JPH0931584A - 耐食性と耐時効軟化性に優れた缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法 - Google Patents

耐食性と耐時効軟化性に優れた缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法

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JPH0931584A
JPH0931584A JP7199121A JP19912195A JPH0931584A JP H0931584 A JPH0931584 A JP H0931584A JP 7199121 A JP7199121 A JP 7199121A JP 19912195 A JP19912195 A JP 19912195A JP H0931584 A JPH0931584 A JP H0931584A
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lid
aluminum alloy
heat treatment
conductivity
resistance
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JP7199121A
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Inventor
Hiroki Tanaka
宏樹 田中
Hiroyuki Mizutani
博之 水谷
Midori Narita
緑 成田
Koichi Takada
幸一 高田
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Sumitomo Light Metal Industries Ltd
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Sumitomo Light Metal Industries Ltd
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C21/00Alloys based on aluminium
    • C22C21/06Alloys based on aluminium with magnesium as the next major constituent

Abstract

(57)【要約】 【構成】 Mg:3.0〜4.0wt %、Mn:0.5〜1.0wt %、
Cu:0.2〜0.6wt %、Fe:0.05 〜0.4wt %を含み、残
部がAlおよび不可避的不純物からなる。塗装焼付け後
の導電率が30〜32%IACS、耐力が320 MPa以上
で、製蓋直後の耐圧強度に対するレトルト処理後の耐圧
強度の低下率が10%未満であることを特徴とする。 【効果】 耐食性が良好で、シュリンクパックで高湿状
態となっても応力腐食割れを生じることがなく、室温保
持後およびレトルト処理後も製蓋直後の高い耐圧強度が
維持される耐時効軟化性をそなえた缶蓋用アルミニウム
合金板が提供される。とくに非炭酸飲料缶の缶蓋として
好適に使用でき、十分な薄肉化の達成が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐食性と耐時効軟
化性に優れた缶蓋用アルミニウム合金板、とくに缶蓋材
の薄肉化の要求に答えることができ、レトルト処理され
る缶の蓋材として好適なアルミニウム合金板、およびそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】陽圧缶の蓋材としては、従来、Mg4 〜
5 %を含有するAl−Mg系の5082合金や5182合金の硬
質板が広く使用されてきた。これらのアルミニウム合金
硬質板は、強度、成形性に優れ、良好な耐食性をそなえ
ているが、近年、缶体のコスト低減の要求から、さらに
高強度、高成形性を有し、薄肉化が可能な材料が求めら
れており、この要求に答えるために、例えば、Mg含有
量を3.5 〜6 %と高くするとともにCu0.05〜0.5 %を
含有させたアルミニウム合金が提案されている。(特開
平4-202747号公報)
【0003】Al−Mg系合金は、Mg量の増加ととも
に加工硬化し易くなる。缶蓋成形において、カウンタシ
ンク部も弱加工を受けて加工硬化するから、製蓋直後の
缶蓋では高い耐圧強度が得られる。しかしながら、Mg
含有量の増加とともに、室内保管時の強度低下が大きく
なるから、耐圧強度が製蓋直後には規格内であったとし
ても、ボトラーで使用される時点では規格値を下回ると
いう場合が生じる。
【0004】また、コーヒーや乳製品を充填する飲料缶
の場合には、レトルト処理(注:低温殺菌、約120 ℃の
温度で熱処理) が行われる。レトルト処理後の温度低下
に伴って缶体の内圧が負圧となるが、この場合、缶蓋材
に要求される耐圧強度は、3ピース缶ではAl−Mg系
の5052合金程度でも十分である。しかしながら、近年、
内容物の充填と同時に液体窒素を封入する技術が確立さ
れ、コーヒーのような非炭酸飲料に対しても2ピースの
オールアルミ缶が使用されるようになっており、この場
合、缶蓋には前記5182合金レベルの高耐圧強度が求めら
れるが、従来の5182合金板を非炭酸系飲料缶の缶蓋とし
て適用した場合、レトルト処理により大きな耐圧強度低
下が生じるという難点がある。
【0005】従って、レトルト処理を受ける非炭酸系飲
料用のオールアルミ2ピース缶の缶蓋材の薄肉化を実現
するためには、まず5182合金レベルの高耐圧強度を有し
ていると同時に、室内保管時に強度低下を生じることが
なく、レトルト処理を受けた場合にも、耐圧強度が低下
しない特性、すなわち耐時効軟化性をそなえた材料を開
発することが必要である。
【0006】一方、飲料缶のコスト低減は、飲料缶の梱
包仕様の面からも検討されており、段ボールケースに飲
料缶を梱包する従来の方式に対して、缶体の上面にあた
る部分を塩ビ系フィルムで密封するシュリンクパックが
実用化され、梱包コストの低減が図られている。シュリ
ンクパックは、ボトラーにおいて、ウォーマ通過後の缶
にエアーを吹き付けて水滴を飛ばし、密封パックするこ
とにより行われるが、缶蓋のスコア部などに除去しきれ
なかった水滴が残存する場合がある。
【0007】水滴が残存すると、缶上面とフィルムの間
の空間が高湿状態となり、梱包後、空調のない倉庫や日
光の当たる店頭に保管されると缶の内圧が上昇し、内圧
上昇に伴うスコアコーナー部への引張り応力増加に起因
して応力腐食割れが発生し易くなる。Mg含有量の増加
が応力腐食割れ感受性を増大させることはよく知られて
おり、Mg含有量を4 %以下に抑え、少量のMn、C
u、Crを必須合金成分として含有させた耐食性に優れ
た包装用アルミニウム合金板も提案されている。(特開
平2-170940号公報)
【0008】しかしながら、Mg含有量の減少は、一般
に材料強度の低下を招き、上記合金組成では十分な薄肉
化を達成することができない。また発明者らの検討によ
れば、シュリンクパックされた場合のスコア部の応力腐
食割れ防止についても十分に満足すべき結果が得られな
いことが判った。コーヒーなど非炭酸系飲料缶の缶蓋材
として、Mg2.8 〜4.2 %を含み、Mn0.20〜0.50%、
Fe0.10〜0.40%を含有する低MgのAl−Mg系合金
も提案されている(特開平5-311308号公報) が、この合
金材においても、機械的特性が必ずしも満足すべきもの
ではなく、缶蓋材の薄肉化に限界がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】発明者らは、缶体を塩
ビ系フィルムでシュリンクパックした場合に、缶蓋のス
コア部に生じる応力腐食について種々の実験、検討を行
った結果、Al−Mg系合金において、応力腐食の発生
は、高湿状態で塑性変形を受けた合金表面の自然電位が
卑の状態で低位安定し、Al原子が容易に水中にイオン
化して溶け出すことに起因することを見出した。
【0010】自然電位が低位安定する原因は、塑性変形
に伴って合金材の最表面のAl酸化皮膜が破れ、金属面
が露出した際にAlよりも活性な溶質原子が水と反応
し、緻密なAl酸化皮膜の生成を阻害するためであり、
従って、ショリンクパックされた缶の缶蓋スコア部の応
力腐食割れを防止するためには、溶質原子の固溶度を制
御することが必要であることが判った。
【0011】また、発明者らは、時効軟化特性とAl−
Mg系合金の内部性状、組織状態などとの関連性につい
ても検討を行った結果、耐時効軟化性を向上させるため
にも、溶質原子の固溶度を制御することが必要であり、
そのためには、合金成分の組合わせおよび製造工程にお
ける中間熱処理条件の調整が重要であることを見出し
た。
【0012】本発明は、上記の検討結果に基づいてなさ
れたものであり、その目的は、耐食性が良好で、シュリ
ンクパックで高湿状態となっても応力腐食割れを生じる
ことがなく、室温保持後、レトルト処理後も製蓋直後の
高い耐圧強度が維持される耐時効軟化性をそなえ、とく
に非炭酸系飲料缶の缶蓋として好適に使用でき、十分な
薄肉化の達成を可能とする耐食性と耐時効軟化性に優れ
た缶蓋用アルミニウム合金板およびその製造方法を提供
することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による耐食性と耐時効軟化性に優れた缶蓋用
アルミニウム合金板は、Mg:3.0〜4.0 %、Mn:0.5%
を越え1.0 %以下、Cu:0.2〜0.6 %、Fe:0.05 〜0.
4 %を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる
ことを構成上の基本的特徴とし、上記の組成を有し、26
0 ℃の温度に加熱した後の導電率が30〜32%IACS、
耐力が320 MPa以上であることを第2に特徴とする。
【0014】また、上記の組成を有し、塗装焼付けした
アルミニウム合金板であって、導電率が30〜32IAC
S、耐力が320 MPa以上であること、板厚が0.2 〜0.
3 mmの当該アルミニウム合金塗装板をパネルハイト2.
3 mmの204 サイズの缶蓋に成形し、該缶蓋を缶胴部に
捲締め加工し捲締め部を外周部から拘束して耐圧試験を
行った場合、成形直後の耐圧強度に対する120 ℃で30分
加熱後の耐圧強度の低下率が10%未満であること(但
し、耐圧試験において、缶蓋の周縁部が多角形状に変形
し始める圧力を耐圧強度とする)を第3、第4の特徴と
する。
【0015】本発明による耐食性と耐時効軟化性に優れ
た缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法は、上記の組成
を有するアルミニウム合金の鋳塊を均質化処理したの
ち、所定の厚さまで圧延し、ついで中間熱処理を行い、
該中間熱処理において、中間熱処理前と中間熱処理後の
合金材の導電率の変化率(導電率の変化率=〔(熱処理
前の導電率−熱処理後の導電率)/熱処理前の導電率〕
×100)が1 %以上となるように制御し、その後、加
工度70%以上の最終冷間圧延を行うことを特徴とする。
【0016】本発明における合金成分の意義および限定
範囲について説明すると、Mgは、材料の強度向上と製
蓋時の成形性向上のために機能する。好ましい含有量は
3.0〜4.0 %の範囲であり、3.0 %未満では合金板の塗
装焼付け後の耐力を320 MPa以上にすることが難し
く、十分な薄肉化が達成できない。4.0 %を越えて含有
すると、時効軟化が起こり易くなり、缶体をレトルト処
理した場合、缶蓋の耐圧強度低下率が大きくなる。シュ
リンクパックされた際にスコア部に腐食発生のおそれも
ある。さらに好ましいMgの含有範囲は3.0 〜3.6 %で
ある。
【0017】Mnは、合金板の塗装焼付け時の強度低下
を抑制する作用を有する。Mnの好ましい含有量は0.5
%を越え1.0 %以下の範囲であり、0.5 %以下ではその
効果が小さく、1.0 %を越えると、造塊時にAl−Mn
−Fe系の粗大化合物が生成し易く、成形性が害され
る。また、この化合物の存在位置が缶蓋のスコアコーナ
ー部に合致すると、微小亀裂が誘発され、ノッチ効果の
ために応力集中の原因となって、シュリンクパックされ
た際、スコア部において応力腐食が生じ易くなる。さら
に好ましいMnの含有範囲は0.6 〜0.8 %である。
【0018】Cuは、合金板の塗装焼付け時にAl−C
u−Mg系の微細化合物を形成し、強度、耐時効軟化性
および耐食性に向上に寄与する。好ましい含有範囲は0.
2 〜0.5 %であり、0.2 %未満ではその効果が小さく、
缶蓋材の薄肉化を十分に達成することができず、シュリ
ンクパックされた場合、スコア部に応力腐食が生じ易く
なる。Cu量が0.6 %を越えると、造塊時にAl−Cu
系およびAl−Cu−Mg系の化合物の粒界偏析が顕著
となり、これらの化合物は通常の均質化処理では完全に
固溶させるのが難しいため、熱間圧延時に割れが発生し
易くなる。Cuのさらに好ましい含有量は0.25〜0.45%
の範囲である。
【0019】Feは、不純物として混入する元素である
が、特定量含有すると、組織を微細化するため成形性向
上に有効である。好ましい含有量は0.05〜0.4 %の範囲
であり、Fe量を0.05%未満とすると、高純度のAl地
金が必要となり原料コストを増大させる。0.4 %を越え
ると、造塊時にサイズが20μm を越える粗大なAl−M
n−Fe系化合物が形成し易くなり、成形性、シュリン
クパック時の耐食性を低下させる。さらに好ましいFe
の含有範囲は0.1 〜0.2 %である。
【0020】本発明においては、通常、アルミニウム合
金の組織微細化のために添加されるTi、Bについて
は、それぞれ0.1 %以下および0.01%以下、Al−Mg
系合金の酸化防止のために加えられるBeについては50
ppm以下の範囲で添加されても合金の特性に影響を与
えることはない。また、不可避的不純物として含まれる
Siについては0.4 %まで許容され、CrおよびZnに
ついては、それぞれ0.01%まで許容される。
【0021】本発明では、塗装焼付け後または塗装後の
焼付け処理に相当する熱処理(260℃で15秒) 後の導電
率が30〜32%IACSであることが必要である。導電率
の値は溶質原子の固溶度に関連し、溶質原子の固溶度が
多い場合、導電率は小さい値を示す。前記のように、シ
ュリンクパック時、缶蓋のスコア部の応力腐食を防止す
るためには固溶度を制御することが重要である。導電率
が30%IACS未満では、高湿状態で塑性変形を受けた
場合、材料表面の自然電位が低位安定してスコア部に腐
食が生じ易くなる。導電率が32%IACSを越えると、
缶体をレトルト処理した後の耐圧強度の低下が大きくな
る。
【0022】塗装焼付け後、または塗装後の焼付け処理
に相当する熱処理(260 ℃で15秒)後の耐力が320 MP
a未満では、缶蓋材の十分な薄肉化、例えば缶蓋の元板
厚さ0.25mm未満を達成するのが難しい。成形直後の缶
蓋の耐圧強度に対し、レトルト処理に相当する120 ℃で
30分加熱処理後の耐圧強度の低下率が10%以上あると、
缶蓋を薄肉化した場合、強度的に問題が生じるおそれが
ある。
【0023】この場合、耐圧強度は、厚さ0.2 〜0.3 m
mの塗装焼付けした板材を、シェル金型により、図1に
示すような、204 サイズ( 捲締め後の直径が24/1 6 イン
チ)、パネルハイトHP が2.3 mmの缶蓋(シェル)1
に成形し、該缶蓋1を缶胴部2に捲締め加工し、捲締め
部を外周部から治具3で拘束して、図2に示すように、
内圧Pを負荷する耐圧試験を行い、缶蓋周縁部(パネル
周縁部)が多角形状に変形し始める圧力を求め、これを
耐圧強度とした。
【0024】本発明のアルミニウム合金板の製造につい
て説明すると、前記の組成を有するアルミニウム合金を
常法に従って溶解、鋳造し、得られた鋳塊を均質化処理
したのち熱間圧延を行って所定の板厚としたのち、また
は熱間圧延後必要に応じて冷間圧延を行って所定の板厚
としたのち、中間熱処理を行う。本発明のアルミニウム
合金板の製造方法における第1の特徴は、中間熱処理に
おいて、中間熱処理前と中間熱処理後の合金材の導電率
の変化率(導電率の変化率=〔(熱処理前の導電率−熱
処理後の導電率)/熱処理後の導電率〕×100)が1
%以上となるよう制御することにある。
【0025】本発明のアルミニウム合金においては、熱
間圧延中および熱間圧延終了後の冷却過程において第2
相化合物が析出するが、これらの第2相化合物を中間熱
処理により再固溶させることが必要である。再固溶する
第2相化合物の量が少ないと、缶体をレトルト処理した
後の缶蓋の耐圧強度低下率を10%未満に抑えることがで
きない。再固溶度と合金材の導電率とは相関を示し、本
発明においては、導電率の変化率が1 %以上となるよう
な再固溶状態を形成することが重要である。
【0026】本発明のアルミニウム合金板の製造方法に
おける第2の特徴は、中間熱処理後、加工度70%以上の
冷間圧延を行うことにある。加工度が70%未満では、塗
装焼付け後の耐力を320 MPa以上とすることができ
ず、缶蓋材の十分な薄肉化を達成するのが困難となる。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施形態につい
て説明すると、前記組成を有するアルミニウム合金を溶
解し、半連続鋳造により造塊し、得られた鋳塊を480 〜
520 ℃で4 〜10時間均質化処理する。ついで、熱間圧延
または熱間圧延と冷間圧延を行って所定の板厚としたの
ち、中間熱処理を施す。中間熱処理は、連続焼鈍炉およ
びバッチ式加熱炉のいずれを適用してもよく、熱処理前
の導電率に対する熱処理後の導電率の変化率が1 %以上
となるよう熱処理温度、昇温速度および降温速度を調整
する。但し、熱処理により第2相化合物の再固溶が多く
なり過ぎると、合金の耐食性が害されるので、塗装後あ
るいは260 ℃の温度に加熱後の導電率が30%IACS未
満とならないよう熱処理条件を管理することが必要であ
る。
【0028】中間熱処理後、加工度70%以上の冷間圧延
を行い、缶蓋材の板厚、例えば0.3〜0.2 mm厚とす
る。冷間圧延量が多くなると材料の曲げ加工性が劣化し
耳率が大きくなるから、冷間圧延は加工度70〜90%の範
囲で行うのが好ましい。缶蓋材の塗装は、例えば、前処
理としてリン酸クロメート処理を施したのち、エポキシ
−フェノール系塗料で塗装され、200 〜270 ℃で1 〜20
分の塗装焼付け( ベーキング) 処理を行う。その後シェ
ル金型により図1に示すような形状に成形する。本発明
による缶蓋用アルミニウム合金板の代表的組成は、例え
ば、Mg:3.3%、Mn:0.75 %、Cu:0.25 %、Fe:
0.25 %、Ti:0.03 %、残部Alおよび不可避的不純
物、不純物Si0.10%である。
【0029】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。 実施例1 表1に示す組成のアルミニウム合金を半連続鋳造により
造塊し、得られた鋳塊を500 ℃で10h 均質化処理したの
ち、熱間圧延を行った。熱間圧延は、開始温度500 ℃、
終了温度290 〜320 ℃で実施した。また熱間圧延の仕上
げ板厚は冷間圧延量を考慮して調整した。ついで、板厚
減少率40%の冷間圧延を行い、中間熱処理を施した。
【0030】中間熱処理後、最終冷間圧延を行い、板厚
を0.25mmとした。最終冷間圧延後の板材について、オ
イルバスを用いて塗装焼付け処理に相当する260 ℃で15
秒の処理を行い、焼付け後の導電率および機械的性質を
測定した。中間熱処理条件、中間熱処理前後の導電率の
変化率、最終冷間圧延の加工度を表2に示す。なお、表
1において、本発明の条件を外れたものには下線を付し
た。
【0031】塗装焼付け後の板材を、シェル金型により
図1に示すように204 サイズ( パネルハイトHP 2.3mm)
の缶蓋に成形し、図2に示す方法で、製蓋直後の耐圧強
度およびレトルト処理に相当する120 ℃で30分加熱後の
耐圧強度を測定し、両者の変化量を製蓋直後の耐圧強度
で除した値の百分率(耐圧強度の低下率) を求めた。塗
装焼付け後の導電率および引張性能、耐圧強度低下率を
表3に示す。
【0032】耐応力腐食割れ性を評価するために、塗装
焼付け後の板材(板幅10mm) に、圧延方向と直角なスコ
ア溝を形成し、スコア加工部付近にNaClを100 pp
m含む水溶液(pH=6)によるミスト噴霧を行い、ミス
ト噴霧後直ちに食品保存用ラップで包装して試験片に付
着した水滴の蒸発を防ぎ、この試験片を疲労特性評価装
置( ( 株) 島津製作所製サーボパルサー) に取り付け、
予め測定しておいたスコア加工を施した試験片の破断荷
重を基準として、その80%(正弦波:振動数=0.01H
z)に相当する引張荷重を負荷し、室温(約25℃) で破
断するまでの応力負荷回数を求めた。この試験方法は、
実際の飲料缶では内圧上昇に伴うスコア部への応力負荷
を引張応力で代用したものである。耐応力腐食割れ性の
評価結果を表3に示す。
【0033】表3に示すように、本発明に従う試験材は
いずれも、塗装焼付け相当処理後の耐力が320 MPa以
上、レトルト処理相当の加熱後の耐圧強度低下率が10%
未満であり、レトルト処理後も製蓋直後の高い耐圧強度
が維持されることがわかる。疲労試験機による耐応力腐
食割れ性の評価においても、3000回の繰り返し応力に耐
える優れた耐応力腐食割れ性を示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】 《表注》降温速度 WQ:水冷
【0036】
【表3】
【0037】比較例1 実施例1と同様、表1に示す組成のアルミニウム合金を
半連続鋳造により造塊し、得られた鋳塊を、実施例1と
同じ条件で、均質化処理、熱間圧延および冷間圧延し、
種々の条件で中間熱処理後、最終冷間圧延を行った。中
間熱処理条件、中間熱処理前後の導電率の変化率、およ
び最終冷間圧延量を表4に示す。なお、表4において、
本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0038】最終冷間圧延後の板材について、実施例1
と同一の塗装焼付け相当処理を行って導電率および引張
性能を測定し、実施例1と同一の方法で耐圧強度の低下
率を求め、耐応力腐食割れ性を評価した。これらの測
定、評価結果を表5に示す。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】表5にみられるように、試験材No.9は、中
間熱処理条件が適切でなく、熱処理前後の導電率の変化
率が1 %未満となるため、耐圧強度低下率が大きくな
る。試験材No.10 も中間熱処理条件が不適切で、熱処理
前後の導電率の変化率が1 %未満となり、最終板の導電
率も高過ぎるため、耐圧強度の低下率が大きくなる。試
験材No.11 は、最終冷間圧延の加工度が少ないため機械
的性能が劣る。試験材No.12 は、中間熱処理における溶
質原子の固溶量が多過ぎるため、導電率が低くなり、耐
食性が劣る。試験材No.13 はMgの含有量が低いため、
耐力が劣る。
【0042】試験材No.14 はMnおよびCuの含有量が
少ないため耐力が低く、試験材No.15 は、Mg量が多過
ぎるため、導電率が低く耐食性が劣り、耐圧強度の低下
率も大きくなる。試験材No.16 は、Cu量が多過ぎるた
め、熱間圧延時に割れが生じ試験材が得られなかった。
試験材No.17 はMnおよびFeの含有量が多過ぎるた
め、粗大なAl−Mn−Fe化合物が生成し、スコア加
工時にコーナー部に微小亀裂が発生し、耐応力腐食割れ
性が劣る。試験材No.18 は、従来材の5182合金であり、
Mg量が多くMn量が少なくCuを含有しないため、耐
力が低く、耐圧強度の低下率も大きく、且つ導電率が低
く耐食性が劣っている。
【0043】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、耐食性
が良好で、シュリンクパックで高湿状態となっても応力
腐食割れを生じることがなく、室温保持後およびレトル
ト処理後も製蓋直後の高い耐圧強度が維持される耐時効
軟化性をそなえた缶蓋用アルミニウム合金板が提供され
る。当該アルミニウム合金板は、とくに非炭酸飲料缶の
缶蓋として好適に使用され、十分な薄肉化の達成が可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】缶蓋の略式断面図である。
【図2】缶蓋の耐圧強度測定方式の略式断面図である。
【符号の説明】
1 缶蓋 2 缶胴 3 治具 HP パネルハイト
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年4月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】本発明においては、通常、アルミニウム合
金の組織微細化のために添加されるTi、Bについて
は、それぞれ0.1%以下および0.01%以下、Al
−Mg系合金の酸化防止のために加えられるBeについ
ては50ppm以下の範囲で添加されても合金の特性に
影響を与えることはない。また、不可避的不純物として
含まれるSiについては0.4%まで許容され、Crお
よびZnについては、それぞれ0.1%まで許容され
る。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正内容】
【0024】本発明のアルミニウム合金板の製造につい
て説明すると、前記の組成を有するアルミニウム合金を
常法に従って溶解、鋳造し、得られた鋳塊を均質化処理
したのち熱間圧延を行って所定の板厚としたのち、また
は熱間圧延後必要に応じて冷間圧延を行って所定の板厚
としたのち、中間熱処理を行う。本発明のアルミニウム
合金板の製造方法における第1の特徴は、中間熱処理に
おいて、中間熱処理前と中間熱処理後の合金材の導電率
の変化率(導電率の変化率=〔(熱処理前の導電率−熱
処理後の導電率)/熱処理前の導電率〕×100)が1
%以上となるよう制御することにある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高田 幸一 東京都港区新橋5丁目11番3号 住友軽金 属工業株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg:3.0〜4.0 %(重量%、以下同
    じ)、Mn:0.5%を越え1.0 %以下、Cu: 0.2 〜0.6
    %、Fe:0.05 〜0.4 %を含有し、残部Alおよび不可
    避的不純物からなる組成を有する耐食性と耐時効軟化性
    に優れた缶蓋用アルミニウム合金板。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の組成を有し、260 ℃の温
    度に加熱した後の導電率が30〜32%IACS、耐力が32
    0 MPa以上であることを特徴とする請求項1記載の耐
    食性と耐時効軟化性に優れた缶蓋用アルミニウム合金
    板。
  3. 【請求項3】 Mg:3.0〜4.0 %、Mn:0.5%を越え1.
    0 %以下、Cu:0.2〜0.6 %、Fe:0.05 〜0.4 %を含
    有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有
    し、塗装焼付けしたアルミニウム合金板であって、導電
    率が30〜32%IACS、耐力が320 MPa以上であるこ
    とを特徴とする耐食性と耐時効軟化性に優れた缶蓋用ア
    ルミニウム合金板。
  4. 【請求項4】 Mg:3.0〜4.0 %、Mn:0.5%を越え1.
    0 %以下、Cu:0.2〜0.6 %、Fe:0.05 〜0.4 %を含
    有し、残部Alおよび不可避的不純物からなる組成を有
    し、導電率が30〜32%IACS、耐力が320 MPa以上
    である塗装焼付けしたアルミニウム合金板であって、板
    厚が0.2 〜0.3 mmの該アルミニウム合金板をパネルハ
    イト2.3 mmの204 サイズの缶蓋に成形し、該缶蓋を缶
    胴部に捲締め加工し捲締め部を外周部から拘束して耐圧
    試験を行った場合、成形直後の耐圧強度に対する120 ℃
    で30分加熱後の耐圧強度の低下率が10%未満であること
    を特徴とする耐食性と耐時効軟化性に優れた缶蓋用アル
    ミニウム合金板。但し、耐圧試験において缶蓋の周縁部
    が多角形状に変形し始める圧力を耐圧強度とする。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の組成を有するアルミニウ
    ム合金の鋳塊を均質化処理したのち所定の厚さまで圧延
    し、ついで中間熱処理を行い、該中間熱処理において中
    間熱処理前と中間熱処理後の合金材の導電率の変化率が
    1 %以上となるように制御し、その後加工度70%以上の
    冷間圧延を行うことを特徴とする耐食性と耐時効軟化性
    に優れた缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法。但し、
    導電率の変化率=〔(熱処理前の導電率−熱処理後の導
    電率)/熱処理前の導電率〕×100。
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