JP2510992Y2 - エアサイクル住宅における内部空間暖房用建築構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 【０００１】 【産業上の利用分野】本考案は、エアサイクル（登録商
標）住宅における建物内の部屋空間の改良された暖房建
築構造に関する。特に、居住者の健康性、建物の優れた
耐久性を提供するものである。 【０００２】 【従来の技術とその問題点】エアサイクル住宅（以下、
本件住宅という）とは、建物の外壁内側・屋根下等に断
熱壁を設け、この断熱壁と外壁内面、屋根下面等との間
隙に通気層を形成させ、壁・屋根などを通じて太陽熱を
吸収しまたは自然の通風を取り入れ、上記通気層内に生
ずる空気の圧力差（正負圧）を利用して気流の流動・停
止を制御し、建物の温度及び湿度を調整する住宅をい
う。 【０００３】ところで、従来の建物内部においては、暖
房されている部屋とされていない部屋の温度差は大き
く、また、日照側と非日照側の温度差も大きい等、同じ
建物内においても部屋の位置、暖房条件等により部屋毎
に大きな温度差が生じ、更には各部屋内部でも温度差が
生じ、居住性に大きな差を生じていた。そして、このこ
とは、吸収した太陽熱などの自然のエネルギーを利用
し、建物内の空気の流動を制御して温度・湿度の調整を
図る本件住宅においても、未だ十分な解決を見ていなか
った。その結果、北側の冷えている押し入れの壁等が湿
って結露を生じカビが発生したり、各部屋間の温度差に
より、急に暖かい部屋から冷たい部屋に入ったりしたと
きに脳卒中を起こすなど、住む人の健康を阻害してい
た。 【０００４】本考案は、これらの欠点を除くために、本
件住宅において、建物の外壁内面、屋根下面等とこれら
に対面して設けられた断熱壁との間に通気層を形成し、
断熱壁内方の建物内部に、居住空間を取り囲む床下空
間、各階間のふところ空間、小屋空間、内壁空洞、間仕
切り壁空洞等が連通されて建物外部と断熱された空間
（以下、この断熱壁内方の建物内部の床下空間、ふとこ
ろ空間、小屋空間、内壁空洞、間仕切り壁空洞等より形
成される空間を建物構造体内空間とよぶ）を形成し（通
気層と建物構造体内空間よりなる空間は建物外部と遮断
される）、通気層と建物構造体内空間を、断熱壁下部に
取り付けた逆止弁と上部に設けた出入口とによって空気
の流動を制御しつつ連通させる。同時に、建物構造体内
空間内に暖房器を設置して自然のエネルギーのみでは不
足のエネルギーを補充する。その結果、同空間の温度を
均一に上昇させて建物内の各居住空間即ち各部屋間の温
度差、更には各部屋内部での温度差をもなくすことがで
きる。そして建物の暖房機能を高めるとともに、結露、
カビ等を防ぎ、住む人の健康を守るとともに建物の耐久
性を増すためのものである。 【０００５】 【課題を解決するための手段】本考案は、上記した課題
を解決するために本件住宅において次の構成を備えた点
に特徴がある。即ち、断熱壁の下部に断熱壁内方の建物
内部から通気層への気流は通じその逆の流れは防ぐ逆止
弁を取り付ける一方、上記断熱壁の上部に空気出入口を
設ける。断熱壁内方の建物内部に、居住空間とは切り離
されて、床下空間、内壁空洞、間仕切り壁空洞、各階間
のふところ空間、小屋空間等を連通する建物構造体内空
間を形成する。これら建物構造体内空間と上記通気層を
連通させ、建物構造体内空間の一部に暖房器を設ける。
そして、この暖房器によって暖められた空気を上記建物
構造体内空間中を自然対流させると共にその一部を前記
逆止弁から通気層内に導き、この通気層内の空気を建物
外の太陽熱を吸収させて上昇させ空気出入口から前記建
物構造体内空間に戻し、かつ建物内部から外部への放熱
を、前記断熱壁と、前記逆止弁の気流遮断作用により通
気層中に滞留する空気の断熱作用とによって抑えて、建
物内の各別の居住空間及び各居住空間内部での床表面温
度、壁表面温度を均一に暖めるものである。 【０００６】 【作用】本考案においては、建物の外壁内面、屋根下面
とこれらに対面して設けられた断熱壁との間に通気層が
形成され、断熱壁内方建物内部の床下空間、各階間のふ
ところ空間、小屋空間、内壁空洞、間仕切り壁空洞等が
一連に連通されて建物外部と断熱された空間（建物構造
体内空間）が形成され、通気層と建物構造体内空間も連
通されて、居住空間を取り囲むようにして建物外部と遮
断された二重の通気空間が一部連通する状態で形成され
るという構造になっている。 【０００７】建物の日照側においては、建物外部からの
太陽熱等は吸収されて上記通気層中の上昇気流によって
建物内部に伝えられるが、非日照側においては、建物内
部の熱は断熱壁と、断熱壁に設けた逆止弁の気流遮断作
用により通気層中に滞留した空気の断熱作用によって建
物外部への放熱が抑えられる。即ち、建物外部から建物
内部へは吸熱されるが、建物内部から建物外部へは断熱
される。また、太陽熱等のみでは不足のため、床下空
間、内壁空洞、間仕切り壁空洞などに暖房器が設置さ
れ、暖房器で暖められた空気は内壁空洞、間仕切り壁空
洞などを上昇し、各階間のふところ空間、小屋空間へと
達する。他方、建物の非日照側の内壁空洞、間仕切り壁
空洞では温度が低いままであるため下降気流が生ずる
（但し、前記のように非日照側の通気層では逆止弁の気
流遮断作用により下降気流は生じない）。即ち、本考案
において、建物構造体内空間は断熱壁及び通気層の断熱
作用により建物外部と断熱され、同空間においては自然
の対流を利用して熱の配分がなされ、通気層では、自然
の上昇気流は利用して下降気流は止められる。また、冬
の夜間などにおいて建物外部の温度低下が激しい場合に
は、通気層の断熱作用にも拘らず外壁内面、屋根下面、
断熱壁などに結露するおそれがあるが、これを防ぐた
め、暖房器から供給する熱を増し建物構造体内空間、通
気層に供給する熱を多くする。 【０００８】このようにして、建物の外部より密閉され
た建物構造体内空間内の暖められた空気は、建物外部に
洩出することなく、また伝導、輻射などにより建物外部
に放熱することなく、建物内部の温度差により生ずる空
気の自然対流により、温度の低い部位へ運ばれ、他方、
冷たい下降気流は暖められて、次第に建物構造体内空間
は均一な温度に暖められる。その結果、各居住空間（部
屋）の床表面温度、壁表面温度も均一に上昇し、更には
各居住空間（部屋）内部での温度も均一に上昇する。同
時に温度上昇により相対湿度が低下し建物構造体内空間
内の木材の乾燥度が保たれる。 【０００９】 【実施例】図１は、本考案の実施例を示す縦断面図であ
る。 【００１０】この建物はエアサイクル住宅で、布基礎
面、壁面、屋根面が気密性良く外装仕上げがされてお
り、布基礎面については断熱性も良く外装仕上げがされ
ている。 【００１１】床下空間１、各階間のふところ空間４、小
屋空間５は、内壁空洞２、間仕切り壁空洞３によって連
通されて断熱空間（建物構造体内空間）を形成する。床
下空間１には暖房器６が設置されている。暖房器６は、
建物構造体内空間内であればどこに設置しても良いが、
通常は床下空間１の他、内壁空洞２、間仕切り壁空洞３
に設置される。 【００１２】暖房器６は、図示しないが放熱用の温水パ
イプを床下空間に張りめぐらしたものであってもよい。
温水パイプは熱伝導率の良い材料、例えば銅、アルミニ
ウム、ステンレス等で構成される。温水パイプは、建物
構造体内空間内であればどこに設置しても良い。温水ボ
イラーの熱源はガス・電気・石油等いずれであっても良
い。このように、暖房器は、熱を供給できるものであれ
ば、種類・方式・形状・大きさ等にこだわるものではな
い。 【００１３】また、建物の外壁内面、屋根下面等に、通
気層９をはさんで対面する断熱壁１６が設けられ、通気
層９は、床下空間１、内壁空洞２、各階間のふところ空
間４、小屋空間５等と連通し、断熱壁１６の下部には、
建物構造体内空間から通気層９への気流は通じその逆の
流れは防ぐ（従って通気層９内の下降気流を阻止し上昇
気流は通過させる）逆止弁１０が取り付けられ、断熱壁
１６の上部には、上昇気流を速やかに建物構造体内空間
に取り入れるとともに取り入れ口での冷却を防ぐため断
熱材で形成された空気出入口１１が設けられている。本
件住宅においては、太陽熱が屋根、壁にあたると通気層
９内の空気は暖められて温度上昇し、上昇気流となって
空気出入口１１から建物構造体内空間に流入し、逆止弁
１０から建物構造体内空間の空気が通気層９に取り入れ
られ、流入した空気は同通気層内で暖められて再び空気
出入口１１から建物構造体内空間に入る。他方、温度の
低い内壁空洞２、間仕切り壁空洞３には、温度の低い下
降気流が流れ込む。このように、建物構造体内空間と通
気層９間に一連の空気の自然対流運動が生じ建物内部が
均一な温度に暖められる。図中矢印は、上記の空気の流
れを示す。 【００１４】冬期には、床下用換気口１２、小屋用換気
口１３は閉じられているが、夏期にはこれらは開放さ
れ、自然の通風が取り入れられて、通気層及び建物構造
体内空間の熱気及び湿気を放出する。 【００１５】また、暖房器６によって暖められた空気は
上昇し、温度が低い部分では冷たい下降気流となり、建
物構造体内空間に自然対流が生ずる。この対流は、上記
した本件住宅における太陽熱等による対流現象とあいま
って効率良く建物全体を暖める。例えば、外気温が０℃
程度のとき、本件住宅でない一般住宅での建物内の温度
が４℃位とすると、本件住宅ではこれが８℃〜１０℃と
できるため、わずかな熱源を加えることにより自然対流
を強め、有効なものとすることができる。暖房器６によ
って暖められた空気は、通気層９に流入したときに太陽
熱によって暖められ、あるいはその温度低下が防止され
るので循環が早められる。そして、次第に連通した構造
体内空間が均一に温度上昇し、その結果、別の部屋８の
床面、壁面、天井面、更には各部屋内部が均一に温度上
昇する。 【００１６】更に、冬の夜間など太陽熱を利用できない
場合に、暖房器６を稼動しておくことにより、建物構造
体内空間と通気層とに暖気が循環し、建物全体の均一な
加温が行われる。ちなみに本考案を適用しない本件住宅
では、太陽熱、地熱、生活熱等を利用しているが、これ
ら自然のエネルギーのみでは、例えば関東地方における
冬の明け方の最低気温を７℃から１０℃に保つことが限
度である。これに対し、本考案を適用した本件住宅にお
いては、日中のみ暖房器６を稼働し、夜間は止めた場合
に、各部屋８の全ての床表面温度、壁表面温度を均一に
１３℃から１５℃程度に保つことができ、夜間にも暖房
器６を稼働した場合には、容易に１８℃〜２０℃とする
ことができた。このように、本考案によって、温度差の
ない快適健康な居住空間と結露、カビの発生を抑え耐久
力のある建物を提供することができる。 【００１７】本考案は、住宅の他に、事務所、倉庫その
他の建物に用いることができる。 【００１８】 【考案の効果】以上に述べたように本考案によれば、建
物外部から太陽熱等の自然のエネルギーが通気層内の空
気に吸収され、これが断熱壁上部の出入口から、居住空
間と切り離されてその周囲を取り囲む建物構造体内空間
に採り入れられ、同時に建物構造体内空間に設けられた
暖房器によって熱量が補充される。しかも、建物構造体
内空間が建物外部から断熱され、通気層内を下降する気
流も逆止弁によって建物構造空間内への流入が阻止され
るため、建物内部から建物外部への放熱が抑えられると
共に同空間内に生ずる効率的な自然対流によって上記空
間が均一に温度上昇する。そして、同空間によって取り
囲まれた各居住空間（部屋）の床表面温度、壁表面温度
を均一に上昇させることができ、更には居住空間（部
屋）内部の温度も均一に上昇させることができる。その
結果、エネルギーを無駄にすることなく、快適で健康を
守る居住空間が提供される。 【００１９】また、建物構造体内空間の温度上昇によ
り、相対湿度が低下し、木材の乾燥度が保たれるととも
に内部結露を抑え、木材の腐敗を防ぐことができる。そ
して、壁表面温度も上昇するため、表面結露が抑えられ
る他、カビの発生を防ぐことができる。 【００２０】冬の日中、夜間などの建物外部の温度など
に応じて暖房器の熱量を調節し、自然対流の強度を調整
することにより、前記のように建物構造体内空間の自然
対流の強度を調整して各部屋の温度上昇の均一化を図る
と同時に、通気層へ流入する暖気を制御できるので、外
壁内面、屋根下面、断熱壁などに結露が生ずることを防
ぐことができる。 【００２１】このように、本考案は、快適で健康を守る
居住空間を提供するとともに、建物の耐久性の向上に優
れた効果をもたらすものである。また、エネルギーの節
約を図ることができ、施工が容易で、コストも低廉であ
る。 【００２２】本考案を事務所に用いた場合には、住宅の
場合と同様に快適な事務空間、建物の優れた耐久性が得
られ、倉庫に用いた場合には、温度の均一化、湿度の除
去により、貯蔵品の品質を守ることができる。

【図面の簡単な説明】 【図１】本考案の実施例を示す縦断面図である。 【符号の説明】 １ 床下空間 ２ 内壁空洞 ３ 間仕切り壁空洞 ４ 各階間のふところ空間 ５ 小屋空間 ６ 暖房器 ８ 部屋 ９ 通気層 １０ 逆止弁 １１ 空気出入口 １２ 床下用換気口 １３ 小屋用換気口 １６ 断熱壁

Claims (1)

1. (57)【実用新案登録請求の範囲】 建物外壁内側と屋根下に所要の間隔を置いて断熱壁を設
   け、断熱壁と上記建物外壁等との間に気流の流動可能な
   通気層を形成し、この通気層内の空気に建物外壁及び屋
   根を通じて建物外部から太陽熱エネルギーを吸収させ、
   あるいは通気層内に自然の通風を採り入れ、通気層内の
   気流の流動と停止を制御することによって建物の温度と
   湿度を調整するエアサイクル住宅において、 上記断熱壁の下部に断熱壁内方の建物内部から通気層へ
   の気流は通じその逆の流れは防ぐ逆止弁を取り付ける一
   方、上記断熱壁の上部に空気出入口を設け、 上記断熱壁内方の建物内部に、居住空間とは切り離され
   て、床下空間、内壁空洞、間仕切り壁空洞、各階間のふ
   ところ空間、小屋空間等を連通する建物構造体内空間を
   形成し、 この建物構造体内空間と上記通気層を連通させ、 また、建物構造体内空間の一部に暖房器を設け、 この暖房器によって暖められた空気を上記建物構造体内
   空間中を自然対流させると共にその一部を前記逆止弁か
   ら通気層内に導き、この通気層内の空気を建物外の太陽
   熱を吸収させて上昇させ空気出入口から前記建物構造体
   内空間に戻し、かつ建物内部から外部への放熱を、前記
   断熱壁と、前記逆止弁の気流遮断作用により通気層中に
   滞留する空気の断熱作用とによって抑えて、建物内の各
   別の居住空間及び各居住空間内部での床表面温度、壁表
   面温度を均一に暖める、 ことを特徴とするエアサイクル住宅における内部空間暖
   房用建築構造。