JP2523271Y2 - 電子レンジ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、オーブン内において、加熱された調理面
の上で焼き肉、焼きそば、お好み焼き、野菜炒めなどの
調理を行なう電子レンジに関する。

［従来の技術］ 一般に電子レンジでは、食品をセラミックやガラスな
どの容器に入れ、ターンテーブルに載せて加熱調理す
る。この場合の調理は、フライパンやホットプレートな
どにおいて焼いたり炒めたりする調理とは異なる場合が
多い。そこで、フライパンやホットプレートなどの調理
効果を電子レンジの調理に付加するため、以下のような
方法が用いられている。

１つは、マイクロ波吸収発熱体を有する調理プレート
（たとえば結晶化ガラス皿の裏面にSnO₂を蒸着したもの
や裏面にフェライトコートしたアルミニウム板の皿）の
上に冷凍ピザを載せ、電子レンジでピザの調理プレート
面に焦げ目をつける方法である。

また、フライパンを用いてガスコンロで食品の表面に
焦げ目をつけた後、電子レンジで食品内部まで加熱調理
する方法もある。

［考案が解決しようとする課題］ 以上述べた従来の技術において、マイクロ波吸収発熱
体を有する調理プレートを用いた方法は、調理プレート
を準備し、電子レンジ内に改めて設置しなければならな
いという作業が必要である。また、この従来の方法は、
調理済冷凍食品に単に焦げ目をつける場合に適している
が、この調理プレートを用いて焼き肉等の調理を電子レ
ンジで行なおうとすると、調理物が調理プレートに粘着
し取れなくなるおそれがある。

また、フライパンで食品の表面に焦げ目をつけてから
電子レンジで加熱する方法は、別々の手段で調理を２度
も行なう必要があり、調理に手間がかかる。

この発明の目的は、以上述べた問題点を解決し、焼き
肉等フライパンやホットプレートで通常行なう調理が、
オーブン内で容易にできる電子レンジを提供することに
ある。

［課題を解決するための手段］ この考案の電子レンジは、ターンテーブルの表面に、
有機金属架橋重合体から形成されるセラミック中に第１
の耐熱性樹脂が分散した構造である耐熱層と、第２の耐
熱性樹脂によって前記耐熱層上に形成された被調理物の
前記ターンテーブルへの焦げつきを防ぐ非粘着層とから
なる複合コーティング層を形成し、前記ターンテーブル
の裏面にマイクロ波吸収発熱体コーティング層を形成
し、該マイクロ波吸収発熱体コーティング層の上に吸熱
層を形成したものである。

［作用］ この考案の電子レンジにおいて、オーブン内のターン
テーブルに被調理物を載せ調理を開始させる。被調理物
は、マイクロ波で内部まで加熱される。このようにし
て、内部まで熱が通りしかも、ターンテーブルの裏面の
マイクロ波吸収発熱体コーティング層がマイクロ波を吸
収して発熱し、この発熱により被調理物の表面が焦がさ
れた被調理物が出き上がる。この被調理物は、フライパ
ンやホットプレートで焼いたり炒めたりしてできるもの
と風味や外観などの点で変わりがない。さらに、ターン
テーブルの上に設けられる複合コーティング層は、ター
ンテーブルに被調理物が焦げつき取れなくなるのを防い
でいる。したがって、被調理物はターンテーブルから容
易に取出すことができる。

［実施例］ 第１図は、この考案に従う基本的な実施例の電子レン
ジにおいて、オーブンのドアを外した状態を示す側面図
である。

オーブン１内の上部には、グリル用ヒータ14が取付け
られている。またオーブン１内下部にはターンテーブル
２が、カムシャフト３によって回転可能に支持されてい
る。カムシャフト３の一端は、ターンテーブル２の中央
部を支持し、他端はモータ駆動部（図示省略）に連結し
ている。ターンテーブル２の下部には、ターンテーブル
２に近接してシーズヒータ４が設けられている。またタ
ーンテーブル２の下部には、ターンテーブル２の下部周
面に接するよう、セラミック製で耐熱性を有するターン
テーブルローラ５が取付けられている。これらターンテ
ーブルローラ５によってさらにターンテーブル２は回転
可能に支持されている。

第２図は、ターンテーブル２を外したオーブン１内の
底部にシーズヒータ４およびターンテーブルローラ５等
が取付けられた状態を示す平面図である。

オーブン１内の底部は、プレス成形された絞り加工凹
部1aが形成され、この中にシーズヒータ４がコの字形に
設けられている。また、絞り加工凹部1aの周囲には、上
記ターンテーブルローラ５が３個設けれ、ターンテーブ
ル２の回転方向に沿って回転するよう支持されている。

第３図はターンテーブル２を示す断面図である。厚み
３〜4mmのアルミニウム製板材６の表面には複合コーテ
ィング層７が、裏面には吸熱層13が形成されている。

第４図はターンテーブル２の複合コーティング層７を
示す拡大断面図である。第４図を参照して形成された複
合コーティング層７等について以下に説明する。

アルミニウム製板材６の表面は、ショットブラストな
どの方法により粗面８にされている。粗面８の表面に、
チタンアルミナなどのセラミック粉末を圧力をかけて発
射させた後高温で溶融させたものを塗布した溶射層９が
形成されている。溶射層９の表面には、セラミック塗料
を塗布した後、室温乾燥させ焼付けた下塗層10が10〜20
μｍの厚みで形成されている。上記セラミック塗料は、
ポリチタノカルボシランワニス20〜40部、Mn、Fe、Coま
たはCuの少なくとも１つからなる複合金属酸化物粉末を
原料とした無機顔料20〜40部、シリコンオイル、有機ベ
ントナイトおよび珪石粉を含む分散材１〜３部ならびに
トルエン、キシレン、ブタノールまたはブチルセルソル
ブの少なくとも１つからなる有機溶剤20〜40部を混練配
合したものである。上記下塗層10の表面には、上記セラ
ミック塗料に四フッ化エチレン樹脂の塗料添加用粉末を
３〜20部添加混合した塗料を塗布し、室温乾燥させ焼付
けた耐熱層11が10〜20μｍの厚みで形成されている。さ
らに、耐熱層11の表面に、ディスパージョン型四フッ化
エチレン樹脂系黒色系塗料を薄く塗布し室温乾燥させ焼
付けた非粘着層12が形成されている。上記下塗層、耐熱
層および非粘着層の焼付けは、150℃で20分間予備乾燥
させた後、380℃〜400℃の温度で20分間加熱して行なっ
た。この際、上記下塗層10および耐熱層11においてセラ
ミック化が起こる。

一方、ターンテブル２の裏面に形成された吸熱層13
は、上記下塗層に用いられた黒色のセラミック塗料を、
アルミニウム製板材６の裏面に塗布した後、乾燥および
焼付けを行なったものである。吸熱層13の厚さは20〜30
μｍである。

なお、上記のように形成されたターンテブル２におい
て、粗面８、溶射層９、および下塗層10は省略してもよ
いが、設けた場合以下に述べるような効果がある。粗面
８は、その表面に形成される層との密着性を向上させ
る。溶射層９は、ターンテブル２表面の耐久性を向上さ
せる。下塗層10は、ターンテブル２の腐食を防止し、そ
の上に形成される耐熱層11および非粘着層12を補強す
る。

一方、耐熱層11は、最高650℃までの耐熱性を有し、
しかもターンテブル２に耐傷つき性、耐摩耗性および耐
腐食性を付与している。また、非粘着層12は、高温で調
理物が焦げつき取れなくなるのを防ぐとともに、ターン
テブル２に耐摩耗性、耐傷つき性および耐腐食性を付与
している。そして、耐熱層11の上に非粘着層12を形成さ
せ複合コーティング層７とすることで、300〜400℃の温
度でも軟化が起こらず使用することができるものとなっ
ている。また、複合コーティング層７にステンレス製ヘ
ラを１万回擦りつける摩耗試験を行なっても、剥離は起
こらない。仮にターンテブル２に非粘着層12だけ設けた
場合、耐熱温度の限界は260℃であり、非粘着層12は200
℃で軟化が始まり、傷つきやすくなる。

以上のように構成された電子レンジにおいて、シーズ
ヒータ４によってターンテブル２を加熱して被調理物の
表面を焦がす。同時に、マイクロ波で被調理物の内部ま
で加熱する。さらにグリル用ヒータ14で加熱すると、被
調理物を裏返しにしなくても両面に焦げ目をつけながら
調理することができる。また、シーズヒータ４を使用し
ながら、適宜マイクロ波加熱とグリル用ヒータ14の加熱
を行なえば、焼き肉、お好み焼き、焼きそばおよび野菜
炒めなどの調理も行なうことができる。また、ターンテ
ブル２には、複合コーティング層７が設けられているの
で、調理物はターンテブル２に粘着しない。そこで調理
物は、ターンテブル２より金属製のヘラですくうように
すれば容易に取れる。上述したように、金属製のヘラに
よってターンテーブルの表面が傷つくこともない。

第５図は、この考案に従う一実施例の電子レンジにお
いて、オーブンのドアを外した状態を示す側面図であ
る。

オーブン15内上部には、グリル用ヒータ16が設けられ
ている。オーブン15内の下部には、ターンテブル17が基
本的な実施例と同様に回転可能に支持されている。

また基本的な実施例と同様に、ターンテブル17の下部
に、セラミック製で耐熱性を有するターンテブルローラ
18が取付けられている。

第６図は、ターンテブル17を示す断面図である。

ターンテブル17の表面には、複合コーティング層19が
形成され、裏面にはマイクロ波吸収発熱体コーティング
層20および吸熱層26が形成されている。

第７図は、ターンテブル17の表面において、複合コー
ティング層19が形成された状態を示す拡大断面図であ
る。

アルミニウムまたはステンレス製の板材21の上がショ
ットブラストで粗面22にされ、基本的な実施例と同様に
してその上に下塗層23が10〜20μｍの厚みで形成されて
いる。さらにその上に、耐熱層24が10〜20μｍの厚みで
形成され、その上に、非粘着層25が５〜10μｍの厚みで
形成されている。一方、ターンテブル17の裏面のマイク
ロ波吸収発熱体コーティング層20は、フェライトが500
μｍの厚みでコーティングされたものである。

さらに、マイクロ波吸収発熱体コーティング層の外側
には、基本的な実施例の下塗層で用いたセラミック塗料
を塗り、乾燥および焼付けを行なった吸熱層26が形成さ
れている。

このように形成された電子レンジにおいて、ターンテ
ブル17に被調理物を載せマイクロ波を照射すると、マイ
クロ波吸収発熱体コーティング層20の発熱により、ター
ンテブル17が加熱され、被調理物の表面を焦がす。同時
に、マイクロ波で被調理物の内部まで加熱する。

さらに、グリル用ヒータ16を使用すれば、調理物を裏
返さなくとも、調理物の両面に焦げ目をつけることがで
きる。

なお、基本的な実施例および一実施例においては、グ
リル用ヒータを備えた電子レンジを説明したが、この考
案においてグリル用ヒータは必須のものではない。

また、基本的な実施例および一実施例で有機金属架橋
重合体として、ポリチタノカルボシランを使用したが、
その他のシロキサン系有機金属架橋重合体を使用するこ
ともできる。

また、この考案の加熱手段として、熱風を吹き込ませ
るコンベクションシステムを使用することもできる。さ
らに、この考案におけるターンテーブルの加熱手段とし
てのマイクロ波吸収発熱体コーティング層は、酸化錫を
蒸着させたものでもよい。

この考案におけるターンテーブルの板材として、ムラ
イトおよびホウケイ酸ガラスの結晶化ガラスを用いるこ
とができる。

さらにこの考案におけるターンテーブルの板材として
SiCまたはサーメットのようなマイクロ波を吸収し発熱
する材料を用いることもできる。この場合、ターンテー
ブル板材自身を加熱手段とすることができる。

この考案において、第１および第２の耐熱性樹脂は、
フッ素樹脂が最適であるが、他にシリコン樹脂、PPSお
よびPESなども使用することができる。なお第１と第２
の耐熱性樹脂は、同じ化合物であってもよい。

［考案の効果］ この考案の電子レンジを用いれば、被調理物をマイク
ロ波により内部から加熱するとともに、マイクロ波を吸
収してマイクロ波吸収発熱体コーティング層が発熱する
ので、ターンテーブルの温度が上昇し前記被調理物の表
面に焦げ目をつけることができる。

しかも、マイクロ波吸収発熱体コーティング層の上に
吸熱層が形成されているので、ヒータを備えたものにお
いてはマイクロ波の吸収発熱だけではなく、ヒータの熱
をも効率的に吸収してターンテーブルの温度上昇に寄与
することができ、焼き肉、焼きそば、お好み焼きおよび
野菜炒めなど従来はフライパンやホットプレートを用い
て行なっていた調理が、電子レンジのオーブン内で行な
えるようになる。

したがって、電子レンジの用途範囲を大きく拡大する
ことができ、電子レンジの普及をさらに進めることがで
きる。

そのうえ、複合コーティング層は、耐熱層と、その上
に形成される非粘着層を有するので、高温での被調理物
の焦げつきが取れなくなるのを防ぐとともに、ターンテ
ーブルの耐摩耗性，耐傷つき性および耐腐食性を付与す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この考案に従う基本的な実施例の電子レンジ
において、オーブンのドアを外した状態を示す側面図で
ある。 第２図は、基本的な実施例の電子レンジにおいてターン
テーブルを外したオーブン内の底部にシーズヒータおよ
びターンテーブルローラ等が取付けられた状態を示す平
面図である。 第３図は、基本的は実施例のターンテーブルを示す断面
図である。 第４図は、基本的は実施例のターンテーブルに形成され
た複合コーティング層を示す拡大断面図である。 第５図は、この考案に従う一実施例の電子レンジにおい
てオーブンのドアを外した状態を示す断面図である。 第６図は、一実施例のターンテーブルを示す断面図であ
る。 第７図は、一実施例のターンテーブルに形成された複合
コーティング層を示す断面図である。 図において、１および15はオーブン、1aは絞り加工凹
部、２および17はターンテーブル、３はカムシャフト、
４はシーズヒータ、５および18はターンテーブルロー
ラ、６はアルミニウム製板材、７および19は複合コーテ
ィング層、８および22は粗面、９は溶射層、10および23
は下塗層、11および24は耐熱層、12および25は非粘着
層、13および26は吸熱層、14および16はグリル用ヒー
タ、20はマイクロ波吸収発熱体コーティング層を示す。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】オーブン内でターンテーブルの上に載せた
   被調理物にマイクロ波を照射することにより、加熱調理
   を行なう電子レンジにおいて、 前記ターンテーブルの表面に、有機金属架橋重合体から
   形成されるセラミック中に第１の耐熱性樹脂が分散した
   構造である耐熱層と、第２の耐熱性樹脂によって前記耐
   熱層上に形成され被調理物の前記ターンテーブルへの焦
   げつきを防ぐ非粘着層とからなる複合コーティング層を
   形成し、 前記ターンテーブルの裏面にマイクロ波吸収発熱体コー
   ティング層を形成し、該マイクロ波吸収発熱体コーティ
   ング層の上に吸熱層を形成したことを特徴とする電子レ
   ンジ。