JP2509069B2 - 家具用蝶番 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、家具用蝶番に関する。
さらに詳しくは、納入先で組上げられるノックダウン方
式の家具等に使用され、家具本体の側板に扉を簡単な作
業で取付けることができるようにした家具用蝶番におい
て、その扉側への装着性に係る改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、家具用蝶番としては、例えば、実
開平２−１１８０７６号公報に記載のものが知られてい
る。

【０００３】この従来の家具用蝶番は、扉に固定された
カップケースとこれに嵌合装着されるカップ型取付部材
とからなり、カップケースとカップ型取付部材との嵌合
側面に嵌合により係合される係合溝，弾性係合爪で構成
された係合部を設けてなるもので、家具等の納入先にお
いてカップケース，カップ型取付部材の嵌合というワン
タッチ作業で扉側への装着を完了することができるよう
にしたものである。また、この従来の家具用蝶番による
と、家具等の納入先までは扉にカップケースのみが取付
け固定されているのみで扉から突出した部分が設けられ
ていないことになるため、扉の梱包，搬送を容易にする
と共に、蝶番各部の損傷を防止することができるという
利点がある。

【０００４】なお、このような従来の家具用蝶番では、
通常、カップ型取付部材にリンク部材を介して家具本体
の側板側に固定される取付部材が連結されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前述の従来の家具用蝶
番では、カップケースとカップ型取付部材との嵌合がカ
ップケースとカップ型取付部材との嵌合側面に工作され
た係合溝と弾性係合爪とで構成された係合部の係合によ
って保持されているため、工作精度等の関係から扉側へ
緊密に装着され難いという傾向がある。このため、扉の
開閉の際にカップケースとカップ型取付部材との嵌合が
ガタ付いて、扉の開閉精度が得られなかったり、異音が
発生したり、カップケース，カップ型取付部材の摩耗，
亀裂等の損傷で長期使用が不能になる等という問題点が
ある。

【０００６】本発明は、このような問題点を考慮してな
されたもので、扉側への装着の緊密性の高い家具用蝶番
を提供することを課題とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するた
め、本発明に係る家具用蝶番は、次のような手段を採用
する。

【０００８】請求項１では、扉に固定されたカップケー
スとこれに嵌合装着されるカップ型取付部材とからな
り、カップケースとカップ型取付部材とに嵌合により係
合される係合部を設けてなる家具用蝶番において、カッ
プケースとカップ型取付部材との嵌合側面と嵌合底面と
に連続して相対して設けられた係合溝と、カップケース
とカップ型取付部材とは別個に形成されこれ等の係合溝
の双方に係合するコ字形の板バネからなる係合バネ部材
とにより前記係合部を構成したことを特徴とする。

【０００９】

【作用】請求項１では、カップケース，カップ型取付部
材の嵌合が係合した別部材の係合バネ部材の弾性によっ
て保持され、カップケース，カップ型取付部材の工作精
度を弾性保持により補完して全体の係合保持力を高め
る。特に、コ字形の板バネが嵌合側面と嵌合底面の係合
溝に収容されて弾性力を発揮するために、扉側への装着
の緊密性の高い家具用蝶番を提供するという課題が解決
される。

【００１０】

【実施例】以下、本発明に係る家具用蝶番の実施例を図
面に基いて説明する。

【００１１】この実施例では、図１に示されるように、
扉Ｄ側に固定される部分であるカップ型取付部材１が、
リンクプレート２を介して家具本体の側板（図示せず）
側に固定される部分であるフレーム型取付部材３に回動
可能に連結されたものを示してある。

【００１２】このカップ型取付部材１は、平面形状が略
小判形のカップ形に形成されてなるもので、外周面が後
述のカップケース４に嵌合する嵌合側面１１となり、外
底面が同じく嵌合底面１２となっている。これ等の嵌合
側面１１，嵌合底面１２が突き合わされた角部１３は、
カップケース４への嵌合を容易にするためにアール形に
角取りされている。

【００１３】このようなカップ型取付部材１の嵌合側面
１１，嵌合底面１２には、係合溝１４が設けられてい
る。この係合溝１４は、嵌合側面１１，嵌合底面１２に
掘り込まれたような構造からなるもので、嵌合底面１２
の前記フレーム型取付部材３と直交する方向へ長方形状
に掘り込まれた係合底溝１４ａと、係合底溝１４ａに連
続して両嵌合側面１１に対称的に凸字形に掘り込まれた
係合側溝１４ｂと、係合側溝１４ｂの略中央部に夫々略
円山形に掘り残された係合円溝１４ｃとからなる。な
お、係合溝１４の係合円溝１４ｃは、嵌合側面１１より
も僅かに外側に突出し、その上面部１４ｃ’が後述の係
合バネ部材５の撓み支点Ｐを中心とする円弧形に形成さ
れている（図１０参照）。

【００１４】カップ型取付部材１が嵌合されるカップケ
ース４は、カップ型取付部材１が嵌合収納されるカップ
部４１と、カップ部４１の上縁の外側に翼形に一体形成
されたフランジ部４２とからなる。

【００１５】カップ部４１は、扉Ｄに穿設されたカップ
穴Ｈに嵌合されるカップ形に形成されてなるもので、内
周面がカップ型取付部材１の嵌合する嵌合側面４１１と
なり、内底面が同じく嵌合底面４１２となっている。こ
れ等の嵌合側面４１１，嵌合底面４１２の嵌合されたカ
ップ型取付部材１の係合溝１４に相対する位置には、対
応して係合溝４１３が設けられている。なお、この係合
溝４１３は、カップ型取付部材１の係合溝１４と同様に
係合底溝４１３ａ，係合側溝４１３ｂを備えているが、
係合円溝１４ｃに相当するものを備えていない。また、
この係合溝４１３の係合側溝４１３ｂは、凸字形の頂部
が上方へ向けて広がるテーパ面４１３ｂ’となってお
り、凸字形の肩部が内側（嵌合側面４１１側）から外側
へ下降傾斜したテーパ面４１３ｂ”となっている。さら
に、このカップ部４１の前記リンクプレート２，フレー
ム型取付部材３側の側面の一部は、切除されて切欠部４
１４が設けられている。

【００１６】フランジ部４２は、扉Ｄのカップ穴Ｈの周
囲の取付け面に当接するような板形に形成されてなるも
ので、両端部にビス等の取付け孔４２１が設けられ、カ
ップ部４１の係合溝４１３の係合側溝４１３ｂのテーパ
面４１３’に連通して人間の指先が挿入可能な窪み４２
２が設けられている。

【００１７】このようなカップ型取付部材１，カップケ
ース４を係合させる係合バネ部材５は、カップ型取付部
材１の係合溝１４，カップケース４のカップ部４１の係
合溝４１３に収容可能な略コ字形に形成され、前記係合
底溝１４ａ，４１３ａに対応した長方形の底部５１と、
前記係合側溝１４ｂ，４１３ｂに対応した凸字形の側部
５２と、前記係合円溝１４ｃに対応した円形の孔部５３
とを備えている。なお、この係合バネ部材５のコ字形
は、弾性を有して僅かに拡開されている。

【００１８】以上のようなカップ型取付部材１の係合溝
１４，カップケース４のカップ部４１の係合溝４１３，
係合バネ部材５により、カップ型取付部材１，カップケ
ース４の嵌合による係合部ａが形成されることになる。

【００１９】このような実施例によると、扉Ｄに対して
は、製造工場等で予めカップケース４のみを取付け固定
しておくことになる。従って、前述の従来例と同様に、
扉Ｄには突出した部分が設けられていないことになるた
め、扉Ｄの梱包，搬送が容易で蝶番各部の損傷を防止す
ることができるという利点が損なわれることはない。な
お、このカップケース４については、ダボ付きネジ等で
ワンタッチで扉Ｄに取付けることができるようにして、
家具等の納入先で取付けるようにすることも可能であ
る。

【００２０】そして、前述の従来例と同様に、ワンタッ
チでカップケース４のカップ部４１にカップ型取付部材
１を嵌合装着することになる。即ち、図２，図３に示す
ように、カップ型取付部材１の係合溝１４に係合バネ部
材５を仮係合させ（予め仮係合して納入することも可
能）、カップケース４のカップ部４１に対してカップ型
取付部材１，係合バネ部材５を正対させてから、図４，
図５に示すように、そのままカップ型取付部材１，係合
バネ部材５をカップ部４１に押し込む。

【００２１】このカップ型取付部材１，係合バネ部材５
の押し込みでは、係合バネ部材５の側部５２がカップ部
４１の嵌合側面４１１に押されてカップ型取付部材１の
係合溝１４の係合側部１４ｂに収容されてしまうため
（図４参照）、円滑に動作することになる。そして、カ
ップ型取付部材１，係合バネ部材５の押し込みがさらに
進行すると、前記側部５２がカップ部４１の係合溝４１
３の係合側溝４１３ｂに対面して前記嵌合側面４１１に
押されなくなるため、図６，図７に示すように前記側部
５２がその弾性により前記嵌合側溝４１３ｂに確実に係
合することになる。このとき、カップ型取付部材１の係
合溝１４の係合円溝１４ｃの上面部１４ｃ’が係合バネ
部材５の撓み支点Ｐを中心とする円弧形に形成され係合
バネ部材５の孔部５３と衝突しないようになっているこ
とから、前記側部５２の移動が円滑に行われる。

【００２２】なお、係合バネ部材５の底部５１は、カッ
プ型取付部材１の係合溝１４の係合底溝１４ａとカップ
ケース４のカップ部４１の係合溝４１３の係合底溝４１
３ａとに係合し、係合バネ部材５の孔部５３は、カップ
型取付部材１の係合溝１４の係合円溝１４ｃに係合して
いる。このように係合バネ部材５がカップ型取付部材１
の係合溝１４，カップケース４のカップ部４１の係合溝
４１３に収容されるような係合となることは、カップ型
取付部材１，カップケース４とは別部材である係合バネ
部材５によるカップ型取付部材１，カップケース４間の
無用の隙間，遊びの形成が防止される。

【００２３】このように嵌合された状態では、カップ型
取付部材１，カップケース４とは別部材の係合バネ部材
５を介してカップ型取付部材１，カップケース４の嵌合
装着が弾性により押圧保持されることになることから、
カップ型取付部材１，カップケース４の工作精度に誤差
があっても押圧により誤差が吸収されて全体の係合保持
力が高められるため、扉Ｄ側への装着の緊密性が高くな
る。特に、カップケース４のカップ部４１の係合溝４１
３の係合側溝４１３ｂの頂部のテーパ面４１３ｂ’で係
合バネ部材５の側部５２が傾斜保持され、同じく肩部の
テーパ面４１３ｂ”で前記側部５２をカップケース４の
カップ部４１の嵌合底面４１２側へ押圧するため（図９
参照）、前述の装着の緊密性がより高められることにな
る。さらに、図８に示すように、係合バネ部材５の底部
５１がカップ型取付部材１の係合溝１４の係合底溝１４
ａとカップケース４のカップ部４１の係合溝４１３の係
合底溝４１３ａとにアリ溝構造により係合しているた
め、カップ型取付部材１，カップケース４の間のズレが
確実に防止される。

【００２４】この結果、扉Ｄの開閉の際にカップ型取付
部材１，カップケース４の嵌合がガタ付いて、扉の開閉
精度が得られずに扉Ｄが家具本体の側板に衝突したり挟
み込まれてしまったり、軋み等の異音が発生したり、カ
ップ型取付部材１，カップケース４の摩耗，亀裂等の損
傷で長期使用が不能になる等ということがなくなる。ま
た、カップ型取付部材１，カップケース４に比して係合
バネ部材５の耐摩耗性を低く設定して、小さな部材であ
る係合バネ部材５を消耗交換部品とすることで、カップ
型取付部材１，カップケース４を摩耗させずにさらに長
期使用が可能になる。

【００２５】なお、カップ型取付部材１をカップケース
４から取り外すには、カップケース４のフランジ部４２
の窪み４２２に指先を挿入し、係合バネ部材５の側部５
２の上端を押し狭めるようにして、カップ型取付部材１
をカップケース４のカップ部４１から引き抜くようにす
ればよい。

【００２６】なお、以上の実施例においては、係合バネ
部材５をカップケース４のカップ部４１の係合溝４１３
に仮係合させておくことも可能である。また、カップケ
ース４のカップ部４１の切欠部４１４を利用して、カッ
プ型取付部材１をカップケース４のカップ部４１の斜め
方向から着脱することも可能である。この斜め方向から
の着脱は、正対させる場合に比し位置決めが容易で嵌合
装着の作業性が良好になる。

【００２７】さらに、カップ型取付部材１に連結される
リンクプレート２，フレーム型取付部材３等を他の構造
とする実施例も可能である。

【００２８】

【発明の効果】以上のように本発明に係る家具用蝶番
は、カップケース，カップ型取付部材の嵌合が係合した
別部材の係合バネ部材の弾性によって保持され、カップ
ケース，カップ型取付部材の工作精度を弾性保持により
補完して全体の係合保持力を高めるため、扉側への装着
の緊密性が高くなる効果がある。また、この効果によ
り、扉の開閉の際のガタ付きによって、扉の開閉精度が
得られなかったり、異音が発生したり、カップケース，
カップ型取付部材の摩耗，亀裂等の損傷で長期使用が不
能になるということが防止される効果が生ずる。

【００２９】また、納入先まで扉には突出した部分が設
けられないため、扉の梱包，搬送が容易で蝶番各部の損
傷を防止することができるという従来例の利点が損なわ
れることがない効果がある。

【００３０】さらに、係合バネ部材を板バネの消耗交換
部品とすることでより長期の使用が可能になる効果があ
る。特に、コ字形の板バネがカップ型取付部材，カップ
ケースの連続する係合溝に収容され、カップ型取付部
材，カップケース間に無用の隙間，遊びを形成すること
がないため、扉側への装着の緊密性が極めて高くなる効
果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る家具用蝶番の実施例を示す非装着
状態の斜視図である。

【図２】図１の装着動作を示すもので、装着動作の初動
状態の要部の断面図である。

【図３】図２の縦断面図である

【図４】図２に続く装着動作状態を示す要部の断面図で
ある。

【図５】図４の縦断面図である。

【図６】図４に続く装着動作状態で、装着完了状態を示
す要部の断面図である。

【図７】図６の縦断面図である。

【図８】図７のＡ部の拡大図である。

【図９】図７のＢ−Ｂ線拡大断面図である。

【図１０】図６のＣ部の拡大図である。

【符号の説明】

１ カップ型取付部材 １１ 嵌合側面 １２ 嵌合底面 １４ 係合溝 ４ カップケース ４１ カップ部 ４１１ 嵌合側面 ４１２ 嵌合底面 ４１３ 係合爪 ５ 係合バネ部材 ａ 係合部 Ｄ 扉

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 扉に固定されたカップケースとこれに嵌
   合装着されるカップ型取付部材とからなり、カップケー
   スとカップ型取付部材とに嵌合により係合される係合部
   を設けてなる家具用蝶番において、カップケースとカッ
   プ型取付部材との嵌合側面と嵌合底面とに連続して相対
   して設けられた係合溝と、カップケースとカップ型取付
   部材とは別個に形成されこれ等の係合溝の双方に係合す
   るコ字形の板バネからなる係合バネ部材とにより前記係
   合部を構成したことを特徴とする家具用蝶番。