JP2519984B2 - マウスピ―ス用成形体 - Google Patents

マウスピ―ス用成形体

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] この発明は、マウスピース用成形体に関する。
さらに詳しくは、軟化点40〜100℃を有する低温熱可
塑性樹脂,具体的にはラクトン樹脂またはトランスポリ
イソプレン樹脂を主成物とする低温熱可塑性樹脂を用い
るマウスピース用成形体に関する。
本発明のマウスピース用成形体に用いられる低温熱可
塑性樹脂とは公知の用途に従来から用いられており,温
水または熱水の温度で軟化し室温では固形である樹脂組
成物と同じでものである。
公知の用途とは歯科用咬合記録材(咬合採得用材),
倍力総作用物体、プラスチック粘土、医療用ギプス、ス
プリント材、放射線照射用フェイスマスク、かつらの型
取材などである。
[従来技術] 従来,マウスピースはスポーツ,特にラグビー,アメ
リカンヒットボール,ボクシングなどの格闘技の選手が
プレーする際に口啌内裂傷防止用,特に舌や唇を噛み切
らないように保護するために使用したり,また,歯科医
療において,以下のような種々の使用形態で用いられて
いる。
すなわち, 歯ぎしり音発生防止(咬頭干渉防止)用具 上下顎理想咬合平面作成用具(スプリント) 上下顎歯牙の間隙を形成させることによる顎口啌系の
異常発育の防止,正常発育・理想発育の促進用具(咬合
挙上板) としてなどである。
上記の用途の中で,たとえば,歯ぎしり音発生防止
(咬頭干渉防止)用具の役割または具体的な使用状況は
以下の通りである。
即ち,上顎歯牙の一部被覆または全部被覆または下顎
歯牙の一部被覆または全部被覆または上下顎歯牙同時の
一部被覆または全部被覆を行なうことによって,夜間睡
眠時における上顎歯牙の咬頭干渉に起因する歯ぎしり音
の発生を防止する。
上記の〜はいずれも名称は異なるが,作成方法,
形態は酷似している。
形状はいずれの用途の場合も略馬蹄形で,患者の口啌
内より印象採得して得た作業模型上にて作成する。
従来,前記のような用途に用いられていたマウスピー
スは酢酸ビニル樹脂,シリコン樹脂,アクリックレジ
ン,加熱重合アクリックレジン,熱可塑性アクリック材
のような材料からなるものが一般的であった。
上記のような用途に前記の材料を使用した場合,以下
のような欠点がある。
[発明が解決しようとする課題] その問題とは以下のようなものである。
たとえば,酢酸ビニル樹脂は変型が大で,硬化時の収
縮率が大きく(10%程度),一定の厚さを保持すること
が困難であるため凹凸形状が付与されていない薄い板状
の馬蹄形のものが市販されている。
使用法は各個人がこれを熱湯に浸して軟化させて口啌
内へ挿入後,咬みつけてそのまま口啌内温度まで低下さ
せて硬化させる方法である。
また,他の方法としては酢酸ビニルを含む他の熱可塑
性材料は単なる板状のものとして市販されているためエ
ルコドンプレスと呼ばれる特殊な成形機を用いなければ
作成することができなかった。
なお,エルコドンプレスを用いる際の成形手順は以下
の通りである。
まず,顎模型上に板状の材料を置き,上部より熱風を
供給して材料を軟化させ,プレス部分を押し合わせ,下
部より吸引することによって顎模型上に板状の材料を押
し付けて金型の凹凸形状を転写し,次いでプレスから取
り出した凹凸形状が付与された状態で冷却して仮面状の
ものを作成する。
次いで,上記のものより凹凸形状が付与された馬蹄型
状部分を切り抜くことによりマウスピースを作成する。
したがって,作業の手間も繁雑である。
また、アクリックレジン,加熱重合アクリックレジ
ン,即時重合アクリックレジンのような材料の場合には
顎模型上にポリマーとモノマーを筆先で少しづつ盛り上
げ,形態修正後硬化させるなどの方法がとられていた。
これも同様に作業の手間が繁雑である。
このような状況に鑑み,本発明者らは鋭意検討した結
果,本発明を完成させた。
[発明の構成] すなわち,本発明は 「軟化点40〜100℃を有し,かつ,室温で固形である
低温熱可塑性樹脂を主成物とし,必要に応じて芯体がイ
ンサートまたはラミネートされ,略馬蹄型または半円形
に成形されたことを特徴とするマウスピース用成形体」 である。
本発明のマウスピース用成形体に用いられる低温熱可
塑性樹脂とは熱水または温水の温度,すなわち,40〜100
℃で軟化する樹脂であって、室温では固化してそれ以上
は変形しない樹脂である。すなわち,従来から一般的に
用いられていた200〜300℃程度の比較的高い温度で成形
加工されていたような熱可塑性樹脂は含まない。
「必要に応じてインサートまたはラミネートされた芯
体」の役割は以下の通りである。
すなわち,芯体は「低温熱可塑性樹脂」が加熱され軟
化した場合,樹脂の種類,ブレンド組成の組み合わせな
どによっては患者の口啌顎内にあてがう前にタレ落ちる
ことを防ぐ支持体の役目を果たす。
芯体の具体的なものとしては通常の繊維製の織布また
は不織布、プラスチックネットなどがある。
本発明で延べる低温熱可塑性樹脂とは公知のもので、
既に市販されており、スプリント材料、かつらの型取り
材料などとして一般的なラクトン樹脂またはトランスポ
リイソプレン樹脂であり,各種の用途に用いられてい
る。
例えば、倍力操作用物体(特開昭60−240692)、プラ
スチック粘土(特開昭61−42679)、医療用ギプス(特
開昭58−81042)、スプリント材、放射線照射用フェイ
スマスク、かつらの型取材(特開昭60−215018)などが
ある。
この低温熱可塑性樹脂とは樹脂材料に加工上必要な可
塑剤、安定剤、熱伝達材その他必要に応じて添加される
着色剤または上記のような樹脂単独では有していない性
状を付与するために他の樹脂をブレンドした場合を含む
ものとする。
本発明において主要な構成要件となる低温熱可塑性樹
脂の一つであるラクトン樹脂について述べる。本発明で
述べるラクトン樹脂とはラクトンモノマー、例えば、ε
−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、トリメチルカ
プロラクトンなどを開始剤を用いて開環重合させて製造
したものであり、常温では固体状態であるが、加熱する
と軟化する熱可塑性樹脂である。
以上の各種ラクトンモノマーの中でも量産されている
ε−カプロラクトンが特に好適である。
本発明のマウスピース用成形体に用いられる低温熱可
塑性樹脂は以下のような方法で製造される。
このラクトン樹脂は常温で液体のものから固体状のも
の迄種々の分子量を有するものがあり,各種の用途に用
いられているが,本発明のマウスピース用成形体に用い
るためには10,000〜100,000程度の分子量を有するもの
が好ましい。
分子量が10,000未満では常温で液体またはワックス状
であるため本発明の使用目的に合致しない。
反対に分子量100,000以上を有するものでは軟化点が
高くなるわけではないが、溶融時の粘度が高く,歯また
は歯床の表面細部の凹凸形状の型の正確な転写が困難で
ある。
次にラクトン樹脂を上記のような分子量範囲、すなわ
ち、軟化点範囲を有するグレードのものに設定するため
の条件について記述する。
前記のようにラクトンモノマーを開始剤と触媒の存在
下で開環重合させるわけであるが、本発明に用いるよう
な分子量グレードの樹脂を製造するにはラクトンモノマ
ー中に通常は必ず含まれている微量の水分、具体的には
0.05%程度のものを開始剤として利用する。
分子量を設定するにはラクトンモノマーと開始剤との
モル比を以下の関係式にしたがって計算して決定する。
ex.分子量40、000のものを製造する場合には 40、000=A+n×(ラクトンモノマーの分子量) [ただし、Aは開始剤として用いられる水の分子量、n
は水1モルに対して加えられるラクトンモノマーのモル
数] また、製造されたラクトン樹脂の分子量を測定するに
はその樹脂の水酸基価および酸価を測定して以下の計算
式にしたがって計算すれば目安となる分子量が算出され
る。
上記のような40〜100℃という軟化点範囲を有するラ
クトン樹脂の分子量は10、000〜100、000のものであ
り、中でも40、000〜70、000のものが好ましい。
また、以下のように相対粘度を求めて分子量を把握す
る方法もある。
分子量10、000〜100、000のものというのは相対粘度
1.15〜2.28を有するものに相当する。
なお、本発明で述べる相対粘度とは毛細管粘度計(ウ
ベローデ粘度計)を用いて測定した値とする。測定法は
JIS K6726に準じて行なった。ただし、溶剤としてトル
エン濃度1%、温度27℃プラスマイナス0.05℃で測定し
た値とする。
ラクトンモノマーを微量の水分、具体的には0.05%程
度のものを開始剤として上記のように開環重合させて分
子量10、000〜100、000程度のラクトン樹脂を製造する
場合に用いる触媒としては有機スズ化合物、有機チタン
化合物、有機ハロゲン化スズ化合物などが好適であり、
中でも塩化第一スズ(SnCl2)を用いるのが好ましい。
触媒の使用量はラクトンモノマーに対して0.1〜5、0
00ppmが好適である。
以上のような本発明のマウスピース用成形体に用いる
分子量10、000〜100、000程度のラクトン樹脂を製造す
る方法は特開昭56−149442号公報などに詳細に開示され
ている。
また、ラクトン樹脂は単独のグレードのものでも良い
が、グレードの異なるものを複数種類ブレンドして用い
ても良い。
グレードの異なるものの一例としては例えば、相対粘
度1.15〜1.5を有するものと1.5〜2.28を有するものとの
組み合わせがある。
グレードの異なるものを複数種類ブレンドされた樹脂
の特性は相当する単独のグレードのものより同じ軟化温
度でも曲げ強度などが向上する。
以上のようにして製造された低温熱可塑性樹脂である
ラクトン樹脂は単独で用いても良いし、アクリロニトリ
ル−スチレン樹脂、その他の熱可塑性樹脂をブレンドし
て用いても良い。
アクリロニトリル−スチレン樹脂としては乳化重合ま
たは懸濁重合で製造されたアクリロニトリル25%−スチ
レン75%の汎用グレードのもの、または、相当品を用い
れば問題はない。
その他、ブレンドし得る樹脂としてはエチレン−酢ビ
樹脂、ラクトン以外の熱可塑性樹脂のポリエステル樹脂
などがある。
次に低温熱可塑性樹脂のもう一つの例であるトランス
ポリイソプレンについて詳細に説明する。
本発明のマウスピース用成形体において、用いられる
低温熱可塑性樹脂であるトランスポリイソプレンは以下
のようにして製造される。
すなわち、有機アルミニウム化合物と三塩化ヴァナジ
ウムとチタン化合物からなる触媒など用いてイソプレン
モノマーを重合させることにより得られる。
反応温度は10〜100℃が適当であり、ベンゼンなどの
溶媒中で行っても良い。
また、イソプレンモノマーに他の共役ジエン系のモノ
マーなどを共重合させても良い。
低温熱可塑性樹脂であるトランスポリイソプレン樹脂
は種々のグレードのものがあり、各種の用途に用いられ
ているが、本発明のマウスピース用成形体に用いる材料
としては少なくとも85%のトランス−1、4体を含有
し、X線回折で測定された結晶性が15%〜40%、ムーニ
ー粘度が5〜50(ML−4、100℃)を有するグレードの
ものが望ましい。このようなトランス−1、4−ポリイ
ソプレンを主成物とする樹脂組成物の結晶融点は35〜10
0℃である。
前記の物性範囲を外れるものは本発明の使用目的には
合致しない。
結晶性が40%を越えるものでは溶融時の粘度が高すぎ
るため正確な歯型採得作業がしにくい。
以上のようなグレードのトランス−1、4−ポリイソ
プレンを製造するための方法は例えば特開昭50−12258
6、特開昭51−53545号公報などに詳細に開示されてい
る。
次に、前記のような材料を用いて本発明のマウスピー
ス用成形体を行なう場合の状況を記述する。
形状は特に限定はされず、従来から用いられているも
のと同じ、すなわち、略馬蹄型または略半円形を有する
ものが好ましい。
略馬蹄型または略半円形のものは平板状でも良いが、
ある程度平均的な人間の口啌顎内の形状に似せて凹凸形
態が予め付与されていても良い。
各部のサイズは以下の通りである。
すなわち、略馬蹄型または略半円形のものを三角形に
近似させて表現すると一辺が50〜100mm、好ましくは、7
0mm程度の等辺または二等辺のものがよい。
70mm程度のものであれば殆どの患者に対応可能であ
る。
また、略馬蹄型または略半円形のものの厚みは必要に
応じてインサートまたはラミネートされた芯体を含んで
1〜10mm,好ましくは、2〜5mmである。
厚みが1mm未満のものでは口啌顎内で凹凸形状を正確
に付与しにくいだけでなく、熱容量の関係でゆっくり作
業ができない。
逆に厚みが10mm以上のものでは材料の使用量が多くな
るため嵩高くなり、また、コスト高になる。
さらに、熱容量の関係で軟化させるのに時間がかか
り、凹凸形状を付与した後の固化にも時間がかかるので
好ましくない。
次に、本発明のマウスピース用成形体を用いて患者個
人夫々にフィットしたマウスピースを作成する際の作業
状況を記述する。
前記のようなマウスピース用成形体を温水に浸漬して
軟化させる。
軟化させるための温水の温度は40〜100℃、好ましく
は、40〜60℃である。
次いで、この軟化された状態のものを患者の口啌顎内
に挿入して上下の歯でかませる。
しばらくするとそれまで軟化していたマウスピース用
成形体が口啌顎内の温度、すなわち、36〜37℃まで低下
すると歯または歯床表面細部の凹凸形状を転写したまま
硬化する。
以上の作業は上の歯用または下の歯用別々に行っても
良いし,同時に上下の歯形をとっても良い。
上下の歯形を別々にとって両者を自由にスライドでき
るようにしておけば使用する患者にとっては上下顎歯牙
の動きを自由に行なうことができるので好適である。
使用する樹脂には着色剤を添加してもよく,着色剤の
使用量は樹脂に対して1〜5部である。
また、熱伝達材を用いて軟化し易くしておいてもよ
い。
熱伝達材を用いる理由は加温する際に均一に加温され
るようにするためである。
好適な熱伝達材は熱伝導率の高い金属の粉末、例え
ば、アルミニウム粉末、銅粉末などである。
熱伝達材の使用量は染料または顔料の使用量と同じ程
度で良い。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軟化点40〜100℃を有し,かつ,室温で固
    形である低温熱可塑性樹脂を主成物とし,必要に応じて
    芯体がインサートまたはラミネートされ,略馬蹄型また
    は半円形に成形されたことを特徴とするマウスピース用
    成形体。
  2. 【請求項2】低温熱可塑性樹脂が熱可塑性ラクトン樹脂
    組成物である特許請求の範囲第(1)項記載のマウスピ
    ース用成形体。
  3. 【請求項3】低温熱可塑性樹脂がトランスポリイソプレ
    ン樹脂である特許請求の範囲第(1)項記載のマウスピ
    ース用成形体。
  4. 【請求項4】ラクトン樹脂組成物が相対粘度1.15〜1.5
    を有するポリカプロラクトン樹脂と1.5〜2.28を有する
    ポリカプロラクトン樹脂とのブレンド物である特許請求
    の範囲第(1)項記載のマウスピース用成形体。
  5. 【請求項5】芯体が織布または不織布である特許請求の
    範囲第(1)項記載のマウスピース用成形体。
  6. 【請求項6】芯体がプラスチックネットである特許請求
    の範囲第(1)項記載のマウスピース用成形体。
  7. 【請求項7】低温熱可塑性ラクトン樹脂組成物がラクト
    ン樹脂との他の熱可塑性樹脂とのブレンド物である特許
    請求の範囲第(1)項記載のマウスピース用成形体。
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