機器に搭載する直流安定化電源装置
の小型化、薄型化、軽量化に対する市場の要求が強まっ
ている。電源装置の小型化には電源回路中に大きなスペ
ースを占めるコイルやインダクタンス部品の小型化が急
務である。その手段として動作周波数を数百KHz 以上に
高周波化したスイッチング電源装置の開発が進められて
いる。これらスイッチング電源用磁性部品に用いられる
磁心材料として、最近非晶質合金薄帯を巻回した磁心が
使用され始めている。非晶質合金磁性材料は、電気抵抗
が通常金属の約3倍高く、また製造プロセス的に薄い材
料が容易に得られることから、渦電流損失が少ないとい
う性質をもっている。このため高周波領域において高透
磁率、低鉄損なる特性を有し、磁性部品の小型化、高効
率化ニーズに対して、極めて良い適合性をもっている。
しかしこのような非晶質磁心材料にとっても、電源回路
の動作周波数が従来の数十KHz から数百KHz さらには数
MHz と高周波化が進むにつれて、磁心からの発熱を極力
低減することが要求されるようになってきている。
【0003】ところで高周波領域において巻磁心の発熱
を低減するには非晶質合金素材の厚みを薄くし渦電流に
対する電気抵抗を大きくする事が有効である。非晶質合
金薄帯を製造する方法としては、一般に単ロール式液体
急冷法、すなわち、合金溶解るつぼ底面にスリットを設
けたノズルから、溶融合金を加圧して高速回転する冷却
ロール上に射出し、連続的に非晶質合金薄帯を製造する
方法が用いられる。この方法は1971年8 月15日付け毎日
新聞に東北大学増本教授らのグループが発表して以来、
連続的な非晶質合金薄帯を得る方法として広く知られて
いる。しかしこの方法で薄帯厚みを18μm 以下に薄くす
ると薄帯に雰囲気ガスの巻き込みによると考えられるピ
ンホール状の穴が多数発生し良好な表面性状が得られな
いため、100KHz以上の高周波磁心用素材として使用する
に十分な磁気特性が得られない。
【0004】また、特公昭61-5820 号公報には、平坦流
鋳造法 "planar flow casting"といって、ノズル底面と
冷却表面との間隔が0.03〜1mm となる位置にノズルを配
置し、溶融合金を加圧してノズル底部に設けたスリット
より押出し、溶融合金の均一な層をノズル底面と冷却表
面の両者によって機械的に支持することにより、連続的
に非晶質合金薄帯を製造する方法が開示されている。し
かし、この方法では薄帯の厚みは冷却表面とノズル底面
との間隔によって決まるため、厚さが10μm の薄帯を得
るにはこの間隔を0.01mm近くにまで接近させる必要があ
るが、この間隔を0.03mm以下にすると、溶融合金の均一
な層が冷却表面とノズル底面の間で完全に固化してしま
い固体接触状態となってノズルの破損が生じる。このた
め、この方法によって 20 μm 以下の薄帯を得ることは
できない。一方、冷却表面とノズルとの間での溶融合金
の固化によるノズル破損を防ぐには冷却基材の移動速度
を早めればよいが、冷却基材の移動速度を 2000m/ 分以
上に早めると固化に役立つ時間が減少し溶融合金が冷却
基材を十分にぬらさないため溶融合金の均一な層が維持
されなくなり、薄い多孔質な商品価値のない薄帯しか得
られない。さらには冷却基材とノズルとの固体接触を防
ぐため、ノズル底面の形状寸法に細かい制約がありコス
ト高の要因となる上、底面積を広くできないのでスリッ
トの強度が不十分で欠けやすいという欠点も有する。ま
たこの方法は、薄帯が冷却表面上に留まる時間が長いた
め、冷却基材としてロールを用いた場合、条件によって
は薄帯が冷却表面から離脱せず、ロールの周囲に付いて
運ばれ、ノズルに衝突してノズルを破損する危険性が高
い。したがってこの方法では高周波磁心用素材として好
適な厚さの薄い非晶質合金薄帯を得ることはできない
【0005】また、特開昭63-317639 号公報には、特定
組成の合金を真空雰囲気下で射出することにより製造さ
れた厚さが 10 μm 以下でかつ表面性状の良好な高透磁
率、低損失の極薄非晶質合金が開示されている。この方
法では製造できる合金組成範囲が狭く限定されており、
製造にあたっても溶融合金が回転冷却体に接触する間の
雰囲気を0.01Torr以下の減圧大気中または60Torr未満の
不活性ガス雰囲気とする必要があるためチャンバーが大
きくなればなるほど真空引きに時間を要する上、不活性
ガスの使用量も増大する。さらにはノズル先端のスリッ
トの厚みは0.2mm 以下と非常に狭い上、射出ガス圧も0.
02Kg/cm2程度と小さく、射出中の溶湯の温度変動などに
よってノズルつまりを起こしやすいなど、実験室的には
製造できても、量産には不向きである。
【0006】さらには、ここに紹介したような従来のど
のような単ロール式液体急冷法においても、溶融合金は
凝固するまでの一定時間、ロール表面に接触したまま所
定の回転角を移動し、その間凝固がロール面側より自由
凝固面側へ徐々に進行し、凝固完了後にロールから離れ
る。このため薄帯の飛行方向は水平方向より下方とな
る。しかし、このように従来の方法で作られた薄帯に生
じる磁区は薄帯の長手方向に細長い 180゜磁壁ができや
すく、磁化過程において磁壁移動が主流となる。このた
め磁化回転が主流となる200KHz以上の高周波領域で急激
に保磁力が増大する。すなわち薄帯の飛行方向が水平方
向より下方の時に得られる薄帯の磁気特性は、薄帯厚み
を薄くすることにより渦電流損失は低減できるが、保磁
力の周波数依存性が大きく商用周波数から100KHz程度ま
では良好な磁気特性を示すものの、それ以上の高周波領
域では急激に保磁力が増大し磁心の発熱が大きくなるの
である。なお、この傾向は可飽和リアクトルのような非
線形磁心を磁気飽和させて使用する場合において特に顕
著である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように従来技術に
よって厚さ20μm 以下の極薄の非晶質合金薄帯を工業的
に量産することは不可能である上、従来の技術では200K
Hz以上での保磁力の周波数依存性が大きく高周波になる
ほど保磁力が増大し磁心の発熱を伴う。このため電源装
置の動作周波数の高周波化に対応して磁心の発熱を低減
することは容易ではなく、高周波においても発熱しない
ような非晶質合金薄帯を工業的に生産する方法が切望さ
れている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る非晶質合金
薄帯の製造方法は、かかる従来技術の問題点を解決し、
動作周波数が200KHz以上のスイッチング電源等に
搭載される各種コイルやインダクタンス部品用磁心のい
っそうの発熱低減要求に応えるべく、板厚が13μm以
下で500KHz〜1MHz程度の高周波領域まで保磁
力の小さい非晶質合金極薄帯の製造方法を提供すること
を目的としたものであって、薄帯の厚みが薄く、かつ交
流磁化過程において回転磁化が生じやすい薄帯を作る方
法について鋭意検討した結果、冷却表面とノズルの間隔
を極端に近づけなくとも極薄の薄帯を製造できる条件を
見いだしたのに加えて、射出後の薄帯の飛行角度が薄帯
の高周波磁気特性、特に保磁力に大きく影響することを
見いだした。すなわち溶融合金を減圧雰囲気下で超高速
回転する冷却ロール上へ射出し薄帯をロール接線方向に
対して0〜15度上方へ、好ましくは約10度上方へ
び出す様な製造条件を選定することにより高周波磁気特
性に優れた薄帯が得られることを見いだしたのである。
【0009】すなわち本発明は、合金溶解るつぼ内の溶
融合金を加圧して、該合金溶解るつぼの底部に設けたノ
ズルから高速回転する冷却ロール上に溶融合金を射出
し、連続的に非晶質合金薄帯を製造する方法であって、
スリット厚みが0.2〜0.4mmのノズルを周速度2
000〜3500m/分で回転する冷却ロール表面の運
動方向に対して直角またはほぼ直角となるように配置
し、かつノズル先端と冷却ロール表面との間隔を0.0
5〜0.5mmとすると共に、前期間隔を0.01〜2
0Torrの減圧大気または減圧不活性ガス雰囲気中に
保持した後、合金溶解るつぼ内の溶融合金表面に前記の
雰囲気圧より0.2〜0.5Kgf/cm高いガス圧
をかけて加圧し、冷却ロール表面上に溶融合金を連続的
に押出し、さらに、溶融合金が冷却ロール表面に接触
後、ノズル先端面に接触することなしに、ロール回転方
向に対してスリット厚みの1.2〜3倍のロール接触長
さで凝固を完了させ、かつ冷却ロール表面の運動方向に
対して約10度上方へ帯状となるように飛び出させるこ
とにより厚さ5〜13μmの非晶質合金薄帯を形成する
ことを特徴とする高周波磁気特性に優れた非晶質合金薄
帯の製造方法である。
【0010】以下に本発明に係る非晶質合金薄帯の製造
方法における製造条件の限定理由について図2に基づい
て説明する。ノズル7は、冷却ロール3表面の運動方向
Mに対して直角またはほぼ直角となるように配置するの
は、この位置関係がずれるとノズル7が振動を起こしや
すく非晶質合金薄帯6が切れる原因となるためである。
また、ノズル7の先端面と冷却ロール3との間隔wを0.
05〜0.5mm 、好ましくは0.1 〜0.3mm とするのは、この
間隔を0.5mm 以上にすると板厚が厚くなり13μm 以下の
薄帯が得られないからである。非晶質合金薄帯6の厚み
を薄くするにはこの間隔wをできるだけ狭くする方がよ
い。これは、間隔wが大きくなるほど、冷却ロール3に
接触するまでの間に溶湯流がスリット幅方向に絞られ、
スリット厚み方向にふくらむため、薄帯幅が狭くなり、
薄帯厚みが厚くなるためである。一方ノズル7の先端と
冷却ロール3との間隔wが0.05mm以下になると、この間
隔wの制御に高度な技術が要求され実際的でない上、ノ
ズル7の熱膨張などによりノズルとロールが接触しノズ
ル破損にいたりやすい。
【0012】そこで、溶融合金2がノズル7の先端面と
接触することのないように冷却ロール3の回転速度を十
分に高速回転させる必要がある。実際には回転数は非晶
質合金薄帯6が水平方向より上方へ飛び出すように条件
を設定するが、この条件はノズル先端と冷却ロールとの
間隔w、溶融合金の射出温度、冷却ロール材質、射出ガ
ス圧、雰囲気圧、雰囲気ガスなどにより変動する。通常
は回転数を2000〜3500m/分とすると良好な非晶質合金薄
帯が得られやすい。また2000m/分以下だと薄帯の飛行方
向が水平より下方に向くため本発明の効果が得られな
い。回転速度が早いほど溶融合金が薄く引き延ばされ、
薄帯厚みを薄くでき、かつ凝固速度を高めることができ
るが、3500m/分以上でも薄帯の製造になんら問題はな
い。しかし、冷却ロールをこれ以上高速回転させると遠
心力によるロールやスピンドル部の強度が問題となり実
用的でない。
【0013】冷却ロール3表面とノズル7先端面の隙間
を0.01〜2Torr の減圧大気または減圧不活性ガス雰囲気
中に保持するのは、20Torr以上では雰囲気ガスが溶融合
金2と冷却ロール3との間に入り込み、薄帯の表面粗さ
が悪くなり、良好な磁気特性が得られない。一方、0.01
Torr以下では薄帯の雰囲気ガスによる冷却が不十分なた
め、完全な非晶質が得られない。なお、射出ガス圧( P
e)は冷却ロールの回転速度に応じて雰囲気ガス圧より0.
2 〜0.5Kgf/cm2高くすると良好な薄帯が得られやすい。
冷却ロール3の回転速度が早くなるほど冷却ロール上に
形成される湯溜まりを安定に保持するため射出ガス圧を
高く設定する必要がある。射出ガス圧が低いと湯溜まり
が不安定で所望の薄帯幅が得られなかったり、薄帯の縁
が中心部より薄く不規則形状になったりする。一方、射
出ガス圧が高すぎると薄帯厚みを13μm 以下にすること
ができなくなる。
【0014】ノズル先端に設けたスリット8の厚み(a)
を0.2 〜0.4mm とするのは、0.4mm以上では薄帯の厚み
を13μm 以下にはできない。このスリット8の厚みは小
さいほど極薄薄帯が得られやすく、他の条件が一定であ
ればスリット厚みaが0.1mm大きくなると薄帯の厚みは
約3 μm 厚くなるのでスリット厚みの寸法精度は重要で
ある。一方、スリット厚みaが0.2mm 以下では操業中の
製造条件のばらつきなどによりノズルつまりが生じやす
くなり薄帯の量産には適さない。
【0015】またロール接触長さ(b) をロール回転方向
に対してスリット厚み8の1.2 〜3倍というきわめて短
い長さで溶融合金2の凝固を完了する必要がある。その
理由はロール接触長さbがスリット8の厚みの3倍以上
では非晶質合金薄板の飛行方向が水平より下方に向くた
め本発明の効果が得られないからである。一方、溶融合
金2は冷却ロール3上でロール面のみとの濡れとノズル
先端の圧力( Po)によって安定な湯溜まりが形成される
が、この湯溜まりの大きさがスリット8の厚みの1.2 倍
より狭いと安定な湯溜まりができず非晶質合金薄帯は作
れない。さらに非晶質合金薄帯6の厚みは、高周波用磁
心の素材として渦電流損失を極力小さくし100KHz〜1MHz
程度の高周波領域にて幅広く使用できる磁心を得るため
に、少なくとも13μm 以下にする必要がある。しかし5
μm 以下になると薄帯の折れ曲がりが生じやすくなり、
かえって磁気特性に悪影響が現れる。
【0016】非晶質合金薄帯6の飛行方向を水平方向に
対して約10度上方とするのは、この条件が満足された
とき最も高周波磁気特性の良好な薄帯が得られるからで
ある。すなわち、この条件を満足させるとき極めて短時
間に溶融合金2を薄帯6の幅方向に均一に凝固させるこ
とができるからである。この際、溶融合金2は冷却ロー
ル3に接触するやいなやノズル先端に接触することなく
凝固し、ロール接線方向すなわち水平方向に飛び出して
行く。このときの飛行角度が実際には水平方向に対して
約10度上方となる。これは溶融合金の凝固の際、凝固
がロール回転方向に対してきわめて短い接触長さbで進
行する上、自由凝固面側の方がロール面側より凝固が一
瞬遅れて進行するためであり、薄帯には長手方向に凝固
歪が導入される。したがって、本発明による薄帯は自由
凝固面側に湾曲する傾向がある。この際に薄帯に導入さ
れる凝固歪が高周波磁気特性の向上に寄与する。すなわ
ち本発明の方法では、薄帯の厚みが薄くかつ薄帯表面は
ガス巻き込みによる穴がないため非常に滑らかであり磁
区形成において表面性状の影響を受け難い。これに加え
て凝固の際に導入される本発明特有の歪によって、微細
な垂直磁区が発達する。かかる垂直磁区は薄帯厚みが薄
いこともあって、熱処理しても180゜磁壁が生じにく
い。このような磁区構造は磁壁が多いため磁化過程にお
いて磁壁移動より磁化回転の方が容易に起きやすく、低
周波領域での保磁力は若干大きくなるものの、逆に高周
波領域では保磁力が小さくなり、保磁力の周波数依存性
が小さいものとなる。このため1MHz程度の高周波領
域まで磁心の発熱を低く抑えることが可能となる。
【0017】
【実施例】本発明の高周波磁気特性に優れた非晶質合金
極薄帯の製造方法は以下のようにして達成される。本発
明を実施するためには図1に示すような装置を用いた。
すなわち、該装置全体は0.01〜20Torrの減圧大気または
不活性ガス雰囲気に内部を調整した真空容器10に収容
されており、合金溶解るつぼ1はその下端に近接して冷
却ロール3を回転自在に位置させている。ノズル7は冷
却ロール3の表面の運動方向Mに対して直角またはほぼ
直角となるように配置されている。図2に示すように、
合金溶解るつぼ1の底面に設けたノズル7のスリット8
厚みaは0.3mm が最も適しているが、これを0.2〜0.4mm
の範囲に選定できる。またスリットの幅は所望の薄帯
幅に合わせて選定する。 また、上記ノズル7の先端と
冷却ロール3との間隔wを0.05〜0.5mm 、好ましくは0.
1 〜0.3mmに設定する。ここで合金溶解るつぼ1の代わ
りにタンディッシュを用いても差し支えないが、その場
合には溶湯温度を一定に保持するための手段が必要であ
る。さらに、合金溶解るつぼ1は、その周囲を囲む高周
波コイル4から構成された高周波誘導加熱装置によって
内部の合金を溶融するようになっている。
【0018】本発明は、合金溶解るつぼ1内に収容され
ている溶融合金2を高速回転する冷却ロール3上にノズ
ル7を経て射出し超急冷するのであるが、合金溶解るつ
ぼ1内にはあらかじめ所望の組成に調整された母合金を
装入しておき、高周波コイル4から構成される高周波誘
導加熱装置などの適宜の加熱手段により溶融合金を得
る。冷却ロール3の回転速度は周速で2000〜3500m/分と
するが薄帯の飛行角度に応じてこの範囲内で最適な回転
速度に調整する。ロール材質としては溶融合金2との濡
れ性や熱伝導度を考慮して銅合金あるいは鉄合金を選定
する。
【0019】ノズル7の先端面と冷却ロール3の表面と
の隙間は0.5 〜1Torr の減圧大気または減圧不活性ガス
雰囲気とする。ここで不活性ガスを使用する場合にはヘ
リウム、アルゴンまたは窒素が適している。溶融合金2
をノズル7からスリット8を通して冷却ロール3上へ射
出するため、冷却ロールの周速度に応じてノズル内に射
出ガス5を雰囲気圧との差圧で+0.2 〜0.5Kgf/cm2、好
ましくは、たとえば冷却ロール周速度が2500m/分の場合
には0.25〜0.3Kgf/cm2となるよう導入する。溶融合金の
射出中は溶融合金の温度管理が重要であり、最適射出温
度±5°Cの範囲内にコントロールする必要があり、大
気中へ射出する場合よりかなり狭い。最適射出温度は合
金組成によって異なるが一般に合金の融点より60〜110
℃高い領域にある。射出温度が高すぎる場合には薄帯は
冷却が不十分となり延性に欠けた脆い薄帯となり、薄帯
の保磁力が異常に増大する。一方射出温度が低すぎる場
合には薄帯の表面粗さが粗くなり磁気特性には反磁場の
影響が顕著に現れるようになる。以上のようにして得ら
れた薄帯は図示しない5 〜30m の充分な長さの飛行管に
補集する。飛行管の長さが短いと薄帯に折れ曲がりが生
じやすく歩留が悪化する。
【0020】Co68FeSi1611
なる基本組成の合金に、ロールとの濡れ性の改善を目
的としてNbを0.28at%添加した合金を調合、溶
解し非晶質合金作製用母合金とした。ここで非晶質合金
薄帯の製造にあたっては10mの飛行管を有しチャンバ
ー全体を減圧できる単ロール式液体急冷装置を使用し
た。非晶質合金薄帯の製造条件は次のとおりであった。 ノズルスリット形状:5.08mm×0.30mm ノズル材質:石英 ロール材質:銅(ロール表面はダイヤモンドバイトにて
旋削し鏡面仕上げ) ロール径:φ300(水冷無し) ロール回転数:2500rpm(周速2350m/分) ノズル底面とロール面との間隔:0.15mm 射出雰囲気ガス圧:0.5Torrの減圧大気 射出ガス圧:0.025kgf/cm 射出前ロール温度:25℃
【0021】このような条件にて合金溶湯を冷却ロール
上へ射出し、この様子を高速度ビデオカメラにて観察し
たところ、溶融合金はロールに接触後直ちに凝固し、薄
帯となって水平方向に対して約10度上方へ飛び出した。
飛行管内に補集された非晶質薄帯の寸法は、厚み 11.4
μm 、幅 4.8mm、表面粗さ Ra 0.1 μm であった。こ
の薄帯を、自由凝固面が巻心の外側になるようにして直
径10mmの巻心に巻回し、巻磁心を作製した。引続き巻磁
心の磁路方向に5A/mの磁界を印加しながら400℃にて1
時間歪取り焼鈍を行った後、磁心表面をエポキシ粉体塗
装し磁気特性評価用磁心とした。なお比較材として同装
置、同組成の合金を用い本発明外の次の条件で薄帯を製
造した。
【0022】ノズルスリット形状:5.10mm×0.
31mm ノズル材質:石英 ロール材質:銅(ロール表面はダイヤモンドバイトにて
旋削し鏡面仕上げ) ロール径:φ300(水冷無し) ロール回転数:1500rpm (周速1410m/
分) ノズル底面とロール面との間隔:0.2mm 射出雰囲気ガス圧:大気 射出ガス圧:0.025Kgf/cm 射出前ロール温度:25℃
【0023】このような条件にて合金溶湯を超急冷した
ところ、溶融合金はロールに接触後ロール回転角で約30
度ロール表面に接触したまま凝固し、その後薄帯となっ
て水平方向に対して約7度下方へ飛び出した。飛行管内
に補集された非晶質薄帯の寸法は、厚み 16.8 μm 、幅
4.95mm、表面粗さ Ra 0.5 μm であった。本発明と
同一の条件で巻回、熱処理、粉体塗装を行い磁気特性評
価用試料とした。両者の方法で製造した磁気特性評価試
料の特性値を比較すると、図3に示すように、本発明方
法によれば本発明外の方法に比べ保磁力が低くこの傾向
は高周波になるほど顕著になる。すなわち本発明の方法
によれば保磁力が低くかつ保磁力の周波数依存性の小さ
い磁心が得られる。
【0024】さらに本発明の磁心を動作周波数150KHzの
市販のマグアンプ方式のスイッチング電源に実装し、マ
グアンプコアとしての磁心の昇温量を測定したところ、
表1に示すように本発明方法による磁心の方が、本発明
外の方法に比べ2 〜4 ℃温度上昇が少なく、さらには本
実験に供した電源に実装されていた市販の磁心より7〜1
5℃温度上昇が少なく、本発明方法によって製作した非
晶質合金薄帯が高周波磁性材料として優れた特性を示す
ことがわかる。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、高
周波での保磁力が小さくかつ保磁力の周波数特性が小さ
いという優れた特徴を有する非晶質合金薄帯を得ること
が可能である。また、本発明の方法により得られた薄帯
を使用した磁心は、可飽和リアクトル、ノイズアブソー
バー( 可飽和型インダクタンス素子) 、ノイズフィルタ
ー( コモンモード用、ノーマルモード用、高電圧パルス
用) など、高周波で使用するコイル、インダクタンス部
品として用いることにより高周波化による磁心の発熱を
低減でき、スイッチング電源などの電子機器の小型化に
大きく寄与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る製造方法において用いられた装置
の概略図である。
【図2】本発明における溶融合金と冷却ロールの関係を
説明するための側断面図である。
【図3】本発明方法により製造した非晶質合金薄帯と本
発明以外の方法により製造した非晶質合金薄帯との保磁
力の周波数依存性を示す説明図である。
【符号の説明】 1 合金溶解るつぼ 2 溶融合金 3 冷却ロール 4 高周波誘導加熱装置 5 射出ガス 6 非晶質合金薄帯 7 ノズル 8 スリット 10 真空容器 M 冷却表面ロールの運動方向 a スリット厚み b スリット接触長さ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡野 重尚 富山県富山市石金20番地 株式会社不二 越内 (72)発明者 上田 保 富山県富山市石金20番地 株式会社不二 越内 (56)参考文献 特開 昭57−137451(JP,A) 特開 昭62−124241(JP,A) 特開 昭63−309360(JP,A) 特公 昭59−11164(JP,B2)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合金溶解るつぼ内の溶融合金を加圧し
    て、該合金溶解るつぼの底部に設けたノズルから高速回
    転する冷却ロール上に溶融合金を射出し、連続的に非晶
    質合金薄帯を製造する方法において、スリット厚みが
    0.2〜0.4mmのノズルを周速度2000〜350
    0m/分で回転する冷却ロール表面の運動方向に対して
    直角またはほぼ直角となるように配置し、かつノズル先
    端と冷却ロール表面との間隔を0.05〜0.5mmと
    すると共に、前記間隔を0.01〜20Torrの減圧
    大気または減圧不活性ガス雰囲気中に保持した後、合金
    溶解るつぼ内の溶融合金表面に前記の雰囲気圧より0.
    2〜0.5Kgf/cm高いガス圧をかけて加圧し、
    冷却ロール表面上に溶融合金を連続的に押出し、さらに
    前記溶融合金が冷却ロール表面に接触後、前記ノズル先
    端面に接触することなしに、前記ロール回転方向に対し
    前記スリット厚みの1.2〜3倍のロール接触長さで
    凝固を完了させ、かつ前記冷却ロール表面の運動方向に
    対して約10度上方へ薄帯状となるように飛び出させる
    ことにより厚さ5〜13μmの非晶質合金薄帯を形成す
    ることを特徴とする高周波磁気特性に優れた非晶質合金
    薄帯の製造方法。
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