JP2524178Y2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、空調機や冷凍機等に
搭載されるスクロール圧縮機に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】図４は例えば特開昭６０−１８７７８９
号公報に開示された従来のスクロール圧縮機の構成を示
し、特にスクロール圧縮機を全密閉形冷媒圧縮機に応用
した場合のものである。

【０００３】図４において、１は渦巻部１ａを台板部１
ｂの一側に備えた固定スクロール、２は渦巻部２ａを台
板部２ｂの一側に備えた揺動スクロール、３は吸入口
（吸入室）、４は吐出ポート、５は両渦巻部１ａ，２ａ
を互いに組合せたとき両渦巻部１ａ，２ａ間に形成され
る圧縮室、６は主軸、７は吸込口７ａを有し、主軸下端
と、所定空隙をもって主軸下端部を覆うように装着され
たオイルキャップである。

【０００４】８，９は軸受フレーム、１０はモータ・ロ
ータ、１１はモータ・ステータ、１２はシェル、１３は
オルダム継手、１４はシェル１２底部に設けられた油溜
め、１５はこの油溜め１４とモータ・ステータ１１の間
に設けられ、中央に主軸６が所定の隙間１５ａをもって
貫通する穴１５ｂを有し、シェル１２に周囲を固着され
た円板状の仕切板である。

【０００５】１６は吸入管、１７は吐出管、１８は主軸
６に対して偏心し、かつ台板部２ｂの他側に設けられた
揺動スクロール軸２ｃと回転自在に嵌入された揺動スク
ロール軸受で、主軸６上端部の大径部６ａに形成された
偏心穴６０ａ内に嵌入されている。

【０００６】１９は主軸６上部の大径部６ａを支承する
第１の主軸受、２０は主軸６下部の小径部６ｂを支承す
る第２の主軸受、２１は揺動スクロール２の台板２ｂに
おける下面２０ｂを軸方向から支承する第１のスラスト
軸受、２２は主軸６の大径部６ａと小径部６ｂの間の段
部６ｃを軸方向から支承する第２のスラスト軸受、２３
は主軸６下端の油溜め１４内に開口部２３ａを有し、主
軸６内にその軸心より偏心して設けられた給油孔で、上
端側で各軸受１８，２０部へ連通している。２４は主軸
６内に設けられた第１のガス抜孔、２５，２６は油経路
用の返油孔、２７，２８は吸入ガス経路用の連通孔であ
る。

【０００７】次にこのように構成されたスクロール圧縮
機の動作について説明する。モータ・ロータ１０が回転
すると、主軸６及びオルダム継手１３を介して揺動スク
ロール２が公転運動を始め、圧縮動作を開始する。この
時、冷媒ガスは吸入管１６よりシェル１２内に吸入され
実線矢印に示すように軸受フレーム９とモータ・ステー
タ１１との間に連通孔２７，モータ・ロータ１０とモー
タ・ステータ１１との間のエアギャップなどを通過して
モータを冷却した後、シェル１２と軸受フレーム８，９
との間の連通孔２８を通って、固定スクロール１に設け
た吸入口３より圧縮室５へ取り込まれ圧縮される。

【０００８】圧縮されたガスは吐出ポート４を経て吐出
管１７より圧縮機外へ排出される。また潤滑油は油溜め
１４より破線矢印で示すように主軸６に配設されたオイ
ルキャップ７及び、給油孔２３による遠心ポンプ作用に
よりオイルキャップ７の吸込口７ａ及び給油孔２３を通
して各軸受１８，２０を給油し、さらに軸受１８からは
軸受２１，１９，２２の順に給油される。潤滑に使用さ
れた油は主に軸受フレーム８，９に設けられた返油孔２
５，２６を通って仕切板１５の上に溜り、主軸６と穴１
５ｂとの間の隙間１５ａを通って油溜め１４に戻され
る。

【０００９】

【考案が解決しようとする課題】従来のスクロール圧縮
機は以上のように構成されているので、仕切板１５の穴
１５ｂと主軸６との隙間１５ａが狭く、且つ主軸６の回
転によって生じる遠心力で隙間１５ａを通過する潤滑油
の通過抵抗が大きくなるため、圧縮機の運転条件によっ
ては仕切板１５上に潤滑油が溜まり、この潤滑油が隙間
１５ａを塞ぐため、仕切板１５の上下で圧力差を生じ、
下方すなわち油溜め１４内の圧力の方が高くなると、ま
すます潤滑油は隙間１５ａを通過しにくくなり、油溜め
１４内の潤滑油が漸次枯渇して軸受部への潤滑油の供給
ができなくなり、円滑な潤滑が困難になるなどの問題点
があった。

【００１０】この考案は上記のような課題を解決するた
めになされたもので、仕切板上に潤滑油が溜っても仕切
板上下に圧力差を生じることなく、円滑な潤滑が可能な
スクロール圧縮機を得ることを目的とする。

【００１１】

【課題を解決するための手段】この考案のスクロール圧
縮機は、主軸が貫通する仕切板によって区画された上部
に固定および揺動スクロールと、揺動スクロールおよび
主軸の軸受とを収納し、下部に油溜めを有し、主軸に設
けられた油穴により油溜めと軸受を連通させるスクロー
ル圧縮機において、仕切板の底部に折り返しを有する穴
あけ加工を施すことにより、仕切板の上面に堰を有する
開口を設けたものである。

【００１２】

【作用】この考案におけるスクロール圧縮機の仕切板
は、仕切板上下の雰囲気を連通して両雰囲気の圧力を均
一にし、油溜めへの返油を円滑にする。

【００１３】

【実施例】以下、この考案の実施例を図について説明す
る。図１はこの考案の一実施例に係わるスクロール圧縮
機の要部の破断断面図である。

【００１４】図１において、３１は周囲がシェル１２に
固着され中央部に穴を有する円板状の仕切板、３２は仕
切板３１の底部に上向き折り返し付の開口３３を設ける
ことにより仕切板３１の上面に所定の高さを有する堰、
３４は仕切板３１上に溜った潤滑油である。この仕切板
３１の中央部では図示しない穴が設けられ図４と同様に
主軸６が貫通している。この仕切板３１は図４の仕切板
１５の代りに用いられ、その他の構成は図４の従来例と
同じである。

【００１５】次に、上記のように構成されたこの考案の
一実施例におけるスクロール圧縮機の潤滑油の循環動作
について図１と図４を参照して説明する。

【００１６】従来装置と同様に、油溜め１４内の潤滑油
はオイルキャップ７から吸い込まれ、主軸６の給油孔２
３を通って各軸受に供給され、潤滑を行なった後に返油
孔２５，２６を経て仕切板３１上に溜り、主軸６と仕切
板３１との隙間（図示せず）から漸次油溜め１４内に戻
る。

【００１７】上記実施例によれば、仕切板３１上に所定
の高さの堰３２を有する開口３３が設けられているの
で、仕切板３１上に潤滑油３４が溜って例え仕切板３１
と主軸６との隙間を塞いでも堰３２の上面を乗り越える
ことがない限り、開口３３は常に仕切板３１の上下の雰
囲気を連通しているので、両雰囲気間に圧力差を生じる
ことはない。従って、油溜め１４内の圧力が高くなるこ
ともなく、主軸６と仕切板３１との隙間（隙間１５ａに
相当）から油溜め１４への返油も円滑に行なわれて、オ
イルキャップ７からの給油も常に円滑に行なうことがで
きる。

【００１８】また、仕切板３１の底部に折り返し付の穴
あけ加工を施すことにより仕切板に堰を溶接にて取付け
る必要がなく、製造が簡単であり、堰３２を形成する場
合における、溶接時のスパッタ等の異物が付着すること
もなく、異物を取除く作業をなくすことができる。

【００１９】なお、上記実施例では、仕切板３１の底部
に折り返し付の穴あけ加工を施すことにより、仕切板３
１上面側に堰３２を形成し、開口３３が常に仕切板３１
の上下の雰囲気を連通した状態に保持しているが、図２
の他の実施例におけるスクロール圧縮機の要部の破断断
面図及び図２における線Ｉ−Ｉに沿う断面を示す図３の
ように構成してもよい。

【００２０】図２と図３において、円板状の仕切板３５
は、その最外周囲がシェル１２の内周壁に固着され、そ
の底部外周囲に傾斜した段部３６を設けて、その底部断
面が逆台形状になるようにしてある。その段部３６の一
部に仕切板３５の上下間の雰囲気を連通させる折り返し
付の開口３５ａを加工すると共に仕切板３５の上面側に
堰３７を形成してある。仕切板３５の中央部には図示し
ない穴が設けられており、その他の構成は図４の従来例
と同じである。

【００２１】堰３７により仕切板３５の底面上に溜った
潤滑油３８を堰止めて開口３５ａを常に仕切板３５の上
下の雰囲気を連通した状態に保つことができる。従っ
て、上記第１実施例の場合と同様に、スクロール圧縮機
の潤滑油の循環が円滑に行なえる。

【００２２】

【考案の効果】以上のように、この考案によればスクロ
ール圧縮機の仕切板の底部に折り返しを有する穴あけ加
工を施すことにより、仕切板の上面に堰を有する開口を
設けるように構成したので、製造が簡易で異物の付着が
なく、仕切板上に潤滑油が溜っても仕切板上下に圧力差
を生じることがなく、円滑な潤滑が可能になる効果があ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】この考案の一実施例におけるスクロール圧縮機
の仕切板の要部の構成を示す破断断面図である。

【図２】この考案の他の実施例によるスクロール圧縮機
の仕切板の要部の構成を示す破断断面図である。

【図３】図２における線Ｉ−Ｉに沿う断面を示す図であ
る。

【図４】従来のスクロール圧縮機の構成を示す断面図で
ある。

【符号の説明】

１ 固定スクロール ２ 揺動スクロール ５ 圧縮室 ６ 主軸 １０ モータ・ロータ １１ モータ・ステータ １２ シェル １４ 油溜め １８ 軸受 １９ 第１の主軸受 ２０ 第２の主軸受 ２１ 第１のスラスト軸受 ２２ 第２のスラスト軸受 ２３ 給油孔 ３１，３５ 仕切板 ３２，３７ 堰 ３３，３５ａ 開口

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 渦巻部同士を組合せることによって上記
   両渦巻部間に圧縮室を形成する固定および揺動スクロー
   ルと、モータにより回転して上記揺動スクロールを駆動
   する主軸と、上記揺動スクロールおよび上記主軸を支承
   する軸受と、隙間を介して上記主軸が貫通する仕切板に
   よって区画された上部に上記各要素を収納するとともに
   下部に油溜めを有するシェルと、上記主軸に軸心より偏
   心して設けられ、上端側は上記軸受の潤滑面に、下端は
   上記油溜め内にそれぞれ開口する油穴を備えたスクロー
   ル圧縮機において、上記仕切板の底部に折り返しを有す
   る穴あけ加工を施すことにより、上記仕切板の上面に堰
   を有する開口を設けた事を特徴とするスクロール圧縮
   機。