JP2506327B2 - スルホン酸リチウム基又はスルホン酸アンモニウム基を有する染料水溶液の製造方法 - Google Patents

スルホン酸リチウム基又はスルホン酸アンモニウム基を有する染料水溶液の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、スルホン酸リチウム基又はスルホン酸アン
モニウム基を有する水溶性染料の製造方法に関するもの
である。
〔従来の技術〕
近時、情報記録材料分野にスルホン酸塩の基を有する
水溶性染料が利用されるケースが多々見受けられる。
その場合、スルホン酸の塩としては殆んどの場合、ナ
トリウムが用いられている。これは、コストの点で、ナ
トリウムが最も安いためである事の他、電子材料分野に
用いられるとはいうものの、これらの染料の多くが繊維
用染料として既に市販されているものを転用しているた
めである。
スルホン酸ナトリウム基を有する水溶性染料(以後、
ナトリウム型染料と略す。)は、例えばインクジエツト
記録用のインク組成物として使用する場合、溶解性、と
りわけグリコール類に対する溶解性が不十分であるた
め、色調、耐光等他の品質面では優れているにもかかわ
らず、実用化に到らない染料が、多数認められた。この
ため、それらの染料についてナトリウムをリチウムまた
は、アンモニウムに変換したところ、グリコール類、ア
ミド類に対する溶解性が著しく向上し、実用上十分な染
料濃度のインク組成物を得ることができた。
従来、スルホン酸リチウム基またはスルホン酸アンモ
ニウム基を有する水溶性染料(以後各々「リチウム型染
料」または「アンモニウム型染料」と略す。)を製造す
る方法としては、酸析法または塩析法が知られている。
しかしながら、酸析法の場合には、多くの場合染料が
析出し、析出した染料の過性が一般に著しく悪いた
め、分離に長時間を要する他、分離した染料ウエツトケ
ーキ中に含まれる酸が多く、その中和に高価な水酸化リ
チウムまたは水酸化アンモニウムを多量必要とする。
又、強酸性下で操作するため機器類の材質面の制約も大
きくなる。
塩析法の場合には、通常スルホン酸ナトリウム基を有
する水溶性染料を含有する水溶液にLiCl、NH4Cl等を加
え塩析することにより、Li塩、NH4塩 結晶を得、これ
を過回収し、洗浄した後再溶解して脱塩精製すること
が必要であるが、この方法では高価なLiCl、HN4Cl等を
大量に必要とするばかりか、過、洗浄、再溶解、脱塩
精製などの操作が煩雑で工業的に不利である。
〔発明が解決しようとする問題点〕
スルホン酸ナトリウム基を有する水溶性染料からスル
ホン酸リチウム基またはスルホン酸アンモニウム基を有
する水溶性染料を製造するに際し、効率的な塩交換ので
きる方法の提供を目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、遊離型の強酸性陽イオン交換樹脂が充填さ
れている充填塔に、濃度10重量%以下のスルホン酸ナト
リウム基を有する水溶性染料の水溶液をSV5以下で通液
してスルホン酸ナトリウム基の実質的全量がスルホン酸
基に転換された染料水溶液としたのち、これをLiOH又は
NH4OHにより中和処理し、さらに逆浸透膜分離法によっ
て濃縮すると同時に共存する不純物を除去することを特
徴とする、インクジェット用インクを製造するためのス
ルホン酸リチウム基又はスルホン酸アンモニウム基を有
する染料水溶液の製造方法を要旨とするものである。
本発明における原料の水溶性染料としては、スルホン
酸ナトリウム基を有するものであればいずれも適用し得
る。例えば、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾ、テトラ
キスアゾ等のアゾ系染料、アントラキノン系染料、アン
トラピリドン系染料、キノフタロン系染料、メタン系染
料、フタロシアニン系染料等の構造を有する直接性染
料、酸性染料あるいは食添用染料(細田豊著「理論製造
染料化学」昭和43年7月15日5版発行、(株)技術堂発
行、“Colour Index"Third Edition Vol1,The Society
of Dyers and Colourists(1971)等)を挙げることが
できる。
本発明において、これらスルホン酸ナトリウム基を有
する水溶性染料の濃度は、20重量%対液以下、好ましく
は10重量%対液以下で操作される。
又、pHとしてはpH7.5以下で操作されるのが好まし
い。充填塔に充填される陽イオン交換樹脂としては、H
型の強酸性陽イオン交換樹脂が用いられるが、これらの
樹脂は通常、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体
よりなる粒子を母体とするものであり、例えば、ゲル状
又はポーラス状のものである。
処理操作としては充填塔にスルホン酸ナトリウム基を
有する水溶性染料を通液し、陽イオン交換樹脂と接触処
理する。この際の処理温度としては、通常、0〜50℃、
好ましくは10〜30℃である。また、通液速度としてはSV
5以下で操作される。
中和処理としては陽イオン交換樹脂を通液したフリー
のスルホン酸基を有する染料水溶液に水酸化リチウム又
は水酸化アンモニウムのアルカリ水溶液を添加し、撹拌
混合により中和する。中和温度は0〜80℃、好ましくは
10〜30℃の範囲で操作される。
本発明の濃縮方法における操作の概略を記す。即ち、
スルホン酸リチウム基、又はスルホン酸アンモニウム基
を有する水溶性染料の原料溶液を所定のpHに調整した
後、逆浸透膜を有する逆浸透装置に入れ所定温度にて所
定圧力をかけ、逆浸透膜を通す事によりスルホン酸リチ
ウム基、又はスルホン酸アンモニウム基を有する水溶性
染料の濃厚水溶液を得る事ができる。
逆浸透膜としては、水、塩類等を通過させ、染料を通
過させないような公知の種々の膜が使用される。具体的
にはセルロースジアセテート又はトリアセテート等の酢
酸セルロース系、ポリアミド系、ポリベンズイミダゾロ
ン系あるいはポリビフエニルエーテル系等の高分子化合
物からつくられ、大部分の、好ましくは98%以上の染料
を通過させないような膜を用いる。
本発明の方法によつて逆浸透膜により濃縮を行つた場
合、原料或は製造工程で付随した染料中の塩類は、殆ん
ど除去される。
逆浸透膜は所望の形を有する事ができる。即ち中空の
繊維、管状の膜、コイル状のモジユール、枝状フレーム
のモジユール及びその他多くの形のものが使用できる。
圧力は、特定の膜及びモジユールによつて異なるが、
通常、10〜50kg/cm3、好ましくは15〜35kg/cm3である。
pHは膜の耐性及び染料の溶解性から6以上、好ましくは
6〜8の範囲に調整するのがよい。また温度は10〜50
℃、好ましくは15〜35℃の範囲である。
〔発明の効果〕
上記の様にして得られたスルホン酸リチウム基又はス
ルホン酸アンモニウム基を有する水溶性染料は情報記録
用のインク、とりわけインクジエツトプリンター用のイ
ンクとして好適である。又、固体撮像素子用カラーフイ
ルター等の電子材料分野に用いられる色素としても有利
に使用できる。
具体的には、水及びグリコール類を、主成分とするイ
ンクジエツトプリンター用のインクにおいては、長期間
放置した場合、ノズル先端部においては水が蒸発するた
めグリコール類がリツチな状態になる。従来のナトリウ
ム型染料の場合、水に対する溶解性は大きいがグリコー
ル類に対しては比較的小さいため、ノズル先端部におい
て染料が析出し目詰まりの原因となつてきた。
一方、本発明の方法によつて得られるリチウム型染料
及びアンモニウム型染料の場合、グリコール類に対する
溶解度が大きいため、目詰まりがなく、インクジエツト
プリンターの信頼性が格段に向上する。
又、本願発明方法はナトリウム型の染料からリチウム
型、またはアンモニウム型の染料にするための操作が簡
単で工業的に非常に有利である。
〔実施例〕
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明する
が、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
尚、実施例中カラーインデツクス(Colour Index)を
C.I.と略記する。
実施例1 C.I.Direct Black−19の2%水溶液250kgを強酸性ス
ルホン酸型陽イオン交換樹脂ダイヤイオンSK−IB(H形
・ゲルタイプ、三菱化成工業株式会社製造、商品名)を
充填した充填塔(径10cm、高さ140cm)の上部より25℃
の温度でSV2にて通液処理した。
次いで、回収した液を5%の水酸化リチウム水溶液で
pH7.5まで中和した。この染料水溶液をポリベンズイミ
ダゾロンの膜1.25m3を有する逆浸透装置で25℃において
24kg/cm3の圧力をかけ濃縮し、スルホン酸リチウム基を
有する染料の濃厚水溶液27.7kgを得た。染料の収率は98
%(O.D.値の測定による)であつた。
また、得らてた染料水溶液を乾固することにより得ら
れた色素中のナトリウム及びリチウムの原子吸光法によ
る分析値及び該色素の、水及びジエチレングリコールに
対する溶解度を下記第1表に記す。
実施例2 C.I.Food Black−2の2%水溶液100Kgを強酸性スル
ホン酸型陽イオン交換樹脂ダイヤイオンSK−IBを充填し
た充填塔(径10cm、高さ110cm)の上部より25℃の温度
でSV2にて通液処理した。
次いで回収した液を5%の水酸化アンモニウム水溶液
でpH7.3まで中和した。この染料水溶液をポリペンズイ
ミダゾロンの膜1.25m3を有する逆浸透装置で25℃におい
て24kg/cm3の圧力をかけ濃縮し、スルホン酸アンモニウ
ム基を有する、染料の濃厚水溶液11.1kgを得た。染料の
収率は97%(O.D.値の測定による)であつた。
実施例1と同様に原子吸光法による分析値及び溶解度
を下記第2表に記す。
また、元素分析の結果を第3表に示す。
実施例3 C.I.Direct Blue−86の2%水溶液250kgを強酸性スル
ホン酸型陽イオン交換樹脂ダイヤイオンSK−IBを充填し
た充填塔(径15cm、高さ85cm)の上部より23.5℃の温度
でSV2にて通液処理した。
次いで回収した液を2%の水酸化リチウム水溶液でpH
8.0まで中和した。この染料水溶液をポリペンズイミダ
ゾロンの膜1m3を有する逆浸透装置で23℃において25kg/
cm3の圧力をかけ濃縮し、スルホン酸リチウム基を有す
る染料の濃厚水溶液、22kgを得た。染料の収率は96%
(O.D.値の測定による)であつた。色素中のナトリウム
及びリチウムの原子吸光法による分析値及び色素の水及
びジエチレングリコールに対する溶解度を第4表に示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐野 秀雄 横浜市緑区鴨志田町1000番地 三菱化成 工業株式会社総合研究所内 (56)参考文献 特開 昭56−151768(JP,A) 特開 昭47−16522(JP,A) 特開 昭61−285264(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】遊離型の強酸性陽イオン交換樹脂が充填さ
    れている充填塔に、濃度10重量%以下のスルホン酸ナト
    リウム基を有する水溶性染料の水溶液をSV5以下で通液
    してスルホン酸ナトリウム基の実質的全量がスルホン酸
    基に転換された染料水溶液としたのち、これをLiOH又は
    NH4OHにより中和処理し、さらに、逆浸透膜分離法によ
    って濃縮すると同時に共存する不純物を除去することを
    特徴とする、インクジェット用インクを製造するための
    スルホン酸リチウム基又はスルホン酸アンモニウム基を
    有する染料水溶液の製造方法。
  2. 【請求項2】陽イオン交換樹脂がスチレンとジビニルベ
    ンゼンとの球状架橋共重合物を基体とした強酸性スルホ
    ン酸型の陽イオン交換樹脂である特許請求の範囲第1項
    記載のスルホン酸リチウム基又はスルホン酸アンモニウ
    ム基を有する染料水溶液の製造方法。
  3. 【請求項3】逆浸透膜が酢酸セルロース系、ポリアミド
    系、ポリベンズイミダゾロン系またはポリビフエニルエ
    ーテル系の高分子化合物である特許請求の範囲第1項記
    載のスルホン酸リチウム基又はスルホン酸アンモニウム
    基を有する染料水溶液の製造方法。
  4. 【請求項4】逆浸透膜がポリベンズイミダゾロン系の高
    分子化合物である特許請求の範囲第1項記載のスルホン
    酸リチウム基又はスルホン酸アンモニウム基を有する染
    料水溶液の製造方法。
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