JP2500409B2 - 分割タンクの屋根構造および屋根施工方法 - Google Patents

分割タンクの屋根構造および屋根施工方法

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JP2500409B2
JP2500409B2 JP4098188A JP9818892A JP2500409B2 JP 2500409 B2 JP2500409 B2 JP 2500409B2 JP 4098188 A JP4098188 A JP 4098188A JP 9818892 A JP9818892 A JP 9818892A JP 2500409 B2 JP2500409 B2 JP 2500409B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、タンク内に仕切りを
設けて多品種の液体、粉体、スラリー等の流体を貯蔵で
きるようにした分割タンクの屋根構造およびその施工方
法に係わり、特に貯蔵液が可燃物や危険物である場合に
必要とされる放爆構造として最適な分割タンクの屋根構
造およびその施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】分割タンクは、タンクに多品種の流体を
貯蔵する目的でタンク内に仕切りを設けたもので、タン
ク1基あたり2〜10種類程度の流体を貯蔵するものが
多い。分割タンクの仕切構造の形式としては、コルゲー
ト板(波形板)、平板等の炭素鋼板やステンレス鋼板を
図15(A)に示すように垂直平面形状に使用する直面
仕切板形式、同図(B)に示すように上記鋼板を曲げ加
工した曲面仕切板形式、同図(C)に示すような上記鋼
板をタンク側板と同心円状に配した同心円二重殻形式等
の各種方式がある。また、上記直面仕切板形式でタンク
を分割する場合、タンクの分割数に応じて図16
(A),(B),(C)に示すように、仕切板をタンク
中心から側板に向かって放射状に設けてタンクを分割す
る形式が多い。
【0003】これら各種の分割タンクにおいては、仕切
板で仕切られた各部屋は、貯蔵する液体、スラリー、粉
粒体等が隣接する部屋に流入しないようにするのはむろ
んのこと、タンク上部の屋根近傍においても、貯蔵液体
やスラリーの気化したガスや粉塵が隣接する部屋に流入
して相互に混じり合うコンタミネションが、生じないよ
うに、仕切板と屋根とを気密に溶接接続して各部屋を密
閉構造としている。
【0004】この従来の分割タンクの組立手順を詳しく
説明すると次のようになる。まず、第1の例として通常
の円筒状タンクに仕切板を取り付けた分割タンクの組立
手順と屋根板取付構造を図17,図18および図19を
用いて説明する。すなわち、この分割タンクは、底板1
3、側板14、支柱15、側柱16、仕切板17の順に
組み立てられ、図17の状態に形成される。次いで図1
8の如く屋根板18が取り付けられる。
【0005】なお、図18(B)は屋根板18の板取り
をできあいの四辺形の平板(屋根母材)18Aで行った
場合を示すもので、同図18(C)は屋根板18の板取
を扇形の平板(屋根母材)18Aで行ったもので、それ
ぞれの屋根母材18A相互の溶接は、重ね合わせ片側隅
肉溶接、重ね合わせ両側隅肉溶接または突き合わせ溶接
等の通常のタンク屋根を形成する溶接方法が採用されて
おり、仕切板17によって区画される仕切部屋の大きさ
に対応する複数の屋根板を形成するのでなく、屋根母材
18Aどうしを溶接してタンク全体を覆うように一つの
屋根板18を形成している。
【0006】この屋根板18を仕切板17および側板1
4頂部のトップアングル19に取り付ける際には、図1
9(A),(B)に示すように、屋根板18と仕切板1
7との溶接は、各仕切板17で区画された部屋の気密性
を保つために、タンク内部で両側隅肉溶接を行ってい
る。したがって、この溶接部の強度は、側板14を構成
する側板母材相互の溶接強度と同等程度の強度になって
いる。
【0007】また、シールが難しい側板14の頂部のト
ップアングル19と屋根板18と仕切板17との3重点
の部分の溶接は、図19(C)の如くさらにシール確保
の為に溶接量を増やしてタンク内部からシール溶接20
を行っている。次に、第2の例として屋根板を貫通させ
て仕切板を取り付けた分割タンクの組立手順と屋根板取
付構造を図20〜図23を用いて説明する。
【0008】すなわち、この分割タンクは、底板13、
側板14、支柱15、側柱16、仕切板27の順に組み
立てられ、図20の状態に形成される。次いで図21の
如く屋根板18が取り付けられる。この屋根板18を仕
切板27およびトップアングル19に取り付ける際に
は、図22に示すように、屋根板18と貫通した仕切板
27との溶接は、各仕切板27で区画された部屋相互の
気密性および屋根板を隔てた外部との気密性を保つため
に、タンク外側で両側隅肉溶接を行っている。
【0009】さらに、シールが難しい側板14の頂部の
トップアングル19と屋根板18と仕切板27との3重
点の部分の接合は、前述の図19(C)で示しように、
シール溶接を行うか、もしくは図23の如くトップアン
グル19と屋根板18と仕切板27との3重点の部分に
四辺形などの小板21を取り付け、シール確保の為に溶
接量を増やしてタンク内部からシール溶接を行ってい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】近年、これら分割タン
クを用いて危険物や可燃物を貯蔵したいとの要望が多く
なってきている。しかし、これら従来の分割タンクを用
いて、危険物を貯蔵する場合には、特に各仕切られた室
が、なんらかの原因で、異常に内圧が上昇した場合、屋
根板の取り付け溶接部が破壊して内部の圧力を放出し、
タンクの屋根板を除いた部分が破壊することがなく、タ
ンクから危険物液体が漏れることがないようにする放爆
構造が要求される。
【0011】しかしながら、これら従来の分割タンクで
は、仕切られた部屋毎の放爆構造は考慮されておらず、
側板と屋根板との溶接部を 4.5mm以下の脚長の隅肉溶
接としただけであった。したがって、従来のいずれの分
割タンクも、タンク内部の仕切板と屋根板との接続部の
溶接強度が高く、放爆構造は確保出来ていなかった。す
なわち、前者の分割タンクにあっては、屋根板と仕切板
との溶接をタンク内部で両側隅肉溶接を行っており、こ
の溶接部の強度は、側板の強度と同程度になっていると
共に、側板の頂上のトップアングルと屋根板と仕切板と
の3重点の部分のシール溶接が難しく、この部分のシー
ル確保の為に溶接量が増える結果となり、この部分の放
爆構造確保が出来ないことになる。
【0012】また、後者の分割タンクにあっても、屋根
板と貫通した仕切板との溶接を外側で両側隅肉溶接を行
っていると共に、側板の頂上のトップアングルと屋根板
と仕切板との3重点の部分に小板を取り付け溶接してい
る。したがって、構造上、溶接量が増える結果となり、
この部分の放爆構造の確保がなされていないことにな
る。
【0013】この発明は、以上のような従来の問題に鑑
みてなされたもので、従来分割タンクにおいては貯蔵さ
れることがなかった可燃物や危険物でも貯蔵することが
出来る、放爆構造として最適な分割タンクの屋根構造お
よびその施工方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】すなわち、この発明の請
求項1に係る分割タンクの屋根構造は、タンク内にタン
ク屋根部に接する仕切部材が設けられた分割タンクの屋
根構造において、前記仕切部材の上部およびタンク側板
の上部に一体的に溶接固定された天板部材と、天板部材
に合わせて並べられタンク外側からの重ね合わせ片側隅
肉溶接によって該天板部材に固定されて上記仕切部材に
よって区画される仕切部屋の大きさに対応して形成され
た屋根板とを備えたことを特徴とするものである。
【0015】また、この発明の請求項3に係る分割タン
クの屋根施工方法は、タンク内にタンク屋根部に接する
仕切部材が設けられた分割タンクの屋根施工方法におい
て、前記仕切部材の上部およびタンク側板の上部に天板
部材を、天板部材の構成部材どうしの接続を突合わせ溶
接で、また天板部材と仕切部材およびタンク側板との接
続を両側隅肉溶接、突合わせ溶接または片側隅肉溶接で
行い、一体的に設ける工程と、天板部材に合わせて並べ
た屋根母材または他の場所で屋根母材どうしを溶接して
上記仕切部材によって区画される仕切部屋の大きさに対
応して形成された屋根板を該天板部材にタンク外側から
重ね合わせ片側隅肉溶接すると共に屋根母材どうしの継
手がある場合には該継ぎ手を溶接によって継ぎ合わせる
工程とを含むことを特徴とするものである。
【0016】本発明における仕切部材とは、実質的にタ
ンク内部を仕切り分割するものを言い、コルゲート板、
平板等で形成された通常仕切板と呼ばれるものの他に、
タンク内部を仕切り分割する部材として機能している支
柱、側柱等を含むものである。また、仕切部材の上部お
よびタンク側板の上部に一体的に溶接固定される天板部
材は、上面が平面状のものが好ましいが、屋根母材と重
ね合わせ隅肉溶接ができるようなものであれば、その形
状に制限がない。一般には前記コルゲート板、平板等で
形成された仕切板の上部、支柱の上部、側柱の上部に設
けられる天板は、平板が多く用いられ、タンク側板の上
部に設けられる天板部材は、トップアングルとよく称せ
られているようにアングル(山形鋼)が多く用いられて
いるが、チャンネル(みぞ形鋼)、H形鋼、I形鋼等で
も差し支えない。
【0017】天板部材の取り付けは、天板部材の構成部
材どうしの接続を、各構成部材の接続部上面が大きな段
差などのない略平滑な面となるように突合わせ溶接で行
い、該天板部材上面が屋根母材と重ね合わせ隅肉溶接が
できるようにすると共に、天板部材と仕切部材またはタ
ンク側板との接続を両側隅肉溶接、突合わせ溶接または
片側隅肉溶接で行い一体的に設ける。
【0018】すなわち、天板部材の構成部材どうしの接
続は、両側突き合わせ溶接またはタンク外側からの片側
突き合わせ溶接のいずれでもよいが、すべて両側突き合
わせ溶接では施工出来ず、どうしても数カ所は片側突き
合わせ溶接を行わざるを得ない。また、天板部材と仕切
部材またはタンク側板との接続は、両側隅肉溶接、突合
わせ溶接または片側隅肉溶接のいずれか任意の溶接方法
でよく、要は天板部材と仕切部材またはタンク側板とが
気密に一体となればよい訳である。したがって、両側隅
肉溶接は、一方の側を連続溶接し、他方を歪み防止や固
定補助の目的だけで断続に溶接してもよい。
【0019】屋根の取り付けは、タンク上部で上記天板
部材に合わせて屋根母材を並べ、そのまま屋根母材を該
天板部材にタンク外側から重ね合わせ片側隅肉溶接を行
うと共に、屋根母材相互を重ね合わせ両側隅肉溶接また
はタンク外側からの重ね合わせ片側隅肉溶接によって接
続し、上記天板部材すなわち仕切部材によって区画され
る個々の仕切部屋の大きさに対応した屋根板に形成しつ
つ該天板部材に固定してもよく、また工場、タンク近傍
の地上等のタンク上部以外の他の場所で屋根母材どうし
を片側隅肉溶接、両側隅肉溶接、場合によっては突き合
わせ溶接によって接続して上記仕切部材(すなわち天板
部材)によって区画される個々の仕切部屋の大きさに対
応した屋根板を形成し、これら屋根板をつりあげて上記
天板部材に合わせて並べ、該屋根板を該天板部材にタン
ク外側から重ね合わせ片側隅肉溶接を行い固定してもよ
い。なお、この記載からも分かるように本明細書におい
ては、用語「屋根板」を所定の形状に形成されたものに
用い、その素材である平板等の「屋根母材」と区別して
用いている。
【0020】なお、屋根母材どうしの溶接は、特にタン
ク上部で行う場合は作業の容易性からタンク外側から重
ね合わせ片側隅肉溶接を行うことが好ましい。その場合
でも、積雪等の外部荷重に耐える溶接強度を確保する必
要がある。また、タンクの用途、すなわち貯蔵する流体
によっては、隙間腐食防止等のために両側隅肉溶接等の
腐食対策用溶接を行わなければならない場合がある。
【0021】また、天板部材と屋根母材または屋根板と
の重ね合わせ片側隅肉溶接は、その脚長が、 4.5mm以
下にするのが好ましい。なお、脚長とは、JIS Z
3001 に定義されているように、継手のルートから
すみ肉溶接の止端までの距離を意味し、平たく言えば隅
肉溶接線の幅を意味する。したがって、天板部材と屋根
母材または屋根板との重ね合わせ片側隅肉溶接の脚長を
4.5mmにした場合、前述した天板部材の構成部材どう
しの突き合わせ溶接で、各構成部材の接続部上面が大き
な段差などのない略平滑な面とする場合であっても、実
質的には各構成部材との段差が4〜4.2 mm程度あって
も上記 4.5mmの脚長でカバー出来て差し支えない。こ
のことは、天板部材の上面が必ずしも平面状でなくても
良いことを示すもので、要は上面が屋根母材と重ね合わ
せ隅肉溶接ができる形状であればよい。
【0022】
【作用】以上の手段を講じることにより、仕切部材(す
なわち天板部材)によって区画されるそれぞれの仕切部
屋に応じて個々に独立して屋根板が形成され、天板部材
にタンクの外側からの重ね合わせ片側隅肉溶接によって
固定されるので、仕切部材によって区画された各仕切部
屋が放爆構造を持つことができて、安全性が確保でき、
従来の分割タンクにおいては貯蔵されることがなかった
可燃物や危険物でも貯蔵することが出来る。
【0023】しかも、仕切部材と屋根板または屋根母材
との接続を全て天板部材を介して取り付けるようにした
ので、側板の頂上と屋根板と仕切部材との3重点の厄介
な部分のシール溶接がなくなるか極めて少なくなるの
で、この部分の溶接量が減って、この部分の放爆構造確
保が出来ると共に、各仕切部屋が気密に密閉される。さ
らに、上面が平面状の天板部材を介して屋根母材又は屋
根板を取りつけるのでその屋根全体を歪みが少なく形成
することが出来ると共に、その施工が容易となる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述
する。2分割タンクを例にとって本発明の分割タンクの
屋根構造の一実施例を説明する。図1〜図3において、
図示しない底板には、側板1と支柱2と側柱3とが立設
されている。前記支柱2はタンクの中央部に配設され、
前記側柱3は一対用意され、支柱2を中心においてタン
クの周方向に180度の角度離間した側部にそれぞれ配
設される。
【0025】タンク内には、タンク屋根部と接する仕切
部材4が設けられている(図3参照)。この仕切部材4
は、2分割タンクであるからタンク内を2室に仕切るも
のであり、タンクの直径方向に沿って配設される。この
仕切部材4は、前記支柱2と、一対の側柱3と、該支柱
2と一対の側柱3の一方とにそれぞれ接続する一対の仕
切板4Aとから構成されている。
【0026】上記一対の仕切板4Aは、支柱2を中心に
おいてタンクの半径方向両側部にそれぞれ配設されてい
る。これら各仕切板4Aは、それぞれ複数の仕切板母材
4aから構成されており、本実施例においては横長の四
辺形の仕切板母材4aが縦方向に配列され、隣接する仕
切板母材4aどうしは突合わせ溶接されている。また、
各仕切板4Aの両側部と支柱2及び側柱3とはそれぞれ
突合わせ溶接されている。
【0027】ここで、前記仕切部材4(支柱2、一対の
側柱3、一対の仕切板4A)の上部および側板1の上部
に一体的に溶接固定された上面が平面状の天板部材5が
設けられている。この天板部材5は、支柱2の上部と各
仕切板4Aの支柱2側端部の上部とに溶接固定される円
形の単一の支柱天板5Aと、各仕切板4Aの両端部を除
く中間部の上部に溶接固定される略長方形(帯状)の一
対の仕切板天板5Bと、側柱3の上部と仕切板4Aの側
柱3側端部の上部とに溶接固定される略方形の一対の側
柱天板5Cと、側板1の上部に溶接固定されるトップア
ングル6とから構成されている。支柱天板5Aと仕切板
天板5B、該仕切板天板5Bと側柱天板5C、側柱天板
5Cとトップアングル6とは、それぞれ突合わせ溶接さ
れる。支柱天板5Aと仕切板天板5B、該仕切板天板5
Bと側柱天板5C、側柱天板5Cとトップアングル6と
をそれぞれ突合わせ溶接する際には、後述する屋根板を
敷設する支柱天板5A、仕切板天板5B、側柱天板5
C、トップアングル6の各上面が大きな段差などのない
略平滑な面となるように、確認した後に溶接を行う。す
なわち、支柱天板5Aと仕切板天板5Bと側柱天板5C
とをつらねる上面がタンク屋根の勾配と一致するように
形成すると共に、トップアングル6の上面が水平となる
ように取り付け、側柱天板5Cとトップアングル6と
は、その接続上面がタンク屋根の勾配と対応する所定の
傾斜角度になるように突き合わせ溶接するのが一般的で
ある。
【0028】天板部材5(支柱天板5A、一対の仕切板
天板5B、一対の側柱天板5C、トップアングル6)と
仕切部材4(支柱2、一対の側柱3、一対の仕切板4
A)および側板1との溶接は、気密に一体になれるので
あればどの様な溶接方法でもく、また側板母材相互の溶
接強度と同等としてもよい。本実施例では、仕切板4A
と仕切板天板5Bとを図2の如く両側隅肉溶接とし、側
板1と天板部材5(トップアングル6)との溶接を図1
の如く突き合わせ溶接とし側板母材相互の溶接強度と同
等としている。
【0029】以上のように設けられた天板部材5に合わ
せて並べられタンク外側からの重ね合わせ片側隅肉溶接
によって該天板部材5に固定されて上記仕切部材4によ
って区画される仕切部屋の大きさに対応して形成された
屋根板7が設けられている(図1参照)。本実施例にお
いて、仕切部材4によって区画される仕切部屋の大きさ
に対応して形成された一対の屋根板7は略半円形状に形
成されている。各屋根板7の板取は略扇形の平板からな
る屋根母材7Aで行われ、隣接する屋根母材7Aどうし
は両側隅肉溶接またはタンク外側から片側隅肉溶接され
る。この屋根母材7Aどうしの溶接は、必要により、積
雪などの外部荷重に耐えうる溶接強度を持たせたり、両
側隅肉溶接等の腐食対策用の溶接構造とする。
【0030】各屋根板7と天板部材5とは外側から重ね
合わせ片側隅肉溶接される。すなわち、図2には、仕切
板天板5Bと一対の屋根板7とを重ね合わせ片側隅肉溶
接した例を示しており、その溶接の脚長は 4.5mm以下
に設定されている。なお、天板部材5と屋根母材7Aま
たは屋根板7との重ね合わせ片側隅肉溶接の脚長を 4.5
mmにした場合、前述した天板部材5の構成部材(支柱
天板5A、一対の仕切板天板5B、一対の側柱天板5
C、トップアングル6)どうしの突き合わせ溶接で、各
構成部材の接続部上面が大きな段差などのない略平滑な
面とする場合であっても、実質的には各構成部材との段
差が4〜4.2 mm程度あってもよい。すなわち、図1
(C)に示した如く側柱天板5Cとトップアングル6と
の接続部で段差が4〜4.2 mm程度あっても屋根板7と
トップアングル6の脚長が4.5mmなので、屋根板7と
トップアングル6との接続ができ、差し支えないわけで
ある。
【0031】なお、屋根板7の板取りは、後述するよう
に、できあいの四辺形の平板からなる屋根母材で行って
も良い。次に、上述の構造の2分割タンクの屋根施工方
法の一実施例を2分割タンク全体の組立手順を説明しつ
つ述べる。2分割タンクの組立手順は次のステップ1〜
8から成り立っている。 ステップ−1 底板母材の敷設及び部分的な溶接の実
施 図4の如く、例えば鉄筋コンクリートスラブ基礎等上に
アスファルトやモルタル等敷きつめたタンクの基礎の上
面に組立基準線をマークし、底板8を構成する底板母材
8Aを敷設する。なお、大型のタンクの場合は、側板が
設置される部分に多数の平板をタンク基礎上に環状に形
成されたアニュラー板が設けられる。
【0032】底板母材8Aの敷設後、底板8上に構成さ
れる側板形成用の側板母材が設置される部分の底板母材
8A(またはアニュラー板の部分)相互を、側板組み立
て前に溶接する。底板母材8Aの残りの溶接は、次のス
テップ−2が完了またはステップ−2の途中の最下段側
板母材と底板母材8Aとの溶接が完了した以降に行われ
る。
【0033】図4中9は溶接線である。 ステップ−2 側板の組立および溶接の実施 図5において、まず、底板8(アニュラー板の部分)上
に側板母材を一段分以上配置した後に、最下段側板母材
相互のタテ溶接後に側板母材と図4の底板母材8Aとの
溶接を行う。(なお、底板8と側板母材とが一体に形成
されたアニューラ部材を用いた場合には、側板母材を一
段分配置すると共に該アニューラ部材と側板母材との溶
接を行う。)次いで、順次側板母材を積み重ねては、側
板母材相互の溶接を行う。この側板母材相互の溶接は、
両面突き合わせ溶接が行われる。このようにして、側板
1が形成される。 ステップ−3 トップアングルおよび補強部材の取り
付け 図6の如く、側板1の上部に天板部材を構成するトップ
アングル6を取り付ける。また、必要により側板1の外
面中間部に環状の補強部材10を単数または複数取り付
ける。
【0034】側板1とトップアングル6との取り付け
は、トップアングル6どうしの接続を該トップアングル
6の上面が屋根母材と重ね合わせ隅肉溶接ができるよう
に平面状にするため突合わせ溶接で行い、またトップア
ングル6と側板1との接続を両側隅肉溶接、突合わせ溶
接または片側隅肉溶接で行い一体的に設ける。すなわ
ち、トップアングル6どうしの接続は、両側突き合わせ
溶接またはタンク外側からの片側突き合わせ溶接のいず
れでもよい。また、トップアングル6と側板1との接続
は、両側隅肉溶接、突合わせ溶接または片側隅肉溶接の
いずれか任意の溶接方法でよく、要はトップアングル6
と側板1とが気密に一体となればよい訳である。したが
って、両側隅肉溶接は、一方の側を連続溶接し、他方を
歪み防止や固定補助の目的だけで断続に溶接してもよ
い。
【0035】なお、このステップ−3は、後述するステ
ップ−6の仕切部材の天板部材の取り付けと同時に行っ
てもよい。 ステップ−4 支柱および側柱の組立 図7の如く、底板8上に支柱2および側柱3を組立て
る。また、必要に応じて支柱2の頂部に支柱天板5A
を、さらに側柱3の頂部に側柱天板5Cをそれぞれ取り
付ける。この支柱天板5Aと側柱天板5Cの取り付け
は、後述するステップ−6の仕切部材の天板部材の取り
付けと同時に行ってもよい。
【0036】この段階で必要に応じて屋根板支持材11
を、例えば図8の如く設ける。この場合、支柱2の頂部
と側板1の頂部に目板12を取りつけておき、この目板
12に屋根支持材11を溶接固定する。この時、屋根支
持材11の上面と側板1のトップアングル6および後述
する天板の上面とは同じレベルにする。 ステップ−5 仕切板の組み立て 図9の如く、支柱2と側柱3の間に、下側から仕切板4
Aを構成する仕切板母材4aを組立溶接していく。
【0037】すなわち、まず仕切板母材4aを一段分配
置し、この最下の段仕切板母材4a相互のタテ溶接があ
ればこのタテ溶接を行うと共に、仕切板母材4aと底板
8、支柱2、側柱3との仮付け溶接を行う。次いで、順
次仕切板母材4aを積み重ねては、好ましくはタテ溶
接、ヨコ溶接の順に仕切板母材4a相互の突き合わせ溶
接を行うと共に、該仕切板母材4aと底板8、支柱2、
側柱3との仮付け溶接を行う。
【0038】また、仕切板4Aは、タンク内のその場で
上記のように仕切板母材4aを溶接固定し組み立てても
よいが、タンクの外で2〜3枚の仕切母材4a相互を溶
接組立した後に、もしくは仕切板4A全体を形成した後
に、タンク内に組み込んでもよい。いずれにしても、最
後に、側柱3と仕切板4A、支柱2と仕切板4A、底板
8と仕切板4Aの本溶接を行う。
【0039】ステップ−4において、必要に応じて屋根
板支持材11を設けた場合、仕切板4Aと屋根板支持材
11との関係は図10に示すようになる。 ステップ−6 天板の取り付け 次に、図11の如く、仕切板天板5Bを仕切板4Aに仮
付で固定し、その後支柱天板5Aと仕切板天板5B、仕
切板天板5Bと側柱天板5C、側柱天板5Cとトップア
ングル6との突き合わせ溶接と、仕切板天板5Bと仕切
板4Aとの両側隅肉溶接と、を適宜行う。
【0040】ここで、支柱天板5Aと仕切板天板5B、
該仕切板天板5Bと側柱天板5C、側柱天板5Cとトッ
プアングル6とをそれぞれ突合わせ溶接する際には、後
述する屋根板を敷設する支柱天板5A、仕切板天板5
B、側柱天板5C、トップアングル6の各上面が大きな
段差などのない略平滑な面となるように、確認した後に
溶接を行うが、その段差が4〜4.2 mm程度あってもよ
いのは、前述した通りである。
【0041】なお、仕切部材4(支柱2、一対の側柱
3、一対の仕切板4A)と天板部材5(支柱天板5A、
一対の仕切板天板5B、一対の側柱天板5C)との溶接
は側板母材どうしの溶接強度と同等となるようにしても
よい。また、上記仕切部材4と天板部材5またはタンク
側板1との溶接は、突合わせ溶接、片側隅肉溶接または
両側隅肉溶接でも良く、要は仕切部材4と天板部材5ま
たはタンク側板1とが気密に一体となればよい訳であ
る。したがって、両側隅肉溶接は、一方の側を連続溶接
し、他方を歪み防止や固定補助の目的だけで断続に接続
してもよい。
【0042】さらに、支柱天板5Aと仕切板天板5B、
該仕切板天板5Bと側柱天板5C、側柱天板5Cとトッ
プアングル6との接続は、両側突き合わせ溶接またはタ
ンク外側からの片側突き合わせ溶接のいずれでもよい
が、すべて両側突き合わせ溶接では施工出来ず、どうし
ても数カ所は片側突き合わせ溶接を行わざるを得ない。 ステップ−7 屋根板の取り付け 図12の如く、上記天板部材5や前記屋根支持材11に
合わせて屋根母材7Aを敷設し、屋根母材7A相互、お
よび屋根母材7Aと天板部材5とをタンク外側から仮付
け固定し、その後当該屋根母材7Aを該天板部材5にタ
ンク外側から重ね合わせ片側隅肉溶接を行うと共に、屋
根母材7A相互を図13(A)に示すように重ね合わせ
両側隅肉溶接、または同図(B)に示すようにタンク外
側からの重ね合わせ片側隅肉溶接によって接続し、天板
部材5、要するに仕切部材4によって区画される個々の
仕切部屋の大きさに対応した大きさの屋根板7を形成し
つつ天板部材5に固定する。
【0043】ここで、屋根板を取り付ける工程を整理す
ると次のようになる。 A 屋根母材7Aと仕切板天板5Bとは外側から片側の
隅肉溶接を行う。 B 屋根母材7Aとトップアングル6とは外側から片側
の隅肉溶接を行う。 C 屋根母材7Aと支柱天板5Aとは外側から片側の隅
肉溶接を行う。 D 屋根母材7Aと側柱天板5Cとは外側から片側の隅
肉溶接を行う。
【0044】なお、上記片側の隅肉溶接脚長4.5 mm
以下にする。 E 屋根母材7A相互の溶接は、片側隅肉溶接又は両側
隅肉溶接を行う。 なお、屋根母材7A相互の溶接は、必要に応じて積雪等
の外部荷重に耐える溶接強度及び腐食対策用溶接を行う
のが好ましい。すなわち、屋根母材7Aどうしの溶接
は、特にタンク上部で行う場合は作業の容易性からタン
ク外側から重ね合わせ片側隅肉溶接を行うことが好まし
い。その場合でも、必要によっては積雪等の外部荷重に
耐える溶接強度を確保する必要がある。また、タンクの
用途、すなわち貯蔵する流体によっては、隙間腐食防止
等のために両側隅肉溶接等の腐食対策用溶接を行わなけ
ればならない場合がある。
【0045】上記A,B,C,D,Eの順は特に限定さ
れず、任意である。なお、前記屋根板支持材11を設け
た場合、この屋根板支持材11には屋根板7(屋根母材
7A)を溶接しない。また、工場、タンク近傍の地上等
のタンク上部以外の他の場所で屋根母材7Aどうしを片
側隅肉溶接、両側隅肉溶接、場合によっては図13
(C)に示すように突き合わせ溶接によって接続して上
記仕切部材4(すなわち天板部材5)によって区画され
る個々の仕切部屋の大きさに対応した屋根板7を形成
し、これら屋根板7をつりあげて上記天板部材5に合わ
せて並べ、該屋根板7を該天板部材5にタンク外側から
重ね合わせ片側隅肉溶接を行い固定してもよい。ステッ
プ−8 ノズル等の付属設備を取り付ける。
【0046】タンク側部、屋根部に、必要なノズル、マ
ンホール、階段等の附属設備を溶接で取り付ける。上記
ステップ−1からステップ−8に於ける施工手順は、該
当ステップが完全にタンク全体にわたって終了してから
次のステップに移行してもよく、また該当ステップを実
施しつつ、該当ステップが完了した部分は、次のステッ
プに移行し、並行して複数のステップが行われてもよい
のはむろんである。
【0047】なお、上記実施例は側板1に取り付ける天
板としてトップアングル6を設ける例を示したが、チャ
ンネルやH形鋼、I形鋼などでも差し支えない。また、
上記実施例においては、屋根板の板取を扇形の平板から
なる屋根母材で行うようにしたが、図14に示すよう
に、屋根板7の板取りをできあいの四辺形の平板からな
る屋根母材7Aで行うようにしても良い。
【0048】以上の実施例では、直面仕切板形式の2分
割タンクを例にして本発明の屋根構造および屋根施工方
法を述べたが、前記曲面仕切板形式や同心円二重殻形式
等の各種分割タンクにおいても、また、2分割以上のタ
ンクにおいても、本発明を適用できるのはむろんであ
り、各種の仕切部材形状に合わせてその仕切部材の上部
に、天板部材の構成部材どうしの接続を突合わせ溶接
で、また天板部材と仕切部材との接続を両側隅肉溶接、
突合わせ溶接または片側隅肉溶接で行い一体的に設けば
よいわけで、上記実施例と変わることがない。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によると、
仕切部材によってタンク内に区画された各仕切部屋が放
爆構造を持つことができて、安全性が確保でき、可燃物
や危険物でも貯蔵が可能はなり、仕切部材と複数の屋根
母材などからなる屋根板との接続を全て天板部材を介し
て取り付けるようにしたので、側板の頂部と屋根板と仕
切板との3重点の厄介な部分のシール溶接がなくなるか
極めて少なくなるので、この部分の溶接量が減って、こ
の部分の放爆構造確保が出来ると共に、各仕切部屋が気
密に密閉されるさらに、上面が平面状の天板部材を介し
て屋根板を取りつけるのでその屋根全体を歪みが少なく
形成することが出来ると共に、その施工が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる分割タンクの屋根構造の一実
施例を示す図で、(A)は要部平面図、(B)は要部縦
断面図、(C)はその部分拡大斜視図
【図2】 同上実施例の屋根板と天板と仕切板との取付
部分を示す溶接部縦断面図
【図3】 同上実施例の天板の取付状態を示す図で、
(A)は要部平面図、(B)は要部縦断面図
【図4】 同上の分割タンクの組立手順における底板組
立工程を示す平面図
【図5】 同上分割タンク組立手順における側板組立工
程を示す説明図で、(A)は縦断面図、(B)は平面図
である。
【図6】 同上分割タンク組立手順におけるトップアン
グルおよび側板外面に補強部材を取り付ける工程を示す
縦断面図
【図7】 同上分割タンク組立手順における支柱および
側柱取付工程を示す説明図で、(A)は縦断面図、
(B)は平面図
【図8】 同上の支柱および側柱取付工程で屋根支持部
材を設けた場合の説明図で、(A)は縦断面図、(B)
は平面図
【図9】 同上分割タンク組立手順における仕切板取付
工程を示す説明図で、(A)は縦断面図、(B)は平面
【図10】 同上の仕切板取付工程で屋根支持部材を設け
た場合における仕切板取付工程を示す説明図で、(A)
は縦断面図、(B)は平面図
【図11】 同上分割タンク組立手順における天板取付工
程を示す説明図で、(A)は縦断面図、(B)は平面図
である。
【図12】 同上分割タンク組立手順における屋根板取付
工程を示す説明図で、(A)は縦断面図、(B)は平面
【図13】 同上実施例の屋根板相互の組立状態を説明す
る溶接部断面図で、(A)は第1の例、(B)は第2の
例、(C)は第3の例
【図14】 本発明の他の実施例における屋根板の配列を
説明する平面図
【図15】 分割タンクの仕切構造の形式を説明する横断
面図で、(A)は第1の例、(B)は第2の例、(C)
は第3の例
【図16】 タンクの分割の例を説明する横断面図で、
(A)は第1の例、(B)は第2の例、(C)は第3の
例である。
【図17】 従来の分割タンクの組立手順における底板・
側板・支柱・仕切板組立工程を示す説明図で、(A)は
縦断面図、(B)は平面図
【図18】 同上の分割タンクの組立手順における屋根板
取付工程を示す説明図で、(A)は縦断面図、(B)は
屋根板の板取の一例を示す平面図、(C)は屋根板の板
取の他の例の平面図である。
【図19】 同上の分割タンクの屋根板の取付状態を示す
説明図で、(A)は要部縦断面図、(B)は(A)のB
−B縦断面図、(C)は(A)中C矢視拡大図
【図20】 従来の他の分割タンクの組立手順における底
板・側板・支柱・仕切板組立工程を示す説明図で、
(A)は縦断面図、(B)は平面図
【図21】 同上の分割タンクの組立手順における屋根板
取付工程を示す説明図で、(A)は縦断面図、(B)は
平面図
【図22】 同上の分割タンクの屋根板の取付状態を示す
説明図で、(A)は要部断面図、(B)は(A)のB−
B縦断面図
【図23】 図19(A)の要部断面図
【符号の説明】
1 側板 2 支柱 3 側柱 4 仕切部材 4A 仕切板 4a 仕切板母材 5 天板部材 5A 支柱天板 5B 仕切板天板 5C 側柱天板 6 トップアングル 7 屋根板 7A 屋根母材

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンク内にタンク屋根部に接する仕切部
    材が設けられた分割タンクの屋根構造において、前記仕
    切部材の上部およびタンク側板の上部に一体的に溶接固
    定された天板部材と、天板部材に合わせて並べられタン
    ク外側からの重ね合わせ片側隅肉溶接によって該天板部
    材に固定されて上記仕切部材によって区画される仕切部
    屋の大きさに対応して形成された屋根板とを備えたこと
    を特徴とする分割タンクの屋根構造。
  2. 【請求項2】 天板部材と屋根板との重ね合わせ片側隅
    肉溶接の脚長が、 4.5mm以下であることを特徴とする
    請求項1記載の分割タンクの屋根構造。
  3. 【請求項3】 タンク内にタンク屋根部に接する仕切部
    材が設けられた分割タンクの屋根施工方法において、前
    記仕切部材の上部およびタンク側板の上部に天板部材
    を、天板部材の構成部材どうしの接続を突合わせ溶接
    で、また天板部材と仕切部材およびタンク側板との接続
    を両側隅肉溶接、突合わせ溶接または片側隅肉溶接で行
    い、一体的に設ける工程と、天板部材に合わせて並べた
    屋根母材または他の場所で屋根母材どうしを溶接して上
    記仕切部材によって区画される仕切部屋の大きさに対応
    して形成された屋根板を該天板部材にタンク外側から重
    ね合わせ片側隅肉溶接すると共に屋根母材どうしの継手
    がある場合には該継ぎ手を溶接によって継ぎ合わせる工
    程とを含むことを特徴とする分割タンクの屋根施工方
    法。
  4. 【請求項4】 天板部材と屋根母材または屋根板との重
    ね合わせ片側隅肉溶接の脚長が、 4.5mm以下であるこ
    とを特徴とする請求項3記載の分割タンクの屋根施工方
    法。
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