JP2504487Y2 - マルチ印字装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本考案は、インクシートの移動速度と受像紙の移動速
度とが異なってインクシートの使用量を受像紙の使用量
に比べて少ない量とするマルチ印字装置に係わり、特に
サーマルヘッドに染料補充のための電流パルスを印加す
るマルチ印字装置に関する。

〈従来技術〉 サーマルヘッドを使用した熱転写印字装置として、従
来、第３図に示す装置が知られている。

この図に示す熱転写印字装置はプラテンドラム101上
に受像紙102を保持し、サーマルヘッド103によってイン
クシート104を前記受像紙102に押圧しながらサーマルヘ
ッド103に印字のための電気信号を印加することにより
サーマルヘッド103の各発熱素子を発熱させてインクシ
ート104のインク層105を加熱し第４図に示す如くインク
層105のインクを選択的に溶解させて受像紙102側に転写
させ第５図に示すようにドット106を形成する。

また、他の熱転写印字装置として、例えば特開昭56−
50996号公報、特開昭57−56282号公報、特開昭62−1799
57号公報等に開示されている装置も知られている。

特開昭56−50996号公報に開示されている熱転写印字
装置は、加熱サイクルの前半部で発熱体に高電力を印加
して許容最高温度まで速く立ち上げて、後半部で低電力
を印加することにより均一な印字濃度を得るものであ
る。

また、特開昭57−56282号公報に開示されている熱転
写印字装置は、サーマルヘッド駆動回路にワンショット
回路を設けて、駆動開始時にサーマルヘッドに大電力を
供給して発熱抵抗体の加熱を防止しながら短時間で印字
に必要な最高温度を得るものである。

また、特開昭62−179957号公報に開示されている熱転
写印字装置は、発熱素子に複数レベルの時間平均投入エ
ネルギを供給することにより、画質劣化や発熱素子の熱
破損を招くことなく画像形成素体に充分なエネルギーを
与えるものである。

しかしながら、近年、熱転写印字装置の普及に伴いイ
ンクシート104や受像紙102の消費に伴うランニングコス
トの問題が顕著になってきたため、インクシート104の
消費量が少ないマルチ印字装置が注目を浴び、各所で開
発が行われている。このマルチ印字装置は、ｎ倍マルチ
走査方式とＮ回マルチ走査方式がある。ｎ倍マルチ走査
方式では、受像紙の使用長さ（消費量）をＬとしてイン
クシートの使用長さ（消費量）をＳとするときL/S＝ｎ
とし、マルチ数をｎ＝10とかｎ＝15というように１より
大きい数とする。つまり、インクシートの移動速度を受
像紙の移動速度の1/nに設定し、インクシートの使用量
を受像紙の使用量に比べて少ない量とする。また、Ｎ回
マルチ走査方式では、インクシートと受像紙を等速で移
動させ、インクシートをマルチ数に応じたＮ回巻き戻し
てインクシートにＮ回の繰り返し転写を行わせることに
より、インクシートの使用量を受像紙の使用量に比べて
少ない量とする。

例えば、特開昭63−165169号公報に開示されているｎ
倍マルチ走査方式のマルチ印字装置では、マルチ印字用
に開発された受像紙を第１のキャプスタンに巻回すると
共に、マルチ印字用に開発されたインクシートを第２の
キャプスタンに巻回し、さらにサーマルヘッドとプラテ
ンとによって前記インクシートと、前記受像紙とを挟み
付けながら第１のキャプスタンを定速で回転させるとと
もに、この第１のキャプスタンの周速度の1/nの周速度
で第２のキャプスタンを回転させてサーマルヘッドによ
って印字を行なうことにより、インクシートの使用量を
1/nにしてランニングコストを低減させている。

このようなマルチ印字装置は、例えば第６図に示す如
くテープ状に形成された基材107と、この基材107上に形
成される染着層108とを備えたインクシート109を使用す
る。

前記染着層108は昇華性の染料を分子的に分散させた
樹脂よりなる染料転写層110と、樹脂等の結合剤112で固
定化した染料粒子113よりなる染料供給層111との２層構
造になっている。

サーマルヘッドによって熱せられたとき、第７図に示
す如く前記サーマルヘッドからの熱が基材107と、染料
供給層111とを通って染料転写層110へ供給され、この染
料転写層110と接する受像紙114の受容層115の温度を上
昇させることにより、染料転写層110中に分子分散した
染料が濃度勾配により染料転写層110側から受容層115側
に移動して固定化される。

濃度階調性を有するドットを形成する必要があるとき
には、第８図に示す如くサーマルヘッドの各発熱素子に
階調数に応じた数のパルスを印加して各発熱素子の発熱
量を制御し染料転写層110から受像紙114側に移る染料の
量を制御して印字濃度を変更する。

但し、受像紙114に対する１ラインの印字時間Tlが決
められているので、この印字時間Tlより短い時間（パル
ス幅内）で各発熱素子に上述したパルスを印加してい
る。

しかしながらこのようなマルチ印字装置においては、
マルチ印字の際には、インクシート109の移動速度が受
像紙114の移動速度よりも遅いため、等倍印字と比較し
て染料転写層110の1/n倍の面積分の染料を受容層115側
に転写しなければならない。

このため、第９図に示す如くインクシートと受像紙の
速度差ｍに応じて印字濃度が薄くなるという問題があっ
た。

〈考案の目的〉 本考案は上記の事情に鑑み、サーマルヘッドへの印加
パルスの状態を最適化することによりインクシートと受
像紙の速度差ｍが増加したときでも印字濃度が低下する
のを防止することができるマルチ印字装置を提供するこ
とを目的としている。

〈考案の構成〉 上記目的を達成するため、本考案は、サーマルヘッド
の各発熱素子を選択的に発熱させてインクシートの染料
転写層から染料を昇華させて受像紙の受容層側に転写
し、前記インクシートの移動速度と前記受像紙の移動速
度とが異なって前記インクシートの使用量を前記受像紙
の消費量に比べて少ない量とするマルチ印字装置におい
て、前記インクシートの染料転写層から前記受像紙の受
容層に染料が転写された後に前記サーマルヘッドの各発
熱素子に補充パルスを供給することにより前記インクシ
ートの温度を印字温度より低く、かつ昇華温度より所定
温度高い温度まで下げて前記インクシートの染料供給層
から前記染料転写層側に染料を拡散させて前記染料転写
層側の染料濃度を高める補充電流供給部を備えたもので
ある。

以下、一実施例に基づいて本考案を具体的に説明す
る。

第１図は本考案によるマルチ印字装置の一実施例を示
すブロック図である。

この図に示すマルチ印字装置はクロック信号CKがサー
マルヘッド駆動回路から供給される毎にサーマルヘッド
駆動回路からの印字データD1を取り込んでシフトする印
字データ入力部１と、ロード信号LDがサーマルヘッド駆
動回路から供給される毎に前記印字データ入力部１によ
って取り込まれた印字データD1をパラレルに読み出して
保持する印字データロード部２と、サーマルヘッド駆動
回路からブロック選択信号SB1、SB2が供給されたとき前
記印字データロード部２に保持されている印字データ内
容に応じた駆動信号を発生する駆動信号発生部３と、ダ
ーリントン接続された複数のトランジスタ４、５および
これらの各トランジスタ４、５に各々接続される複数の
発熱抵抗素子６を備え前記駆動信号発生部３から駆動信
号が出力されたときこれらかの各駆動信号に対応したト
ランジスタ４、５を動作させて各発熱抵抗素子６を発熱
させる発熱部７とを備えている。

次に、第１図、第２図（ａ）（ｂ）を参照しながらこ
の実施例の動作を説明する。

まず、印字動作に先立って、第２図（ｂ）に示す如く
発熱部７の電源電圧VHDがサーマルヘッド駆動回路によ
り印字電圧まで高められる。

次いで、サーマルヘッド駆動回路からクロック信号CK
が供給される毎に、印字データ入力部１はサーマルヘッ
ド駆動回路からシリアルに供給される印字データD1を１
ビット単位で取り込んでこれをシフトする。

この後、サーマヘッド駆動回路からロード信号LDが供
給されれば、印字データロード部２は前記印字データ入
力部１から印字データD1をパラレルに読み出してこれを
保持しながら駆動信号発生部３に供給する。

そして、サーマルヘッド駆動回路からブロック選択信
号SB1、SB2が供給されたとき、駆動信号発生部３は前記
印字データロード部３の出力に基づいた駆動信号を発生
して発熱部７の各発熱素子６に駆動電流Iaを選択的に供
給させて第２図（ａ）に示す如くこれらを発熱させイン
クシート（図示は省略する）の染料転写層から染料を昇
華させて受像紙の受容層に転写させる。

以下、第２図（ｂ）に示す如く印字濃度に応じた数だ
けブロック選択信号SB1、SB2がサーマルヘッド駆動回路
から供給されて上述した動作が繰り返され受像紙に所要
濃度のドットが形成される。

この後、発熱部７の電源電圧VHDがサーマルヘッド駆
動回路により染料の昇華温度電圧まで下げられ、上述し
た動作が繰り返される。

これによって、各発熱素子６に補充パルスとしての駆
動電流Ibが選択的に供給されて第２図（ａ）に示す如く
これらの各発熱素子６が低い温度（印字開始温度より低
く染料昇華温度より高い温度）にされる。

この結果、インクシートの染料供給層側から染料転写
層側に染料が拡散して染料転写層側の染料濃度が元の値
に戻される。つまり、サーマルヘッド駆動回路は、イン
クシートの染料転写層から受像紙の受容層に染料が転写
された後にサーマルヘッドの各発熱素子に補充パルスを
供給することによりインクシートの温度を印字温度より
低く、かつ昇華温度より所定温度高い温度まで下げてイ
ンクシートの染料供給層から染料転写層側に染料を拡散
させて染料転写層側の染料濃度を高める。このように、
サーマルヘッド駆動回路は、インクシートの染料転写層
から受像紙の受容層に染料が転写された後にサーマルヘ
ッドの各発熱素子に補充パルスを供給する補充電流供給
部を有するものである。

このようにこの実施例においては、サーマルヘッドの
各発熱素子６に駆動電流を選択的に供給して印字を行な
った後、前記各発熱素子６に補充電流パルスを供給して
インクシートの染料供給層側から染料転写層側に染料を
拡散させ染料転写層側の染料濃度を元に戻すようにして
いるので、速度ｎが増加したときでも印字濃度が低下す
るのを防止することができる。

〈考案の効果〉 以上説明したように本考案によれば、サーマルヘッド
の各発熱素子を選択的に発熱させてインクシートの染料
転写層から染料を昇華させて受像紙の受容層側に転写
し、前記インクシートの移動速度と前記受像紙の移動速
度とが異なって前記インクシートの使用量を前記受像紙
の消費量に比べて少ない量とするマルチ印字装置におい
て、前記インクシートの染料転写層から前記受像紙の受
容層に染料が転写された後に前記サーマルヘッドの各発
熱素子に補充パルスを供給することにより前記インクシ
ートの温度を印字温度より低く、かつ昇華温度より所定
温度高い温度まで下げて前記インクシートの染料供給層
から前記染料転写層側に染料を拡散させて前記染料転写
層側の染料濃度を高める補充電流供給部を備えたので、
インクシートと受像紙との速度差が増加したときでも印
字濃度が低下するのを防止することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案によるマルチ印字装置の一実施例を示す
ブロック図、第２図（ａ）（ｂ）は同実施例の動作例を
示す模式図、第３図は従来から知られている熱転写印字
装置の一例を示すブロック図、第４図は第３図に示す熱
転写印字装置の転写動作例を示す模式図、第５図は第３
図に示す熱転写印字装置によって形成されるドットの一
例を示す模式図、第６図は従来から知られているマルチ
印字装置で用いられるインクシートの一例を示す断面
図、第７図は第６図に示すインクシートの印字動作を説
明するための断面図、第８図は従来から知られているマ
ルチ印字装置において印字濃度を制御するときの制御例
を示す模式図、第９図は従来から知られているマルチ印
字装置の速度差と印字濃度との関係を示す模式図であ
る。 １……印字データ入力部、２……印字データロード部、
３……駆動信号発生部、６……発熱素子、７……補充電
流供給部（発熱部）。

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】サーマルヘッドの各発熱素子を選択的に発
   熱させてインクシートの染料転写層から染料を昇華させ
   て受像紙の受容層側に転写し、前記インクシートの移動
   速度と前記受像紙の移動速度とが異なって前記インクシ
   ートの使用量を前記受像紙の消費量に比べて少ない量と
   するマルチ印字装置において、前記インクシートの染料
   転写層から前記受像紙の受容層に染料が転写された後に
   前記サーマルヘッドの各発熱素子に補充パルスを供給す
   ることにより前記インクシートの温度を印字温度より低
   く、かつ昇華温度より所定温度高い温度まで下げて前記
   インクシートの染料供給層から前記染料転写層側に染料
   を拡散させて前記染料転写層側の染料濃度を高める補充
   電流供給部を備えたことを特徴とするマルチ印字装置。