JP2519255B2 - 変倍光学系 - Google Patents

変倍光学系

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は切換え可能な2つの光路を有する変倍光学系
に関する。
〔従来の技術〕
近年2焦点を有する変倍撮影レンズへの要望が強く、
これを実現したものとして主光学系の前方若しくは後方
に新たな補助光学系を挿脱させて全系の焦点距離を変化
させる所謂コンバーター方式のものが多く知られてい
る。この方式によれば、簡単な構成で容易に焦点距離を
変化させることができるが、レンズ系全体が大きくなる
か、レンズ系全長が長くなり、更に補助光学系の着脱や
それに伴う主光学系の光軸上の移動等により撮影上の機
動性を損なうという欠点があった。
これらの問題点を解決するものとして、特公昭58−38
778号公報、特開昭62−138812号公報に示されたものが
提案されている。これは、被写体に対向させて短焦点側
撮影レンズと長焦点側撮影レンズの2つのレンズ系を並
設し、カメラ本体に内蔵された可動反射鏡を利用して一
方のレンズ系を選択使用するようにしたものである。こ
のように変倍光学系を構成することにより、長焦点側に
おいてバックフォーカス光路を効率的にコンパクトにと
ることができ、コンパクト性,機動性共に向上するもの
である。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかしながら、このように2つの光路を有する構成で
実際に変倍切換えを行う場合、特に2つの光軸の間隔を
小さくして光学系全体のコンパクト化を達成しようとす
ると、長焦点側撮影状態において反射鏡を経由しないで
感光面に入射する有害光線が、生ずるという実用上新た
な問題が発生してしまう。
本発明はこのような問題点に着目して成されたもので
あり、有害な光線が無く、並設された2つの光学系の光
軸間隔も小さく、全体的にコンパクト化された切換え可
能な2つの光路を有する変倍光学系を提供することを目
的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明に基づく変倍光学系は短焦点側焦点距離を生ず
る第1レンズ系及び該第1レンズ系の光路上後方に挿脱
自在に設けられた可動反射部材を前記第1レンズ系の有
効光束外に移動することにより形成される空間を経て感
光面に到達する第1の光路と、長焦点側焦点距離を生ず
る第2レンズ系,該第2レンズ系の光路上後方に設けら
れた固定反射部材及び前記第1レンズ系の有効光束内に
挿入された前記可動反射部材を経て感光面に到達する第
2の光路とから成る切換え可能な2つの光路を有する変
倍光学系において、前記2つの光学系の光軸を含む平面
上で考えた時の前記固定反射部材と前記可動反射部材と
の間の下側光線と、前記可動反射部材と前記感光面との
間の上側光線との交点付近に遮光部材を備え、以下の条
件を満足することを特徴とする変倍光学系である。
0.5S<l<S …(1) 〔90°−tan-1 {(S・FNO−fb)/(FNO・fb)}〕/2<θ <〔90°+3ω−tan-1 {(S・FNO−fb)/(FNO・fb)}〕/2 …(2) 但し、 l;第2撮影状態における可動反射部材と感光面との光軸
上の距離 S;2つのレンズ系の光軸を含む平面で感光面を切った時
の切り口の長さ θ;第2撮影状態における可動反射部材の反射面と光軸
とのなす角 FNO;長焦点側のFナンバー fb;第2レンズ系のバックフォーカス ω;長焦点側の半画角 である。
〔作用〕
本発明に基づく変倍光学系では、一実施例の光学系の
概略断面図である第1図に見られるように、長焦点側撮
影状態において可動反射部材1が感光面2から適当な距
離に、適度な角度で配設されているため、有害光線は、
2つの光軸を含む平面上で考えた時の固定反射部材3と
可動反射部材1の間のlower-ray(下側光線)4と、可
動反射部材1と感光面2の間のupper-ray(上側光線)
5との交点付近に設けられた第1遮光部材6により遮ら
れ、感光面2には入射しない。
次に、本発明の構成にある条件(1),(2)につい
て説明する。
条件(1)は、長焦点側撮影状態における可動反射部
材1の位置を決めるものである。上限を越えると、第1
レンズ系7のバックフォーカスを長くしなければなら
ず、これは第1レンズ系7の全長を長くすることになる
ので、光学系全体のコンパクト化に反し好ましくない。
下限を越えると、第2図に示すように、第1レンズ系7
での撮影の際、可動反射部材1を第1レンズ系7の有効
光束外に退避させる時、反射面の端点を中心に第2レン
ズ系8の光軸方向に回転させると感光面2にあたってし
まい、又これを避けるためにスライドさせることを併用
するとしても、この場合そのスライド移動量が大きく、
スペースを大きくとらなければならなくなり、機構上好
ましくない。
条件(2)は、長焦点側撮影状態における可動反射部
材1の反射面の配設角度に関するものである。
長焦点側撮影状態において、固定反射部材3を経由し
ないで感光面2に入射する有害な光束を決めているの
は、第2レンズ系8の最も被写体側の面の縁と最も感光
面側の面の縁、更に、2つの光軸を含む平面上で考えた
時の固定反射部材3と可動反射部材1の間のlower-ray4
と可動反射部材1と感光面2との間のupper-ray5との交
点付近に設けられた第1遮光部材6の3ヶ所である。
ここで、光学系全体のコンパクト化を達成するため
に、第2レンズ系8の最も被写体側のレンズ面より最も
感光面側の最終面までの間隔を小さくすると、最終面か
ら射出される有害光の光軸に対する角度は大きくなる
が、その角度を3ω程度以下に抑えると、十分コンパク
トで良好な性能をもった第2レンズ系8を選ぶことがで
きる。そして、第2レンズ系8の最終面から出る有害光
束を絞るようにした時、upper-ray及びlower-rayが反射
部材を経る前の状態で光軸とのなす角は、共に tan-1{(S・FNO−fb)/(FNO・fb)} となる。
また、第2レンズ系の最終面と第1遮光部材6との距
離を最小にするには、有害光束の光軸に対して最大の角
度になる光線と、固定反射部材3と可動反射部材1との
間のupper-rayとのなす角を直角にすることであり、こ
の時の可動反射部材1の反射面の光軸とのなす角θ
は、有害光束の角度3ωに対し、 θ=〔90°+3ω−tan-1 {(S・FNO−fb)/(FNO・fb)}〕/2 となる。
更に、第2レンズ系8の最終面を有害光束の射出を絞
る形にした時、第2レンズ系8のupper-rayが固定反射
部材3と可動反射部材1との間で光軸に対して垂直にな
るとき、可動反射部材1の反射面の光軸とのなす角θ
は、 θ=〔90°−tan-1 {(S・FNO−fb)/(FNO・fb)}〕/2 となる。
条件(2)の上限を越えると、第1遮光部材6で有害
光束を遮光するように光学系を設計した場合、感光面2
と可動反射部材1との間を拡げなければならなくなり、
更に2つの光軸の間隔も大きくしなければならなくなり
好ましくない。条件(2)の下限を越えると、第2レン
ズ系8のupper-rayが固定反射部材3と可動反射部材1
との間で光軸に対してなす角αが直角を越えることにな
り、第3図に示すように、第2レンズ系8の最終面の位
置を、最終面を射出したupper-rayと固定反射部材3と
の交点Pで決めることになる。その結果、第2レンズ系
8の最終面の位置を感光面2から離さなければならず、
また可動反射部材1が大きくなりすぎ、退避機構上も好
ましくなく、更に光軸の間隔も拡がり、コンパクト化に
反して好ましくない。
以上、本発明の構成・作用について説明したが、更に
好ましくは以下の様にすると良い。
一つは、第2レンズ系8の最終面と固定反射部材3と
の間に第1図に示す第2遮光部材9を設けるものであ
る。このようにすることにより、有害光束の最大角を緩
くすることができ、その結果2つの撮影系の光軸の間隔
をより小さくすることができ、この効果は更に第2レン
ズ系8全体を後ろに下げることにも利用できる。
また、第2レンズ系8の被写体側の第1レンズ系光軸
と反対側に、有害光束を遮光する第3遮光部材10を設け
ると良い。これは、更に防水等のカバーと一体にしたマ
スクにすると良い。またこのマスクは、2つの光軸の並
んでいる方向に短かく、これに垂直な方向に長くして効
率的に周辺光量を確保し、有害光束を遮光するのがより
望ましい。
更に、第2レンズ系8の被写体側の第1レンズ系光軸
側にも有害光束を遮光する第4遮光部材11を設けると良
い。これにより固定反射部材3で反射した光線のうち、
再び第2レンズ系8に入射し、レンズ面又は枠での内面
反射により感光面2に入射するという有害光束を除去す
ることができ、良質の画像を得ることができる。尚、こ
の第4遮光部材11は前述の第3遮光部材10と一体化して
も良い。この場合のマスクは前述の効果も考慮し第4図
に示すような形にすると良い。
さて、カメラ全体の実際的なコンパクト化を考える
と、フィルムのサイズを1つの基準にして、2つの光軸
間隔Aを1.1S以下に、また第2レンズ系8の最物体側面
と感光面2を含む平面との距離Bを1.8S以下にするのが
望ましい。この場合、可動反射部材1の反射面の光軸と
のなす角θは、θ>45°に設定するのが良い。そして、
このようなコンパクト化を達成するためには、第2遮光
部材9と感光面2を含む平面との距離をC1とした時、以
下の条件(3)を満足すると良い。
0.5S≦C1≦1.25S …(3) 条件(3)の上限を越えると、性能を保ったまま最物
体側面と感光面2を含む平面との距離Bを1.8S以下に抑
えることが困難になる。下限を越えると、構成上第1遮
光部材6を感光面2に近づけることになる。そして、可
動反射部材1も感光面2に近づくため、この退避機構を
考慮すると、反射面の角度θを大きくしなければならな
い。すると、更に第1遮光部材6と感光面2を近づける
ことになり、第1遮光部材6を第1レンズ系7のupper-
rayに沿って光軸から離さなければならない。また、反
射面の角度θが大きくなることにより、第1,第2遮光部
材により射出角を制限された有害光線に対して、2つの
レンズ系の光軸間隔を1.1S以下にすることが困難にな
る。
更に、特定の発生原因を有するフレアー光を除去する
ために、第2遮光部材9と第2レンズ系最像側面に接す
る平面との距離をC2とすると、以下の条件を満足するの
が良い。
0.04S<C2 …(4) 条件(4)を満足することにより、固定反射部材3で
反射した光束のうち、再び第2レンズ系8に入射して、
レンズ面又は枠での内面反射により感光面2に入射する
有害光束を、第4遮光部材11の作用に加えてより良好に
除去することができる。
また、可動反射部材1を第1レンズ系7の光路から退
避させるとき、反射面を第1レンズ系光軸側に向けると
内面反射等のフレアーの原因となるので、その退避形態
としては低反射面に形成された反射面の裏面が第1レン
ズ系光軸側に向く構成が望ましい。そして、この退避
時、可動反射部材1は第1図に波線で示すように光軸に
対して平行になるよりも、反射面の裏面が感光面2を向
く様に退避させることにより、光学系全体をよりコンパ
クトにすることができる。
更に、退避機構としては、可動反射部材1の回転又は
これにスライド動作を組み合わせることが望ましいが、
回転中心としては、反射面の物体側の端より、長焦点側
撮影状態における反射面と短焦点側撮影状態におけるup
per-ray12との2つの光軸を含む平面で考えた時の交点
までの間に設けるのが良い。特に、上記交点近傍に設け
ることにより、可動反射部材1を動かすに要する力量も
減り、また回転する際、感光面2に対して必要となるス
ペースも小さくて済み好ましい。
〔実施例〕
以下に、本発明の実施例について述べる。
第1図は本発明の一実施例の変倍光学系の短焦点側撮
影状態及び長焦点側撮影状態を重ねて画いた光学系の概
略断面図である。第1図において、可動ミラー1は矢印
に示すように移動可能であり、実線及び波線に示す2状
態をとり得る。
短焦点側撮影状態では、可動ミラー1は波線で示すよ
うに第1のレンズ系の有効光束外に退避させられてい
る。そして、被写体からの光束は、第1レンズ系7と可
動ミラー1を移動することにより形成された空間とを経
て感光面2にて結像する。このとき、長焦点側より入射
した光束は、可動ミラー1により完全に遮光される。
長焦点側撮影状態では、可動ミラー1は実線で示すよ
うに、第2レンズ系8の光軸が固定ミラー3及び可動ミ
ラー1を経て、第1レンズ系7の光軸に一致するように
配置されている。そして、被写体からの光束は、第2レ
ンズ系8と固定ミラー3と可動ミラー1とを経て感光面
2にて結像する。このとき、短焦点側より入射した光束
は、可動ミラー1により完全に遮光される。この長焦点
側撮影状態において、第1レンズ系7を通り各ミラーを
経由しないで感光面2に入射する図示しない有害光線
は、第1遮光部材6、第2遮光部材9、第3遮光部材1
0、及び第4遮光部材11の何れかにより遮られ、感光面
2には入射しない。
このように、本発明実施例では、第1遮光部材乃至第
4遮光部材で示される4箇所に遮光部材を設けることに
より、短焦点側撮影状態及び長焦点側撮影状態における
光軸間隔を極めて小さく抑え、ゴースト・フレアーも良
好に除去できる。
次に、本発明一実施例の数値実施例を示す。
〈第1レンズ系〉 f=34.3mm F/3.5 2ω=64.3° fb=26.4mm r1=10.50 d1=4.35 n1=1.7340 ν=51.49 r2=26.76 d2=0.66 r3=−37.19 d3=0.81 n2=1.6889 ν=31.08 r4=11.24 d4=1.42 r5=39.77 d5=1.52 n3=1.7995 ν=42.24 r6=−22.6854 d6=1.09 r7=∞(絞り) 〈第2レンズ系〉 f=67.6mm F/6.5 2ω=35.5° fb=46.7mm r1=10.04 d1=2.60 n1=1.6968 ν=56.49 r2=19.36 d2=1.92 r3=−61.14 d3=0.8 n2=1.6889 ν=31.08 r4=10.52 d4=1.21 r5=19.34 d5=1.81 n3=1.7440 ν=44.73 r6=‐31.41 d6=1.22 r7=∞(絞り) d7=1.32 r8=‐121.31 d8=2.10 n4=1.5927 ν=35.29 r9=‐10.90 d9=0.57 r10=‐10.33 d10=0.80 n5=1.7880 ν=47.38 r11=‐114.24 S=24mm l=17.3mm(0.72S) θ=50.2° θ=54.90° θ=35.10° A=21mm(0.875S) B=39.8mm(1.66S) C1=19.7mm(0.82S) C2=1.8mm(0.075S) 但し、 fi;第iレンズ系の焦点距離 Fi;第iレンズ系のFナンバー 2ω;第iレンズ系の画角 fbi;第iレンズ系のバックフォーカス ri;物体側より順次に各面の曲率半径(絞りを含む) di;物体側より順次に各レンズの肉厚及び空気間隔(絞
りを含む) ni;物体側より順次に各レンズの屈折率 ν=物体側より順次に各レンズのアッベ数 S;第1レンズ系と第2レンズ系の光軸を含む面で感光面
を切った時の切り口の長さ l;長焦点側撮影状態における感光面と第1反射鏡との光
軸における距離 θ;光軸と反射鏡とのなす角 θ;〔90°+3ω−tan-1 {(S・FNO−fb)/(FNO・fb)}〕/2 θ;〔90°−tan-1 {(S・FNO−fb)/(FNO・fb)}〕/2 A;2つの光軸間隔 B;第2レンズ系の最物体側面と感光面を含む平面との距
離 C1;第2遮光部材と感光面を含む平面との距離 C2;第2遮光部材と第2レンズ系最像側面に接する光軸
に垂直な平面との距離 である。
尚、本発明実施例における固定ミラーの代わりにプリ
ズムを用い得ることは勿論である。この場合、反射面精
度が向上し、製作も容易になる。
〔発明の効果〕
本発明によれば、選択可能な各々異なる焦点距離を有
する2つの撮影系の光軸間隔を十分小さくコンパクトに
し、かつ有害な光束を良好に除去した変倍光学系が提供
される。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例の変倍光学系の短焦点側撮影
状態及び長焦点側撮影状態を重ねて画いた光学系の概略
断面図,第2図は本発明の条件(1)の下限を越えた場
合を示す光学系の概略断面図,第3図は本発明の条件
(2)の下限を越えた場合を示す光学系の概略断面図,
第4図は本発明の一実施例に用いられる第3遮光部材及
び第4遮光部材を一体化した遮光マスクの一例を示す図
である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】短焦点側焦点距離を生ずる第1レンズ系及
    び該第1レンズ系の光路上後方に挿脱自在に設けられた
    可動反射部材を前記第1レンズ系の有効光束外に移動す
    ることにより形成される空間を経て感光面に到達する第
    1の光路と、長焦点側焦点距離を生ずる第2レンズ系,
    該第2レンズ系の光路上後方に設けられた固定反射部材
    及び前記第1レンズ系の有効光束内に挿入された前記可
    動反射部材を経て感光面に到達する第2の光路とから成
    る切換え可能な2つの光路を有する変倍光学系におい
    て、前記2つの光学系の光軸を含む平面上で考えた時の
    前記固定反射部材と前記可動反射部材との間の下側光線
    と、前記可動反射部材と前記感光面との間の上側光線と
    の交点付近に遮光部材を備え、以下の条件を満足するこ
    とを特徴とする変倍光学系。 0.5S<l<S …(1) 〔90°−tan-1 {(S・FNO−fb)/(FNO・fb)}〕/2<θ <〔90°+3ω−tan-1 {(S・FNO−fb)/(FNO・fb)}〕/2 …(2) 但し、 l;第2撮影状態における可動反射部材と感光面との光軸
    上の距離 S;2つのレンズ系の光軸を含む平面で感光面を切った時
    の切り口の長さ θ;第2撮影状態における可動反射部材の反射面と光軸
    とのなす角 FNO;長焦点側のFナンバー fb;第2レンズ系のバックフォーカス ω;長焦点側の半画角 である。
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