JP2508854B2 - 多導体用低風音電線 - Google Patents

多導体用低風音電線

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JP2508854B2 JP1228795A JP22879589A JP2508854B2 JP 2508854 B2 JP2508854 B2 JP 2508854B2 JP 1228795 A JP1228795 A JP 1228795A JP 22879589 A JP22879589 A JP 22879589A JP 2508854 B2 JP2508854 B2 JP 2508854B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、スパイラルロッド等の別部材を巻回するこ
となく、電線外周の構成を特定な範囲に選定することに
より風騒音や風圧あるいはコロナ騒音(以下ANという)
の発生等を低減し得る低風音電線に関し、とくに多導体
送電線における特有の風騒音発生のメカニズムに適確に
対応して当該風騒音を低減しまたANをも低減し得る多導
体用低風音電線に関するものである。
[従来の技術] 風圧によって電線から発生する風騒音を低減させ得る
低風音電線として出願人らによって初めて提案され効果
の実証された電線の構成は、第6図に示すように電線30
の外周に1本又は複数本のスパイラルロッド31を巻回す
るものである。
しかし、このスパイラルロッド巻回方式の低騒音電線
は、架線後にスパイラルロッドを巻回する面倒な工事が
必要であり、また電線の投影面積が増大するために風圧
荷重が増加しまた電線重量も増加するために鉄塔補強が
必要になり、また自重の増大した分について弛度調整が
必要となるなど、付帯工事が随伴してくる面倒がある。
そこで、出願人は先に、第4図に示すように、電線の
最外層撚線層を、断面ほぼ扇形よりなりかつ電線半径方
向の肉厚が異なる2種類の素線1,1および2,2により構成
し、電線の最外周に平滑なスパイラル状の段差表面10-a
および10-bを形成してなる低風音電線10-について提案
した。(特開昭59−96603) これは、第5図に示すように、大径段差部10-aの中心
角をθ、大径段差表面10-aの外径をD1、小径段差部10-b
の外径をD2、その高低差をh、大径段差部10-aのピッチ
をPとした場合のそれぞれの最適条件を規定し、従来広
く採用されている前記スパイラルロッドなどのような別
部材巻回方式によらず、電線の外周形状を特定なものに
選ぶことにより電線より発生する風騒音を低減せしめる
ものである。
[発明が解決しようとする課題] 既提案の上記低風音電線の風騒音防止効果は、単導体
として架線された場合に顕著であるが、多導体として架
線された場合には必ずしも期待するような効果を得られ
ないことがその後次第に明らかになってきた。
単導体の場合には非常に有効でありながら、多導体の
場合にその効果が大巾に低減されてしまうのは、多導体
に特有の導体配列が関与するためである。すなわち、多
導体送電線の場合には、第2図に示すように導体が横方
向に平行配列となり、風が図中白抜矢印のように吹き付
けた場合に上流側導体101と下流側導体102という配列関
係が生ずる。
第2図のように導体101および102が間隔Lをもって平
行配列されている多導体送電線に風が吹き付けると、上
流側導体101の風下側の空気の流れに乱流域が生じ、こ
の乱流域での空気は乱流化によって後方への移動が遅れ
るのに対し、当該乱流域の外側の空気は風本来の一定速
度をもって円滑に流れることになるために、その界面に
空気の剥離剪断層Sが生ずる。
この剥離剪断層Sが多導体における風騒音の元凶をつ
くるものであり、間隔Lだけ離れた下流側導体102にこ
の剥離剪断層Sが突き当ることにより特有の空気振動が
生じ、高い風騒音を発生させる原因となる。従って、風
騒音発生のメカニズムは単導体の場合とは明らかに異な
っており、導体の外形構成もかかるメカニズムに対応可
能な特有な構成に選定する必要が生ずることになる。
また、上記のように電線の外表面にスパイラル状の高
低段差が存在すると、その段差部が雨水を集めて下面に
向って案内流下させる作用が生じ、下側となった大径段
差表面に第12および13図に示すように水滴20が成長し易
くなり、大粒化することにより電位傾度が上昇し前記し
たANが発生し易くなるという問題もある。
このような水滴によるAN発生の問題については、前記
スパイラルロッド巻回方式においては、第6図に示すよ
うにスパイラルロッド31,31を2条密着巻させ表面に微
細凹凸を形成することにより解決できることが判明して
いるが、(特許第1235450号)、前述した段差表面を形
成する方式の低風音電線においては、未だ十分な解決策
が見出されていないのが実情である。
本発明の目的は、上記したような実情にかんがみ、と
くに多導体用として有効な電線外周面構成の最適条件を
見出し、それによって多導体送電線として架線した場合
に適確に風騒音を低減し得る一方、ANについても十分に
低減することが可能な新規な多導体用低風音電線を提供
しようとするものである。
[課題を解決するための手段] 本発明は、撚線の最外層撚線層を断面ほぼ扇形よりな
る厚肉素線と薄肉素線をもって構成し、それによって撚
線外周面に段差表面をスパイラル状に形成してなる電線
において、大径段差部の実表面がつくる中心角をθe、
大径段差表面と小径段差表面の高低差をh、前記大径段
差部の実表面の端縁と電線の中心を結ぶ仮想線上に円弧
中心を有し当該実表面の端縁より大径段差部の両側縁に
形成される端部円弧面の曲率半径をRとしたとき、 20゜≦θe≦60゜ 2≦h≦3(mm) 1.5≦R≦3(mm) となるように構成することを第1の要旨とし、上記構成
において、厚肉素線のX軸における断面二次モーメント
をIx1、Y軸における断面二次モーメントをIy1、また薄
肉素線のX軸における断面二次モーメントをIx2、Y軸
における断面二次モーメントをIy2、両素線のX軸にお
ける断面二次モーメントの比Ix2/Ix1をηx、両素線の
Y軸における断面二次モーメントの比Iy2/Iy1をηyと
するとき、 0.5≦ηx≦1.5 0.5≦ηy≦1.5 となるように素線分割することを第2の要旨とすると共
に、電線の大径段差表面を形成するための厚肉素線を隣
接した2本の素線をもって構成し、該素線の隣接界面に
外に開くほぼV字状の凹所を形成し、凹所開口端の巾を
t、その深さをHとしたとき、 t≧1.5(mm) H≧1.0(mm) となるように構成することを第3の要旨とするものであ
る。
[作用] 上記規定範囲となるようにθe、hおよびRを設定す
ると、多導体において特有な空気流の剥離剪断層に起因
する風騒音の発生を顕著に低減させることができる上、
大径段差角部でのコロナ騒音の発生をも大巾に抑制する
ことが可能となる。また、ηxおよびηyが上記範囲と
なるようにすれば、上記構成よりなる撚線を極めて容易
かつ円滑に撚線することが可能となり、撚線表面で素線
の乱れが生ずるおそれも解消される。
さらに、電線の大径段差表面を形成するための厚肉素
線を隣接した2本の素線をもって構成し、該素線の隣接
界面に外に開くほぼV字状の凹所を上記条件において形
成すれば、恰も既に解決をみているスパイラルロッドの
密着2条巻と類似の効果が生じ、AN値を大巾に低減させ
ることができる。
[実施例] 以下に、本発明について実施例を参照し説明する。
第1図は、本発明に係る低風音電線10の具体的構成を
示す断面図であり、前記第4図と同一符号は同一構成を
示す。すなわち、1は断面扇形よりなりかつ電線の半径
方向に肉厚の大きい肉厚素線であり、2は同じく半径方
向において肉厚の小さい薄肉素線であって、最外層にこ
れらの厚肉素線1,1および薄肉素線2,2が図のように撚合
わされることにより、大径段差表面10aと小径段差表面1
0bがスパイラル状に形成される。本実施例においては扇
形素線を最外層のみに配しているが、最外層をこのよう
な素線で構成すればよいのであり、第4図に示すように
内層まで扇形素線で構成するかあるいは第1図のように
丸層を丸線で構成するかは、強度や占積率など必要とさ
れる条件により適宜選択すればよいものである。
しかして、先に説明した既提案の低風音電線において
は、厚肉素線1,1の撚合せ素線群の最側端と電線の中心
Bがつくる中心角θ(=∠CBC-)に着目し最適範囲を規
定した。中心角θによるに規定であるが故に、厚肉素線
群によってつくられる大径段差表面10aの両側端部の円
弧の有無はとくに規定されなかった。すなわち、第1図
におけるR=0を含むものである。
R=0の場合には、風騒音に対する効果はむしろ良く
なるものと考えられるが、コロナ発生に起因するオーデ
ィブルノイズ(すなわちAN)にとっては悪影響がある。
本来、送電線を多導体化するそもそもの理由は、送電電
圧が超高圧化されると単導体では電線外表面の電位傾度
が過大となりANが余りにも大きくなるために、多導体化
することでコロナ発生を抑制しようとすることにある。
低風音電線であっても多導体用導体として使用される以
上、このAN低減対策を同時に講じ得るものでなければな
らないのは当然である。
第3図は、第2図に示すような並列2導体を用い電線
外径D=40mm、導体間隔L=500mm、第1図に示した端
部角部のR=0mm、風速V=15m/sなる条件において、段
差表面の高低差hを1.0mmから4.0mmまで様々に変え、風
洞実験により音圧レベルを測定した結果を示す線図であ
る。
第3図から明らかなように、hが小さい場合には風騒
音低減効果が小さく、hが大きくなるに従い効果は大き
くなっている。既提案の単導体の場合には、hが1mm以
上あれば効果があったことと比較すると、前述した剥離
剪断層Sの影響から多導体用の場合にはhをある程度以
上に大きくしなければならないということを、この第3
図から結論づけ得る。
風騒音がどの程度低下すれば風騒音低減に効果ありと
判定すべきかについて特別の基準が存在するわけではな
いが、これまでの数多くの経験によれば10dB前後の低下
をもって目安とするのが妥当である。
これよりすれば、第3図におけるh=2.0mm以上が必
要条件となり、かつθを20゜〜60゜の範囲となるように
規定する必要のあることがわかる。
因みに、このh=2.0mmなる臨界値については電線の
外径Dの大小により変るのではないかとの疑問が生ずる
ことが考えられる。しかし、よく知られるように、流れ
の中に物体を置く場合の流れの状態はレイノルズ数によ
り特徴づけられるのであり、このレイノルズ数は物体の
長さによって定まる無次元の数であり、流体に抗して存
在する物体の長さ(ここではh)だけが関係してくるこ
とになるのである。もっとも、外径Dが小さくなった場
合、h=2.0mmを維持しようとしてもかかる撚線を行な
うことはできなくなる。多導体送電線においては、素導
体の外径と導体の数およびバンドルの外径によってコロ
ナ発生電圧の条件が定まるのであり、多導体用として使
用することが前提となる場合、その素導体の外径を極端
に変え得るものではない。
一方、hの上限について考えると、第3図からわかる
ようにhは大きいほど風騒音低減効果は大きい。しか
し、hが大きくなれば、必然的に電気特性が悪くなる
上、撚線することが困難となり、さらに架線することも
困難であるし、架線した後の風圧荷重の増大が顕著にな
る。
多導体用導体を対象に考慮すれば、hの上限は3.0mm
が限度である。すなわち、多導体用電線が対象となる場
合、2.0≦h≦3.0(mm)となるのである。
送電線を多導体構成とするそもそもの理由は、送電電
流の超高圧化に対処するためであることを先に述べた。
従って、多導体用として使用することが前提となる以
上、風音特性の改善にのみ止まらず、その電気特性が改
善されていることが必要条件となる。
電気特性を改善するには、厚肉素線1,1により構成さ
れる大径段差部10aの側端に角部(極端な場合が前記し
たR=0mm)を形成しないようにすることが望まれる
が、この角部のRが余りに大きくなれば風音特性の方が
必然的に低下する。
いま、第1図において、大径段差部10aのつくる実表
面の両端縁をA,A′とし、当該A,A′間の円弧表面がつく
る中心角をθeとする。
本発明者らは、第3図におけるθに代えて上記θeを
パラメータとし、当該θeの外側に第1図に示すように
曲率半径Rなる端部円弧面を形成することにより上記し
た電気特性の改善を図り得ることを見出した。
第3図における供試材はR=0mmであったから、結局
第1図におけるθ=θeの場合に該当し、前記第3図よ
り得られた臨界値条件は結局20゜≦θe≦60゜となる。
R=0mmではなく、Rに数値を与えるということは、
第1図に示すようにθeに∠ABCおよび∠A′BC′が付
加されることであるが、この付加は後述するようにRが
規定されるために上記θeの臨界条件に悪い影響を及ぼ
すことはない。
ここにおいて、前記した大径段差部の実表面の端縁A
およびA′と電線の中心Bとを結ぶ仮想線ABおよびA′
Bを考え、当該仮想線上に曲率半径Rの中心O,O′を有
し端縁A,A′より両側縁に向う第1図に示すような端部
円弧面の形成を考える。
第1表は、上記のようにして形成される大径段差部端
縁の円弧面の曲率半径Rを様々に変えた場合のAN特性の
測定結果を示したものであり、○印は従来の通常電線と
比較してそれと同等以上である場合、△印はその比較で
ANの増加が3dB未満に止まっている場合、×印は3dB以上
となった場合をそれぞれ示す。
条件として、θe=20゜、h=3mmを用いたが、これ
らの値は先に得たθeおよびhの臨界条件のうちでθe
がもっとも狭くhがもっとも大きい場合であり、電気特
性上からみて最悪条件となる場合を対象として選択した
ものである。
また、第2表は、曲率半径Rによる風音特性への影響
を測定した結果を示すものであり、この場合はθe=60
゜、h=2mmすなわち先に得た臨界条件のうちで風音特
性に対して最悪条件となる場合が測定対象として選択さ
れている。なお、第2表中の○、△、×印の意味は上記
第1表におけると同じである。
第1および2表から、風音特性およびAN特性がともに
良好な範囲は1.5≦R≦3(mm)であることがわかる。
以上によって多導体用低風音電線としての最適条件を
得ることができるが、このような条件を満足するような
電線をどのようにして撚線するかということは別問題で
あり、つぎの課題である。
本発明において最外層素線に扇形素線を用いるのは、
電線の外表面を平滑として、平滑な段差表面を形成する
ためであるが、素線分割を誤ると素線間の凹凸が大きく
なり平滑表面に撚合せることができなくなって、上記し
た諸特性を満足するような電線を得ることはできない。
従来は、厚肉素線1および薄肉素線2の素線分割は、
素線の引張強さのみで決定されていた。しかし、それで
は撚線時の素線のプレフォームを均一にすることが困難
であり、所望の撚線を得ることが困難となる。
本発明は、撚線を製造する際の素線の曲げ剛性や捩れ
剛性を支配する物理的定数として、扇形素線それぞれの
断面二次モーメントに着目するものである。
いまここに、厚肉素線のX軸における断面二次モーメ
ントをIx1、Y軸における断面二次モーメントをIy1、そ
して薄肉素線のX軸における断面二次モーメントをI
x2、Y軸における断面二次モーメントをIy2、両素線の
X軸における断面二次モーメントの比Ix2/Ix1をηx、
両素線のY軸における断面二次モーメントの比Iy2/Iy1
をηyとする。
第3表は、上記ηxおよびηyをパラメータとして電
線の撚線後の形状を観察評価した結果を示すものであ
る。
第3表から、本発明に係る電線において求める諸特性
の改善を可能とするように撚線するには、 0.5≦ηx≦1.5 0.5≦ηy≦1.5 なる条件が満足されるようにそれぞれの素線分割を行な
うことが適当であることがわかる。
上記は先に説明したように、送電線が超高圧化される
に従い単線では電線表面の電位傾度が高くなりすぎ、電
線自体のわずかな突起よりコロナが発生するようになる
のを防止する意味から多導体化し、その際の低風音化に
必要な段差形成とその段差角部の対策について説明した
ものであり、降雨があった場合に電線下部に付着した水
滴によって発生するANを防止することとは別である。こ
のような水滴に対しては当然別個の対策が必要となる。
電線に付着した水滴の低AN化を達成するためには、電
線の長手方向に対して電線下面に付着する水滴個数を減
らすこと、及び下面に形成される水滴の曲率を大きくか
つ水滴の高さを小さくすること、の2点がキーポイント
となる。
水滴の曲率を大きくしその高さを小さくするには、雨
水が集まって付着し第12あるいは13図のような水滴20の
形成される大径段差表面10aに第7あるいは8図に示す
ようなややV字状の凹所11を形成することで解決できる
ことを発明者らは見出した。このような凹所11を形成す
ると、その凹所が水滴を吸引ないし捕捉し、その吸引な
いし捕捉作用によって水滴の表面張力に影響を及ぼして
水滴は扁平化するようになり、水滴での電位傾度が低下
し、ANの発生は低減される。
しかし、容易に理解できるように、V字状凹所11(こ
れは第7図のように側面が水平面であっても、第8図の
ように多小の曲率R2を有する曲率面であっても、いずれ
であっても差支えはない)の開口端の巾tが狭すぎて
も、また、その深さHが浅すぎても十分な効果は期待で
きない。
第9図は、810mm2相当の電線を用い開口巾tを3.0mm
とし、深さHを0.5〜2.0mmまで変化させた場合の人工降
雨実験におけるANの相対レベルをプロットした線図であ
り、また、第10図は、その場合の水滴の高さを実測した
結果をプロットした線図である。
これらの図より深さHは1.0mm以上、すなわちH≧1.0
mm(図中PおよびQ)が構成条件となることがわかる。
また、第11図は、深さHを2.0mmとし、開口巾tを0.5
〜3mmまで変化させた場合における水滴高さを測定した
結果をプロットした線図である。
図よりt≧1.5mm(図中W)が構成条件となることが
わかる。
このHおよびtについては、対象となる電線サイズを
変えかつ上記以外に幾つかの数値を設定し同様な実験を
行なったが、上記したそれぞれの条件が充足されること
が要件となることが明らかになった。
第14図は、第7図に示すように大径段差部10aを対に
2個所形成し、当該段差部を構成する素線の巾を変える
ことにより、当該大径段差部10aを1〜5本の素線で構
成し人工降雨実験を行なった場合の素線本数とAN値の関
係をプロットした線図であり、第16図は大径段差部10a
を対に形成せず第8図に示すように1個所のみ形成した
場合における上記同様の実験結果を示した線図である。
大径段差部が1個所でも対称位置に対に形成されて
も、素線本数を2本で構成した場合にAN値は最小値を示
すことをこれらの実験結果が歴然と示している。
これは、このように2本の構成とすることにより、第
6図に示したスパイラルロッドの2本密着巻と類似した
挙動が生じ、AN値を大きく低減させる結果となったもの
と推定することができる。従って、AN低減の見地よりす
れば、電線の大径段差表面を形成するための厚肉素線を
隣接した2本の素線をもって構成し、該素線の隣接界面
に外に開くほぼV字状の凹所を形成し、凹所開口端の巾
をt、その深さをHとしたとき、 t≧1.5(mm) H≧1.0(mm) となるように構成することが最善であることがよくわか
る。
素線が1本では凹所を切削加工で形成することとな
り、素線間における毛管現象が存在しないために水滴は
逆に大粒化すると考えられるし、2本以上多数本となる
と、第13図に示すように水滴20が各素線間に形成され、
前述したキーポイントのうちの水滴の数を減らすことに
逆行する結果となってANの増大へとつながるものと考え
られる。
第15図は、厚肉素線2本を用いH=1.5mm、t=1.5mm
のV字凹所を形成させた上記本発明に係る構成を有する
大径段差部1個所を有する810mm2相当導体を2本並列さ
せ、風速V=20m/sでの風音レベル測定を行なった結果
を示す線図であるが、段差hについての2≦h≦3(m
m)なる条件にはV字状凹所の形成が影響を及ぼさない
ことがこの図からよくわかる。
[発明の効果] 以上の通り、本発明に係る電線によれば、特に多導体
用として風音特性および水滴に起因する場合も含めAN特
性に優れた電線を安定して製造し、斯界に広く供給でき
るものであり、今後の架空送電線の超々高圧化およびそ
れに伴う多導体化に適切に対応し得る意義は極めて大き
い。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る電線の構成を示す断面図、第2図
は並列2導体に風が吹き付けた状況を示す説明図、第3
図は電線表面の高低段差hと音圧レベルの関係をプロッ
トした線図、第4図は従来の単導体用低風音電線の断面
図、は第5図はそのディメンションを示す説明図、第6
図はスパイラルロッド巻回方式の場合の見取図、第7お
よび8図はとくに水滴に起因するAN対策を考慮した本発
明に係る2様の実施例を示す説明断面図、第9図は凹所
深さとANの関係を、第10図は凹所深さと水滴高さの関係
を、また第11図は開口巾と水滴高さの関係をそれぞれプ
ロットした線図、第12および13図は水滴の形成状況を示
す説明図、第14および16図は大径段差部を形成する素線
の本数とANの関係を示す線図、第15図は並列2導体での
段差高さと風音レベルの関係を示す線図である。 1:厚肉素線、 2:薄肉素線、 10:低風音電線、 10a:大径段差表面、 10b:小径段差表面、 11:凹所、 20:水滴。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−203510(JP,A) 特開 昭61−85711(JP,A) 特開 昭60−189809(JP,A) 特開 昭63−116310(JP,A) 特開 昭57−53005(JP,A) 特開 平1−14828(JP,A) 特公 昭58−38884(JP,B1) 特公 平1−33884(JP,B2)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】撚線の最外層撚線層を断面ほぼ扇形よりな
    る厚肉素線と薄肉素線をもって構成し、それによって撚
    線外周面に段差表面をスパイラル状に形成してなる電線
    において、大径段差部の実表面がつくる中心角をθe、
    大径段差表面と小径段差表面の高低差をh、前記大径段
    差部の実表面の端縁と電線の中心を結ぶ仮想線上に円弧
    中心を有し当該実表面の端縁より大径段差部の両側縁に
    形成される端部円弧面の曲率半径をRとしたとき、 20゜≦θe≦60゜ 2≦h≦3(mm) 1.5≦R≦3(mm) となるように構成してなる多導体用低風音電線。
  2. 【請求項2】厚肉素線のX軸における断面二次モーメン
    トをIx1、Y軸における断面二次モーメントをIy1、また
    薄肉素線のX軸における断面二次モーメントをIx2、Y
    軸における断面二次モーメントをIy2、両素線のX軸に
    おける断面二次モーメントの比Ix2/Ix1をηx、両素線
    のY軸における断面二次モーメントの比Iy2/Iy1をηy
    とするとき、 0.5≦ηx≦1.5 0.5≦ηy≦1.5 となるように素線分割がなされてなる請求項1記載の多
    導体用低風音電線。
  3. 【請求項3】請求項1記載の電線の大径段差表面を形成
    するための厚肉素線を隣接した2本の素線をもって構成
    し、該素線の隣接界面に外に開くほぼV字状の凹所を形
    成し、凹所開口端の巾をt、その深さをHとしたとき、 t≧1.5(mm) H≧1.0(mm) となるように構成してなる多導体用低風音電線。
JP1228795A 1989-03-30 1989-09-04 多導体用低風音電線 Expired - Lifetime JP2508854B2 (ja)

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