JP2513549Y2 - プロジェクタ型自動車用前照灯 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、プロジエクタ型の自動車用前照灯に関する
ものである。

〔従来の技術〕

自動車用前照灯は、自己車線の前方を明るく照射し、
しかも対向車に眩惑を与えないような配光パターンを有
していなければならない。

上記の要請に適合する配光特性を有し、レンズ構成が
簡単で、全体形状を小形化し得る前照灯として、プロジ
エクタ型の自動車用前照灯が提案されている。このプロ
ジエクタ型前照灯に関する最新の技術としては、例えば
特開昭58-209801号が公知である。

第２図はこの種のプロジエクタ型前照灯の一例を模式
的に描いた平面図、第３図は同じく側面図、第４図は同
じく正面図である。

１は凹面鏡、Ｆはその焦点である。上記の焦点Ｆ付近
にフイラメントが位置するように、光源バルブ２が設け
られる。

前記の凹面鏡１と、光軸Ｚを共有せしめて凸レンズ３
が設けられる。

第２図に描いたi-jは凸レンズ３のメリジオナル像面
を示しており、光源から発して凹面鏡１で反射された光
はこのメリジオナル像面に入射する。

上記の入射光は、凸レンズ３によって調光されて前方
（第２図，第３図において右方）に投射される。

前記メリジオナル像面の付近にスクリーンを設けて、
配光パターンを等照度曲線で示すと第５図の如くにな
る。H-Hはスクリーン上の水平線、V-Vは同じく垂直線で
ある。

第２図〜第４図に示すように、メリジオナル像面に沿
った縁を有するシエード４を設ける。詳しくは、第４図
に示した4aの如く、メリジオナル像面の水平断面i-jか
ら下方に退くようにカツトライン4aを形成してある。第
５図は、前述の配光パターンとシエード４との重なり具
合を示している。本第５図に表わされているように、光
束の上半部は通過する。下半部の大半は遮られるが、カ
ツトライン4aに対応する部分は光の通過が許容される。

上記のように部分的に覆われた光束が、メリジオナル
像面i-jに集光されて互いに交差するので、前照灯の前
方に投光される光束は第５図を反転した形状のパターン
を形成する。第６図は前照灯の前方に設けたスクリーン
上の等照度曲線によって投光のパターンの概要的な形状
を表わした説明図である。

この従来例は左側通行用に構成されたものであり、右
側通行用の場合は第４図乃至第６図が左右勝手違いとな
るように構成される。

第２図，第３図から容易に理解されるように、プロジ
エクタ型前照灯においては光源バルブ２から出射して灯
具前方に投射される光束は、すべて凸レンズ３を通り、
かつ、凸レンズ３を通った光は略平行光束（略水平方
向）となり、しかも、凸レンズ３を出た光束は所望の配
光特性を備えている。

これらの特徴はプロジエクタ型前照灯に特有のもので
あり、シエードのカットラインの形状の如何に拘わらな
い。

こうした特性により、プロジエクタ型前照灯は凸レン
ズ以外のレンズが無くても所望の配光パターンが得られ
るので、凸レンズの前方に更に前面レンズを設ける必要
が無い。ただし、凸レンズの保護や意匠的デザインの為
に前面レンズに類似した部材が設けられることも少なく
ない。しかし、この場合の前面レンズに類した部材は光
束の屈折や反射による調光作用を行なわないので前面カ
バーと呼ぶべきである。

また、前述の如くプロジエクタ型前照灯の投光光束は
凸レンズに集約されるので、これを前方から見たとき発
光面積が小さく輝度が高い。このため、前記の前面カバ
ーを設けて意匠的デザインを整えることも広く行われて
いる。

第７図は凸レンズ３よりも大きい前面カバー７を備え
たプロジエクタ型前照灯の１例を示す水平断面図であ
る。

本例のプロジエクタ型前照灯は、凹面鏡１と、その焦
点に設けた光源バルブ２と、シエード４と、その前方に
設けた凸レンズ３とによってプロジエクタユニット５を
構成し、 上記プロジエクタユニット５をランプハウジング６内
に収納するとともに、ランプハウジング６の前面開口部
を覆って前面カバー７を装着してある。

本例のランプハウジング６は合成樹脂材料で射出成形
され、成形技術の関係から後方の本体部6aと、筒状のア
ダプタ6bとに分割して成形した後相互に接着されてい
る。

８は光源バルブ２のソケット、９は給電用のハーネス
である。

前面カバー７のうちで、凸レンズ３に対向している部
分は投光光束を通過させるように素通しとなっている。

また、前照灯が点灯していないときに前記の前面カバ
ー７を灯具前方から見た場合、内部の煩雑な構成が外見
に現われないように、アダプタ6bと一体にインナパネル
6b_-1が成形されている。

第７図に示したようにインナパネル6b_-2を備えたプロ
ジエクタ型前照灯の断面側面図を模式的に描くと第８図
のごとくになる。

凸レンズ３の斜上方から太陽光Ｓが直射すると、該凸
レンズ３の背面で全反射し、図示のｆ部付近に集光して
疑似焦点ゾーンを形成する。

合成樹脂製インナパネル6b_-2の一部に前記の疑似焦点
ゾーンｆが重なった場合は、インナパネル6b_-2が局部的
に過熱されて焼損する。

〔考案が解決しようとする課題〕

上述したインナパネルの焼損を防止するため、第９図
に示すような工夫が為されている。

本第９図は水平断面図であって、凹面鏡１と、光源バ
ルブ２と、凸レンズ３と、シエード４とによってランプ
ユニット10が構成されている。

上記ランプユニット10は回転軸11により回動可能に支
持されていて、光軸Ｚの方向を調節し得るようになって
いる。

凸レンズ３の前方に前面カバー７が配置されるととも
に、該凸レンズ３と前面カバー７との間にインナパネル
12が配置されている。

そして、インナパネル12の開口部に嵌合させて筒型フ
ード状の合成樹脂製インナフイニッシャが取り付けら
れ、取付ネジ14で固定されている。

このような構成によれば、凸レンズ３に対して光軸Ｚ
と斜めに入射する光、および凸レンズ３から光軸Ｚと斜
めに出射する光がインナフイニッシャ13によって妨げら
れるので、斜め方向に差し込んだ太陽光によってインナ
パネル12上に擬似焦点を生じて焼損を招くといった不具
合が改善される。

ところが、この構成（第９図）では次のような問題が
有る。

a.インナパネル12の開口部に筒型フード状のインナフイ
ニッシャ13を嵌合した構造であるから、その継目の線が
外観に現われて商品価値を下げる。

この不具合は、プロジエクタ型前照灯の特性に基づく
構成として前面カバー７が素通しに近いことと相俟って
生じるものである。

b.凸レンズ３には凹面鏡１の反射光が集中し、著しく昇
温する。このため、耐熱性の充分でない合成樹脂製のイ
ンナフイニッシャ13との間に適宜の間隔を必要とする。
特に、第９図の例のようにランプユニット10が回転軸11
の回りに回動せしめられて光軸方向を調整される構造で
ある場合は、凸レンズ３が動くので大きい間隔を設けな
ければならない。

本考案は上述の事情に鑑みて為されたもので、インナ
パネルとインナフイニッシャとの継目が外観に現われ
ず、しかも、インナフイニッシャを凸レンズに接近させ
て配設しても耐熱性に関するトラブルを生じるおそれの
無いプロジエクタ型自動車用前照灯を提供することを目
的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成するための構成として本考案は、 反射鏡の焦点近傍に光源バルブを設置し、上記の光源
バルブから出射した光が反射鏡で反射されてシエード近
傍で焦点を結び、凸レンズによって前記反射光を前方に
投射するプロジエクタ型自動車用前照灯であって、 前記凸レンズの前面を覆う透明板状の前面カバーと、
上記前面カバーの前方から見たとき凸レンズ周囲の部材
が外見に現われないように覆っているインナパネルと、
外来太陽光が擬似焦点を結ぶことを防止するため凸レン
ズのフード状に構成されたインナフイニッシャとを備え
たものにおいて、 前記のインナパネルとインナフイニッシャとを、ダイ
カストにより一体に連設し、かつインナフイニッシャの
前端を前面カバーに対して僅少の隙間寸法を介して対向
させたことを特徴とする。

〔作用〕

上記の構成によれば、 インナパネルとインナフイニッシャとが一体に連設さ
れているので、これら双方の部材の間に継目が無く、従
って継目の隙間が外観に現われて商品価値を損うおそれ
が無く、 かつ、上記インナフイニッシャがダイカストで構成さ
れているので耐熱性に優れ、凸レンズに接近しても軟化
したり変色したりするといったトラブルを生じるおそれ
が無く、放熱性も優れている。また、インナフイニッシ
ャと前面カバーとの間の隙間が僅少となるので、太陽光
がインナフイニッシャ内の凸レンズ側に入射し難くな
る。

〔実施例〕

第１図は本考案に係るプロジエクタ型自動車用前照灯
の一実施例を示す水平断面図である。

凹面鏡１′と、光源バルブ２′と、凸レンズ３′と、
シエード４′とはランプユニット10′を構成している。

上記ランプユニット10′は合成樹脂製のランプハウジ
ング15内に収納されている。

そして、上記ランプユニット10の前面に、素通しの前
面カバー７′が配設されている。

一方、インナパネル16とインナフイニッシャ17とはア
ルミニウムダイカストによって一体に成形され、取付ネ
ジ14によってランプハウジング15に固定されている。

本例のインナフイニッシャ17は筒状をなし、凸レンズ
３′のフードとして作用する位置に配設されている。

すなわち、ランプユニット10′の光軸Ｚは、図外の調
節機構によって調節されるので、その方向が可変である
が、光軸方向の可変範囲内の平均位置に対して筒状のイ
ンナフイニッシャ17がほぼ同心に配置されている。

該インナフイニッシャ17の前端は前面カバー７′に対
して僅少の隙間寸法ｇを介して対向し、該インナフイニ
ッシャ17の後端は凸レンズ３′の近傍に位置し、光軸調
整に際しての凸レンズ３′の移動に干渉しない範囲で接
近させてその位置を設定する。

本例においては筒状のダイカスト製インナフイニッシ
ャ17の内面に銀色塗装を施してある。この銀色塗装は当
該ランプの非点灯時における外観を良くするためのもの
である。

本例のインナフイニッシャ17はインナパネル16と一体
にダイカスト成形されているので双方の部材の間に継目
や隙間が無い。従って継目が外観に現われることが無
い。

本例のインナフイニッシャ17はアルミニウム材でダイ
カスト成形されているので、従来の合成樹脂製インナフ
イニッシャに比して許容温度の上限が遥かに高い。従っ
て、高温部材である凸レンズ３′に接近せしめて配設し
得る。

インナフイニッシャ17を凸レンズ３′に接近せしめて
あるので、該インナフイニッシャ17のヒートバランス温
度は従来例に比して高くなる。

そして、インナパネル16はアルミニウムでダイカスト
成形されているので、インナフイニッシャ17からインナ
パネル16への伝熱性が良い。

このため、インナフイニッシャ17およびインナパネル
16からの周囲への放射による放熱効果が優れている。

〔考案の効果〕

以上説明したように、反射鏡の焦点近傍に光源バルブ
を設置し、上記の光源バルブから出射した光が反射鏡で
反射されてシエード近傍で焦点を結び、凸レンズによっ
て前記反射光を前方に投射するプロジエクタ型自動車用
前照灯であって、 前記凸レンズの前面を覆う透明板状の前面カバーと、
上記前面カバーの前方から見たとき凸レンズ周囲の部材
が外見に現われないように覆っているインナパネルと、
外来太陽光が擬似焦点を結ぶことを防止するため凸レン
ズのフード状に構成されたインナフイニッシャとを備え
たものに本考案を適用して、 前記のインナパネルとインナフイニッシャとを、ダイ
カストにより一体に連設すると、 インナパネルとインナフイニッシャとが一体に連設さ
れているので、これら双方の部材の間に継目が無く、従
って継目の隙間が外観に現われて商品価値を損うおそれ
が無く、 かつ、上記インナフイニッシャがダイカストで構成さ
れているので耐熱性に優れ、凸レンズに接近しても軟化
したり変色したりするといったトラブルを生じるおそれ
が無く、放熱性も優れているという優れた実用的効果を
奏する。また、インナフイニッシャと前面カバーとの間
の隙間が僅少となるので、太陽光がインナフイニッシャ
内の凸レンズ側に入射し難くなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るプロジエクタ型自動車用前照灯の
一実施例を示す水平断面図である。 第２図乃至第４図は従来例のプロジエクタ型前照灯を示
し、第２図は平面図、第３図は側面図、第４図は正面図
である。 第５図及び第６図は上記従来例の光学的特性を示す図表
である。 第７図ないし第９図は従来例における課題の説明図であ
る。 １……凹面鏡、２……光源バルブ、３……凸レンズ、3a
……不透明層、3d……凸レンズ下半部、3d_-1……散乱
面、3d_-2……熱線反射膜、3u……凸レンズ上半部、3u_-1
……散乱面、3u_-2……熱線反射膜、４……シエード、4a
……カツトライン、５……プロジエクタユニット、６…
…ランプハウジング、6b_-1,6b_-2……インナパネル、７
……前面カバー、10……ランプユニット、12……インナ
パネル、13……インナフイニッシャ、15……ランプハウ
ジング、17……インナフイニッシャ。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】反射鏡の焦点近傍に光源バルブを設置し、
   上記の光源バルブから出射した光が反射鏡で反射されて
   シエード近傍で焦点を結び、凸レンズによって前記反射
   光を前方に投射するプロジエクタ型自動車用前照灯であ
   って、 前記凸レンズの前面を覆う透明板状の前面カバーと、上
   記前面カバーの前方から見たとき凸レンズ周囲の部材が
   外見に現われないように覆っているインナパネルと、外
   来太陽光が擬似焦点を結ぶことを防止するため凸レンズ
   のフード状に構成されたインナフイニッシャとを備えた
   ものにおいて、 前記のインナパネルとインナフイニッシャとを、ダイカ
   ストにより一体に連設し、かつインナフイニッシャの前
   端を前面カバーに対して僅少の隙間寸法を介して対向さ
   せたことを特徴とする、プロジエクタ型自動車用前照
   灯。