JP3635558B2 - 細心同軸ケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は同軸ケーブルに関する。更に詳しくは、コンピュータ等の各種情報機器の内部配線等に使用される同軸ケーブルで、特に信号伝送速度及び端末加工性を向上させた細心の同軸ケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の技術の進歩により、コンピュータ等の各種情報機器で取り扱われる信号が高周波化されるに伴い、機器内外で使用される同軸ケーブルにも高速信号伝送性が求められるようになってきている。一般に、同軸ケーブルの信号伝送特性は、信号伝播遅延時間(伝送速度の逆数)から測定されており、この同軸ケーブルの信号伝送速度、即ち信号伝播遅延時間は、ケーブルの絶縁層を形成している絶縁体の実効誘電率に依存するため、絶縁体の誘電率を低下させようとして多くの技術開発がなされてきた。例えば、ポリオレフィン樹脂の化学発泡やガス発泡による高発泡技術、四弗化エチレン樹脂の高多孔質化技術等が挙げられる。
【0003】
なお現用のものでは、例えば特公昭51−18991号に記載のように、中心導体の外周に多孔質四弗化エチレン樹脂テープを均一に巻回して絶縁層を形成した構造の同軸ケーブルが、凡そ3.8ns/mの信号伝播遅延時間を有し、最も優れた特性を持つものとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特公昭51−18991号に記載の同軸ケーブルに於いては、同軸ケーブルの絶縁層の実質的な空隙率は約70%であり、これを上回る空隙率を安定して保持することは絶縁層の潰れによる空隙率の低下という観点から技術的に難しく、信号伝送速度をそれ以上速めることは困難とされていた。
【0005】
また、このような問題点を解決するために、中心導体の外周に多孔質四弗化エチレン樹脂テープの紐状物等を適宜な間隔を置いて粗巻きした第1の巻回層と、この第1の巻回層と同材質で巻方向を逆にした第2の巻回層とを設けて絶縁層となし、更にその外周上に外部導体層、保護被覆層を順次形成した構成の同軸ケーブルが考えられる。かかる同軸ケーブルは、第1の巻回層と巻方向を逆にした第2の巻回層との間に存在する空隙部が実効的に絶縁層の空隙率を高め、テープに内在する気孔と合わさって、結果的に信号伝送速度の高速化が可能と予測される。
【0006】
現に当該発明者等の予備実験により、上記同軸ケーブルに於いては、第1の巻回層の粗巻きによる空隙部の割合を50%以上とした場合には、絶縁層の空隙部による効果によって信号伝送速度は高速化され、信号伝播遅延時間は最速で3.65ns/mとなった。
【0007】
しかしながら、この同軸ケーブルは端末加工の際、汎用的な上下平型熱刃の加工機を使用すると、絶縁層の第1巻回層のカッティング不良が生じ易く端末加工性に問題があった。また、絶縁層の第2巻回層の潰れ(第1巻回層の空隙部への食い込み)により、ケーブルの長手方向における局部的な伝送特性や屈曲特性のばらつき、或は特性インピーダンスの乱れが生じやすいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の同軸ケーブルが有する各種問題点を解決するためになされたもので、端末加工性に優れ、ケーブルの長手方向における局部的な伝送特性や屈曲特性のばらつき等がなく、また、従来のものより高速な信号伝送速度を有する細心同軸ケーブルを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の観点として、本発明は、中心導体(1) の外周に、多孔質四弗化エチレン焼結樹脂テープ(以下、多孔質PTFE焼結テープと略記する)を適宜な間隔で粗巻きした第1の多孔質テープ巻回層(以下、第1巻回層と略記する) (2) と、この外周に前記多孔質PTFE焼結テープと同材質の多孔質テープを巻方向を異ならせて重ね巻きした第2の多孔質テープ巻回層
(以下、第2巻回層と略記する)(3) とにより、前記第1巻回層 (2) と第2巻回層 (3) との間に、第1巻回層 (2) の粗巻きによる空隙部(4) を形成し、更に前記第2巻回層 (3) の外周に直接又は充実スキン層(5)を介して外部導体層(6) 及び保護被覆層(7)を設けた細心同軸ケーブルであって、前記第1巻回層 (2) の粗巻き間隔kを、第1巻回層 (2)のテープ幅tの10〜40%とした細心同軸ケーブルにある。
【0010】
上記第1の観点の細心同軸ケーブルは、絶縁層を構成する主材料として多孔質PTFE焼結テープを用い、第1巻回層(2)の粗巻き間隔kを、第1巻回層(2)のテープ幅tの10〜40%に抑えることにより、端末加工(絶縁層カッティング工程)に於いて、汎用的な上下平型熱刃の加工機を使用しても、テープに対する熱刃の挿入が確実になり、第1巻回層(2) のカッティング不良を生ずることなく、端末の絶縁層は完全に除去される。
【0011】
第2の観点として、本発明は、上記第1の観点の細心同軸ケーブルに於いて、前記第2巻回層(3)は、重ね巻き時よりも厚手のゴム弾性(反発弾性)に富む多孔質PTFE焼結テープを用い、突き合わせ巻き(0ラップ巻)により形成した細心同軸ケーブルにある。
【0012】
上記第2の観点の細心同軸ケーブルは、前記第2巻回層(3) を、突き合わせ巻きにすることで、通常の重ね巻き時よりも厚手のゴム弾性(反発弾性)に富むテープを使用することが可能となり、第1巻回層(2) の粗巻き間隔kを、前記のように10〜40%に抑えた効果と相まって、第2巻回層(3) が下部に落ち込むことなく空隙部(4)は安定保持されるため、ケーブルの長手方向における局部的な伝送特性や屈曲特性のばらつき、或は特性インピーダンスの乱れが阻止できる。なお、予備実験より、多孔質PTFE焼結テープは、気孔率が等しい場合テープ厚に比例してゴム弾性が向上することが確認されている。
【0013】
第3の観点として、本発明は、上記第1又は第2の観点の細心同軸ケーブルに於いて、前記多孔質PTFE焼結テープは、気孔率が70〜80%の高気孔率であり、また厚さが90〜110μmである細心同軸ケーブルにある。
【0014】
上記第3の観点の細心同軸ケーブルは、従来のものより高気孔率(70〜80%)の多孔質PTFE焼結テープを絶縁層に使用しているが、厚さが90〜110μmあり、ゴム弾性が向上しているため、従来問題となっていた、テープ巻圧やその他外圧によるテープの潰れや落ち込みは最小限に抑えられる。従って、上記の空隙部の効果と合わさって、信号伝播遅延時間は最速で3.65ns/mを有し、信号伝送速度の高速化が達成される。
【0015】
第4の観点として、本発明は、上記第1、第2又は第3のいずれかの観点の細心同軸ケーブルに於いて、前記細心同軸ケーブルの外径が2.000mm以下である細心同軸ケーブルにある。
【0016】
上記第4の観点の細心同軸ケーブルは、ケーブルの外径が2.000mm以下の細心であるので、コンピュータ等の各種情報機器の内部配線等に好ましく使用できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の細心同軸ケーブルの実施の形態について、図を用いて詳細に説明する。なお本発明は、本発明の実施の形態に限定されるものではない。
図1は本発明の一実施形態の細心同軸ケーブルを示す一部切欠き側面図である。図2は本発明の一実施形態の細心同軸ケーブルの横断面図である。
これらの図に於いて、(1) は中心導体、(1’)は中心導体素線、(2) は第1の多孔質テープ巻回層、(3)は第2の多孔質テープ巻回層、(4) は空隙部、(5) は充実スキン層、(6) は外部導体層、(6’)は外部導体素線、(7) は保護被覆層、(8) は細心同軸ケーブル、kは第1の多孔質テープ巻回層の粗巻き間隔、tは第1の多孔質テープ巻回層のテープ幅、またzは絶縁層である。
【0018】
1.第1の実施の形態
第1の実施の形態について、図1、2を用いて説明する。
先ず、中心導体素線(1’)として外径0.102mmの銀めっき軟銅線を用い、この7本を撚り合わせて中心導体(1) とした。次にこの外周上に気孔率80%,幅0.9mm,厚さ0.105mmの多孔質PTFE焼結テープを粗巻きして第1巻回層(2) とし、次にこの外周上に、前記第1巻回層(2) のテープと同材質で幅1.8mm,厚さ0.105mmの多孔質PTFE焼結テープを巻き方向を異ならせて突き合わせて巻回して第2巻回層(3) とし、前記第1巻回層 (2) と第2巻回層 (3) との間に、第1巻回層 (2) の粗巻きによる空隙部(4) を形成し、更に前記第2巻回層(3) の外周に充実スキン層(5) を施し絶縁層zとした。次にこの外周上に、外部導体素線(6’)として外径0.064mmの銀めっき軟銅線を用い,この多数本を整列に横巻きして外部導体(6) とし、更にこの外周上に保護被覆層(7)を設けて仕上がり外径1.000mmの細心同軸ケーブル(8) を製造した。
【0019】
記第1巻回層 (2) の粗巻き間隔kは、例えば前記第1巻回層(2) のテープ幅tの30%である。また前記充実スキン層(5) は、例えば四フッ化エチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)である。また前記保護被覆層(7) は、例えば四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体樹脂(FEP)である。また絶縁層zは、例えば前記第1巻回層(2) 、第2巻回層(3) 、空隙部(4) 及び充実スキン層(5) により形成される。
【0020】
2.第2の実施の形態
第1巻回層(2) として、気孔率80%,幅0.9mm,厚さ0.093mmの多孔質PTFE焼結テープを用い、また第2巻回層(3) として、前記第1巻回層(2) のテープと同材質で幅1.8mm,厚さ0.105mmの多孔質PTFE焼結テープを用いた以外は、前記第1の実施の形態と同様にして仕上がり外径1.000mmの細心同軸ケーブル(8) を製造した。
【0021】
3.第3の実施の形態
第1巻回層(2) として、気孔率80%,幅0.9mm,厚さ0.093mmの多孔質PTFE焼結テープを用い、また第2巻回層(3) として、前記第1巻回層(2) のテープと同材質で幅1.8mm,厚さ0.093mmの多孔質PTFE焼結テープを用いた以外は、前記第1の実施の形態と同様にして仕上がり外径1.000mmの細心同軸ケーブル(8) を製造した。
【0022】
4.第4の実施の形態
第1巻回層(2) として、気孔率80%,幅0.9mm,厚さ0.093mmの多孔質PTFE焼結テープを用い、また第2巻回層(3) として、前記第1巻回層(2) のテープと同材質で幅3.3mm,厚さ0.048mmの多孔質PTFE焼結テープを二重ラップで巻回した(図1、2には示さず)以外は、前記第1の実施の形態と同様にして仕上がり外径1.000mmの細心同軸ケーブル(8) を製造した。
なお、前記第1〜第4の実施の形態に於いて、外部導体(6) の横巻素線本数は絶縁層の外径により35〜37本としている。
【0023】
5.特性試験
前記第1〜第4の実施の形態により得られた本発明の細心同軸ケーブルについて、信号伝播遅延時間および特性インピーダンスを測定した。その結果を下記表1に示す。なお、端末加工性についても試験したが、全て良好だった。
【0024】
【表1】
【0025】
上記表1から明らかなように、本発明の細心同軸ケーブルは、第1巻回層(2) 及び第2巻回層(3) のテープ厚さが厚くなるに従って信号伝播遅延時間と特性インピーダンスが良好になっていることが分かる。これは、第1及び第2巻回層のテープ厚さが厚くなるに従ってゴム弾性(反発弾性)がより向上するためである。従って、絶縁素材として高気孔率テープを用いても、絶縁層の多孔質の気孔の潰れや絶縁層の変形を阻止できるため、ケーブルの長手方向に於いて、局部的な伝送特性や屈曲特性のばらつき、或は特性インピーダンスの乱れを生じることが無くなった。また、信号伝播遅延時間は最速で3.65ns/mにすることができ、信号伝送速度の高速化が達成されることが分かった。
【0026】
また、本発明の細心同軸ケーブルは、第2巻回層(3) を、突き合わせ巻きにより形成する場合(第1〜第3の実施の形態)は、重ね巻時(第4の実施の形態)よりも厚手のゴム弾性に富むテープが使用でき、絶縁層の多孔質の気孔や第1巻回層 (2) 粗巻きによる空隙部(4) が安定保持されることになり、信号伝播遅延時間は高速で安定化し、また特性インピーダンスは低下することなく一定となった。
【0027】
【発明の効果】
本発明の細心同軸ケーブルは、第1巻回層と第2巻回層に多孔質PTFE焼結テープを用い、第1巻回層の粗巻き間隔を、第1巻回層のテープ幅の10〜40%に抑えたことにより、端末加工性に優れた細心同軸ケーブルを得ることができた。
【0028】
また、第2巻回層を突き合わせ巻きにすることで、通常の重ね巻き時よりも厚手のゴム弾性に富むテープを使用することが可能となり、ケーブルの長手方向の局部的な伝送特性や屈曲特性のばらつき、特性インピーダンスの乱れが阻止できた。
【0029】
また、多孔質PTFE焼結テープとして、気孔率70〜80%、厚さ90〜110μmの従来よりも高気孔率でゴム弾性(反発弾性)に富む多孔質PTFE焼結テープを使用した場合も、ゴム弾性が向上しているため、従来のようなテープ巻圧やその他外圧によるテープの潰れや落ち込みは最小限に抑えられた。従って、上記の空隙部の効果と合わさって、信号伝播遅延時間は最速で3.65ns/mを有し、信号伝送速度の高速化が達成された。
【0030】
また、ケーブルの外径を2.000mm以下の細心とした場合は、特にコンピュータ等の各種情報機器の内部配線等に好ましく使用できた。
従って、本発明は産業に寄与する効果が極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の細心同軸ケーブルを示す一部切欠き側面図である。
【図2】 本発明の一実施形態の細心同軸ケーブルの横断面図である。
【符号の説明】
1 中心導体
1’ 中心導体素線
2 第1の多孔質テープ巻回層
3 第2の多孔質テープ巻回層
4 空隙部
5 充実スキン層
6 外部導体層
6’ 外部導体素線
7 保護被覆層
8 細心同軸ケーブル
第1の多孔質テープ巻回層の粗巻き間隔
t 第1の多孔質テープ巻回層のテープ幅
z 絶縁層

Claims (4)

  1. 中心導体(1) の外周に、多孔質四弗化エチレン焼結樹脂テープを適宜な間隔で粗巻きした第1の多孔質テープ巻回層(2)
    と、この外周に前記多孔質四弗化エチレン焼結樹脂テープと同材質の多孔質テープを巻方向を異ならせて重ね巻きした第2の多孔質テープ巻回層(3) とにより、前記第1多孔質テープ巻回層 (2) と第2多孔質テープ巻回層 (3) との間に、第1多孔質テープ巻回層 (2) の粗巻きによる空隙部(4) を形成し、更に前記第2多孔質テープ巻回層(3) の外周に直接又は充実スキン層(5) を介して外部導体層(6) 及び保護被覆層(7) を設けた細心同軸ケーブルであって、
    記第1多孔質テープ巻回層 (2) の粗巻き間隔kを、第1多孔質テープ巻回層(2)のテープ幅tの10〜40%としたことを特徴とする細心同軸ケーブル。
  2. 前記請求項1記載の細心同軸ケーブルに於いて、前記第2の多孔質テープ巻回層(3)
    は、重ね巻き時よりも厚手のゴム弾性に富む多孔質四弗化エチレン焼結樹脂テープを用い、突き合わせ巻きにより形成したことを特徴とする細心同軸ケーブル。
  3. 前記請求項1又は2記載の細心同軸ケーブルに於いて、前記多孔質四弗化エチレン焼結樹脂テープは、気孔率が70〜80%の高気孔率であり、また厚さが90〜110μmであることを特徴とする細心同軸ケーブル。
  4. 前記請求項1,2又は3いずれか1項記載の細心同軸ケーブルに於いて、前記細心同軸ケーブルの外径が2.000mm以下であることを特徴とする細心同軸ケーブル。
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