JP2527309B2 - 薬剤放出制御用膜及び該膜を用いた外用薬 - Google Patents

薬剤放出制御用膜及び該膜を用いた外用薬

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JP2527309B2
JP2527309B2 JP61125220A JP12522086A JP2527309B2 JP 2527309 B2 JP2527309 B2 JP 2527309B2 JP 61125220 A JP61125220 A JP 61125220A JP 12522086 A JP12522086 A JP 12522086A JP 2527309 B2 JP2527309 B2 JP 2527309B2
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    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/10Dispersions; Emulsions
    • A61K9/127Liposomes
    • A61K9/1274Non-vesicle bilayer structures, e.g. liquid crystals, tubules, cubic phases, cochleates; Sponge phases

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は薬理作用を有する生理活性物質を、必要な部
位に、必要な時間、必要な量だけ投与するいわゆるドラ
ッグ・デリバリー・システム(DDS)に用いる薬物放出
制御用膜及びそれを利用した消炎鎮痛外用薬に関するも
のである。
〔従来の技術〕
従来薬物は、治療を目的とする症状、薬理作用及び薬
動力学的性質に応じて、経口剤、外用剤、坐剤、注射、
吸入剤等の剤形で投与されている。しかし、経口剤には
消化管系への刺激や肝臓におけるいわゆる“初期通過効
果”によるバイオアベラビリティ(生物学的薬物利用
率)の低下等の問題があった。薬剤を外用剤として用い
る場合には薬物の吸収が困難でさらに薬物投与量のコン
トロールも難しいという問題があった。一方、薬剤を坐
剤として用いると、直腸に残留する糞の量により薬物吸
収量が変動し、また注射では非常な苦痛を患者に与え、
長期の連用が困難であるなどの問題があった。
これに対して近年、DDSの開発がさかんになってお
り、DDSの中で実用化されているものとしては、狭心症
治療用のニトログリセリンや亜硝酸エステル系薬物、乗
物酔い止め用のスコポラミンなどの経皮吸収型外用剤が
あげられる。
しかし、これらは単に薬物の徐放化を図ったものがほ
とんどであり、薬物の放出量を症状の程度に応じて制御
するという本来のDDSに近いものではなかった。
最近、ジアルキルジメチルアンモニウムブロマイドを
高分子に担持させた膜は、温度変化に応じて物質の膜内
拡散係数が変化することが報告されている。例えば、ジ
ャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティー
(J.American.Chem.Soc.,)105、No.15、4855−4859(1
983)やケミストリー レターズ(Chemistry Letter
s,)645−648(1979)などに記載されている。
しかしこれらの膜は微少温度変化に応答し得るもので
はなく、またその時の拡散係数の変化も大きいとは言い
難いものであった。さらにまた温度により拡散を制御し
える対象がナトリウムイオンや塩素イオンといった小さ
なものに限られ、一般に薬理効果を有する大きな分子の
拡散制御を行うまでには至っていないのである。さらに
また、これらの高分子膜に担持させたジアルキルジメチ
ルアンモニウムブロマイドはイオン性を有するものであ
り、イオン性を有する多くの薬物分子の放出制御には適
していない。
次に、従来の消炎鎮痛外用薬をみると、消炎鎮痛作用
を有する薬物を軟膏基剤又はゲル基剤中に溶解又は分散
したものは、薬物放出量が時間とともに指数函数的に減
少する、いわゆる一次放出パターンに従うものであるた
め炎症部位の症状に応じて必要且つ充分な薬物放出量を
コントロールできるものではなかった。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従って、本発明は微少温度変化に敏感に応答する事が
可能で、しかも薬物分子の拡散制御を十分に行うことが
でき、薬理効果を有する大きな分子の拡散をも制御し得
るとともにイオン性薬物にも悪影響を及ぼさない薬剤放
出制御用膜を提供することを目的とする。またこの膜を
用いて、炎症部位の症状に応じて必要且つ充分な薬物放
出量をコントロールできる消炎鎮痛外用薬を提供するこ
とを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、特定の性質を有する液晶形成性化合物を、
表面自由エネルギー又は臨界表面張力がある特定の値よ
り低く、本質的に疎水性である高分子化合物に固定化す
ることにより、上記問題点を有効に解決した薬剤放出制
御用膜が得られ、かつ、該膜を用いると、炎症部位の症
状に基づく微少温度変化に応答して、消炎鎮痛性薬物の
投与量を制御し得るとの知見に基づいてなされたもので
ある。
すなわち、本発明は、25〜45℃の範囲のゲル液晶転移
温度を有する液晶形成性化合物を、高分子化合物に固定
したことを特徴とする薬剤放出制御用膜を提供する。
本発明の液晶形成性分子担持用高分子化合物として
は、表面自由エネルギー又は臨界表面張力が45.0dyn/cm
以下であるような、本質的に疎水性の高分子が用いられ
る。つまり親水性高分子を用いると、その高分子実質中
に多数存在するいわゆる“Water−Channel"を通じて薬
物分子の漏れが起こり、液晶形成性化合物の微小集合体
部分の放出の制御を行うことができないからである。本
発明で用いる高分子化合物として、具体的には、ポリヘ
キサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレ
ン、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデ
ン、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン、ポリトリフルオ
ロクロロエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ
プロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポ
リエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリジメチルシ
ロキサン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエ
チレンビニルアセテート、ポリエチレンビニルアルコー
ル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メ
タ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、
ポリヘキシル(メタ)アクリレート、ポリオクチル(メ
タ)アクリレート、ポリラウリル(メタ)アクリレー
ト、ポリステアリル(メタ)アクリレート、ポリブタジ
エン、ポリブテン、ポリイソプレン、天然ゴムなどが例
示される。これらのうち、表面自由エネルギー又は臨界
表面張力が40dyn/cm未満の高分子化合物が好ましく、さ
らに好ましくは表面自由エネルギー又は臨界表面張力が
35dyn/cm未満の高分子である。
本発明の液晶形成性化合物としては、ゲル液晶転移温
度が25〜45℃の範囲にある種々の液晶形成性化合物が使
用される。これらのうち、非イオン化合物、特にポリア
ルキレングリコールの末端水素の少なくとも1つが炭化
水素で封鎖された非イオン性化合物が好ましい。これら
のうち、下記一般式〔I〕又は〔II〕で表わされるもの
が好ましい。
(式中、R1、R2及びR3は水素又は炭素数1〜6のアルキ
ル基、R4、R5及びR6は、水素、炭素数6〜30のアルキル
基、又は−COR9、−COR10、−COR11で表わされる基(R9
〜R11は、それぞれ水素又は炭素数6〜30のアルキル基
である。)である。但し、R4〜R6の少なくとも1つは炭
素数6以上である。a、b、cは、0〜20、nは0又は
1である。R7は水素、炭素数1〜30のアルキル基又は−
COR12で表わされる基(R12は水素又は炭素数1〜30のア
ルキル基)、R8は水素、炭素数1〜30のアルキル基又は
−COR13で表わされる基(R13は水素又は炭素数1〜30の
アルキル基)であるが、式〔II〕の化合物の少なくとも
1つの末端は炭素数6以上のアルキルエーテル又はアル
キルエステルである。又、dは1〜20である。) 上記式中、R1〜R3は水素又は炭素数2〜3のアルキル
基が好ましく、R4〜R6及びR9〜R11におけるアルキル基
としては炭素数12〜18のものが好ましい。a、b、cの
合計は0〜60、好ましくは1〜40、より好ましくは3〜
20である。又、R7、R8、R12、R13のアルキル基としては
炭素数12〜18のものが好ましく、dは、3〜12が好まし
い。
これらのうち、構造式〔1〕で表わされる化合物にお
いて、R4、R5、R6の1つ以上が炭素数6〜24のアルキル
基である液晶形成性化合物としては、ポリオキシエチレ
ングリセリールモノステアリルエーテル、ポリオキシエ
チレングリセリールジステアリルエーテル、ポリオキシ
エチレングリセリールトリステアリルエーテル、ポリオ
キシエチレングリセリールモノミリスチルエーテル、ポ
リオキシエチレングリセリールジミリスチルエーテル、
ポリオキシエチレングリセリールトリミリスチルエーテ
ル等が例示される。
又、R4、R5、R6の1つ以上が−COR(Rは炭素数6〜2
4のアルキル基)で表わされる液晶形成性化合物として
は、ポリオキシエチレングリセリールモノステアレー
ト、ポリオキシエチレングリセリールジステアレート、
ポリオキシエチレングリセリールトリステアレート、ポ
リオキシエチレントリメチロールプロパンモノステアレ
ート、ポリオキシエチレントリメチロールプロパンジス
テアレート、ポリオキシエチレントリメチロールプロパ
ントリステアレート等が例示される。
構造式〔II〕で表わされる化合物のうち、R7、R8のど
ちらか1つが水素である化合物としては、ポリオキシエ
チレン2−ヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレ
ン2−ヘプチルウンデシルエーテル、ポリオキシエチレ
ン2−デシルペンタデシルエーテル等が例示される。
又、R7、R8の両方とも水素でない化合物としては、ポ
リエチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチ
レンラウリルエーテルステアレートポリオキシエチレン
セチルエーテルステアレート、ポリオキシエチレンステ
アリルエーテルステアレート等が例示される。
これらのうち、ゲル液晶転移温度が30〜40℃の範囲に
ある液晶形成性分子が好ましく、さらに好ましくは32〜
39℃の範囲にゲル液晶転移温度を有する液晶形成性分子
である。つまり、液晶形成性分子の拡散制御性がゲル液
晶転移温度付近で発現するので、なるべく体温又は皮膚
温度付近にこのゲル液晶転移温度が存在するのが有利だ
からである。特に、この温度感応性の薬剤放出制御用膜
を消炎鎮痛外用薬に利用する場合には、ゲル液晶転移温
度が上記温度範囲にあることが特に望ましい。
上記液晶形成性化合物を疎水性高分子化合物に固定化
するには、種々の方法で行なうことができる。具体的に
は、吸着、分散又は共有結合による固定化方法があげら
れる。(i)これらのうち吸着による方法では、担持高
分子を溶解しないが液晶形成性化合物を溶解する有機溶
媒中に、液晶形成性化合物を溶解し、この溶液中に担持
高分子を浸漬し、その後これを取出し乾燥することによ
り固定化を行う。(ii)分散による方法では、担持高分
子中へ液晶形成性化合物を機械的に混練するか、又は、
担持高分子と液晶形成性化合物のいずれをも溶解できる
有機溶媒で担持高分子と液晶形成性化合物を溶解し、よ
く撹拌した後に乾燥させることによって固定化を行う。
(iii)共有結合による方法では、液晶形成性化合物中
に存在する水酸基と担持高分子中の官能基(水酸基、ア
ミノ基、又はカルボキシル基)とを2官能性の試薬、例
えばジイソシアネート、ジグリシジル化合物、ジカルボ
ン酸ジクロライド、エピクロルヒドリンなどを用いて結
合させることによって固定化を行う。
本発明において、担持用高分子に対する液晶形成性化
合物の固定化率は特に限定されないが、要求される温度
感応性の度合いと必要とされる高分子の強度から95/5〜
5/95(重量比)、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ま
しくは、70/30〜30/70とするのがよい。
本発明の薬剤放出制御用膜は種々の態様で用いること
ができるが、体温及び皮膚温の変化や外部からの熱刺激
により薬物放出速度を制御するDDS用の拡散律速膜及び
マトリックスとして用いることが好ましく、特に本発明
の如く、炎症部位の症状による皮膚温度変化を利用した
自己制御型の消炎鎮痛外用薬用の膜として適している。
本発明の薬剤放出制御用膜を消炎鎮痛外用薬に応用し
た場合に用いる消炎鎮痛効果を有する生理活性物質とし
ては、インドメタシン、メフェナム酸、フルフェナル
酸、ジクロフェナック、イブフェナック、アルクロフェ
ナック、メチアジン酸、イブプロフェン、ケトプロフェ
ン、フルルビプロフェン、ベノキサプロフェン、ナプロ
キセン、プラノプロフェン、スプロフェン、フェノプロ
フェン、チアプロフェン、Y−9213、プロチジン酸、サ
リンダック、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾ
ン、ケトフェニルブタゾン、サリチル酸、サリチル酸メ
チル、サリチル酸モノグリコールエステル、サリチル酸
アミド、サリチル酸ナトリウム等、コルチコステロイド
類として、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、デキサ
メタゾン、フルオシノロンアセトニド、トリアムシノロ
ンアセトニド、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベ
クロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン等の非ステ
ロイド系消炎鎮痛剤、テトラサイクリン、クロラムフェ
ニコール、エリスロマイシン、ペニシリン等の抗生物
質、リドカイン、ベンゾカイン、アミノ安息香酸エチル
等の麻酔剤、塩化ベンザルコニウム、ナイスタチン、ニ
トロフラゾン、アセトスルファミン、クロトリマゾー
ル、ペンタマイシン、アムホテリシンB、ピロールニト
リン等の抗菌剤が例示される。またこれらの生理的に活
性な薬物は必要に応じて、又はコンパティビリティに応
じて2種以上を併用することもできる。
本発明の薬剤放出制御用膜を消炎鎮痛外用薬に適合す
る場合、薬物成分は0.1〜80重量%(以下%と略称す
る)、好ましくは0.2〜50%及び任意成分が0〜90%、
好ましくは1〜80%となるように用い、かつ薬剤放出制
御用膜を除く基剤系が全体として水含有系になるように
して用いるのが望ましい。従って基剤中に水が1%以
上、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上含
むようにするのがよい。つまり、水が全く系中に存在し
ないと、本発明の薬剤放出制御用膜の温度感応性が低下
するからである。
上記任意成分としては、種々の重合度の高分子類、例
えばポリジメチルシロキサン、ポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール、ポリ(メタ)アクリル
酸(塩)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリド
ン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸(塩)、
カラゲナン等、有機溶媒としてメチルアルコール、エチ
ルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピ
ルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルア
ルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコ
ール、メチルエチルケトン、アセトン、エチレングリコ
ール、プロピレングリコール、グリセロール、酢酸エチ
ル、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、5
−メチル−2−ピロリドン、1,5−ジメチル−2−ピロ
リドン、1−エチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン
−5−カルボン酸等、経皮吸収促進剤として、ジメチル
スルホキシド、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−
オン(商品名Azono )、ジメチルラウリルアミド、イ
ソソルビトール、ジメチルホルムアミド、ドデシルピロ
リドン、メチオニルスルホキサイド、メチオニルスルホ
ン、チオグリコール酸カルシウム、ヒドロキシオクチル
スルホキサイド、シクロヘキシルメタノール、リジン、
アルギニン、オルニチン、ヒスチジン、尿素、サリチル
酸及びその誘導体、ニコチン酸ベンジル、メトキシポリ
エチレングリコールアクリレート、(ポリ)エチレング
リコールグリシジルエーテル、炭素数8以上の脂肪酸ジ
グリセライド、アジピン酸エステル、セバシン酸エステ
ル、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、脂肪
酸エタノールアミド等、界面活性剤として、ラウリル硫
酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビ
タン脂肪酸エステル等のうちから選ばれる1種又は2種
を用いることができる。
本発明の薬剤放出制御用膜が温度により敏感に薬物の
放出速度を変化させる作用機構は以下のように考えられ
る。つまり、液晶形成性化合物が水又は水を含む溶液組
成中に暴されると、極性である水分子が液晶形成性化合
物中の疎水性アルキル鎖部分と水素結合することができ
ず、その結果疎水性アルキル鎖の周囲の水は互いの水素
結合を強めて、いわゆる“アイスライク”な水クラスタ
ーを形成する。そしてこのクラスターの形成により、疎
水性アルキル鎖の周囲の水のエントロピーが減少し、自
由エネルギー的に不安定となる。そこで、このような疎
水性アルキル鎖どうしが互いに接することにより、その
表面にある構造水が一部自由水となって系の自由エネル
ギーが安定化されるために、このような疎水性アルキル
鎖部分は互いに密着するように配列して、ゲル構造をと
るようになる。ところでこのゲル構造は、温度が上昇し
てある程度(ゲル液晶転移温度)に達すると相転移を起
こし、疎水性アルキル鎖にゆらぎが生じて、いわゆる液
晶状態へ移行する。そしてこのゲル液晶転移温度前後で
の液晶形成性化合物の疎水性アルキル鎖のゆらぎの出現
及び消失により、本発明の薬剤放出制御用膜が薬物分子
の透過拡散を制御するので薬物の放出を温度に応じて制
御できるのである。このとき、液晶形成性分子を担持す
る高分子が親水性であると、その内部に自由水で充たさ
れた多くの“Water−Channel"が存在することになり、
高分子内部に散在する液晶形成性分子の微小集合体が拡
散制御する傍らで、他の薬物分子が漏出することにな
る。これに反して疎水性高分子中には自由水の充たされ
た“Water−Channel"はほとんど存在せず、従ってふた
つの主たる拡散機構のうちの細孔拡散機構は利用され
ず、もう一方の分配拡散機構のみが主として用いられる
ことになる。この分配拡散機構の拡散係数は非常に小さ
く拡散全体に対する寄与も少ないため、この疎水性高分
子中に液晶形成性化合物が存在する場合には、主として
この液晶形成性化合物が律速性を示すようになり、従っ
て、温度感応性も向上するのである。なお、この液晶形
成性化合物は、放出制御しようとする薬物分子との間に
相互作用が生じるのを避けるために非解離型のものであ
ることが必要で、且つ、そのゲル液晶転移温度が体温付
近にあることも必要である。
本発明の薬剤放出制御用膜を外用薬として用いる場合
には、種々の形態とすることができる。例えば、生理活
性物質保持層の上部に、生理活性物質を溶解している有
機溶媒および水の蒸散を防ぐための不透過性基材層を設
け、生理活性物質保持層の下部には本発明の薬剤放出制
御用膜を設けた形態とする。又、薬剤放出制御用膜の下
面の全面もしくは周囲に、外用薬を皮膚に密着固定化す
るための感圧接着剤層を塗布する。このようにすると、
生理活性物質保持層の下部に設けた本発明の薬剤放出制
御用膜が敏感に皮膚温の変化に応じて生理活性物質の放
出量を制御するので、その皮膚中への透過量をコントロ
ールできるのである。又、薬剤放出制御用膜を膜材と
し、生理活性物質を核物質としたマイクロカプセルを外
用薬として用いることも可能である。
〔発明の効果〕
本発明によれば、微少温度変化に敏感に応答して薬物
分子の放出を非常に明確に制御することができ、しかも
分子量が大きく且つ解離型の膜物の放出制御にも使用可
能な薬剤放出制御用膜を提供することができる。
さらに、本発明の薬剤放出制御用膜を用いると、炎症
部位の症状に応じて必要且つ充分な薬物放出量を制御し
得る自己制御型消炎鎮痛外用薬を提供することができ
る。
次に実施例により本発明の内容を具体的に説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
〔実施例〕
実施例1 テフロン膜(東洋メンブランフィルターPT−50)、硝
酸セルロース・酢酸セルロース混合エステル膜(東洋メ
ンブランフィルターTM−2)、再生セルロース膜(東洋
メンブランフィルターTM−2P)、ガラス繊維膜(東洋メ
ンブランフィルターGC−50)のそれぞれをポリオキシエ
チレン(a+b+c=5モル)トリメチロールプロパン
ジステアレート(日本エマルジョン、TPS−205:ゲル液
晶転移温度37℃)の20%クロロホルム溶液に1時間浸漬
した後、風乾して試料膜を調製した。
次にこれらの試料膜を、ガラス製2−チャンバー式拡
散セルに取付け、ドナー側チャンバーにはインドメタシ
ンを溶解したリン酸緩衝液(pH7.4、インドメタシン濃
度50mg/100ml)を入れ、レセプター側にはリン酸緩衝液
のみを入れて、レセプター側のインドメタシン濃度の経
時的増加をHPLCで測定して、各温度における拡散係数を
求めた。結果をまとめて表−1に示す。尚、表面自由エ
ネルギーの単位はdyn/cm、拡散係数はcm2/secである
(以下、同じ)。
表−1からわかるように、表面自由エネルギーの数値
の小さい疎水性高分子膜を用いた場合には、38℃/32℃
の拡散係数の比が大きく、温度感応性が高くなることが
わかる。
実施例2 2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMAと略称す
る。:東京化成製)、エチルアクリレート(EAと略称す
る。:東京化成製)、2−エチルヘキシルメタクリレー
ト(EHAと略称する。:東京化成製)の各モノマーを所
定の比で混合し、そのモノマー溶液中へポリオキシエチ
レントリメチロールプロパンジステアレート(日本エマ
ルジョン、TPS−205)を加えた(TPS−205/モノマー=3
0/70)。このTPS−205/モノマー溶液100mlに対して、12
8mgのアゾビスイソブチロニトリル(東京化成製)を加
え、N2ガスで15分間バブリングして酸素を追い出した
後、ただちに2枚のガラス板の間に流し込み60℃で24時
間ラジカル重合を行い、液晶形成性化合物固定化共重合
体膜を得た。
次にこれらの重合体膜を実施例1と同様の拡散セルに
取付け、ドナー側にインドメタシンを溶解した50%1−
メチル−2−ピロリドン水溶液(インドメタシン濃度50
mg/100ml)を入れ、レセプター側には50%1−メチル−
2−ピロリドン水溶液のみを入れ、レセプター側のイン
ドメタシン濃度の経時的増加をHPLCを用いて測定して、
各温度における拡散係数を求めた。結果をまとめて表−
2に示す。
表−2からわかるように、表面自由エネルギーの数値
の小さい疎水性高分子膜を用いた場合に、38℃/32℃の
拡散係数の比が大きく、温度感応性が高くなることがわ
かる。
実施例3 テフロン膜(東洋メンブランフィルターPT−50)を、
ポリオキシエチレン(a+b+c=3モル)トリメチロ
ールプロパントリステアレート(日本エマルジョン、TP
S−303)、ポリオキシエチレン(a+b+c=0モル)
グリセリルトリステアレート(日本エマルジョン、GWS
−303)、ジメチルジヘキサデシルアンモニウムブロマ
イド(相互薬工、DC−1−16)、ジメチルジオクタデシ
ルアンモニウムブロマイド(相互薬工、DC−1−18)、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油エーテル(日光ケミカ
ルズ、HCO−10)から選ばれる1種の液晶形成性化合物
の20%クロロホルム溶液に1時間浸漬し、その後風乾し
て各試料膜を調製した。
この各試料膜を実施例1と同様の拡散セルに取付け、
ドナー側にインドメタシンを溶解した40%エチルアルコ
ール水溶液(インドメタシン濃度50mg/100ml)を入れ、
レセプター側には40%エチルアルコール水溶液のみを入
れ、レセプター側のインドメタシン濃度の経時的増加を
HPLCを用いて測定して、各温度における拡散係数を求め
た。結果をまとめて表−3に示す。
表−3からわかるように、ゲル液晶転移温度が25〜45
℃の範囲にない液晶形成性分子や解離型分子では38℃/3
2℃の拡散係数の比が小さく、体温付近での温度感応性
が充分でないことがわかる。
実施例4 WBN/Kobヘアレスラット(埼王実験動物)の腹部皮膚
を麻酔下(ペントバルビタールナトリウム60mg/kg、i.
p.)摘出し、その角質層側に実施例3の処方No.9の膜を
貼付し、ガラス製2チャンバー拡散セルに取付けた。ド
ナー側にはインドメタシンを懸濁したエチルアルコール
40%水溶液(インドメタシン添加量2.4g/100ml)を入
れ、レセプター側にはリン酸緩衝液(pH7.4)を入れ、
レセプター側のインドメタシン濃度の経時的増加をHPLC
を用いて測定した。
経時変化を第1図に示すが、この図から明らかなよう
に、ヘアレスラット剥離皮膚を用いてのin vitro実験に
おいて、本発明の薬剤放出制御用膜を用いると、インド
メタシンの放出速度を温度に応じて明確に制御し得るこ
とが判明した。
実施例5 実施例4と同様の実験を、エチルアルコール40%水溶
液の代わりに、1−メチル−2−ピロリドン50%水溶液
を用いて行った。
結果を第2図に示すが、この図から明らかなように、
ヘアレスラット剥離皮膚を用いたin vitro実験におい
て、本発明の薬剤放出制御用膜を用いると、インドメタ
シンの放出速度を温度に応じて明確に制御し得ることが
判明した。
実施例6 本発明の消炎鎮痛外用薬を次のようにしてつくった。
50%エチルアルコール水溶液100mlにインドメタシン3g
を加えた後、この中に厚さ0.3cm、表面積20cm2のウレタ
ン発泡体を浸漬してこの薬物溶液を含浸させ、薬物貯留
層とした。次にこの薬物貯留層の上部にラミネート化ア
ルミニウムの不透過性被覆層を設け、下部には本発明の
実施例3の処方No.9の膜を貼り合せた。皮膚への付着を
容易にするために、薬物貯留層の周囲のラミネート化ア
ルミニウムの部分にアクリル系感圧接着剤を塗布した。
このようにしてつくった外用薬をスポーツ関節炎患者
に使用したところ、貼付後約4時間から徐々に痛みが軽
減され発熱が押えられた。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は、本発明の薬剤放出制御用膜を透過
する薬剤の32℃と38℃における透過量の経時変化を示し
たものである。

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】25〜45℃の範囲のゲル液晶転移温度を有す
    る液晶形成性化合物を、疎水性高分子化合物に固定した
    ことを特徴とする薬剤放出制御用膜。
  2. 【請求項2】疎水性高分子が、45.0dyn/cm未満の表面エ
    ネルギー又は臨界表面張力を有するものである特許請求
    の範囲第(1)項記載の膜。
  3. 【請求項3】液晶形成性化合物が非イオン性化合物であ
    る特許請求の範囲第(1)項記載の膜。
  4. 【請求項4】非イオン性化合物が、ポリアルキレングリ
    コールの末端水素を炭化水素で封鎖した化合物である特
    許請求の範囲第(3)項記載の膜。
  5. 【請求項5】非イオン性化合物が、下記一般式〔I〕又
    は〔II〕で表わされる化合物の少なくとも1種である特
    許請求の範囲第(4)項記載の膜。 (式中、R1、R2及びR3は水素又は炭素数1〜6のアルキ
    ル基、R4、R5及びR6は、水素、炭素数6〜30のアルキル
    基、又は−COR9、−COR10、−COR11で表わされる基(R9
    〜R11は、それぞれ水素又は炭素数6〜30のアルキル基
    である。)である。但し、R4〜R6の少なくとも1つは炭
    素数6以上である。a、b、cは、0〜20、nは0又は
    1である。R7は水素、炭素数1〜30のアルキル基又は−
    COR12で表わされる基(R12は水素又は炭素数1〜30のア
    ルキル基)、R8は水素、炭素数1〜30のアルキル基又は
    −COR13で表わされる基(R13は水素又は炭素数1〜30の
    アルキル基)であるが、式〔II〕の化合物の少なくとも
    1つの末端は炭素数6以上のアルキルエーテル又はアル
    キルエステルである。又、dは1〜20である。)
  6. 【請求項6】固定が、高分子化合物への吸着、高分子化
    合物内への分散又は高分子化合物との共有結合により行
    われている特許請求の範囲第(1)項記載の膜。
  7. 【請求項7】25〜40℃の範囲のゲル液晶転移温度を有す
    る液晶形成性化合物を高分子に固定した薬剤放出制御用
    膜を通して薬用成分が放出される形態にある外用薬。
  8. 【請求項8】薬用成分が消炎鎮痛効果を有する生理活性
    物質である特許請求の範囲第(7)項記載の外用薬。
  9. 【請求項9】疎水性高分子化合物が、45.0dyn/cm未満の
    表面自由エネルギー又は臨界表面張力を有するものであ
    る特許請求の範囲第(7)項記載の外用薬。
  10. 【請求項10】液晶形成性化合物が非イオン性化合物で
    ある特許請求の範囲第(7)項記載の外用薬。
  11. 【請求項11】非イオン性化合物が、ポリアルキレング
    リコールの末端水素を炭化水素で封鎖した化合物である
    特許請求の範囲第(10)項記載の外用薬。
  12. 【請求項12】非イオン性化合物が、下記一般式〔I〕
    又は〔II〕で表わされる化合物の少なくとも1種である
    特許請求の範囲第(11)項記載の外用薬。 (式中、R1、R2及びR3は水素又は炭素数1〜6のアルキ
    ル基、R4、R5及びR6は、水素、炭素数6〜30のアルキル
    基、又は−COR9、−COR10、−COR11で表わされる基(R9
    〜R11は、それぞれ水素又は炭素数6〜30のアルキル基
    である。)である。但し、R4〜R6の少なくとも1つは炭
    素数6以上である。a、b、cは、0〜20、nは0又は
    1である。R7は水素、炭素数1〜30のアルキル基又は−
    COR12で表わされる基(R12は水素又は炭素数1〜30のア
    ルキル基)、R8は水素、炭素数1〜30のアルキル基又は
    −COR13で表わされる基(R13水素又は炭素数1〜30のア
    ルキル基)であるが、式〔II〕の化合物の少なくとも1
    つの末端は炭素数6以上のアルキルエーテル又はアルキ
    ルエステルである。又、dは1〜20である。)
  13. 【請求項13】固定が、高分子化合物への吸着、高分子
    化合物内への分散又は高分子化合物との共有結合により
    行われている特許請求の範囲第(7)項記載の外用薬。
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