JP2513532B2 - 高Si含有鋼の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

高Si含有鋼の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、高Si含有鋼の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の
製造方法に関するもので、特に、鋼中Si濃度が0.3%以
上の高Si含有鋼板に対して亜鉛めっき外観の均一性、密
着性等を確保するための焼鈍条件を制御する方法にあ
る。
(従来の技術) 従来、建材等での構造用部材としての多様される裸鋼
材の高寿命化或いは意匠向上にあたっては一定の成形加
工後に、めっきや塗装と言った何らかの後処理が、需要
家でなされていたが工程省略による使用鋼材の低コスト
化から供給鋼材の表面処理化が強く要求される状況にあ
る。このなかで、最近では、特に、高張力鋼板の表面処
理化要求が高まりつつある。この高張力鋼板の防錆力向
上を主目的とした表面処理方法としては、生産性の点か
ら容易に厚めっき化が可能なゼンジマー式溶融亜鉛めっ
き法がある。
このゼンジマー式溶融亜鉛めっき法を用いて、酸素を
含む酸化炉中の鋼板表面の圧円油を除去し、適度な酸化
膜を形成せしめた後、水素を含む雰囲気中で、還元焼鈍
後、炉内で板温を調節し、めっきする方法が、既に特開
昭55−122865号公報で知られている。すなわち、酸素を
含まない無酸化炉方式では、鋼表面の油を除去すること
ができるが、酸化性雰囲気が弱いため、酸化され易いS
i,Mn,Alが表面に拡散酸化されるため、これらの酸化物
が鋼表面を形成する。しかも、これらの酸化物は、還元
炉では、還元されず、めっきの濡れ不良、めっき密着不
良の原因となる。そのため鋼板の表面に酸化膜の厚み40
0〜10000Åになるように酸化した後、水素を含む雰囲気
で焼鈍し、溶融めっきするというものである。
(発明が解決しようとする課題) しかしながら、従来技術は上記のように無酸化炉の空
気比を高くして加熱し、Fe酸化膜を生成した後、還元加
熱すると、良好なめっき性が得られるという知見のみで
あって、実際の操業ラインにおけるラインスピード、炉
温、ビートサイクル等が常に変化する連続ラインにおい
ては、一定の高空気比においても、めっき性は安定せ
ず、実用化には問題点があった。そこで、本発明は、高
生産性のラインにあって、従来法とは異なる方法によ
り、不めっきを伴うことなく、安定した品位で均一外観
の優れためっき密着性の良好な高Si含有高張力溶融亜鉛
めっき鋼板を得る方法を提供することにある。
(課題を解決するための手段) 上述した問題点を解決し、その目的を達成するため
に、本発明の要旨とするところは、鋼中Si濃度0.3%以
上の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、焼
鈍炉の酸化帯で生成した鉄酸化膜厚、および、還元帯で
の鉄酸化膜還元能力をヒートサイクル、ラインスピー
ド、還元帯水素濃度、酸化帯燃焼空気比を用いて計算
し、 鉄酸化膜厚+a(Å)≦還元能力(Å)≦鉄酸化膜厚+
b×(鉄酸化膜厚)2(Å) …(1) 鉄酸化膜厚≦1000Å …(2) a:鉄酸化膜余裕代 b:鋼中Si量により決まる定数 なる(1)式及び(2)式を満足するように焼鈍条件を
制御することを特徴とする高Si含有鋼の高張力溶融亜鉛
めっき鋼板の製造方法にある。
以下本発明について詳細に説明する。本発明におい
て、鋼中にSi濃度が0.3%以上の高Si含有鋼の場合に
は、一般には難めっき材と呼ばれ、鋼中のSi,Mn,Al,Pな
どが、鋼板表面の加熱によって、酸化物として鋼板表層
に拡散されるため、これら酸化物が濃化し、鋼表面を形
成する。そのため、これらの酸化物は、還元炉中でも還
元されず、めっきの濡れ性を阻害し、めっき密着性を悪
くする。従ってこれら難めっき材を対象とした鋼材への
溶融亜鉛めっきを高生産性のラインにおいて、不めっき
のない、しかも均一外観の優れためっきを可能としたこ
とにある。そのための焼鈍条件として、第1は鉄酸化膜
厚+a≦還元能力(Å)であること。すなわち、この条
件はめっき浴に浸漬する際に、めっき性を阻害するFe酸
化膜が残存していないことを示すものである。ここで、
鉄酸化膜厚は、酸化帯出側での鉄酸化膜厚であり、定数
aは、鋼板の幅方向でのFe酸化膜のばらつきの余裕代
で、通常は100Å程度の値を入れる必要がある。また還
元能力とは、鉄酸化膜厚が十分に多いときに還元帯全体
で還元する能力を示し、通常は1000Å程度である。従っ
て鉄酸化膜厚+aが還元能力より少なければ、めっき前
には、鉄酸化膜はないので良好なめっき密着性が得られ
る。更に還元能力(Å)≦酸化膜厚+b×(鉄酸化膜
厚)2(Å)なる条件は、めっき浴に浸漬する際に、め
っきを阻害するSi酸化膜が表面濃化していないことを示
すものである。定数bは、鋼中Si濃度、鋼板温度、ライ
ンスピードに依存する定数である。従って鋼中Siの表面
濃化が起こらないことがめっ密着性不良、不めっきの発
生を防止する理由であり、そのための前提条件及び濃化
現象について、第1に表層300ÅまでのSi濃度量を1.5mg
/m2以下に抑えれば、良好なめっき性が得られること。
第2にSiの表面濃化は鉄酸化膜がなくなった時点から開
始すること。第3はSiの表面濃化は、鉄酸化膜が還元さ
れた後の純鉄層を、Si原子が拡散する過程で律速となえ
り、時間の平方根に比例して、表面Si量は増加するもの
である。これらの現象を発明者らは種々の実験の結果見
出し、次の関係を式で示すことができる。すなわち、Si
の表面濃化量は、鋼中Si濃度Ciに比例し、鉄酸化膜厚Ox
に反比例し、時間の平方根 に比例する故、 ここで、Si濃化量:〔mg/m2〕 A :定数〔mg/m2・Å・sec-1/2〕 Csi :鋼中Si濃度〔%〕 Ox :鉄酸化膜厚〔Å〕 t :還元帯滞在時間〔sec〕 t1:還元帯に入ってから鉄酸化膜厚が還元されるまでの
時間〔sec〕 このSi濃化量が1.5mg/m2を超えると、表面全体がSiOx皮
膜で被われるので、良好なめっき密着性を得るための条
件は、 Si濃化量≦1.5mg/m2 ………(2) 両辺を2乗して A2・(Csi/Ox)2・(t−t1)≦2.25…(4)ここで還元
速度をVr〔Å/sec〕,還元能力をR〔Å〕とすると、還
元能力はt〔sec〕間での還元量であるから、 R=Vr・t ………(5) また、t1〔sec〕間でOx〔Å〕の酸化膜を還元するか
ら、 Ox=Vr・t1 ………(6) これより、 t=R/Vr、t1=Ox/Vr ………(7) この2式を(4)式に代入して A2・(Csi/Ox)2・1/Vr・(R−Ox)≦2.25 ………(8) これを整理して、 R≦Ox+2.25・Vr/A・1/Csi2・Ox2定数Aと還元速度Vr
は実験的に求められ、還元帯での鋼板の平均温度である
600℃では、 A=127〔mg/m2・Å・sec-1/2〕 Vr=11.6〔Å/sec〕 よって、条件は R≦Ox+1.6×10-3/Csi2・Ox2 従って、Siの表面濃化によるめっき密着性不良を防止す
る条件は、 還元能力≦鉄酸化膜厚+1.6×10-3/Csi2・(鉄酸化膜
厚)2すなわち、定数bは、1.6×10-3/Csi2で表すこと
ができる。
次に、過剰酸化によるめっき密着性不良を防止する条件
としては、酸化帯での生成した鉄酸化膜が1000Åを超え
ると、この鉄酸化膜が還元されたとき、非常に多孔質で
活性な表面性状となり、亜鉛浴中でのFe−Zn界面の脆い
合金層が形成され、めっき密着性不良となる。従って、
これを防止するための条件として、鉄酸化膜厚≦1000Å
が必要である。以上のことを模式的に説明したものが第
1図に示す模式図である。すなわち、第1図は酸化、還
元バランスを時間の変化として表したもので、鉄酸化膜
厚は酸化帯において増加し、その後還元帯で、酸化膜で
還元され、t1後にFeO還元は完了し、引続きSi濃化が開
始され、t−t1時間内で、Siの濃化が進むと共に、還元
能力の許容範囲まで還元が行われる状態を示している。
また第2図は酸化、還元バランスの軌跡を模式的に示し
たもので、酸化・還元過程は亜鉛浴中に入る際、未だ
酸化膜が残っているため、めっき密着性は不良状態を示
す。次に酸化・還元過程は鉄酸化膜が残存する限界を
示す。さらに酸化・還元過程は本発明に係るもので、
適正操業範囲に属する。またはSiの表面濃化の限界点
を示し、Si原子が純鉄層(酸化膜が還元された後の鉄の
層)の表層まで到達していない状態であり、は亜鉛浴
に入る際、SiOx皮膜が表面にあり、鋼板と浴との反応を
阻害するため、めっき密着性は不良の結果を生ずる。従
って,,は従来における酸化・還元過程を経るも
のであり、本発明は及びに該当するも、は本発明
の限界点に当たるまた第3図は還元能力と鉄酸化膜厚と
に関係を示す図であって、Si濃度1.0%のときの本発明
の操業範囲を定めている。A線は鉄酸化膜残留限界曲線
を示し、下部に当たる鉄酸化膜残留領域では、めっき密
着性は不良となる。また、B曲線はSi濃化限界線であっ
て、該B曲線上部はSiの表面濃化によるめっき密着性不
良を起こす領域に該当する。従って、鉄酸化膜残留限界
曲線Aの上部で、かつSi濃化限界線Bの下部に当たるS
部の範囲内に保持できるように、調節する必要がある。
更に鉄酸化膜はC垂直線以下、すなわち1000Å以下を必
要とする。これを超えるとFe−Zn反応が過剰に起こり、
Fe−Zn界面に脆い合金層が形成し、(過剰合金層成長領
域D)めっき密着性不良になる。
次に計算例を示す。ヒートサイクルとして酸化帯入口
の鋼板温度を30℃、酸化帯出口、かつ還元帯入口の鋼板
温度を600℃、還元帯ではこの鋼板温度を保ち、冷却帯
で470℃まで冷却するものを考える。ラインスピードは4
0(m/分)とする。また、還元帯水素濃度を8%、酸化
帯燃焼空気比を0.97とする。酸化帯の長さを40(m)、
還元帯の長さを80(m)とすると、還元帯在留時間は60
(sec)、還元帯残留時間は120(sec)となる。この場
合、生成した鉄酸化膜厚は以下のように表わされる。
Ox=▲∫60 0▼Voxdt Vox=f(m)exp(−EOR/RT) f(m):空気比の関数[Å/sec]実験より導出 EOR:活性化エネルギー[cal/mol]実験より導出 R:ガス定数[cal/molK] T:鋼板温度[K] また、鉄酸化膜還元能力は以下のように表わされる。
R=▲∫120 0▼Vrdt Vr=C・PH2・exp(−ER/RT) C:定数[Å/sec]実験より導出 PH2:還元帯水素濃度[%] ER:活性化エネルギー[cal/mol]実験より導出 R:ガス定数[cal/molK] T:鋼板温度[K] これを時間の経過にしたがって温度を変化させながら数
値積分すると、 OX=850Å R=1500Å という結果を得る。
(実施例) C:0.11% Si:1.0% Mn:1.50% Al:0.02% 残Feか
ら成る鋼成分を有する高張力60K残留rハイテンを、鋼
板に対して垂直に火炎を噴射するバーナーを用いて600
℃まで加熱をする。この時空気比は0.90〜1.10に変える
ことによって加熱能力を損なわず、最適表面特性を得
る。すなわち、酸化膜厚計を用いて、生成酸化膜を測定
し、この酸化膜厚は第3図(還元能力と鉄酸化膜厚との
関係を示す図)に示すS部の範囲内に保持出来るよう
に、調節した。その後溶融亜鉛浴中を通過さ、エアーワ
イピングでめっき量を80/80g/m2とし、得た溶融めっき
鋼板のめっき密着性を調べた。なお、めっき密着性のボ
ールインパクト試験で評価した。
その結果は第2表に示すように、Si濃化限界線を越す
もの、及び鉄酸化膜残留領域でのものと比較すると、第
1表に示すような評価によれば一部剥離ないし剥離が多
く見られた。これに対し本発明によれば、全く亀裂、剥
離が見られない優れた制御が可能とされた。
(発明の効果) 以上述べたように、本発明による鉄酸化膜厚を1000Å
以下にし、かつ鉄酸化膜厚と還元能力との関係を満たす
条件にて操業範囲を定めることにより、高Si含有高張力
鋼板であっても、溶融亜鉛めっき条件をいたずらに変更
することなく、普通鋼と同様の亜鉛めっきの外観の均一
性及び密着性等溶融亜鉛めっき鋼板として具備すべき性
能を効率的に得られる実用上極めて有利な効果がもたら
される。
【図面の簡単な説明】
第1図は酸化、還元バランスを時間の変化として表した
模式図。第2図は酸化、還元バランスの軌跡を模式的に
示した図。第3図は還元能力と酸化帯での生成鉄酸化膜
厚との関係を示す図である。 A……鉄酸化膜残留限界線、B……Si濃化限界曲線、C
……鉄酸化膜厚1000Å垂直線、D……過剰合金層成長領
域、S……本発明領域、a……余裕代
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠田 祐治 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株 式会社君津製鐵所内 (56)参考文献 特開 昭55−131167(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼中Si濃度0.3%以上の高張力溶融亜鉛め
    っき鋼板の製造方法において、焼鈍炉の酸化帯での生成
    した鉄酸化膜厚、および、還元帯での鉄酸化膜還元能力
    をヒートサイクル、ラインスピード、還元帯水素濃度、
    酸化帯燃焼空気比を用いて計算し、 鉄酸化膜厚+a(Å)≦還元能力(Å)≦鉄酸化膜厚+
    b×(鉄酸化膜厚)2(Å) …(1) 鉄酸化膜厚≦1000Å …(2) a:鉄酸化膜余裕代 b:鋼中Si量により決まる定数 なる(1)式及び(2)式を満足するように焼鈍条件を
    制御することを特徴とする高Si含有鋼の高張力溶融亜鉛
    めっき鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】酸化帯の加熱を、鋼板に対して垂直に火炎
    を噴出するバーナーを用いて行うことを特徴とする請求
    項第1項記載の高Si含有鋼の高張力溶融亜鉛めっき鋼板
    の製造方法。
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