JP2510611B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はポリアセタール樹脂とポリスチレン樹脂から
なる機械的物性が高く、そり、変形も少なく表面層剥離
等の成形品外観上の問題もなく、かつ経済性にも優れた
成形材料として有用な熱可塑性樹脂組成物に関するもの
である。
〔従来の技術とその問題点〕
ポリアセタール樹脂は成形性に優れ、かつバランスの
とれた機械的性質、電気的性質、耐熱性、耐薬品性、摩
擦摩耗特性等を有し、さらにプラスチック材料としては
卓越した耐疲労性を有するが故に、代表的なエンジニア
リング樹脂として極めて広汎な分野において利用されて
いる。そして、この様な利用分野の拡大に伴い、樹脂に
対する要求性能は益々高度化する傾向にあり、かかる要
求に応えるための1手法として、ポリアセタール樹脂に
種々の他樹脂を配合するいわゆるポリマーブレンドが数
多く試みられている。
例えば、ポリアセタール樹脂のポリマーブレンドとし
て、ポリエチレン(特公昭41−2730号公報)、ポリプロ
ピレン(特公昭42−19498号公報)、ポリカーボネート
(特公昭39−12463号公報)、ポリウレタン(特開昭59
−145243号公報)等が知られている。
しかしながら、ポリアセタール樹脂に他樹脂を混合し
て緻密な表層構造を得ることは極めて困難であり、ポリ
ウレタンのような極く少数の例を除いては、表面性状の
優れたポリアセタールを主成分とするポリマーブレンド
は得られない。特にポリエチレン、ポリプロピレン等の
ポリオレフィン樹脂のような極性基を持たない樹脂を混
合した場合、成形品表層の層分離模様及び表層剥離現象
が著しく、製品としての外見も悪く、性能上も使用に耐
えず実用上の価値は極めて低い。
また、ポリアセタール樹脂とポリスチレン樹脂のブレ
ンドについての提案もあるが(特公昭44−946号公
報)、これは織状物を対象としたものであり、本発明者
らの検討によれば、この記載によって得られるポリマー
混合物もポリオレフィン混合の場合と同様、成形に用い
た場合には層分離、層剥離現象が強く現れ、実用的価値
のないものである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者らは、ポリアセタール樹脂と、他樹脂のポリ
マーブレンドに伴う上記の如き成形品の表層剥離等の問
題がなく、剛性が高く、そり、変形が小さく寸法安定性
の良い組成物を経済的に得ることを目的として鋭意検討
を重ねた結果、ポリアセタール樹脂の剛性の向上、そ
り、変形の防止のためには特定のポリスチレン樹脂の配
合が有効であること、又ポリアセタール樹脂とポリスチ
レン樹脂のメルトフロー値の比が特定の範囲となる組上
わせを選択すれば緻密な分散が可能となり、成形品の表
層剥離等の外観上の問題もなく、優れた成形品が得られ
る事を見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、 ポリアセタール樹脂とポリスチレン樹脂からなる組成
物において、メルトフロー値の比が下記(1)式を満足
するポリアセタール樹脂とポリスチレン樹脂の組合わせ
よりなる事を特徴とする熱可塑性樹脂組成物に関するも
のである。
MFR(POM)/MFR(PS)=5/1〜100/1 (1) 〔但し、MFR(POM)はASTM D−1238により測定した190
℃、2160gの荷重下におけるポリアセタール樹脂のメル
トフロー値、MFR(PS)は同法による200℃、5000gの荷
重下におけるポリスチレン樹脂のメルトフロー値を示
す。〕 本発明におけるポリアセタール樹脂としては、ポリア
セタールホモポリマー及び主鎖の大部分がオキシメチレ
ン連鎖よりなるポリアセタールコポリマーのいずれも使
用できる。また、ポリアセタールを公知の方法で架橋或
いはグラフト共重合して変性したものも基体樹脂として
使用でき、本発明の効果は発揮される。
次に本発明において用いられるポリスチレン樹脂とは
公知の如く、スチレンのラジカル重合反応、或いはイオ
ン重合反応により得られるものであり、工業的には塊状
重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等により得られる
ものがいずれも使用できる。
また本発明のポリスチレン樹脂は、その性質を大巾に
損なわない範囲で、耐衝撃性等の物性を改良するため、
スチレンを主体とし、その他ジエン系化合物、ビニル化
合物等の反応性モノマーを少量共重合するか、ゴム成分
を配合したものであってもよい。
本発明において、斯かるポリアセタール樹脂及びポリ
スチレン樹脂は、メルトフロー値以外は何ら制限される
ものではない。
即ち、本発明は、ポリアセタール樹脂とポリスチレン
樹脂からなる組成物を調製するに当たり、190℃、2160
g、荷重下におけるポリアセタール樹脂のメルトフロー
値〔MFR(POM)〕と200℃、5000g荷重下でのポリスチレ
ン樹脂のメルトフロー値〔MFR(PS)〕が5/1〜100/1と
なる様な、ポリアセタール樹脂及びポリスチレン樹脂の
組合わせを選択することを唯一の必須要件とするもので
ある。
MFR(POM)/MFR(PS)が5/1より小さくなる様な組合
わせを選択したのでは、成形品表層の剥離現象が発生す
るため好ましくない。斯かる現象が発生する理由につい
ては必ずしも明確ではないが、本発明者は次の様に推測
するものである。まず、押出しによりポリアセタール中
にポリスチレン粒子が微細化して分散し、これが成形時
に表面層に出て成形時の剪断力によって薄片状に分散
し、表面近傍のいわゆる海−島構造を乱し、スチレンの
薄層を形成する。この様子は電子顕微鏡による成形片断
面の観察により確認することができる。ところがポリア
セタール樹脂とポリスチレン樹脂とは、本質的に相溶性
に乏しく、混合状態での樹脂間界面の接着力は弱い。こ
の結果、成形品表層では両樹脂の界面接着性の弱さから
表層剥離現象が起こる。
これに対して本発明に規定する如く、MFR(POM)/MFR
(PS)を5/1以上とすると、ポリスチレン樹脂の流動性
がポリアセタールの流動性に比べ著しく低くなるため、
ポリスチレンは比較的大きい粒径となって分散する。こ
れを射出成形すると流動性の差から、成形片表層はポリ
アセタール樹脂で覆われポリスチレンは表層に出ず、内
部に比較的大きい粒径で分散する。この様子は成形片断
面の電子顕微鏡による観察で確認できる。この結果、成
形片全体に比較的緻密な海−島構造が形成され、かつ表
層部はポリアセタール樹脂に覆われるため表層剥離は起
こらない。
一方、MFR(POM)/MFR(PS)を100/1より大きくする
ためには、通常、工業的に使用されるポリアセタール樹
脂のMFRの最大値が50程度であることから、MFR(PS)が
0.5より小さいもの、即ち流動性が極めて低いポリスチ
レン樹脂を用いる必要があり、このため溶融混練が極め
て難しいものとなる。
よって本発明はMFR(POM)/MFR(PS)=5/1〜100/1を
必須とするものであり、好ましくは10/1〜50/1の組合わ
せである。
本発明においては、ポリアセタール樹脂とポリスチレ
ン樹脂の配合量は、特に限定されるものではないが、ポ
リスチレンの量が微少では、剛性の向上、そり、変形防
止の効果が小さく、又、過大になるとポリスチレン樹脂
の分散状態が変化して、海−島構造が崩れ、表層剥離が
起こり易くなり、さらにポリアセタール樹脂の優れた特
性が失われ、ポリスチレン樹脂の性質が強く出る様にな
る。
よって好ましい配合量は、ポリアセタール樹脂99.5〜
50.5重量%に対し、ポリスチレン樹脂0.5〜49.5重量%
であり、より好ましくはポリアセタール樹脂99〜60重量
%に対し、ポリスチレン樹脂1〜40重量%である。
本発明の樹脂組成物には公知の酸化防止剤、耐熱安定
剤等の添加剤を配合、併用するのが好ましい。この目的
で使用される物質としては、ヒンダードフェノール類、
ヒンダードアミン類、尿素、メラミン、ジシアンジアミ
ド又はこれらの誘導体の如きアミジン化合物、ポリアミ
ド、有機酸塩等が挙げられる。これ等の酸化防止剤、耐
熱安定剤はそれぞれ単独で用いても、2種以上を混合し
て用いてもよい。
また本発明の組成物には、目的に応じて一般の熱可塑
性樹脂に添加される公知の物質を更に添加併用すること
ができる。例えば、耐光、耐候等のための各種安定剤、
滑剤、離型剤、可塑剤、核剤、帯電防止剤、界面活性
剤、潤滑剤、染料、顔料等、或いは長短ガラス繊維、炭
素繊維、金属繊維、ボロン繊維、チタン酸カリウム、セ
ラミック、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラス粉、
マイカ、タルク、クレー、カーボンブラック、高分散性
ケイ酸塩、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシ
ウム、硫酸カルシウム、石英粉、ケイ砂、ウォラストナ
イト、各種金属粉、金属箔、炭化ケイ素、ボロンナイト
ライド、窒化ケイ素、金属酸化物等の繊維状、板状、粒
状、粉状の無機化合物、ウィスカーや金属ウィスカー等
が含まれる。
さらに本発明の組成物には、本発明の目的を阻害しな
い範囲で、少量の他の有機高分子物質、例えばポリウレ
タン樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体、エチレン−アルキルアクリレート共重合
体の如きオレフィン系単独重合体又は共重合体、スチレ
ン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン
−アクリロニトリル共重合体等のビニル系化合物及びそ
の共重合体、ポリアクリレート系樹脂、フッ素樹脂、ポ
リアミド樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性ポリマー
を補助的にブレンドすることもできる。
本発明の樹脂組成物は、一般に熱可塑性樹脂組成物の
調製に用いられる設備と方法により調製することが出来
る。即ち必要な成分を混合し、一軸又は2軸の押出機を
使用して混練し、押出して成形用ペレットとすることが
出来、必要成分の一部を予めマスターバッチとして調製
し、これを混合、成形する方法、又各成分の分散混合を
よくするため使用ポリマーの一部又は全部を粉砕して微
粉末とし、混合溶融押出すること等、何れも可能であ
る。
〔実施例〕
次に、本発明を実施例によって更に詳細に説明する
が、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜5 第1表の如く、メルトフロー値の異なる各種のポリア
セタール樹脂及びポリスチレン樹脂を用い、ポリアセタ
ール樹脂とポリスチレン樹脂のメルトフロー値の比が本
発明の範囲内となる様な組合わせで、かつ第1表に示す
割合で混合し、2軸押出機により約200℃にて溶融混練
し、ペレット状の組成物を調製した。
このペレットを90℃、4時間乾燥後、射出成形により
試験片を作製し、下記の物性評価を行った。
曲げ試験:1/4インチの厚みの試験片を用い、ASTM D−79
0により曲げ弾性率、曲げ強度を測定した。
表面剥離試験:曲げ試験片表面に粘着テープを貼りつ
け、これを瞬間的に引き剥がし、成形片の表面剥離の有
無を目視で判定した。
摩耗試験:鈴木式摩擦摩耗試験機により鋼S55Cに対する
比摩耗量を測定した。
収縮率:ASTM引張試験片を成形した時の収縮率を測定し
た。
変形率:第1図の箱型成形品を成形した時の内ぞりを測
定し、変形率を求めた。
〔但し、A1及びA0は実際の箱型成形品の開口部における
A方向の最小値(最も内に反った部分の寸法)及び最大
値(通常は端の部分の寸法)を示す〕 これらの結果を第1表に示した。
比較例1〜5 ポリアセタール樹脂とポリスチレン樹脂のメルトフロ
ー値の比が本発明の範囲外となる様な組合わせとした以
外は、実施例1〜5と同様の方法で組成物を調製し、成
形して評価した。又、ポリスチレン樹脂を配合しないポ
リアセタール樹脂についても同様にして評価した。結果
を第1表に併記した。
〔発明の効果〕 以上の説明から明らかなように、ポリアセタール樹脂
のMFR(190℃,2160g荷重)とポリスチレン樹脂のMFR(2
00℃,5000g荷重)の比が特定の範囲の組合わせからなる
本発明の組成物は、ポリアセタール樹脂の優れた諸特性
を損なうことなく剛性が向上し、変形が抑制され、しか
も成形品の表面外観が良好で、表層剥離を起こすといっ
た問題もないものであって、極めて実用性の高いもので
ある。
また、本発明の組成物は、経済的に最も有利な樹脂の
一つであるポリスチレン樹脂をポリアセタール樹脂にブ
レンドしたものであり、ポリアセタール単独に比し経済
性にも優れた樹脂組成物を提供することができるという
利点も有する。
【図面の簡単な説明】
第1図は変形の評価に用いた箱型成形品の金型形状を示
す斜視図である。図中A,B,Cの寸法は、各々15mm、40m
m、30mmであり、箱の肉厚は1mmである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリアセタール樹脂とポリスチレン樹脂か
    らなる組成物において、メルトフロー値の比が下記
    (1)式を満足するポリアセタール樹脂とポリスチレン
    樹脂の組合わせよりなる事を特徴とする熱可塑性樹脂組
    成物。 MFR(POM)/MFR(PS)=5/1〜100/1 (1) 〔但し、MFR(POM)はASTM D−1238により測定した190
    ℃、2160gの荷重下におけるポリアセタール樹脂のメル
    トフロー値、MFR(PS)は同法による200℃、5000gの荷
    重下におけるポリスチレン樹脂のメルトフロー値を示
    す。〕
  2. 【請求項2】ポリアセタール樹脂99.5〜50.5重量%と、
    ポリスチレン樹脂0.5〜49.5重量%からなる特許請求の
    範囲第1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
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