JP2517253B2 - 高強度ジルコニア系焼結体の製造法 - Google Patents

高強度ジルコニア系焼結体の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、熱水安定性、熱安定性および高温安定性を
著しく改善した高強度ジルコニア系焼結体の製造法に関
し、詳しくは酸化イットリウムおよび酸化セリウムを安
定化剤として含み分散成分としてアルミナ、スピネル、
ムライトを混合した粉末の予備焼結体を加圧媒体として
酸素を含有するガスを用い、熱間静水圧処理をすること
により、熱および熱水安定性に加えて耐熱衝撃性、高温
強度等の高温における特性を著しく改善したジルコニア
系焼結体の製造法に関する。
[従来の技術] ジルコニア焼結体の製造法には、主として正方晶ある
いは立方晶からなる部分安定化ジルコニアの製造方法と
して、共沈法を応用した手法がK.HABERKO:Rev.int.Htes
Temp.et Refract.,1977,t.14,pp217−224に開示されて
いる。また、ZrO2−Y2O3系の主として正方晶からなる部
分安定化ジルコニア焼結体の製造法がPAUL.H.RIETH他:C
ERAMIC BULLETIN Vol.55,No.8(1976)717−727に示さ
れている。これら手法によって得られた部分安定化ジル
コニア焼結体は、準安定相である正方晶を常温で焼結体
内に存在させることによって高強度を得ている。これは
一つには機械的な外部応力が加わった際に、準安定な正
方晶から室温安定相である単斜晶への相転移が誘起さ
れ、応力が吸収されることによる。
このように、常温において、正方晶を準安定のまま保
持させたジルコニア焼結体を得るための安定化剤として
は、従来より主としてY2O3が用いられ、著しい高強度、
高靭性を発現して注目されている。また、これらのジル
コニア焼結体の製造法として、熱間静水圧プレス処理を
行う手法が特開昭60−5067に開示されている。さらに、
このY2O3を安定化剤とする部分安定化ジルコニアにアル
ミナ等を分散させた高強度ジルコニア系焼結体の製造法
が特開昭60−235762に開示されている。
この発明では、イットリアを少量添加した正方晶を含
むジルコニアにアルミナを特定割合配合することによ
り、また熱間静水圧プレス処理を行うことにより、従来
の部分安定化ジルコニアよりさらに著しく強度特性の向
上した焼結体の得られることを見出だしたものである。
一方、酸化イットリウム(Y2O3)のみを安定化剤とし
て少量(5モル%以下)含む正方晶からなる部分安定化
ジルコニアは、前記したように高温で安定な正方晶を、
微構造の制御によって、室温まで準安定相としてもたら
したものであり、単斜晶への相変態による体積膨張の結
果生じるクラック発生を防止することで高強度を得てい
る。このため、その構造や性質が経時変化をし、熱応力
下特に200℃ないし400℃という比較的低温における長時
間の加熱により、正方晶から単斜晶へ相転移を起こし、
強度の経時劣化が生じる。また、この相転移による強度
劣化は水分等の存在下では著しく促進され、このような
経時劣化が大きな問題となっている。
このことは、前記特開昭60−5067および特開昭60−23
5762の発明においても同様であって、Y2O3のみを安定化
剤として使用したジルコニアあるいはこれに、アルミナ
を一部含有するHIP法を応用した高強度ジルコニア焼結
体においても、前記の部分安定下ジルコニアと同様に経
時劣化の問題を内包しており、水分の存在下で長時間加
熱された場合のいわゆる耐熱水安定性についての改善に
ついては何等開示されていない。
これに対し、特開昭60−141673のジルコニア磁器およ
びその製造法では、酸化イットリウムと酸化セリウムを
共存させることによって、熱安定性の改善を図る手法が
開示されている。しかしながら、この酸化イットリウム
と酸化セリウムからなるジルコニア焼結体は、機械的強
度が低いという欠点があり、熱安定性は改善されている
ものの、水分の存在下についての耐熱水安定性には触れ
られておらず、いまだ不十分である。このように、従来
から高強度で経時劣化のない熱および熱水安定性に優れ
たジルコニア系セラミックスおよびその製造法が待望さ
れていた。
そこで本発明の出願人等はこれを達成する方法として
昭和61年9月22日に高強度ジルコニア系焼結体およびそ
の製造法の発明を出願した(特願昭61−224370)。前記
発明においては、安定化剤として酸化イットリウムおよ
び酸化セリウムを所定量含有させたジルコニアと、アル
ミナからなり、結晶相および結晶粒子径を制御すると共
に、HIP処理により理論密度および曲げ強度を従来品よ
りも高水準に保つことにより、従来のジルコニア焼結体
よりも高強度を示し、かつ熱および熱水安定性に優れる
という効果を見出だしている。
しかしながら、前記発明おいては、製造法としてカー
ボン発熱体を使用し、Arガス等の不活性ガスを圧力媒体
として使用する最も一般的なHIP処理方法を用いてい
た。このため、カプセルを使用しない場合には、雰囲
気、特に還元性雰囲気によると考えられる着色が焼結体
に生じ、還元状態の違いから、焼結体表面と内部とで着
色が異なるなど雰囲気の影響を強く受けていた。
この現象はHIP処理の温度にも大きく依存していた。
すなわち、より高温でHIP処理を行うと、ジルコニア結
晶が、正方晶から単斜晶へ相転移を生じ、いわゆる脱安
定化の現象が進行し、焼結体の密度の低下と共に強度が
急激に低下する。これは、ジルコニアの安定化剤の一つ
であるセリウムが還元され、4価から4価と3価の間の
化学的非量論値あるいは3価になって、セリウムイオン
のイオン半径に変化が生じることが主要な原因と推察さ
れる。また、カーボン発熱体の使用によって得られた従
来のHIP焼結体は、熱処理あるいは高温使用中に、焼結
体内に含有されていた微量の炭素が酸化し、特性劣化し
やすい等の問題点を有していた。
[発明が解決しようとする問題点] 本発明は、このようなY2O3−ZrO2系の主として正方晶
よりなる部分安定化ジルコニアあるいはこれを主体とす
る焼結体の経時劣化、とりわけ熱水中での問題点および
前記発明の高温HIP処理における脱安定化現象や高温使
用中の劣化等の問題を解決すべくなされたものであっ
て、正方晶の熱安定性、熱水安定性を飛躍的に増大し、
経時劣化の無い、耐久性に優れた、しかも極めて高強度
なジリコニア系焼結体の製造法を提供し、同時に還元性
雰囲気の影響を受けず、また、1000℃付近の高温におい
て、長時間保持した後も、強度劣化のない極めて優れた
ジルコニア系焼結体の製造法を提供することを目的とす
る。
[問題点を解決するための手段] 本発明の高強度ジルコニア系焼結体の製造法は、酸化
イットリウム(Y2O3)および酸化セリウム(CeO2)を含
有するジルコニア(ZrO2)50〜98重量%と、分散成分と
してアルミナ(Al2O3)、スピネル(MgO・Al2O3)、ム
ライト(3Al2O3・2SiO2)のうち少なくとも1種以上50
〜2重量%とからなる混合粉末を1100〜1500℃で予備焼
結し、該予備焼結体を圧力50〜500MPa、温度1200〜1600
℃で、加圧媒体として酸素を含有するガスを用いて熱間
静水圧プレス処理することを要旨とする。
[作用] 本発明の製造法によって製造された高強度ジルコニア
系焼結体は、従来のイットリアを含有する部分安定化ジ
ルコニア系焼結体より、著しく高強度であり、熱安定
性、熱水安定性が極めて高く、長時間使用しても形状変
化あるいは強度低下等の劣化現象を示さず、極めて耐久
性に優れる。このように著しい高強度を維持したまま熱
安定性、熱水安定性が高い高強度ジルコニア系焼結体を
得ることのできる本発明の製造法は、本発明者等が鋭意
研究を重ねた結果、次に述べるような新たな知見に基づ
き完成されたものである。
本発明者等は酸化セリウムおよび酸化イットリウムを
含むジルコニア焼結体について検討を重ねた。その結
果、酸化セリウムを酸化イットリウムと共存させて安定
化剤として使用することによって、正方晶ジルコニアの
結晶構造が、従来のY2O3によって安定化された正方晶ジ
ルコニアよりも、ジルコニアの高温安定相である立方晶
の結晶構造により近くなり、正方晶の熱力学的安定領域
が低温まで広がると同時に、正方晶の熱力学的安定性が
高まる。
また、安定化剤として酸化イットリウムおよび酸化セ
リウムを含むジルコニア焼結体に対するアルミナ(Al2O
3)、スピネル(MgO・Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2Si
O2)の添加の影響について検討した結果、これら酸化物
の添加が正方晶の含有量を高め、弾性率の上昇による破
壊エネルギーの増大に寄与し、HIP処理法の応用と相ま
って極めて高い強度を示すと共に、ZrO2の粒界部分の強
化に役立ち、準安定正方晶ジルコニアの安定性を高め、
さらにはCeO2成分の存在による安定性との相乗効果の結
果、耐熱水安定性が著しく改善されることを見出だし
た。
本発明では熱間静水圧プレスを用いることで、従来の
大気圧での焼結に比較し、ち密でしかも焼結体中に含ま
れる気孔の大きさを30μm以下に制御することが可能と
なり、さらにはより低温において焼結を完了させること
ができる。そのため焼結体の平均結晶粒子径をより小さ
くすることができ、また理論密度の99%以上あるいは気
孔率が1%以下の嵩密度を得ることができる。この結果
150kgf/mm2以上の強度を有しながらも、酸化イットリウ
ム、酸化セリウム、ジルコニアおよびアルミナ、スピネ
ル、ムライトの各成分の組成制御と相まって、熱および
熱水安定性に極めて優れる焼結体を得ることを可能とし
た。
また、本発明では特にHIP処理の加圧媒体として、酸
素を含有するガスを用いることで、従来より一般的に行
なわれているカーボン発熱体を使用し、Arガス等の不活
性ガスを圧力媒体として使用するHIP処理に比較し、還
元性雰囲気の影響を受けない。
このため、第1に焼結体の表面と内部で着色が異なる
など、還元性雰囲気の影響による着色がない。
第2に、本発明の部分安定化ジルコニア組成に含まれ
る安定化剤の一つであるセリウムが、4価から4価と3
価の間の化学非量論値あるいは3価になり、イオン半径
に変化が生じることが主原因と考えられる脱安定化現
象、すなわちジルコニア結晶が正方晶から単斜晶へ相転
移を起こす現象が生じない。このため、強度、熱および
熱水安定性などの特性が一段と向上し、本発明の目的と
するHIP処理による効果が完全に得られる。
さらに第3に、従来より一般的に行なわれているHIP
処理により得られた焼結体は、HIP処理中に燃焼体内に
侵入した微量の炭素が、熱処理あるいは高温使用中に酸
化し、特性の劣化を生じ易いのに対し、本発明の高強度
ジルコニア系焼結体の製造法においてはこのような熱処
理あるいは高温使用中の特性劣化は全くなく、得られた
焼結体は1000℃の大気中に長時間保持した後も、焼結体
の強度の変化は無く、長時間の高温での使用中にも全く
劣化しない。
このように、本発明の高強度ジルコニア系焼結体の製
造方法によって得られる焼結体は、従来法のHIP処理を
応用した本発明組成の焼結体よりもさらに一段と優れて
いる。また、本発明によれば従来の部分安定化ジルコニ
アの高温強度の約2倍以上の優れた特性を有し、しかも
耐熱衝撃特性についても極めて優れた焼結体を得ること
ができる。
また、本発明の製造法ではジルコニア焼結体の平均結
晶粒子径を2μm以下とすることにより、強度および熱
水安定性に優れた焼結体を得ることができた。さらに本
発明方法によって得られる高強度ジルコニア焼結体は、
ジルコニアの耐摩耗性を優れたものとし、高温における
ジルコニア焼結体のクリープ特性をも改善するものであ
る。
本発明の製造法によって得られる焼結体に含まれ、熱
的により安定で劣化を示さないY2O3−CeO2−ZrO2系の正
方晶ジルコニアは、準安定な正方晶であるために、ZrO2
粒子近傍に応力集中を受けた場合には、低温安定相であ
る単斜晶への変態を生じ、応力を緩和する作用を有す
る。このため、本発明による高強度ジルコニア系焼結体
は著しい高強度、高靭性を示すものである。
本発明ではジルコニアの安定化剤としてY2O3およびCe
O2を必要とする。本発明のY2O3、CeO2、ZrO2の3成分の
配合割合は、第1図に示すような正三角形に交わる3軸
にそれぞれZrO2、YO1.5、CeO2のmol%を表示した3角座
標において、 点A(ZrO287.5mol%、YO1.512mol%、CeO20.5mol%) 点B(ZrO295.5mol%、YO1.54mol%、CeO20.5mol%) 点C(ZrO295.5mol%、YO1.52mol%、CeO22.5mol%) 点D(ZrO292.5mol%、YO1.50.5mol% CeO27.0mol%) 点E(ZrO285mol%、YO1.50.5mol%、CeO214.5mol%) で示された特定5組成点を結ぶ線で囲まれた範囲内の組
成にあることが好ましい。この範囲内にジルコニアの組
成を選択すれば、180℃(10気圧)飽和水蒸気中に20時
間焼結体を保持した場合の単斜晶量を30体積%以下にで
きる。また、200℃の大気中で3000時間保持した場合の
単斜晶量を20体積%以下にできる。
しかしながら、安定化剤の量がこの範囲より少ない
と、正方晶ジルコニアの安定性が低いものとなる。すな
わち、第1図の3角座標において、線ABよりもCeO2が少
ないと、熱安定性が劣ったものとなり、線DEよりもY2O3
が少ないと強度が低く、熱安定性にも劣る。また、線AE
よりもY2O3あるいはCeO2量が多いと、充分な機械的特性
が得られない。線BCDより安定性剤の量が少ない場合
は、正方晶ジルコニアの安定性が低いものとなる。
また、本発明をより効果あるものとするためには、上
記3成分の配合量を第1図の3角座標において、 点F(ZrO288mol%、YO1.510mol%、CeO22mol%) 点G(ZrO289mol%、YO1.510mol%、CeO21mol%) 点H(ZrO293mol%、YO1.56mol%、CeO21mol%) 点I(ZrO294.5mol%、YO1.52mol% CeO23.5mol%) 点J(ZrO291mol%、YO1.5mol%、CeO28mol%) 点K(ZrO286mol%、YO1.51mol%、CeO213mol%) で示された特定5組成点を結ぶ線で囲まれた範囲内に選
択するとよい。この範囲内にジルコニアの組成を選択す
れば、180℃(10気圧)飽和水蒸気中に20時間焼結体を
保持した場合の単斜晶量を20体積%以下にできる。ま
た、200℃大気中で3000時間保持した場合の単斜晶量を1
0体積%以下にできる。
さらに、本発明を最も効果的にするためには、上記3
成分の配合量を第1図の3角座標において、 点F(ZrO288mol%、YO1.510mol%、CeO22mol%) 点G(ZrO289mol%、YO1.510mol%、CeO21mol%) 点L(ZrO293.5mol%、YO1.54mol%、CeO22.5mol%) 点M(ZrO293mol%、YO1.52mol%、CeO25mol%) 点N(ZrO288mol%、YO1.51mol%、CeO211mol%) 点K(ZrO286mol%、YO1.51mol%、CeO213mol%) を結ぶ実線で囲まれた範囲内に選択すると良い。この範
囲内にジルコニアの組成を選択すれば、180℃(10気
圧)飽和水蒸気中に20時間焼結体を保持した場合の単斜
晶量を10体積%以下にできる。また、200℃大気中で300
0時間保持した場合の単斜晶量を5体積%以下にでき
る。
本発明では、酸化イットリウムおよび酸化セリウムを
含有するジルコニア(ZrO3)50〜98重量%に対し、分散
成分としてアルミナ(Al2O3)、スピネル(MgO・Al
2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)のうち少なくとも1
種以上を50〜2重量%の割合で加える。これら分散成分
の割合が2重量%より少ないと、分散成分の添加による
強度上昇、熱および熱水安定性向上の効果が得難く、50
重量%を越えると、正方晶ジルコニアの起因する強化機
構が減少し、期待した程の強度が得られない。本発明を
より効果あるものとするためには、これら分散成分の添
加量を5〜40重量%の範囲に選択すると良い。さらに好
ましくは10〜35重量%が良い。すなわち、この範囲に選
択すればジルコニアの安定化剤であるCeO2成分との相乗
効果により熱及び熱水安定性にきわめて優れたものにな
る。
本発明の製造法によって得られる焼結体は150kgf/mm2
以上の3点曲げ強度を示す。本発明の製造法に用いられ
る組成内であって、しかも熱および熱水安定性を満た
し、かつ強度が150kgf/mm2以上の焼結体は、従来のもの
と比較して著しく優れたものである。
また、得られた焼結体の嵩密度は理論密度の99%以上
であるかまたは気孔率が1%以下を示す。理論密度が99
%より小さいかあるいは気孔率が1%より高い場合に
は、焼結体の強度も低く、また熱および熱水安定性も低
いものとなる。すなわち、嵩密度が高いほど焼結体に含
まれる正方晶ジルコニアの安定性が高まり、耐熱、耐熱
水安定性に優れたものとなる。
また、本発明方法によって得られる焼結体中に含有さ
れる気孔は総て30μm以下となる。30μm以上の大きな
気孔を有していると高強度焼結体が得られない。
また、本発明の製造法によって得られる焼結体の色
は、該組成物の大気中焼結物と同系色、すなわち白色あ
るいは乳白色あるいは薄い黄色を呈しており、還元性あ
るいは非酸化性雰囲気による着色、すなわち赤褐色ある
いは茶褐色あるいは黒色を呈しない。すなわちこれは、
本発明の特徴の一つである酸素を含有するガスを圧力媒
体としてHIP処理を行った結果である。
本発明の製造法によって得られる焼結体に含まれるジ
ルコニア結晶は主として正方晶よりなる部分安定化ジル
コニアであるので、高強度、高靭性を示す。本来正方晶
は準安定相であるため試料表面の研削によって一部が単
斜晶へ転移を生じ表面層の残留圧縮応力により焼結体の
強化に寄与する。この強化の程度は研削による表面粗さ
と焼結体の粒径に依存している。このため、本明細書に
言う主として正方晶よりなる部分安定化ジルコニアと
は、X線回折による結晶相の測定において鏡面状態で正
方晶系を少なくとも50%以上含むジルコニアをいう。
なお、ジルコニア焼結体の各結晶相の含有量は、X線
回折により多形の結晶定量法に基づいて測定を行う。X
線回折ピークの積分強度を以下単に積分強度と略記す
る。酸化ジルコニウムの正方晶と立方晶は格子常数が近
似しているため、低角度の回折ではピークが非常に近接
し、分離できないので、単斜晶ピークの積分強度と正方
晶ピークおよび立方晶ピークの積分強度和の量比(単斜
晶/正方晶+立方晶)を測定し、正方晶と立方晶のピー
クが分離する高角度で正方晶ピークと立方晶ピークの積
分強度から両者の量比(正方晶/立方晶)を測定し、各
結晶量を算出する。X線回折によるジルコニアの各結晶
量の具体的計算法は、次のとおりである。
(1) 積分強度の測定 正方晶<111>と立方晶<111>の混合積分強度・・・I
T+C<111> 単斜晶<11>と<111>の積分強度・・・・・・・・I
M<11>、IM<111> 正方晶<004>と<400>の積分強度・・・・・・・・IT
<004>、IT<400> 立方晶<400>の積分強度・・・・・・・・・・・・・
・IC<400> (2) 各結晶相の含有量は体積%として次式より求め
た。
単斜晶酸化ジルコニウム(体積%) 立方晶酸化ジルコニウム(体積%) C=100−M−T ……(III) 本発明の焼結体は、焼結体の平均結晶粒子径が2μm
以下である。好ましくは1μm以下であることが良い。
平均結晶粒子径が2μmを越えると、熱および熱水環境
下で正方晶から単斜晶への変態が生じ難くなる。ジルコ
ニア焼結体の熱安定性は、焼結体の粒子径は大きく依存
しており、粒子径が小さい程安定性が向上する。本発明
の焼結体の場合、安定化剤として酸化セリウム(CeO2
を含んでいるので、これを含まない酸化イットリウム部
分安定化ジルコニアと比較すれば、臨界粒子径は組成に
依存するが、数倍から約5倍の大きさとなり、安定性は
極めて高いものとなっている。
また、本発明の製造法によれば、180℃(10気圧)の
水蒸気中に20時間保持後の焼結体表面のジルコニア結晶
の単斜晶量が30体積%以下、好ましくは20体積%以下、
さらに好ましくは10体積%である焼結体が得られる。ま
た、200℃大気中に3000時間保持後の焼結体表面のジル
コニア結晶の単斜晶量が20体積%以下、好ましくは10体
積%以下、さらに好ましくは5体積%以下である焼結体
が得られる。
また、本発明方法によれば1000℃大気中1500時間保持
後の焼結体の強度が150kgf/mm2以上の焼結体が得られ
る。さらに1000℃における焼結体の高温強度が50kgf/mm
2以上である焼結体が得られる。また水中急冷法による
熱衝撃強度が350℃以上好ましくは400℃以上である焼結
体が得られる。
本発明の製造法は、熱間静水圧プレス(以下HIPと略
記する。)することを特徴としており、特に本発明で
は、加圧媒体として酸素を含有するガスを用いてHIP処
理をすることを特徴としている。一般的なHIPにはカー
ボンヒータを使用しているが、本発明の酸素を含有する
ガスを圧力媒体として使用する酸化性雰囲気中でのHIP
処理には、大気中で用いる電気炉に使われている発熱
体、例えば1400℃以下の使用には鉄−クロム−アルミニ
ウム−コバルト系、ニッケル−クロム系の発熱体が使用
でき、より高温に対しては炭化珪素系、二珪化モリブデ
ン系発熱体あるいは、白金発熱体やジルコニア系発熱体
が使用できる。
先ず、イットリウム化合物、セリウム化合物を含有
し、残部が主として酸化ジリコニウム化合物、すなわち
酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化セリウムが
第1図に示すような正三角形に交わる3軸にそれぞれZr
O2、YO1.5、CeO2のmol%を表示した3角座標において、
点A、B、C、D、Eを結ぶ実線の範囲内の組成、好ま
しくは点F、G、H、I、J、Kを結ぶ実線の範囲内の
組成の化合物を酸化物換算で50〜98重量%とアルミニウ
ム化合物、アルミニウム−マグネシウム系化合物、アル
ミニウム−シリコン系化合物を少なくとも1種以上を酸
化物換算で50〜2重量%、好ましくは40〜5重量%を含
有する調合物を調製し、これが酸化物でない場合、ある
いは揮発成分を除去する必要のある酸化物である場合な
どは、500〜1200℃にて仮焼後、ボールミル、振動ミ
ル、アトリッションミル等の粉砕混合機にて粉砕し、必
要に応じてポリビニルアルコール等の成形助剤を加えて
ラバープレス、押出、スリップキャスト、射出、シート
キャスト等の成形法により所定の形状に成形後、1100〜
1500℃で予備焼結した予備焼結体を加圧媒体として酸素
を含有するガスを用いて圧力50〜500MPa、温度1200〜16
00℃で熱間静水圧プレス処理する。
HIP処理の温度、圧力条件については、圧力50MPa未
満、温度1200℃未満の条件では期待される高強度焼結体
は得難い。また1600℃をこえる温度では、高強度を得る
ことは可能であるが、焼結体粒子が粒成長し、熱および
熱水安定性が劣った焼結体となり、実用材料として工業
的に利用する材料としては適さない。本発明では、加圧
媒体として酸素を含有するガスを用いることを特徴とし
ており、酸素を0.1%以上含有しているガスが好まし
い。
なおHIP処理に供する予備焼結体は95%以上の相対密
度を有しているものでなければならない。相対密度が95
%未満の場合には、焼結体中に開気孔が残存するように
なり、HIP処理による充分なち密化が達成されない。
このようなち密で、微細な粒子からなる焼結体を得る
には、出発物質として焼結性に優れた微粉末を用いるこ
とが好ましい方法である。すなわち、混合粉末として、
ジルコニウム、イットリウム、セリウム、アルミニウ
ム、マグネシウム、シリコンの酸化物あるいはそれらの
化合物の熱分解物を微粉砕して得られる粉末を用いるこ
とが良い。具体的には、ジルコニア原料として、一次粒
子径0.1μm以下の湿式法によって得られた微粉末を、
また分散成分であるアルミナ、スピネル、ムライト原料
として、一次粒子径0.5μm以下の高純度の微粉末を用
いることが望ましい。また、酸化ジルコニウムのゾルお
よび/またはジルコニウムを含む水溶性の塩と、Y2O3
CeO2の水溶性の塩を含む水溶液から共沈法によって合成
した微粉末を用いることも望ましい方法として挙げられ
る。またアルミナについても、アルミナのゾルおよび/
またはアルミニウムの塩として酸化ジルコニウムに加え
て、共沈法により調製することができる。
本発明に使用するムライト(3Al2O3・2SiO2)粉末
は、天然原料、合成原料いずれでも使用できるが、微粒
かつ易焼結性であることが望ましい。かかる微細かつ易
焼結性の原料粉末は、例えばアルミニウム化合物および
珪酸化合物をそれぞれ含む溶液を液相の状態で混合させ
た後に乾燥し、800〜1500℃で仮焼し、粉砕することに
よって得られる。
なお、酸化イットリウムおよび酸化セリウムを含有す
るジルコニア粉末は、ZrO2のゾルおよび/または水溶性
の塩を、安定化剤の水溶性の塩と共に溶液の状態で均一
に混合した後、沈澱の形で分離して得られた原料を用い
るので、ZrO2に安定化剤が均一に分散し、極めて微粒子
からなる易焼結性の粉末を原料とすることができる。こ
の結果、微粒、均一な組成を有し、マイクロポアの殆ど
ない焼結体が得られ、機械的、熱的特性についても所期
の値が得られる。
本発明の原料中のZrO2は、その一部をHfO2によって置
換しても全く同様の特性を示すものである。
[実施例] 本発明の実施例について以下詳細に説明し、本発明の
効果を明らかにする。
(実施例1) 硝酸アルミニウムと珪酸エチルを用い、ムライト組成
になるように、水、エタノールと混合し、その混合溶液
を600℃にて噴霧乾燥した。得られた合成粉を1000〜130
0℃にて仮焼を行い、粉砕することにより、比表面積50
〜10m2/g、Al2O3/SiO2比が71.8/28.2のムライト(3Al2O
3・2SiO2)を調製した。なお、この合成ムライトは1600
℃にて焼結することにより3.17の密度を示した。
次に得られる粉末が第1表および第2表の割合になる
ように、純度99.9%のオキシ塩化ジルコニウムの水溶液
に、純度99.9%の塩化イットリウム、純度99.9%の塩化
セリウムを加え、均一に混合した溶液をアルカリ(6Nア
ンモニア水)で凝結させ、水酸化物の沈澱とし、これを
洗浄脱水乾燥し900℃にて2時間仮焼し、ボールミルに
て48時間湿式粉砕して部分安定化ジルコニア粉末を得
た。この粉末は平均粒子径0.5μm、比表面積25m2/gを
示した。
この粉末に、平均粒子径0.3μm、純度99.9%のAl
2O3、平均粒子径0.3μm、純度99.9%のMgO・Al2O3、お
よび上記した合成ムライト粉末を第1表および第2表の
割合で加え、成形助剤を加え、湿式混合後乾燥させた粉
末を1.5ton/cm2の圧力で等方的に成形し、1200〜1500℃
の温度で大気中焼成した。なお、第2表(1),(2)
の全ての試料は1400℃で予備焼結を行った。得られた予
備焼結体は、理論密度に対し、95%以上の相対密度であ
り、0.1〜0.5μmの平均粒子径であった。
このようにして得られた予備焼結体は、1200〜1600℃
で白金発熱体を用い加圧媒体として酸素を0.1〜5%含
有するArガス雰囲気中で550kgf/cm2(53.9MPa)、1000k
gf/cm2(98MPa)、1500kgf/cm2(147MPa)、2000kgf/cm
2(196MPa)の圧力で熱間静水圧プレス(HIP)処理を行
った。また、比較例として、酸素を含有しないArガス雰
囲気中でカーボン発熱体を使用したHIP処理を行った。
得られた焼結体は、嵩密度、気孔率、曲げ強度、平均
粒子径、熱および熱水劣化試験前後の結晶相をX線回折
により測定した。以上測定の結果を第1表および第2表
に併せて示した。
なお、各種物性の測定は次のように行った。
a) 抗折強度は、JIS−1601−1981に従い、3×4×4
0mmの試料片を用い、スパン30mm、クロスヘッド速度0.5
mm/minの3点曲げにより行った。
b) 結晶相の定量は、前記したX線回折法による。
c) 嵩密度はアルキメデス法を用いた。
d) 気孔率の測定は画像処理により行った。
e) 熱水劣化試験は、一定時間180℃(10気圧)の飽
和水蒸気中で第2図に示す加熱サイクルに従いオートク
レーブ処理し、180℃で合計20時間保持する処理を行っ
た試料の物性を測定した。熱水劣化試験後の単斜晶の定
量は、X線回折(I)式により、焼結体の表面について
行った。
f) 熱劣化試験は、200℃の電気炉内に3000時間保持
した後、試料を取り出し、処理を行った試料の物性を測
定した。熱劣化試験後の単斜晶の定量はX線回折(I)
式により、焼結体の表面について行った。
g) 平均粒子径は、鏡面に磨かれた焼結体をエッチン
グしたのち、走査型電子顕微鏡によって観察し、以下の
式によって求める。
;平均粒子径 ;任意に引いた線分を横切る50個以上の粒子の平均長
さ。
第1表は、YO1.5、CeO2、ZrO2の組成のこの順番をモ
ル%で(2.5、6、91.5)あるいは(4、4、92)と一
定にし、分散成分であるAl2O3、MgO・Al2O3、3Al2O3・2
SiO2の添加量を順次増やしながら予備焼結温度、HIP処
理条件を変え、気孔率、平均粒子径、ZrO2の結晶相、曲
げ強度を測定したものである。第1表の試料No1、No1
5、No17、No22はHIP処理を行わない比較例であり、試料
No2は分散成分を含有しない比較例であるが、いずれも
焼結体の強度が低い。また、試料No34、No36はカーボン
ヒータを使用してHIP処理を行った比較例で、試料が黒
褐色に着色しており、本発明に比較して強度が低く、ま
た、1600℃付近の温度では、粒成長を生じ、強度が著し
く低下している。試料No37はHIP処理温度が本発明範囲
より高い比較例であり、粒成長により曲げ強度が低下し
ていることがわかる。また、試料No43〜45は分散成分の
量が本発明範囲より多い比較例であり、曲げ強度が低
い。
これに対して、本発明例である試料No3〜14、16、18
〜21、23〜33、35、38〜42、46〜59は、1%以下の気孔
率であり、微粒子結晶からなる焼結体で、曲げ強度150k
gf/mm2以上の高強度を示すことが確認された。また、本
発明の焼結体を電子顕微鏡により観察したところ30μm
以上の気孔は見出だされなかった。
第2表は、分散成分量を20%に固定し、予備焼結温
度、HIP処理条件を一定にして、ジルコニアに含まれる
安定化剤であるYO1.5、CeO2の組成を変え、気孔率、ZrO
2の結晶相(単斜晶ZrO2量)、曲げ強度を測定した後、2
00℃で3000時間電気炉中に保持した後のZrO2の結晶相の
変化(単斜晶ZrO2量)および180℃10気圧の飽和水蒸気
中で20時間保持した後の結晶相変化を測定したものであ
る。
第2表の試料No1、3〜4、9〜10、15〜16、21〜2
2、27、31、35、37はジルコニアの含まれる安定化剤の
組成が本発明の範囲外である比較例であり、十分な曲げ
強度が得られていないか、または熱劣化試験後の前後で
単斜晶系ジルコニア量が多く熱劣化が著しい。
これに対して、本発明例である試料No2、5〜8、11
〜14、17〜20、23〜26、28〜30、32〜34、36は1%以下
の気孔率であり、単斜晶系ジルコニア量も殆どゼロで熱
劣化がなく、優れた強度を示すことが確認された。また
電子顕微鏡により観察したところ、30μm以上の気孔は
見出だされなかった。
(実施例2) 実施例1に記載した方法によって作製した焼結体につ
いて、200℃における3000時間の熱劣化試験、また180℃
10気圧に飽和水蒸気中で、20時間オートクレーブ処理
し、熱水劣化試験を行い、試験前後でのジルコニア結晶
相の変化(単斜晶ジルコニア結晶相量の変化)と、焼結
体の強度変化を測定し、第3表に結果を示した。なお、
本実施例では試料表面から内部への劣化の進行の程度を
把握するため、焼結体の曲げ強度の測定は、JSI規定の1
/3の厚さの試料(1.0×4.0×40mm)を用いて試験を行っ
た。
第3表では、主要な組成について、HIP処理を行った
焼結体の熱劣化および熱水劣化試験結果を示した。
試料No2、17、は比較例であって、本発明の組成外のH
IP処理を行わない部分安定化ジルコニア焼結体である
が、いずれも曲げ強度が低く、No2は分散成分を含まな
いので、熱水劣化試験後での劣化が著しい。またNo17は
安定化剤としてCeO2成分を含まず、またAl2O3等の分散
成分を含有しないので、熱劣化、熱水劣化が著しい。試
料No14〜15、18〜19は、いずれも安定化剤としてCeO2
分を含有せず、カーボンヒータを用いた従来のHIP処理
による焼結体であるが、熱劣化および熱水劣化が著し
い。また試料No16は、アルミナを含有する高強度ジルコ
ニア系焼結体であって、酸素を含有する雰囲気でHIP処
理をした比較例であるが、試験前においては優れた強度
を有するものの、CeO2を安定化剤として含有しないた
め、熱劣化および熱水劣化が著しい。
これに比較して、本発明例である試料No1、3〜13、2
0は150kgf/mm2以上の優れた強度を有し、熱および熱水
試験後においても、正方晶ジルコニアから単斜晶ジルコ
ニアへの結晶相の転移量もゼロであるか極めて少なく、
試験後も150kgf/mm2以上の強度を有しでおり、熱安定
性、熱水安定性に優れることが確認された。
(実施例3) 実施例1に記載した方法によって作製した焼結体につ
いて、高温エージング試験を行った。高温エージング試
験は、1000℃の電気炉内で大気中1500時間保持した後、
焼結体試料を取り出し、試験前後の焼結体の室温におけ
る曲げ強度を測定した。その結果を第4表に結果を示し
た。
第4表では、主要な組成について、予備焼結温度、HI
P処理温度、HIP圧力を一定にし、本発明例としては白金
ヒータを使用し加圧媒体として酸素を含有するガスを使
用したHIP処理を行い、一方比較例としてはカーボンヒ
ータを使用した通常のHIP処理を行い、それぞれの焼結
体について高温で長時間保持後の強度変化を調べたもの
である。
第4表から明らかなように、カーボンヒータを使用し
たHIP処理を施した比較例は、総て試験後に強度が著し
く低下しているのに比較し、本発明例の酸素を含有する
ガスを圧力媒体として使用したHIP処理体は、優れた強
度を保っていることが確認された。
(実施例4) 実施例1に記載した方法によって作製した焼結体につ
いて、高温強度を測定した。高温強度は、電気炉を取り
付けた曲げ試験装置に、JIS規格の焼結体試料(3×4
×40mm)を設置し、大気中1000℃に加熱保持して、スパ
ン30mm、クロスヘッド速度0.5mm/minの3点曲げにより
行った。その結果を第5表に示した。
第5表において、試料No1は安定化剤としてCeO2を含
まずかつ分散成分を全く含有しない比較例で、HIP処理
を施さなかった例であるが、室温強度および高温強度共
に低い。また試料No2は、安定化剤としてCeO2を含まず
かつ分散成分を全く含有しない比較例で、カーボンヒー
タによりHIP処理をした例であるが、室温強度はやや高
いものの、高温強度が低い。試料No3は分散成分を全く
含有しない比較例で、HIP処理を施した例であるが、室
温強度および高温強度共に十分な値が得られていない。
これに対して、本発明例である試料No4〜7は、室温
強度が高く、1000℃においても優れた強度を保持してい
ることが確認された。
(実施例5) 実施例1に記載した方法によって作製した焼結体につ
いて、電気炉内に種々の温度に保持した後、試料を100
℃の水中に投入し、熱衝撃試験を行った。熱衝撃試験
は、一定温度に保持した電気炉内から試料を100℃の沸
騰水中に落下急冷し、次いで試験後の曲げ強度を測定し
た。そして曲げ強度が低下し始めるような温度を臨界温
度として読み取り、この臨界温度と沸騰水の温度差をも
って指標とし、熱衝撃強度(ΔT℃)とした。測定した
熱衝撃強度を第6表に示す。
第6表において、試料No1は安定化剤としてCeO2を含
まずかつ分散成分を全く含有しない比較例で、HIP処理
を施さなかった例であり、試料No2は、安定化剤としてC
eO2を含まずかつ分散成分を全く含有しない比較例であ
り、カーボンヒータによりHIP処理をした例であり、試
料No3は分散成分を含有しない比較例であるが、ΔT℃
が250℃以下と低い。
これに対して本発明例である試料No4〜6ではΔT℃
が450℃以上であって、比較例に対して優れた熱衝撃強
度を示すことが明らかになった。
(実施例6) 純度99.9%のオキシ塩化ジルコニウム溶液の加熱加水
分解によって得られた単斜晶系の結晶質ジルコニア微粒
子ゾル溶液に、純度99.9%の塩化イットリウム、純度9
9.9%の塩化セリウムを加えて均一に混合した溶液に、
アンモニア水(6N)を加えて凝結させ沈澱とし、これを
水洗、脱水乾燥し、900℃にて2時間仮焼し、ボールミ
ルにて48時間湿式粉砕して、YO1.5、CeO2、ZrO2のモル
比がそれぞれ(2.5、5.5、92)の部分安定化ジルコニア
粉末を得た。この粉末の平均粒子径は0.5μm、比表面
積は25m2/gであった。この粉末に平均粒子径0.3μm、
純度99.9%Al2O3を25内部重量%添加し、湿式混合後乾
燥させた粉末を2ton/cm2の圧力で等方的に成形し、1350
℃で3時間大気中焼成し、95%以上の相対密度の予備焼
結体を得た。
次に、この予備焼結体を1350℃で白金発熱体を用い、
加圧媒体として酸素を4%含有するArガス雰囲気中で15
00kgf/mm2(147MPa)の圧力で1.5時間熱間静水圧プレス
(HIP)処理を行った。得られた焼結体は、5.41の嵩密
度で、平均粒子径が0.2μmであり、235kgf/mm2の曲げ
強度を有し、熱水劣化試験後のジルコニアの単斜晶量は
2%であり、従来方法で得られる焼結体よりも極めて優
れた強度および熱水安定性を示した。また、1000℃の高
温エージング後の強度は231kgf/mm2であって従来方法の
ものより高温特性に優れていることが確認された。
(実施例7) 硝酸アルミニウム水溶液にシリカゾル水溶液をムライ
ト組成(Al2O3/SiO2比が71.8/28.2)になるように混合
し、この水溶液にアンモニア水を加えて生成した沈澱を
洗浄、脱水、乾燥し、1200℃で仮焼し、比表面積30m2/g
のムライトの粉末を得た。このムライト粉末を実施例1
で得られた部分安定化ジルコニア粉末にたいして25内部
重量%添加し、湿式混合後乾燥させた粉末を2ton/cm2
圧力で等方的に成形し、1400℃で3時間大気中焼成し
た。この予備焼結体を実施例6と同様に、1400℃にて、
4%の酸素を含有するArガス雰囲気中にて1500kgf/mm2
の圧力で1.5時間HIP処理した。得られた焼結体は、4.95
の嵩密度で、平均粒子径0.3μm、185kgf/mm2の曲げ強
度を有し、熱水劣化試験後のジルコニアの単斜晶量は3
%であり、熱衝撃強度は470℃であった。なお、この焼
結体について1000℃における高温エージング試験を行っ
た結果、183kgf/mm2の試験後の強度を示し、本実施例方
法によって得られる焼結体は従来方法によるものに比較
して、極めて優れた強度、熱水安定性、熱衝撃特性およ
び高温エージング特性を示すことが明らかとなった。
(実施例8) 酸化イットリウムの安定化剤として3モル%含有する
共沈法によって得られた比表面積20m2/gの部分安定化ジ
ルコニア粉末44.3内部重量%に、酸化セリウムの安定化
剤として12モル%含有する共沈法によって得られた比表
面積15m2/gの部分安定化ジルコニア粉末を30.7重量%添
加し、さらに純度99.9%、平均粒子径0.3μmのアルミ
ナ25内部重量%添加し、湿式混合後乾燥させた粉末を2t
on/cm2の圧力で等方的に成形し、1400℃で2時間大気中
焼成し、95%以上の相対密度の予備焼結体を得た。
次に、この予備焼結体を実施例6と同様に1400℃に
て、4%の酸素を含有するArガス雰囲気中で、1500kgf/
cm21.5時間HIP処理した。得られた焼結体は、5.40の嵩
密度で平均粒子径が0.3μmであり、219kgf/mm2の曲げ
強度を有し、熱水劣化試験後の単斜晶量は3%であっ
た。高温エージング試験後の強度は220kgf/mm2であり、
本焼結体の1000℃における高温強度は95kgf/mm2であっ
た。これにより、本実施例方法によれば、従来方法によ
って得られる焼結体より、極めて曲げ強度、熱水安定
性、高温エージング、高温強度の優れた焼結体の得られ
ることが確認された。
(実施例9) 実施例8で使用した3モル%の酸化イットリウム(Y2
O3)をを含有する部分安定化ジルコニア粉末70内部重量
%に、純度99.9%の酸化セリウム(CeO2)粉末を5内部
重量%添加し、純度99.9%平均粒子径0.3μmのアルミ
ナを25内部重量%添加し、湿式混合後乾燥させた粉末
を、実施例8と同一条件で成形、予備焼結、HIP処理し
た。この焼結体は0.2%の気孔率で、平均粒子径が0.3μ
mであり、215kgf/mm2の曲げ強度を有し、熱水劣化試験
後の単斜晶量は3%であった。また、高温エージング後
の強度は213kgf/mm2であった。これにより、本実施例方
法によって得られた焼結体は、従来方法で得られた焼結
体より極めて優れた曲げ強度、熱水安定性および高温特
性を示すことが明らかとなった。
[発明の効果] 本発明の製造法によって得られる高強度ジルコニア系
焼結体は、以上説明したように安定化剤として酸化イッ
トリウムおよび酸化セリウムを所定量含有させたジルコ
ニアとアルミナ、スピネル、ムライトのうち少なくとも
1種以上からなり、結晶相および結晶粒子径を制御する
と共に、酸素を含有するガスを加圧媒体として使用する
HIP処理により、理論密度および曲げ強度を従来品より
も高水準に保つことができた結果、従来のジルコニア焼
結体よりも高強度を示し、しかも高温で長時間保持した
後でも強度の変化がなく、かつ熱および熱水安定性、熱
衝撃強度、高温強度に優れるという効果がある。
本発明の製造法によって得られる高強度ジルコニア系
焼結体は、従来の切断工具、ダイス、ノズル、ベアリン
グなどの機械構造材料は当然のこと、これらの中でも特
に強度と耐久性を要求される分野、すなわち熱応力、熱
衝撃応力、繰り返し熱応力等機械的応力または熱応力を
受ける部品、例えば熱可塑性樹脂やセラミックスの射出
成形機用の耐摩耗性セラミックススクリュウ、真ちゅう
ロッドや銅管シェルあるいはアルミニウム、アルミニウ
ム合金等の熱間押し出しダイスに最適の材料である。
また、エンジン用シリンダライナ、ピストンキャッ
プ、シリンダヘッド、バルブ、バルブガイド、排気ポー
ト、ロッカーアーム、チップ副燃焼室、タペット、カ
ム、ベアリング等のエンジン部品およびガスタービン部
品にも使用できる。
さらに、酸またはアルカリ等の薬品にさらされる部
品、例えば耐酸ポンプのロータ、シール材、およびメ
ス、ハサミ、ナイフ、包丁、工業用カッタ等の切断器具
等、また粉砕機械用部品、摺動部材、人工骨、人工関
節、人工歯冠、鋳造セラミックスによる人工歯のブリッ
ジ芯材料、人工歯根、人工歯根の芯材、切削工具、ゲー
ジ等の機械工具への応用および実用化と、性能向上に大
きく寄与するものであって、広く工業材料として好適で
あり。産業上極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は正三角形に交わる3軸にそれぞれZrO2、Y
O1.5、CeO2のmol%を表示し本発明の組成範囲を示した
3角座標、第2図は熱水劣化試験の加熱サイクルを示す
温度と時間の関係を示す図である。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化イットリウム(Y2O3)および酸化セリ
    ウム(CeO2)を含有するジルコニア(ZrO2)50〜98重量
    %と、分散成分としてアルミナ(Al2O3)、スピネル(M
    gO・Al2O3)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)のうち少なく
    とも1種以上50〜2重量%とからなる混合粉末を1100〜
    1500℃で予備焼結し、該予備焼結体を圧力50〜500MPa、
    温度1200〜1600℃で、加圧媒体として酸素を含有するガ
    スを用いて熱間静水圧プレス処理することを特徴とする
    高強度ジルコニア系焼結体の製造法。
  2. 【請求項2】部分安定化ジルコニアは、これに含まれる
    酸化イットリウム(Y2O3)、酸化セリウム(CeO2)が添
    付図面にしめすように正三角形に交わる3軸にそれぞれ
    ZrO2、YO1.5、CeO2を表示した3角座標において、 点A(ZrO287.5mol%、YO1.512mol%、CeO20.5mol%) 点B(ZrO295.5mol%、YO1.54mol%、CeO20.5mol%) 点C(ZrO295.5mol%、YO1.52mol%、CeO22.5mol%) 点D(ZrO292.5mol%、YO1.50.5mol%、CeO27.0mol%) 点E(ZrO285mol%、YO1.50.5mol%、CeO214.5mol%) で示された特定5組成点を結ぶ線で囲まれた範囲内の組
    成にある特許請求の範囲第1項に記載の高強度ジルコニ
    ア系焼結体の製造法。
  3. 【請求項3】混合粉末として、ジルコニウム、イットリ
    ウム、セリウム、アルミニウム、マグネシウム、シリコ
    ンの酸化物あるいはそれらの化合物の熱分解物を微粉砕
    して得られる粉末を用いる特許請求の範囲第1項または
    第2項に記載の高強度ジルコニア系焼結体の製造法。
  4. 【請求項4】酸化イットリウム(Y2O3)および酸化セリ
    ウム(CeO2)を含有するジルコニア(ZrO2)粉末は、Zr
    O2のゾルおよび/または水溶性の塩をY2O3、CeO2の水溶
    性の塩と共に溶液の状態で均一に混合した後、沈澱の形
    で分離して得られたジルコニア粉末である特許請求の範
    囲第1項ないし第3項のいずれかに記載の高強度ジルコ
    ニア系焼結体の製造法。
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