JP2512324B2 - 歯科用樹脂組成物 - Google Patents

歯科用樹脂組成物

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JP2512324B2 JP63294607A JP29460788A JP2512324B2 JP 2512324 B2 JP2512324 B2 JP 2512324B2 JP 63294607 A JP63294607 A JP 63294607A JP 29460788 A JP29460788 A JP 29460788A JP 2512324 B2 JP2512324 B2 JP 2512324B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は抗微生物作用を有する歯科用樹脂組成物に関
するものである。
〔従来の技術〕
口腔内で歯科用樹脂組成物を装着し使用していると、
この歯科用樹脂組成物に歯垢の形成がみられる。歯垢の
約70%は微生物で形成され、糸状菌の塊や多数のグラム
陽性球菌、桿菌、また少数のグラム陰性菌などであり、
之等微生物は歯を脱灰する有機酸の生成やコラーゲン溶
解酵素などを生産する因子となる。その他約30%の大部
分は細菌性の多糖類であつて、菌体外多糖のデキストラ
ン(dextran),ミユータン(mutan),レバン(leva
n)などが観られる。
歯科用樹脂組成物への歯垢の沈着が及ぼす影響として
は、歯冠修復用硬質レジン、歯科充填用複合材料,支台
築造用複合材料では修復を行なつた歯牙への二次う蝕や
その周辺の歯牙へのう蝕,及び歯周症などが認められ、
義歯床用樹脂,義歯修復用樹脂,義歯リベース用樹脂,
機能印象材では口臭や義歯性口内炎などがみられる。ま
た感染症を起こす微生物による生体への影響も無視出来
ず歯垢の沈着に因つて増殖した微生物によつて内因感染
を起こす恐れもある。
そこで、従来この歯科用樹脂組成物への歯垢の沈着を
防止または除去するために、次の様な技術が採られて来
た。
(1)ブラシによる除去。
(2)口腔内清掃剤による除去。
(3)義歯清掃剤による除去。
(4)歯科用樹脂組成物に有機系抗菌剤を添加すること
による防止。
しかしながら従来の技術に於いて歯垢を防止または除
去し様とした場合、限界があり歯垢を完全に除去するこ
とは不可能であつた。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の課題は、次の様な歯科用樹脂組成物への歯垢
の沈着が及ぼす影響や従来法の欠点を解決することにあ
る。即ち、 (1)歯科用樹脂組成物への歯垢の沈着によつて口臭が
発生する。
(2)感染症を起こす微生物に因つて、う蝕や口内炎が
起こる。
(3)感染症を起こす微生物に因つて内因感染が起こ
る。
(4)人体に対する安全性が低い。
点を解決する点にある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者等は、之等の課題を解決すべく鋭意検討の結
果、ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの1部また
は全部が、アンモニウムイオンと、銀,銅,亜鉛のイオ
ンから選ばれる1種以上の抗菌性金属イオンとで置換さ
れた抗菌性ゼオライト(以下、抗菌性ゼオライトと称
す。)を均一分散させて含有することを特徴とする歯科
用樹脂組成物を開発することに因って之等の課題を解決
した。
以下に夫々の課題を解決する具体的な方法に就いて述
べる。
(1)本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有する歯科
用樹脂組成物を用いることで、歯科用樹脂組成物に歯垢
の原因である微生物の発生を抑制することが出来、歯垢
の沈着を無くすことで口臭を防ぐことが出来る。
(2)本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有する歯科
用樹脂組成物を用いることで、歯科用樹脂組成物に感染
症を引き起こす微生物の発生を抑制することが出来、修
復を行なつた歯牙への二次う蝕やその周辺の歯牙へのう
蝕、及び歯周症などを防ぐことが出来る。
(3)本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有する歯科
用樹脂組成物を用いることで、歯科用樹脂組成物に内因
感染を引き起こす微生物の発生を抑制することが出来、
人体への内因感染を防ぐことが出来る。
(4)本発明に於ける抗菌性ゼオライトは、人体に対し
て安全である。そのため抗菌性ゼオライトを含有する歯
科用樹脂組成物に於いても人体に対して安全で且つ抗菌
効果のあるものが出来る。
本発明に於いて「ゼオライト」としては、天然ゼオラ
イト及び合成ゼオライト何れも用いることが出来る。ゼ
オライトは、一般に三次元骨格構造を有するアルミノシ
リケートであり、一般式としてXM2/nO・Al2O3・YSiO2
ZH2Oで表示される。ここでMはイオン交換可能なイオン
を表わし通常は1または2価の金属イオンである。nは
(金属)イオンの原子価である。X及びYは夫々の金属
酸化物,シリカ係数,Zは結晶水の数を表示している。ゼ
オライトの具体例としては例えばA−型オライト,X−型
ゼオライト,Y−型ゼオライト,T−型ゼオライト,高シリ
カゼオライト,ソーダライト,モルデナイト,アナルサ
イム,クリノプチロライト,チヤバサイト,エリオナイ
トなどを挙げることが出来る。但し之等に限定されるも
のではない。之等例示ゼオライトのイオン交換容量は、
A−型ゼオライト 7meq/g,X−型ゼオライト 6.4meq/
g,Y−型ゼオライト 5meq/g,T−型ゼオライト 3.4meq/
g,ソーダライト 11.5meq/g,モルデナイト 2.6meq/g,
アナルサイム5meq/g,クリノプチロライト 2.6meq/g,チ
ヤバサイト 5meq/g,エリオナイト 3.8meq/gであり、
何れも抗菌性金属イオンでイオン交換するに充分の容量
を有している。
本発明で用いる抗菌性ゼオライトは、上記ゼオライト
中のイオン交換可能なイオン、例えばナトリウムイオ
ン,カルシウムイオン,カリウムイオン,マグネシウム
イオン,鉄イオンなどのその一部または全部をアンモニ
ウムイオンと抗菌性金属イオンとで置換したものであ
り、抗菌性金属イオンとしては、銀,銅,亜鉛のイオン
が用いられる。
抗菌性の点から、上記抗菌性金属イオンは、ゼオライ
ト中に0.1〜15%含有されていることが適当である。銀
イオン0.1〜15%及び銅イオンまたは亜鉛イオンを0.1〜
8%含有する抗菌性ゼオライトがより好ましい。一方、
アンモニウムイオンは、ゼオライト中に20%まで含有さ
せることが出来るが、ゼオライト中のアンモニウムイオ
ンの含有量は0.5〜5%と、好ましくは0.5〜2%とする
ことが、該ゼオライトの変色を有効に防止するという観
点から適当である。尚、本発明に於いて、%とは110℃
乾燥基準の重量%を言う。
以下、本発明で用いる抗菌性ゼオライトの製造方法に
就いて説明する。例えば本発明で用いる抗菌性ゼオライ
トは、予め調整した銀イオン,銅イオン,亜鉛イオンな
どの抗菌性金属イオン,更にアンモニウムイオンを含有
する混合水溶液にゼオライトを接触させて、ゼオライト
中のイオン交換可能なイオンと上記イオンとを置換させ
る。接触は、10〜70℃,好ましくは40〜60℃で3〜24時
間、好ましくは10〜24時間バツチ式または連続式(例え
ばカラム法)によつて行なうことが出来る。尚上記混合
水溶液のpHは3〜10、好ましくは5〜7に調整すること
が適当である。該調整により銀の酸化物などのゼオライ
ト表面または細孔内への析出を防止出来るので好まし
い。また混合水溶液中の各イオンは、通常何れも塩とし
て供給される。例えばアンモニウムイオンは、硝酸アモ
ニウム,硫酸アンモニウム,酢酸アンモニウム,過塩素
酸アンモニウム,チオ硫酸アンモニウム,リン酸アンモ
ニウムなど、銀イオンは、硝酸銀,硫酸銀,過塩素酸
銀,酢酸銀,ジアミン銀硝酸塩,ジアミン銀硫酸塩な
ど,銅イオンは硝酸銅(II),過塩素酸銅,酢酸銅,テ
トラシアノ銅酸カリウム,硫酸銅など、亜鉛イオンは硝
酸亜鉛(II),硫酸亜鉛,過塩素酸亜鉛,チオシアン酸
亜鉛,酢酸亜鉛などを用いることが出来る。
ゼオライト中のアンモニウムイオンなどの含有量は前
記混合水溶液中の各イオン(塩)濃度を調節することに
よつて、適宜制御することが出来る。例えば抗菌性ゼオ
ライトがアンモニウムイオン及び銀イオンを含有する場
合、前記混合水溶液中のアンモニウムイオン濃度を0.2M
/l〜2.5M/l、銀イオン濃度を0.002M/l〜0.15M/lとする
ことによつて、適宜、アンモニウムイオン含有量0.5〜
5%,銀イオン含有量0.1〜5%の抗菌性ゼオライトを
得ることが出来る。また抗菌性ゼオライトが更に銅イオ
ン,亜鉛イオンを含有する場合、前記混合水溶液の銅イ
オン濃度は0.1M/l〜0.85M/l,亜鉛イオン濃度は0.15M/l
〜1.2M/lとすることによつて、適宜銅イオン含有量0.1
〜8%,亜鉛イオン含有量0.1〜8%の抗菌性ゼオライ
トを得ることが出来る。
本発明に於いては、前記の如き混合水溶液以外に各イ
オンを単独で含有する水溶液を用い、各水溶液とゼオラ
イトとを逐次接触させることによつて、イオン交換する
ことも出来る。各水溶液中の各イオンの濃度は、前記混
合水溶液中の各イオン濃度に準じて定めることが出来
る。
イオン交換が終了したゼオライトは、充分に水洗した
後、乾燥する。乾燥は、常圧で105〜115℃、または減圧
(1〜30torr)下70〜90℃で行なうことが好ましい。
本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有する歯科用樹
脂組成物の構成は、粉液型とペースト型に分けられる。
更に粉液型のものは、義歯床用樹脂や義歯修復用樹脂
などの様に化学的に硬化するものと、機能印象材の様に
物理的に硬化するものとに分けられる。
化学的に硬化する粉液型のものの組成は、 (1)エチレン性不飽和2重結合を少なくとも1個含有
する重合可能なモノマーの液剤、 (2)ポリマー粉末とこのポリマー粉末100重量部に対
して0.1〜10.0重量部の抗菌性ゼオライトとを混合分散
させた粉剤、 また、之等粉剤,液剤の組合わせに重合開始剤,重合
促進剤を添加したものがあり、物理的に硬化する粉液型
のものでは、 (1)アルコールと可塑剤の混合物である液剤、 (2)軟化点が低いポリマー粉末とこのポリマー粉末10
0重量部に対して0.1〜10.0重量部の抗菌性ゼオライトと
を混合分散させた粉剤、 とすることが出来る。
ペースト型のものを構成で分けた場合、1ペーストタ
イプと2ペーストタイプのものとがあり、1ペーストタ
イプのものでは、 (1)エチレン性不飽和2重結合を少なくとも1個含有
する重合可能なモノマーに充填材及び光重合開始剤を添
加したものと、このもの100重量部に対して0.05〜10.0
重量部の抗菌性ゼオライトとを混合練和したペースト
剤、 また、2ペーストタイプのものでは、 (1)エチレン性不飽和2重結合を少なくとも1個含有
する重合可能なモノマーに充填材及び重合促進剤を添加
したものと、このもの100重量部に対して0.05〜10.0重
量部の抗菌性ゼオライトとを混合練和したペースト剤、 (2)エチレン性不飽和2重結合を少なくとも1個含有
する重合可能なモノマーまたは可塑剤に充填材および重
合開始剤を添加したものと、このもの100重量部に対し
て0.05〜10.0重量部の抗菌性ゼオライトとを混合練和し
たペースト剤、 に分けることが出来る。
具体的には化学的に硬化する粉液型の液剤及びペース
ト型のものに使用出来るエチレン性不飽和2重結合を少
なくとも1個含有する重合可能なモノマーとは、1個の
エチレン性不飽和2重結合を持つモノマーとしてはメチ
ルメタクリレート,エチルメタクリレート,イソプロピ
ルメタクリレート,ヒドロキシエチルメタクリレート,
テトラヒドロフルフリルメタクリレート,グリシジルメ
タクリレート,及び之等のアクリレート;2個のエチレン
性不飽和2重結合を持つモノマーとして、芳香族系では
2,2−ビス(メタクリロキシフエニル)プロパン,2,2−
ビス[4−(2−ヒドロキシ−3メタクリロキシフエニ
ル)]プロパン,2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキ
シフエニル)プロパン,2,2−ビス(4−メタクリロキシ
ジエトキシフエニル)プロパン,2,2−ビス(4−メタク
リロキシプロポキシフエニル)プロパン及び之等のアク
リレート;脂肪族系ではエチレングリコールジメタクリ
レート,ジエチレングリコールジメタクリレート,トリ
エチレングリコールジメタクリレート,ブチレングリコ
ールジメタクリレート,ネオペンチルグリコールジメタ
クリレート,1,3−ブタンジオールジメタクリレート,1,4
−ブタンジオールジメタクリレート,1,6−ヘキサジオー
ルジメタクリレート,及び之等のアクリレートがある。
3個のエチレン性不飽和2重結合を持つモノマーとして
はトリメチロールプロパントリメタクリレート,ペンタ
エリスリトールトリメタクリレート,トリメチロールメ
タントリメタクリレート及び之等のアクリレートがあ
る。4個のエチレン性不飽和2重結合を持つモノマーと
してはペンタエリスリトールテトラメタクリレート,ペ
ンタエリスリトールテトラアクリレート,などがある。
その他ウレタン系モノマーの使用も可能であり之等の1
種または2種以上混合して使用してもよい。
化学的に硬化する粉液型の粉剤に使用出来るポリマー
粉末としては、ポリメチルアクリレート,ポリメチルメ
タクリレート,ポリエチルメタクリレート,メチルメタ
クリレート−エチルメタクリレート共重合体,架橋型メ
チルメタクリレート,エチレン−酢酸ビニル共重合体な
どがあり、之等の1種または2種以上を混合して使用し
てもよい。使用時に於ける液剤と粉剤の割合は、好まし
くは液剤100重量部に対して粉剤が180〜250重量部であ
る。
化学的に硬化する粉液型及びペースト型の2ペースト
タイプに使用出来る重合開始剤、重合促進剤の組合わせ
はベンゾイルパーオキサイドと第3級アミン,過酸化物
とコバルト化合物、或いはピリミジントリオン酸誘導体
と第4級アンモニウムクロライドの組合わせで、粉液型
では一方を粉剤に他方を液剤に添加し、ペースト型では
重合開始剤の入つたペースト,重合促進剤の入つたペー
ストの2ペーストとして使用する。
物理的に硬化する粉液型の液剤に使用出来るアルコー
ルとしては、メタノール,エタノール,イソプロパノー
ルなどがあり之等の1種または2種以上を混合して使用
してもよい。
物理的に硬化する粉液型の液剤に使用出来る可塑剤と
しては、ジメチルフタレート,ジエチルフタレート,ジ
ブチルフタレート,ジオクチルフタレート,ジイソデシ
ルフタレート,ブチルベンジルフタレート,ブチルフタ
リルブチルグリコレートなどがあり、之等の1種または
2種以上を混合して使用してもよい。また之等可塑剤と
アルコールの混合比率は好ましくは可塑剤100重量部に
対してアルコールが5〜50重量部である。
物理的に硬化する粉液型の粉剤に使用出来る軟化点が
低いポリマー粉末としては、ポリエチルメタクリレー
ト,ポリブチルメタクリレート,エチルメタクリレート
とメチルメタクリレートの共重合体,ブチルメタクリレ
ートとメチルメタクリレートの共重合体,シリコン系ア
クリル樹脂,などがあり、之等の1種または2種以上を
混合して使用してもよい。使用時に於けるアルコールと
可塑剤の混合物である液剤とこの軟化点が低いポリマー
粉末である粉剤の割合は、好ましくは液剤100重量部に
対して粉剤が100〜150重量部である。
ペースト型のものの充填材では、無機質,有機質或い
は之等を複合した所謂有機質複合フイラーの何れでもよ
く1種または2種以上混合して使用してもよい。例えば
有機質ではポリマー粉末として、ポリメチルアクリレー
ト,ポリメチルメタクリレート,ポリエチルメタクリレ
ート,メチルメタクリレートとエチルメタクリレートの
共重合体,架橋型メチルメタクリレート,エチレンと酢
酸ビニルの共重合体などがある。
無機質では、石英粉末,アルミナ粉末,ガラス粉末,
カオリン,タルク,炭酸カルシウム,バリウムアルミノ
シリケートガラス,酸化チタン,ホウケイ酸ガラス,コ
ロイダルシリカ粉末などがある。この充填材の添加量は
好ましくはエチレン性不飽和2重結合を少なくとも1個
含有する重合可能なモノマー100重量部に対して10〜900
重量部である。また之等無機質充填材は、モノマー液で
あるバインダーレジンと混合する前に、充填材とバイン
ダーレジンの両方に反応することの出来るカツプリング
剤を用いて処理することが望ましい。カツプリング剤と
してはオルガノフアンクシヨナルシランカツプリング
剤,チタネートカツプリング剤,ジルコアルミネートカ
ツプリング剤などがある。また無機質充填材の表面をグ
ラフト化して合成樹脂との接着力を高めることも出来
る。
ペースト型の1ペーストタイプに於ける光重合レジン
では、光重合開始剤としてα−ジケトン系化合物,チオ
キサントン系化合物,或いはベンゾインアルキルエーテ
ル系化合物などを使用することが出来、その添加量は好
ましくはエチレン性不飽和2重結合を少なくとも1個含
有する重合可能なモノマー100重量部に対して0.001〜5
重量部である。また光重合開始剤が励起状態にあるとき
はそれを還元するけれども、励起されていない時は還元
出来ない様な能力を持つ還元剤として、例えば第1級,
第2級,または第3級アミンなどを使用することが出来
る。その添加量は好ましくはエチレン性不飽和2重結合
を少なくとも1個含有する重合可能なモノマー100重量
部に対して0.1〜5重量部である。
更に粉液型の液剤成分及びペースト成分には保存安定
性の為、重合禁止剤としてハイドロキノン,2−ヒドロキ
シ−4−メトキシベンゾフエノン,ハイドロキノンモノ
メチルエーテル,2,4−ジメチル−6−ターシヤリーブチ
ルフエノールなどを適宜添加することができる。また紫
外線吸収剤も適宜添加することが出来る。また粉剤及び
ペーストの成分には着色剤を適宜添加することが出来
る。
本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有する歯科用樹
脂組成物は、抗菌性ゼオライトの微小粒子を表面に出す
ことで、その抗菌効果により歯垢のもとである微生物を
死滅させ歯垢の付着を防止することが出来る。
抗菌性ゼオライトは、その抗菌効果を充分且つ効率的
に発揮させるためには成型された歯科用樹脂組成物表面
に均一に抗菌性ゼオライトの微小粒子を表面に出すこと
が重要である。そのため粉剤やペースト剤に抗菌性ゼオ
ライトを分散混合する時、抗菌性ゼオライトの微小粒子
を可及的均一に分散させ、なお且つ樹脂成型時にもこの
粒子が均一に分散した儘で成型出来ることとする技術が
必要である。
その具体的な抗菌性ゼオライトの分散混合は次の様で
ある。
(1)粉剤の割合 粉剤へ抗菌性ゼオライトを混合分散する場合、その分
散混合装置には、ボールミル,Vミキサー,ブレード式攪
拌装置,乳鉢などがあり、之等の併用若しくは之等以外
の装置でも良い。
混合条件はボールミルの場合、回転数60〜330rpmで30
分〜2時間、乳鉢の場合、回転数30〜120rpmで30分〜3
時間で分散すると抗菌性ゼオライトの分散性の優れた粉
剤を調整出来る。
また之等の装置で分散混合を行なう時、分散剤を添加
することが必要である。之は分散剤を用いることで抗菌
性ゼオライトの分散性を良くするだけでなく、粉剤であ
るポリマー粒子に抗菌性ゼオライトの微小粒子を付着さ
せる効果もあり、之により粉剤と液剤を混合し樹脂成型
を行なう時でも抗菌性ゼオライトの微小粒子は樹脂中で
偏よる事無く均一に分散させることが可能である。
分散剤は、溶液として使用する事が望ましく、分散剤
としては、ソルビタン脂肪酸エステル,グリセリン脂肪
酸エステル,デカグリセリン脂肪酸エステル,その他ポ
リグリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソル
ビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビツト
脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸
エステル,ポリエチレングリコール脂肪酸エステル,ポ
リオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレ
ンフイトステロール,ポリオキシエチレンフイトスタノ
ール,ポリオキシエチレンアルキルフエニルエーテル,
ポリオキシエチレンヒマシ油などが挙げられ、之等の1
種または2種以上をシクロヘキサンなどの溶剤100重量
部に対して10重量部溶解した分散剤溶液とする。
この分散剤溶液は、粉剤と抗菌性ゼオライトの分散混
合を行なう時、粉剤100重量部に対して0.5〜5重量部の
範囲で添加使用出来る。分散剤溶液の添加量が0.5重量
部未満の場合は分散効果やポリマー粒子に抗菌性ゼオラ
イトの微小粒子を付着させる効果が悪く、5重量部を超
える場合では出来上がつた粉剤がベトつき操作感の劣化
を来たす。
(2)ペースト剤の割合 ペースト剤へ抗菌性ゼオライトを分散混合させる装置
としては、ロール,ニーダー,ブレード式攪拌装置,乳
鉢などがあり、之等の併用若しくは之等以外の装置でも
良い。
またペースト剤の場合にも分散剤を添加使用すること
が必要である。之は分散剤を添加使用することで抗菌性
ゼオライトが凝集することなく均一に分散混合させるこ
とが出来るためである。
混合条件はロールの場合、回転数30〜330rpmで30分〜
2時間、ニーダーの場合、回転数60〜150rpmで30分〜3
時間で分散すると抗菌性ゼオライトの分散性の優れたペ
ースト剤を調整出来る。
ペースト剤の場合、使用出来る分散剤は粉剤と同様の
ものが使用出来るが、ペースト剤の場合、之等分散剤の
1種または2種以上をペースト剤100重量部に対して0.0
1〜0.5重量部の範囲で直接添加使用出来る。分散剤の添
加量が0.01重量部未満の場合は分散効果が悪く抗菌性ゼ
オライトの凝集がみられ、0.5重量部を超える場合では
出来上がつたペースト剤の粘度が柔らかくなり操作感の
劣化を来たす。
〔実施例〕
以下に本発明に於ける抗菌性ゼオライトの調整法と実
施例並びに比較例を示し本発明を更に具体的に説明する
が、本発明は之等に限定されるものではない。
第1表は本発明に於ける実施例、第2表は本発明に於
ける比較例を示したものである。尚表中の目的とする歯
科材料の欄の床用樹脂とは義歯床用樹脂、リベースとは
義歯リベース用樹脂、義歯修複とは義歯修復用樹脂、機
能印象とは機能印象材料、歯科充填とは歯科充填用複合
材料及び支台築造用複合材料、歯冠修復とは歯冠修復用
硬質レジンを意味するものである。
評価項目と評価方法 (1)歯垢の有無 本評価は義歯床用樹脂,義歯修復用樹脂,義歯リベー
ス用樹脂に就いて行なつた。実施例及び比較例に示した
夫々の配合で義歯床用樹脂,義歯修復用樹脂,義歯リベ
ース用樹脂を作製し患者に之等を30日間装着させ歯垢の
付着の状態を目視にて観察した。症例数は夫々50症例で
ある。
(2)口臭 本評価は本発明に於ける総べての材料に就いて行なつ
た。実施例及び比較例に示した夫々の配合で義歯床用樹
脂,義歯修復用樹脂,義歯リベース用樹脂,歯冠修復用
硬質レジン,歯科充填用複合材料,機能印象材料,支台
築造用複合材料などを作製し、患者に之等を30日間装着
或いは之等により治療を施した後、GC社製ブレスチエツ
カーBC-1にて計測した。症例数は夫々1症例である。口
臭の度合いはメチルメルカプタンの濃度で表示しその濃
度が0.19ppm以下の時は殆んど口臭が無い。濃度が0.19p
pmを超え0.29ppm以下の時は口臭があつても気にならな
い程度である。濃度が0.29ppmを超え0.49ppm以下の時は
口臭が少し気になる程度で濃度が0.49ppmを超えると口
臭が可成り気になると判断した。
(3)口内炎 本評価は義歯床用樹脂,義歯修復用樹脂,義歯リベー
ス用樹脂に就いて行なつた。実施例及び比較例に示した
夫々の配合で義歯床用樹脂,義歯修復用樹脂,義歯リベ
ース用樹脂を作製し患者に之等を30日間装着させた後、
之等を外ずし口腔粘膜面の組織の状態を目視にて観察し
口内炎の発生の有無を50症例中の陽性の症例数により評
価した。
(4)抗菌性 本評価は本発明に於ける総べての材料に就いて行なつ
た。実施例及び比較例に示した夫々の配合で50×50×2m
mのテストピースを作製し、之等を夫々一般細菌である
シユードモナス アエルギノサとストレプトコツカス
ミユウタンスとストレプトコツカス サンギウスとフソ
バクテリウムの混合菌105個/ml含む菌液1mlを滅菌水100
0mlに希釈した液に入れ、37℃、相対湿度95%に於ける4
8時間後の菌数を測定し抗菌力を評価した。抗菌力の効
果は菌数が最初の菌数105個/mlの100分の1以下になれ
ば抗菌効果があると判断した。
(5)抗菌剤の安全性 本評価は本発明に於ける総べての材料に就いてウサギ
皮膚刺激試験により行なつた。本試験はウサギ50検体に
就いて実施した。ウサギ背部正中線付近を適用前日に電
気バリカンで剪毛し、25×25mmの広さの適用部位6個所
を設定した。適用部位6個所の内3個所は健常皮膚とし
残り3個所は角質層剥離皮膚とした。角質層剥離皮膚は
注射針を用いて適用開始直前に真皮に傷を付けたり出血
しない程度に井桁状に傷を付けて作成した。貼付パツチ
を背部皮膚に貼付後移動しない様に粘着テープ(エラス
チコン,ジヨンソン・アンド・ジヨンソン社製)にて固
定した。適用時間は24時間とし、適用終了後は粘着テー
プを取り除き水を含ませた脱脂綿にて被験物質を拭き取
り除去した。夫々の樹脂組成物のウサギ1検体に対する
塗布量は0.5gとし、赤斑の発生した検体数で安全性を評
価した。
(6)重合物の色調 本評価は本発明に於ける総べての材料に就いて行なつ
た。実施例及び比較例に示した夫々の配合で25×50×2m
mの色調板を作製し標準光源C下で標準色調サンプルと
目視にて比較した。
(7)吸水量 義歯床用樹脂,義歯修復用樹脂,義歯リベース用樹脂
に就いてはJIS T6501に従つて直径50mm,厚さ0.5mmのテ
ストピースを夫々の配合で作製し、37℃、24時間後の吸
水量を求めた。歯冠修復用硬質レジン,歯科充填用複合
材料,支台築造用複合材料に就いてはADA No.27に従つ
て直径20mm、厚さ1.0mmのテストピースを夫々の配合で
作製し、37℃、24時間後の吸水量を求めた。夫々の合格
基準はJIS T6501では0.7mg/cm2以下、ADA No.27では0.7
mg/cm2以下である。
(8)溶解量 本評価は義歯床用樹脂,義歯修復用樹脂,義歯リベー
ス用樹脂に就いて行なつた。
JIS T6501に従つて吸水量の測定の終つたテストピース
を充分乾燥し恒量にすることにより測定した。合格基準
はJIS T6501により0.04mg/cm2以下である。
(9)抗折たわみ 本評価は義歯床用樹脂,義歯修復用樹脂,義歯リベー
ス用樹脂に就いて行なつた。
JIS T6501に従つて65×10.5×3.0mmのテストピースを夫
々の配合で作製し、抗折たわみ試験機で37℃の蒸留水中
で試験を行なう。合格基準はJIS T6501により荷重が34.
3Nのときは抗折たわみ量は2.0mm以下、荷重が49.0Nのと
きは抗折たわみ量は2.2mm以上5.0mm以下である。
(10)圧縮強度 本評価は歯冠修復用硬質レジン,歯科充填用複合材
料,支台築造用複合材料に就いて行なつた。実施例及び
比較例に示した夫々の配合で直径4mm、高さ8mmの円柱状
のテストピースを作製し37℃、24時間水中浸漬後に島津
製作所製オートグラフDSS500によりクロスヘツドスピー
ド0.5mm/minで試験し、最大破壊強度を以て圧縮強度と
した。
重合方法 各種試験体を作製するための重合方法は以下の通りで
ある。
(1)義歯床用樹脂 加熱重合型レジンは、GC社製アクロンを用い、粉剤10
0g対して溶剤43mlを混合し餅状となつたものを歯科用フ
ラスコ内に填入し、之を約70℃の湯の中に入れ1時間30
分間加熱した後、直ちに沸騰水の中に入れ30分間加熱し
た後、フラスコを取出しその儘15〜35℃の室温中に30分
間放冷した後、10〜30℃の水中で15分間冷却させる。マ
イクロ波重合型レジンは、GC社製アクロンMCを用い、粉
剤100g対して溶剤43mlを混合し餅状となつたものを歯科
用FRPフラスコ内に填入し、周波数2450MHZ、高周波出力
500Wの市販の電子レンジにて3分間重合を行ない、10〜
30℃の水中で40分間冷却させる。
流し込み重合型レジンは、GC社製パーマデンチヤーを
用い、粉剤100g対して溶剤60mlの比にて混合してから流
し込み専用フラスコを用いGC社製パーマポツトにて45
℃、2.5kg/cm2の条件で20分間重合を行なう。
光重合型レジンは、出願人会社試作品を用い作業模型
上で圧接し人工歯を排列し、咬合面側からGC社製ラボラ
イトLV-1にて5分間照射し作業模型から取外した後、粘
膜面側から20分間照射する。
(2)義歯修復用,義歯リベース用樹脂 23℃に於いて約5分で餅状となり約15分で完全に硬化
するように設計されている。粉剤と液剤の混合割合は粉
剤100gに対して液剤50mlとした。
(3)歯冠修復用硬質レジン,歯科充填用複合材料,支
台築造用複合材料 歯冠修復用硬質レジンはGC社製ラボライトLV-1を用い
て5分間光照射し、歯科充填用複合材料,支台築造用複
合材料に就いてはGC社製ジーシーライトVL-1を用いて40
秒間光照射することにより完全に硬化する様に設計され
ている。
(4)機能印象材料 機能印象材料には多量体は含まれていないので重合は
せず、アルコールと可塑剤によりポリマーを膨潤させた
状態を維持させて試料とした。
実施例1〜4と実施例8,11,12は各種の重合方法によ
る義歯床用樹脂の例である。実施例1,3,11,12は加熱重
合による例であるが、実施例1は抗菌性ゼオライトがA
型ゼオライトの例で、実施例3は抗菌性ゼオライトがY
型ゼオライトを含む例である。実施例11は抗菌性ゼオラ
イト(A型ゼオライト)のポリメチルメタクリレートに
対する添加量が特許請求の範囲の上限に近い値であり実
施例12は抗菌性ゼオライト(A型ゼオライト)のポリメ
チルメタクリレートに対する添加量が特許請求の範囲の
下限に近い値である。また実施例2は重合方法が常温重
合つまり流し込みレジンの例であり、実施例4は市販の
電子レンジを利用したマイクロ波重合レジンの例であ
る。実施例8は可視光線を照射することにより重合する
ペーストタイプの義歯床用樹脂の例である。照射器はGC
社製ラボライトLV-1であり、照射時間は咬合面側から5
分と粘膜面側から20分の両面で合計25分である。之等は
何れも抗菌性ゼオライトが適宜含有されているので重合
物の色調や機械的性質を損なうことなく臨床で使用され
た義歯床用樹脂には歯垢は全くみられず、更に口臭,口
内炎,抗菌性,ウサギ皮膚刺激試験による抗菌剤の安全
性など総べてに渉り全く問題は無かつた。実施例5,13は
常温重合による義歯リベース用樹脂に抗菌性ゼオライト
を添加した例である。実施例5は抗菌性ゼオライト(A
型ゼオライト)のポリメチルメタクリレートとメチルエ
チルコポリマーの合計の量に対する添加量が標準的な値
であるが、実施例13は抗菌性ゼオライト(X型ゼオライ
ト)のポリメチルメタクリレートとメチルエチルコポリ
マーの合計の量に対する添加量が特許請求の範囲の上限
に近い値である。実施例6,14は常温重合による義歯修復
用樹脂に抗菌性ゼオライトを添加した例である。実施例
6は抗菌性ゼオライト(A型ゼオライト)のポリメチル
メタクリレートとメチルエチルコポリマーの合計の量に
対する添加量が標準的な値であるが、実施例14は抗菌性
ゼオライト(Y型ゼオライト)のポリメチルメタクリレ
ートとメチルエチルコポリマーの合計の量に対する添加
量が特許請求の範囲の下限に近い値である。実施例7,1
5,16は機能印象材料に関する例である。実施例7は抗菌
性ゼオライト(A型ゼオライト)のポリエチルメタクリ
レートに対する添加量が標準的な値であるが実施例15は
抗菌性ゼオライト(A型ゼオライト)のポリエチルメタ
クリレートに対する添加量が特許請求の範囲の上限に近
い値であり、実施例16は抗菌性ゼオライト(A型ゼオラ
イト)のポリエチルメタクリレートに対する添加量が特
許請求の範囲の下限に近い値である。之等の実施例も抗
菌性ゼオライトの添加量が何れも特許請求の範囲内にあ
るので総べての特性に就いて全く問題は無い。実施例8
を除く上記の例は総べて粉液タイプの歯科材料であるの
で、粉剤中に抗菌性ゼオライトを均一に分散させるため
に界面活性剤ヘキサグリセリンポリリシノレートの10%
シクロヘキサン溶液にて分散させた。尚界面活性剤は之
に限定する必要はない。実施例9,19は歯科充填用複合材
料に夫々抗菌性ゼオライト(X型ゼオライト)及び抗菌
性ゼオライト(Y型ゼオライト)を添加した例である。
実施例9,19に示した材質は支台築造用複合材料に使用す
ることも出来、何れも可視光線を照射することにより重
合するペーストタイプである。照射器はGC社製ジーシー
ライトVL-1で照射時間は40秒である。実施例9は抗菌性
ゼオライト(X型ゼオライト)のウレタンジメタクリレ
ートとネオペンチルグリコールジメタクリレートの合計
の量に対する添加量が標準的な値であり、実施例19は抗
菌製ゼオライト(Y型ゼオライト)の添加量が特許請求
の範囲の上限に近い値である。実施例10,17,18は可視光
線を照射することにより重合するペーストタイプの歯冠
修復用硬質レジンの例であり、GC社製ラボライトLV-1を
用いて重合した。照射時間はオペーク層及びデンチン層
のプリキユアーが1分、エナメル層の最終重合が5分で
ある。実施例10は抗菌性ゼオライト(Y型ゼオライト)
を添加した例でその添加量は標準的な値である。実施例
17は抗菌性ゼオライト(A型ゼオライト)を添加した例
でその添加量は特許請求の範囲の上限に近い値である。
実施例18は抗菌性ゼオライト(X型ゼオライト)を添加
した例でありその添加量は特許請求の範囲の下限に近い
値である。之等はペーストタイプであり抗菌性ゼオライ
トを均一に分散させるために界面活性剤ヘキサグリセリ
ンポリリシノレートを適宜添加し練り込む様にした。練
り込み方法は乳鉢,ニーダー,ブレード式攪拌機などが
あるが、この方法に就いては特に限定する必要はない。
また界面活性剤の種類も之に限定する必要はない。之等
の特性としては口臭は非常に低い値であり、抗菌性,ウ
サギ皮膚刺激試験による抗菌剤の安定性,重合物の色
調,吸水量,圧縮強度何れも良好な結果が得られた。
比較例1〜9は抗菌性ゼオライトを全く含まない夫々
の歯科材料の例である。それ等のうち比較例1,2,3,7は
義歯床用樹脂の例であり、比較例1は加熱重合,比較例
2は常温重合つまり流し込みレジン,比較例3は市販の
電子レンジを利用したマイクロ波重合レジン、比較例7
は可視光線を照射することにより重合するペーストタイ
プの義歯床用樹脂の例である。また比較例4は義歯リベ
ース用樹脂の例、比較例5は常温で重合する義歯修復用
樹脂の例、比較例6は機能印象材料の例、比較例8は歯
科充填用複合材料または支台築造用複合材料の例、比較
例5は歯冠修復用硬質レジンの例である。之等は統べて
抗菌性ゼオライトを全く含まないので抗菌性ゼオライト
を粉剤やペーストに均一に分散或いは混合する必要が無
いのでヘキサグリセリンポリリシノレートなどの界面活
性剤を使用する必要は無い。之等の特性としては義歯床
用樹脂,義歯リベース用樹脂,義歯修復用樹脂に於いて
みられる様に30日間の臨床試験の結果、目視で歯垢のみ
られた症例数が実施例に比べて非常に多く50症例中殆ん
どに歯垢の付着がみられた。GC社製ブレスチエツカーBC
-1による口臭の評価でも0.49ppmを超え口臭が可成り気
になるという結果になつた。またシユードモナス アエ
ルギノサとストレプトコツカス ミユウタンスとストレ
プトコツカス サンギウスとフソバクテリウムの混合菌
105個/ml含む菌液の48時間後の菌数の減少を調べる抗菌
性のテストでは殆どが菌数の減少傾向はみられず寧ろ菌
数が増加している例も有つた。その他の性質は全く異常
は無かつた。比較例10は義歯床用樹脂の例で抗菌性ゼオ
ライト(A型ゼオライト)の添加量が特許請求の範囲を
小さい方に逸脱した例であり、比較例13は同じく抗菌性
ゼオライト(A型ゼオライト)の添加量が特許請求の範
囲の大きい方に逸脱した例である。何れも加熱重合であ
るが抗菌性ゼオライトの添加量が特許請求の範囲を小さ
い方に逸脱した例では歯垢の付着及び口臭に就いてもあ
まり改善が認められず抗菌性も1桁しか減少せず抗菌効
果があるとは言えない。また抗菌性ゼオライトの添加量
が特許請求の範囲を大きい方に逸脱した例では歯垢の付
着,口臭,口内炎,抗菌性何れも良好な結果が得られた
が義歯床用樹脂として最も重要な性質の一つである重合
物の色調が使用することが出来ない程黒く変色した。比
較例11は抗菌性ゼオライト(X型ゼオライト)の添加量
が特許請求の範囲を小さい方に逸脱した義歯リベース用
樹脂の例であり、比較例14は抗菌性ゼオライト(X型ゼ
オライト)の添加量が特許請求の範囲を大きい方に逸脱
した義歯修復用樹脂の例である。之等の性質も比較例10
と比較例13の傾向と同じで抗菌性ゼオライトの添加量が
特許請求の範囲を小さい方に逸脱した比較例11では抗菌
効果が無く、抗菌性ゼオライトの添加量が特許請求の範
囲を大きい方に逸脱した比較例14では重合物の色調が黒
く変色した。比較例12では機能印象材料に於ける抗菌性
ゼオライト(Y型ゼオライト)の添加量が特許請求の範
囲を小さい方に逸脱した例であり混合物の色調には異常
は無いが抗菌効果が全くみられない、比較例15は機能印
象材料に於ける抗菌性ゼオライト(Y型ゼオライト)の
添加量が特許請求の範囲を大きい方に逸脱した例であ
り、抗菌効果があるものの混合物が黒く変色し使用する
ことが出来ない。比較例16は抗菌性ゼオライト(A型ゼ
オライト)の添加量が特許請求の範囲を小さい方に逸脱
したペーストタイプの可視光線を照射することにより重
合する義歯床用樹脂の例であり良好な抗菌効果を得るこ
とが出来ない。比較例17では歯科充填用複合材料或いは
支台築造用複合材料の抗菌性ゼオライト(X型ゼオライ
ト)の添加量が特許請求の範囲を大きい方に逸脱した例
であり抗菌効果はあるが重合物が黒変するので使用する
ことが出来ない。比較例18,19,20は抗菌剤として抗菌性
ゼオライトの代わりに有機系の抗菌剤を添加した例であ
る。比較例18は歯冠修復用硬質レジンに抗菌剤としてパ
ラオキシ安息香酸プロピルを添加した例であり抗菌効果
も重合物の色調も良好であるがウサギ皮膚刺激試験によ
る抗菌剤の安全性に於いて赤斑発生検体数が50検体中43
検体と極めて多く人体に対しても有害であることが判つ
た。比較例19は義歯床用樹脂しに抗菌剤として塩化ベン
ザルコニウムを添加した例であり、比較例20は義歯リベ
ース用樹脂に抗菌剤としてパラオキシ安息香酸プロピル
を添加した例である。之等も比較例18と同様な結果が得
られた。
抗菌性ゼオライトの調製法 ゼオライトは、A−型ゼオライト(Na2O・Al2O3・1.9
SiO2・XH2O:平均粒径1.5μm)、X−型ゼオライト(N
a2O・Al2O3・2.3SiO2・XH2O:平均粒径2.5μm)、Y−
型ゼオライト(1.1Na2O・Al2O3・4SiO2・XH2O:平均粒
径0.7μm)、天然クリノプチロライト(150〜250メツ
シユ)の4種類を使用した。イオン交換の為の各イオン
を提供するための塩としてNH4NO3,AgNO3、Cu(NO3)2及び
Zn(NO3)2の4種類を使用した。第3表に各サンプル調製
時に使用したゼオライトの種類と混合水溶液に含まれる
塩の種類及び濃度を示した。No.1〜No.5の5種類の抗菌
性ゼオライトのサンプルを得た。
各サンプルとも、110℃で加熱乾燥したゼオライト粉
末1kgに水を加えて、1.3lのスラリーとし、その後、攪
拌して脱気し、更に適量の0.5N硝酸溶液と水とを加えて
pHを5〜7に調整し、全容を1.8lのスラリーとした。次
ぎにイオン交換の為、所定濃度の所定の塩の混合水溶液
3lを加えて全容を4.8lとし、このスラリー液を40〜60℃
に保持し10〜24時間攪拌しつつ平衡状態に到達させた状
態に保持した。イオン交換終了後、ゼオライト相を濾過
し、室温の水または温水でゼオライト相中の銀イオンま
たは銅イオンまたは亜鉛イオンが無くなる迄水洗した。
次ぎにサンプルを110℃で加熱乾燥し、5種類のサンプ
ルを得た。得られたNo.1〜No.5の抗菌性ゼオライトサン
プルに関するデータを第3表に示す。
〔発明の効果〕 本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有する歯科用樹
脂組成物を用いることで次の様な効果がある。
(1)従来の抗菌性ゼオライトを含有しない歯科用樹脂
組成物では口臭の原因である微生物を抑制することが出
来なかつたが、本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有
する歯科用樹脂組成物を用いると歯科用樹脂の物性を損
うこと無く、歯垢の原因である微生物の発生を抑制する
ことが出来る様になり、歯垢の沈着が無くなり不快な口
臭を防ぐことが出来る様になつた。
(2)本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有する歯科
用樹脂組成物を用いることで歯科用樹脂の物性を損うこ
と無く、感染症を引き起こす微生物の発生を抑制するこ
とが出来、う蝕や口内炎を防ぐことが出来る様になつ
た。
(3)本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有する歯科
用樹脂組成物を用いることで歯科用樹脂の物性を損うこ
と無く内因感染を引き起こす微生物の発生を抑制するこ
とが出来、人体への内因感染を防ぐことが出来る様にな
つた。
(4)本発明に於ける抗菌性ゼオライトを含有する歯科
用樹脂組成物を用いることで歯科用樹脂の物性を損うこ
と無く人体に対して安全に微生物の発生を抑制すること
が出来る様になつた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08K 3/34 C08K 3/34 C08L 33/04 LHT C08L 33/04 LHT (56)参考文献 特開 昭62−19508(JP,A) 特開 昭63−115829(JP,A) 特開 昭62−201806(JP,A) 特開 昭61−242561(JP,A) 特開 昭61−249908(JP,A) 特開 昭63−216811(JP,A) 特開 平1−238508(JP,A) 特開 平1−290612(JP,A) 特開 平1−254608(JP,A)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】粉剤液剤夫々混合して成形する粉液型、ま
    たは単量体を重合するのに必要なエネルギーを有する光
    を照射することにより成型するペースト型、の成型物
    に、抗微生物作用物質としてゼオライト中のイオン交換
    可能なイオンの一部または全部が、アンモニウムイオン
    と、銀,銅,亜鉛のイオンから選ばれる1種以上の抗菌
    性金属イオンとで置換された抗菌性ゼオライトを含有し
    ていることを特徴とする歯科用樹脂組成物。
  2. 【請求項2】(A)粉剤として (a)メタクリル酸エステル重合体および/またはアク
    リル酸エステル重合体、 (b)ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部ま
    たは全部が、アンモニウムイオンと、銀,銅,亜鉛のイ
    オンから選ばれる1種以上の抗菌性金属イオンとで置換
    された抗菌性ゼオライト、 (B)液剤として (a)エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個含有
    する重合可能な化合物、 とから成る請求項1記載の歯科用樹脂組成物。
  3. 【請求項3】(A)粉剤として (a)メタクリル酸エステル重合体および/またはアク
    リル酸エステル重合体、 (b)ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部ま
    たは全部が、アンモニウムイオンと、銀,銅,亜鉛のイ
    オンから選ばれる1種以上の抗菌性金属イオンとで置換
    された抗菌性ゼオライト、 (c)有機過酸化物、 (B)液剤として (a)エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個含有
    する重合可能な化合物、 (b)第3級アミン、 とから成る請求項1記載の歯科用樹脂組成物。
  4. 【請求項4】(A)粉剤として (a)メタクリル酸エステル重合体および/またはアク
    リル酸エステル重合体、 (b)ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部ま
    たは全部が、アンモニウムイオンと、銀,銅,亜鉛のイ
    オンから選ばれる1種以上の抗菌性金属イオンとで置換
    された抗菌性ゼオライト、 (c)ピリミジントリオン誘導体、 (d)有機金属化合物、 (B)液剤として (a)エチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個含有
    する重合可能な化合物、 (b)第4級アンモニウムクロライド、 とから成る請求項1記載の歯科用樹脂組成物。
  5. 【請求項5】(A)エチレン性不飽和二重結合を少なく
    とも1個含有する重合可能な化合物、 (B)ゼオライト中のイオン交換可能なイオンの一部ま
    たは全部が、アンモニウムイオンと、銀,銅,亜鉛のイ
    オンから選ばれる1種以上の抗菌性金属イオンとで置換
    された抗菌性ゼオライト、 (C)充填材、 (D)光重合開始剤 (F)還元剤 とから成る請求項1記載の歯科用樹脂組成物。
  6. 【請求項6】抗菌性ゼオライトの配合量がメタクリル酸
    エステル重合体および/またはアクリル酸エステル重合
    体100重量部に対して0.1〜10重量部である請求項1ない
    し4中の何れか1項に記載の歯科用樹脂組成物。
  7. 【請求項7】抗菌性ゼオライトの配合量がエチレン性不
    飽和二重結合を少なくとも1個含有する重合可能な化合
    物100重量部に対して0.05〜10重量部である請求項1ま
    たは5に記載の歯科用樹脂組成物。
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