JP2024517781A - 缶製造用5xxxアルミニウムシート - Google Patents

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Abstract

本発明は、重量%でMg:2.5~4.0、Mn:0.7~1.2、Fe:0.25~0.55、Si:0.20~0.50、Cu:0.10~0.25、Cr:最大0.1、Zn:最大0.25、Ti:最大0.1、残余はアルミニウムおよび各々最大0.05で合計最大0.15の不可避不純物を含む合金製の、5xxx系アルミニウムシートに関する。本発明の5xxx系アルミニウムシートの製造方法は、本発明に係る組成でインゴットを鋳造するステップ、インゴットを予熱するステップ、440℃超の熱間粗圧延入口温度を用いて可逆式圧延機で熱間粗圧延するステップ、少なくとも300℃の熱間圧延出口温度を用いてインゴットを熱間仕上圧延するステップ、冷間圧延シートを得るために冷間圧延するステップ、を含む。本発明はまた、缶エンドおよび飲料缶にも関する。【選択図】なし

Description

本発明は、特に缶製造産業のために有用な、5xxx系合金アルミニウムシートおよびそれらの製造方法に関する。
飲料パッケージ用に広く認められている効率的かつ環境に優しい解決案として、アルミ飲料缶は非常によく知られている。
CO排出量を最小限に抑えるために、缶製造業者らは、缶ボディおよび缶エンドの重量を削減することに取り組んでおり、かつ、それらのソリューションのリサイクルコンテンツを増やすよう努めている。1トンの第一次金属の代わりに1トンのスクラップを使用することにより、CO排出量が10トン削減されることは、強調するに値することである。
蓋とも呼ばれる缶エンドに関して、缶メーカーは、最適設計を用いて、缶エンドの直径を68.3mmから54mmへ、それから50.8mmへと徐々に減らしてきた。より小さい直径と新しい缶エンド設計とを組み合わせることにより、223μmからおよそ203μmへのダウンゲージングおよび関連した有意な重量削減が可能になった。
しかしながら、缶エンドの軽量化は、ここ数年の間に「停滞期」に達しており、現在、200μm未満にダウンゲージすることはますます困難である。
缶エンドを製造するために使用される合金は、典型的にはAA5182合金である。その高い機械的特性のため、AA5182は、必要な形成特性を得るには高レベルの純度(例えばFe、Si)を必要とする。AA5182におけるこのような高レベルの純度は、そのリサイクルコンテンツを制限しており、AA5182缶エンドの調製が一次アルミニウムに依存することを示唆している。一次アルミニウムを使用すればするほど、CO排出量はますます増える。
また、金属量は缶エンドより缶ボディの方が多いため、缶エンドと缶ボディとを一緒にリサイクルできることも好ましい。このため、特定の缶エンドおよび缶ボディ合金が開発されてきた。
国際公開第2013/103957号は、リサイクルされる使用済み飲料容器が、ボディストックの組成を比較的わずかに調整するだけで有用な合金組成を形成するアルミニウム合金およびリサイクル方法を開示している。
国際公開第2014/107188号は、リサイクルされる使用済み飲料容器が、マグネシウムレベルは別として、ボディ、エンドおよびタブのストックの組成調整を比較的わずかに行うかまたは全く行わずに有用な合金組成を形成するアルミニウム合金およびリサイクル方法を開示している。
国際公開第2015/200570号は、開缶に使用される缶タブおよび缶エンドの製造に有用な3xxxアルミニウム合金、具体的にはAA3104およびAA3204アルミニウム合金を開示している。
国際公開第2016/002226号は、0.20~0.45質量%のSi、0.35~0.60質量%のFe、0.1~0.3質量%のCu、0.5~1.5質量%のMn、0.8~1.5質量%のMg、0.1質量%以下のTi、および0.05質量%以下のB、ならびにAlおよび不可避不純物から成る残余を含む、飲料缶ボディ用のアルミニウム合金シートを開示している。
米国特許第5746847号明細書は、重量パーセントで、3.0~4.0%のMg、0.5~1.0%のMn、0.2~0.6%のCu、0.05~0.4%のFeおよび不可避不純物を含む、缶エンド用アルミニウム合金を開示している。
特開平11-269594号公報は、重量パーセントで、0.6~1.2%のMn、0.5~3.2%のMg、0.2~0.5%のSi、0.3~0.5%のCu、0.3~0.6%のFe、残余のアルミニウムおよび不可避不純物を含む、缶エンド用アルミニウム合金を開示している。
米国特許出願公開第2018/274072号明細書は、例えば飲料缶の製造に適した、複数のリサイクル合金組成を開示している。
国際公開第2013/103957号 国際公開第2014/107188号 国際公開第2015/200570号 国際公開第2016/002226号 米国特許第5746847号明細書 特開平11-269594号公報 米国特許出願公開第2018/274072号明細書
異なる基準、つまり強度と形成性と高いリサイクル性との間の慎重なバランスを兼ね備える、缶エンドを製造するための改良されたアルミニウムシート製品が、缶製造産業において必要である。
本発明の第1の対象は、重量%で、
Mg:2.50~4.00、
Mn:0.70~1.20、
Fe:0.25~0.55、
Si:0.20~0.50、
Cu:0.10~0.25、
Cr:最大0.10、
Zn:最大0.25、
Ti:最大0.10、
残余はアルミニウム、および、各々最大0.05で合計最大0.15の不可避不純物、
を含む、5xxx系アルミニウムシート製のアルミニウムシートである。
本発明の別の対象は、
- 本発明に係る組成でインゴットを鋳造するステップ、
- 典型的には440℃~550℃の温度で、インゴットを予熱するステップ、
- 440℃超の熱間粗圧延入口温度を用いて、可逆式圧延機でインゴットを熱間粗圧延するステップ、
- 少なくとも300℃の熱間圧延出口温度を用いて、インゴットを熱間仕上圧延するステップ、
- 冷間圧延シートを得るために冷間圧延するステップ、
- 任意には、冷間圧延シートをコーティングするステップ、
を連続して含む、本発明による5xxx系アルミニウムシートの製造方法である。
本発明のさらに別の対象は、本発明によるシートから得られる缶エンドである。
本発明のさらに別の対象は、本発明による缶エンドとAA3xxx合金製の缶ボディとから得られる飲料缶である。
以下で言及されている全てのアルミニウム合金は、相反する記載の無いかぎり、アルミニウム協会が定期的に刊行する登録記録シリーズ(Registration Record Series)内で定義している規則および呼称を用いて、表示されている。
以下で言及されている冶金学的質別は、欧州規格EN-515(2017年4月)を用いて表示されている。
合金組成はすべて、重量%(wt.%)で提供される。「7.9Mn」なる表現は、重量%で表わされたマンガン含有量に7.9が乗じられることを意味する。
引張り試験は、ISO/DIS 6892-1(2014年7月)にしたがって行われた。
発明者らは、異なる基準、つまり強度と形成性と高いリサイクル性との間の慎重なバランスを兼ね備える、改良された5xxxアルミニウム合金シートを発見した。
Mg含有量は、2.50重量%~4.00重量%、好ましくは2.50重量%~3.85重量%、より好ましくは3.10重量%~3.85重量%またさらにより好ましくは3.10重量%~3.65重量%である。
Mgは、当該合金の主な合金元素であり、強度改善に寄与する。Mg含有量が2.50重量%未満であると、強度改善は不十分であり得る。一方、4.00重量%を超える含有量は、低い形成性を結果としてもたらし得る。3.00重量%または3.05重量%または3.10重量%または3.15重量%または3.20重量%または3.25重量%または3.30重量%または3.35重量%または3.40重量%のMg最小含有量は、有利であり得る。3.85重量%または3.80重量%または3.75重量%または3.70重量%または3.65重量%または3.60重量%のMg最大含有量は、有利であり得る。
Mnもまた強度改善、結晶粒微細化および構造安定化のために効果的な元素である。Mn含有量は、0.70重量%~1.20重量%、好ましくは0.80重量%~1.15重量%またより好ましくは0.90重量%~1.10重量%、またさらにより好ましくは0.92重量%~0.98重量%である。
Mn含有量が0.70重量%未満であると、前述の効果は不十分である。一方、1.20重量%を超えるMn含有量は、上記の効果の飽和を引き起こすだけでなく、形成性について悪影響をもたらし得る多数の金属間化合物の生成も引き起し得る。さらに、本発明のMn含有量は、一実施形態において、鋳造ステップ中のリサイクルスクラップ、より具体的にはUBC(Used Beverage Can 使用済み飲料缶)スクラップの添加を最大限にすることを保証する。0.76重量%または0.78重量%または0.80重量%または0.85重量%または0.90重量%または0.91重量%または0.92重量%または0.93重量%のMn最小含有量は、有利であり得る。1.15重量%または1.10重量%または1.05重量%または1.00重量%または0.98重量%または0.96重量%のMn最大含有量は、有利であり得る。
FeおよびSiの制御は、本発明のシートの所望の特性、詳細には形成性とリサイクル性との間のバランスに達するために非常に重要である。Fe含有量は、0.25重量%~0.55重量%また好ましくは0.30重量%~0.40重量%である。
0.25重量%未満のFe含有量が十分な効果を生み出さない可能性がある一方で、0.55重量%を超えるFe含有量は、大きな初晶AlMnFeの形成に関連して、結果として形成が困難になる可能性がある。0.28重量%または0.30重量%または0.31重量%のFe最小含有量は、有利であり得る。0.45重量%または0.40重量%または0.38重量%のFe最大含有量は、有利であり得る。
MnおよびMg含有量は、好ましくはFe含有量と関連している。好ましくは、少なくとも0.50重量%のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計は最大11.4重量%、好ましくは最大10.7重量%またより好ましくは最大10.1重量%であり、少なくとも0.44重量%(かつ0.50重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計は最大12.1重量%、好ましくは最大11.4重量%またより好ましくは最大10.8重量%であり、少なくとも0.40重量%(かつ0.44重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計は最大12.5重量%、好ましくは最大11.8重量%またより好ましくは最大11.2重量%であり、少なくとも0.35重量%(かつ0.40重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計は最大12.8重量%、好ましくは最大12.1重量%またより好ましくは最大11.5重量%であり、少なくとも0.30重量%(かつ0.35重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計は最大13.1重量%、好ましくは最大12.4重量%またより好ましくは最大11.8重量%であり、少なくとも0.25重量%(かつ0.30重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計は最大13.5重量%好ましくは最大12.8重量%またより好ましくは最大12.2重量%である。好ましい一実施形態において、Fe含有量は0.30重量%~0.40重量%、かつMg+7.9Mnの合計は8.0重量%~12.5重量%、好ましくは9.4重量%~11.8重量%またより好ましくは10.2重量%~11.2重量%である。特許請求されるFe、MnおよびMg含有量は、詳細には、鋳造ステップ中のリサイクルスクラップ、より具体的にはUBCスクラップの添加を最大限にすることを保証する。
Si含有量は、0.20重量%~0.50重量%また好ましくは0.22重量%~0.35重量%またより好ましくは0.23重量%~0.30重量%である。Siの過度の添加は、形成性に悪影響をもたらし得る、より多くのMgSi相を生成し得る。0.21重量%または0.22重量%または0.23重量%または0.24重量%のSi最小含有量は、有利であり得る。0.40重量%または0.35重量%または0.30重量%または0.28重量%のSi最大含有量は、有利であり得る。
Cu含有量は、0.10重量%~0.25重量%また好ましくは0.10重量%~0.20重量%、より好ましくは0.12重量%~0.20重量%である。固溶体状態のCuは強度および/または形成性にとって有益であり得るので、0.11重量%または0.12重量%または0.13重量%または0.14重量%のCu最小含有量は有利であり得る。Cu含有相の形成は形成性に悪影響をもたらし得るので、0.25重量%または0.20重量%または0.18重量%のCu最大含有量が有利であり得る。一実施形態において、Cu含有量は、0.14重量%~0.18重量%である。
Cr含有量は、最大0.10重量%、好ましくは最大0.05重量%である。一実施形態において、いくらかのCrが、強度改善、結晶粒微細化および構造安定化のために、0.01重量%~0.05重量%、好ましくは0.01重量%~0.03重量%の含有量で添加され得る。
Znは、最大0.25重量%までまた好ましくは最大0.20重量%までまたは最大0.15重量%まで、本発明の利点から逸脱することなく添加され得る。一実施形態において、Znは不可避不純物の中に含まれる。
Tiを含む結晶粒微細化剤は、典型的には、合計Ti含有量が最大0.10重量%また好ましくは0.005重量%~0.05重量%またさらにより好ましくは0.01~0.03重量%で添加される。一実施形態において、Ti含有量は、150ppm~250ppmである。
残余は、アルミニウムおよび各々最大0.05重量%で合計最大0.15重量%の不可避不純物である。
本発明によると、インゴットは、本発明の5xxx系アルミニウム合金を使って、鋳造、典型的には直接チル(Direct-Chill)鋳造または連続鋳造によって調製される。好ましくは、鋳造ステップは、リサイクルスクラップを溶融して液体金属にすることを含む。
本明細書で使用する場合、リサイクルスクラップ(例えばリサイクルストック)という用語は、主にアルミニウム、好ましくは少なくとも60%または70%または80%または90%のアルミニウムを含むリサイクル金属を収集したものを指し得る。リサイクルスクラップは、金属製造施設(例えば金属鋳造施設)、金属加工施設(例えば、金属製品を使用して消耗品を作り出す製造施設)、または使用済み製品の供給源(例えば地域のリサイクル施設)など、任意の適切な供給源からリサイクルされる材料を含み得る。本開示の特定の態様は、金属製造施設以外の供給源からのリサイクルスクラップによく適していることができ、なぜなら、そのようなリサイクルスクラップは、おそらく合金の混合物を含むか、または他の不純物または元素(例えば塗料またはコーティング)と混合されているからである。リサイクルスクラップは、リサイクルシートアルミニウム製品(例えばアルミニウムの鍋およびフライパン、車の内側および外側の製品)、リサイクル鋳造アルミニウム製品(例えばアルミ製グリルおよび車輪リム)、UBCスクラップ(例えば飲料缶)、アルミ線、押出材および他のアルミニウム材料にまで言及し得る。
好ましくはリサイクルスクラップ金属は、使用済み飲料缶(UBC)スクラップを含み、これはさらなる金属製品における使用のためにリサイクル可能な使用済み飲料缶および類似製品から収集した金属である。アルミニウムUBCスクラップは、多くの場合、さまざまなアルミニウム合金(例えば缶ボディおよび缶エンド用に使用される異なる合金から)の混合物であり、雨水、飲料の残余物、有機物(例えば塗料や積層フィルム)および多くの場合、他の材料などの異物を含み得る。UBCスクラップは、本発明の新しい金属製品を鋳造する際の液体金属ストックとして使用するために溶融される前に細断して、コーティングまたはラッカーを取り除くことができる。UBC液体金属中に存在する不純物および不均衡な合金元素のため、UBC液体金属を処理して望ましくない元素を除去するか、または鋳造前にUBC液体金属を十分な量の新しい一次アルミニウムと混合することが必要であり得る。同様に、他の供給源からのリサイクルスクラップには、比較的多量の不純物および/または不均衡な合金元素が含まれ得る。
本明細書では、本発明による製品のリサイクルスクラップ含有量を記述している。例えば、本発明による合金は、およそ50重量%、およそ60重量%、およそ70重量%、およそ80重量%、およそ85重量%、およそ90重量%、およそ91重量%、およそ92重量%、およそ93重量%、およそ94重量%、およそ95重量%、およそ96重量%、およそ97重量%、およそ98重量%、およそ99重量%を超えるリサイクルスクラップを含む改質液体金属から適切な鋳造製品を製造することを可能にする。換言すると、本明細書で記述される鋳造製品は、およそ50重量%、およそ40重量%、およそ30重量%、およそ20重量%、およそ15重量%、およそ10重量%、およそ9重量%、およそ8重量%、およそ7重量%、およそ6重量%、およそ5重量%、およそ4重量%、およそ3重量%、およそ2重量%、およそ1重量%未満の一次アルミニウムおよび任意の硬化剤(例えばAl+Cu、Al+Si、Al+Mn、Al+Feなどを含む母合金、または例えばCu、Mg、Znなどの純金属)を含み得る。本開示の特定の態様は、大部分がリサイクルスクラップである改質液体金属を使用して作られる金属製品に関している。好ましくは、リサイクルスクラップは、UBCスクラップなどの、リサイクルアルミニウムスクラップを含む。例えばUBCスクラップは、概して、缶ボディ(例えば3104、3004、または他の3xxxアルミニウム合金)および缶エンド(例えば5182または他の5xxxアルミニウム合金)からの金属など、様々な合金からの金属の混合物を含む。MgおよびMnの含有量により、本発明の合金の組成は、UBCスクラップのリサイクルに特によく適している。好ましくは本発明の方法における溶融リサイクルスクラップは、およそ50重量%、およそ60重量%、およそ70重量%、およそ80重量%、およそ90重量%、およそ91重量%、およそ92重量%、およそ93重量%、およそ94重量%、およそ95重量%、およそ96重量%、およそ97重量%、およそ98重量%またはおよそ99重量%を超えるUBCスクラップを含む。一次アルミニウムを添加するとリサイクルコンテンツの量は減り、一次アルミニウムはリサイクルスクラップよりも製造費用が高くまた温室効果ガス排出量がより多いので、費用および温室効果ガス排出量が増加する。したがって、リサイクルスクラップの加工と一次アルミニウムの添加との間で、多くの場合、妥協点が作られる。本明細書内で記述される本発明の合金を使用すると、リサイクルスクラップを、精製をほとんどまたは全く行わず、または、一次アルミニウムおよび任意の硬化剤をほとんどまたは全く添加せずに、使用することができる。
インゴットの厚みは、好ましくは少なくとも250mmまたは少なくとも350mmであり、またプロセスの生産性を向上させるために好ましくは少なくとも400mmまたはさらには少なくとも500mmまたは600mmの厚みを伴う非常に厚い寸法のインゴットである。好ましくはインゴットは、幅が1000~2000mm、また長さが2000~8000mmである。好ましくはインゴットは、スカルピングされる。
インゴットは次に、典型的には440℃~550℃の温度で予熱され、そして、典型的には2~12mmの厚みを有するシートを得るために熱間圧延される。好ましくは、シートは、例えば、典型的には12~40mmの厚みに至るまでの粗圧延機としても知られている可逆式圧延機での第一の熱間圧延ステップおよび典型的には2~12mmの厚みに至るまでの仕上圧延機としても知られているタンデム圧延機での第二の熱間圧延ステップを用いた、2つの連続するステップで熱間圧延される。タンデム圧延機は、典型的には2、3、4または5つの、圧延機ロールを支持する複数のケージが連続して(「タンデムで」)作動する圧延機である。本発明によると、可逆式圧延機での熱間粗圧延は、440℃超また好ましくは460℃超の熱間粗圧延入口温度を用いて行われる。可逆式圧延機での第一のステップは、1つのまたはさらには2つの連続して配置された可逆式圧延機で実行され得る。
第二の熱間圧延ステップにおいて、熱間圧延出口温度である最終温度は、好ましくは、熱間仕上圧延後に得られる熱間圧延シートが少なくとも50%また好ましくは少なくとも80%の再結晶粒の体積分率を示すように、少なくとも300℃、また好ましくは少なくとも330℃であるべきである。
冷間圧延が、アルミニウムシートの厚みをさらに薄くするために熱間圧延ステップの直後に行われる。本発明の方法では、熱間圧延後または冷間圧延中の焼鈍は任意であり、なぜなら、このステップは、十分な強度、形成性、表面品質および耐食性を得るために必要ではないと思われるからである。好ましくは、熱間圧延後または冷間圧延中の焼鈍は実行されない。冷間圧延後すぐに得られたシートは、冷間圧延シートと呼ばれる。冷間圧延シートの厚みは、典型的には0.15~0.30mmまた好ましくは0.18~0.23mmである。
一実施形態において、冷間圧下率は、少なくとも80%、または少なくとも85%である。
好ましくは、冷間圧延シートはコーティングされる。あるコーティングプロセスでは、冷間圧延シートを洗浄および化学処理し、任意にはオーブンで乾燥し、任意には下塗りし、コーティングし、熱(オーブン)硬化してコーティングされたシートを形成する。別のコーティングプロセスでは、冷間圧延シートを洗浄および化学処理し、適切な(例えば食品グレードの)電子線(「EB」)および/または紫外線(「UV」)硬化性コーティング組成物でコーティングし、そしてEBまたはUV硬化させて、コーティングされたシートを形成する。
好ましくは、コーティングは、BPAフリーまたはBPA-NI(ビスフェノール-Aを含まない、または、ビスフェノール-Aを意図的に含まない)コーティングまたは積層体である。
205℃で20分間のコーティングの焼付のシミュレーション後の本発明の製品は、好ましくは、320MPa~380MPaまた好ましくは320MPa~360MPaの、圧延横(LT)方向における引張降伏強度(TYS)を有する。
形成性は、特定の形状に形成されることのできる、シートの能力である。形成性は詳細には引張降伏強度(TYSまたはRp0.2)と関連があり、つまりTYSが増加するにつれて、形成性は概して低下する。好ましい一実施形態によると、本発明によるシートのTYSは、H48質別で、または、H48質別における機械的特性に類似した機械的特性を与える、コーティングの焼付をシミュレートする205℃で20分間の熱処理後に、380MPa以下、好ましくは360MPa以下である。別の好ましい実施形態によると、本発明によるシートのTYSは、H48質別で、またはコーティングの焼付をシミュレートする205℃で20分間の熱処理後に、320MPa以上である。この最小限のTYSは、十分な強度を獲得し、内圧に耐えることを可能にする。
好ましくは、本発明の製品は、欧州規格EN 515(2017年4月)およびEN 541(2007年5月)によって定義される通りのH4X冶金学的質別である。
これらの規格によると、H4X冶金学的質別は、ひずみ硬化されかつラッカー塗装またはペンキ塗装された製品を表す。このように、H4Xは、加工硬化およびコーティング後に得られる材料の質別であり、その間に一定レベルの回復が起こり得る。好ましい質別は、正常に生み出されるH4Xの中で最も硬い質別に割り当てられるH48質別である。H48の機械的特性は、H18またはH19質別の冷間圧延シートから、205℃で20分間のコーティングの焼付シミュレーション後に得られ得る。
詳細には、H48冶金学的質別は、飲料缶用の缶エンドを製造するための金属の成形を保証する。好ましくは、本発明による5xxx系アルミニウムシートは、コーティングされかつ好ましくはH48質別である。
本発明はまた、本発明によるシートから得られる缶エンドと、本発明による缶エンドおよびAA3xxx合金製の缶ボディから得られる飲料缶とに関する。
缶エンドを製造するための本発明による5xxx系アルミニウムシートの使用は、有利である。詳細には、AA3xxx合金製、好ましくはAA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、およびAA3065から選択される合金製、最も好ましくはAA3004、AA3004AおよびAA3104から選択される合金製の缶ボディと組み合わされる本発明による缶エンドの使用は、この飲料缶がリサイクルしやすいので有利である。
[実施例]
この実施例において、表1中に開示された組成を有する合金を用いた複数のインゴットを、DC鋳造技術によって鋳造した。
Figure 2024517781000001
合金D、EおよびFは、それらのCu含有量が多すぎるので(0.25重量%超のCu)、本発明に係るものではない。
H48質別でのLT方向におけるTYSが、コンピュータソフトウェアから評価された。結果は表2中に提供されている。
Figure 2024517781000002

Claims (12)

  1. 重量%で、2.50~4.00のMg、0.70~1.20のMn、0.25~0.55のFe、0.20~0.50のSi、0.10~0.25のCu、最大0.10のCr、最大0.25のZn、最大0.10のTi、残余はアルミニウム、および、各々最大0.05で合計最大0.15の不可避不純物、を含む合金製の、5xxx系アルミニウムシート。
  2. Mg含有量が、2.50重量%~3.85重量%、好ましくは3.10重量%~3.85重量%、より好ましくは3.10重量%~3.65重量%である、請求項1に記載の5xxx系アルミニウムシート。
  3. Mn含有量が、0.90重量%~1.10重量%である、請求項1または2に記載の5xxx系アルミニウムシート。
  4. Cr含有量が、0.01重量%~0.03重量%である、請求項1から3のいずれか一つに記載の5xxx系アルミニウムシート。
  5. 少なくとも0.50重量%のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計が最大11.4重量%、好ましくは最大10.7重量%またより好ましくは最大10.1重量%であり、少なくとも0.44重量%(かつ0.50重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計が最大12.1重量%、好ましくは最大11.4重量%またより好ましくは最大10.8重量%であり、少なくとも0.40重量%(かつ0.44重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計が最大12.5重量%、好ましくは最大11.8重量%またより好ましくは最大11.2重量%であり、少なくとも0.35重量%(かつ0.40重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計が最大12.8重量%、好ましくは最大12.1重量%またより好ましくは最大11.5重量%であり、少なくとも0.30重量%(かつ0.35重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計が最大13.1重量%、好ましくは最大12.4重量%またより好ましくは最大11.8重量%であり、少なくとも0.25重量%(かつ0.30重量%未満)のFe含有量に対して、Mg+7.9Mnの合計が最大13.5重量%、好ましくは最大12.8重量%またより好ましくは最大12.2重量%である、請求項1から4のいずれか一つに記載の5xxx系アルミニウムシート。
  6. コーティングされかつ好ましくはH48質別である、請求項1から5のいずれか一つに記載の5xxx系アルミニウムシート。
  7. 引張降伏強度(TYS)が360MPa以下である、請求項1から6のいずれか一つに記載の5xxx系アルミニウムシート。
  8. - 請求項1から5のいずれか一つに記載の組成でインゴットを鋳造するステップ、
    - 典型的には440℃~550℃の温度で、インゴットを予熱するステップ、
    - 440℃超の熱間粗圧延入口温度を用いて、可逆式圧延機でインゴットを熱間粗圧延するステップ、
    - 少なくとも300℃の熱間圧延出口温度を用いて、インゴットを熱間仕上圧延するステップ、
    - 冷間圧延シートを得るために冷間圧延するステップ、
    - 任意には、冷間圧延シートをコーティングするステップ、
    を連続して含む、請求項1から7のいずれか一つに記載の5xxx系アルミニウムシートの製造方法。
  9. 液体金属が、およそ50重量%を超えるリサイクルスクラップを含む、請求項8に記載の方法。
  10. リサイクルスクラップが、およそ50重量%を超える使用済み飲料缶スクラップを含む、請求項9に記載の方法。
  11. 請求項1から7のいずれか一つに記載のシートから得られる缶エンド。
  12. 請求項11に記載の缶エンドと、AA3xxx合金製、好ましくはAA3002、AA3102、AA3003、AA3103、AA3103A、AA3103B、AA3203、AA3403、AA3004、AA3004A、AA3104、AA3204、AA3304、AA3005、AA3005A、AA3105、AA3105A、AA3105B、AA3007、AA3107、AA3207、AA3207A、AA3307、AA3009、AA3010、AA3110、AA3011、AA3012、AA3012A、AA3013、AA3014、AA3015、AA3016、AA3017、AA3019、AA3020、AA3021、AA3025、AA3026、AA3030、AA3130、およびAA3065から選択される合金製、最も好ましくはAA3004、AA3004AおよびAA3104から選択される合金製の缶ボディとから得られる飲料缶。
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